2025.02.06[江東BS]最高の自分へ、壮絶な大減量。進化した男が挑む古巣戦

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第5節
2025年2月8日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 豊田自動織機シャトルズ愛知

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

30kg以上の減量を成し遂げたトコキオ ソシセニ選手

2月8日(土)、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、ホストスタジアムの江東区夢の島競技場に豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)を迎える。リーグ戦でここまで2勝2敗と五分の成績を残している江東BSにとって、この一戦はチームの真価が問われる試金石となる。

ただし、これまでのS愛知との対戦成績はジャパンラグビー リーグワン通算5戦全敗。歴史的に見ても苦戦を強いられてきた相手だ。だが今節、江東BSには新たな切り札がある。

トコキオ ソシセニ。今季加入した32歳のベテランが、古巣との因縁の一戦に挑む。フィジー出身の『ソシ』は、山梨学院大学を経て、現在のS愛知に加入。長らくそのフィジカルとスピードを武器に戦ってきた。コベルコ神戸スティーラーズ、三重ホンダヒートを経て加わった新天地・江東BSでの挑戦は、彼にとって新たな試練でもあった。

「もう一度、最高のパフォーマンスを発揮できる体を作る」

彼の仕事は、まず30kg以上の減量から始まった。吉廣広征ヘッドコーチは、自身が現役時代に対戦したころのトコキオを思い浮かべながら、こう語る。「すらっとしていて、よく走る素晴らしい選手だった。だからこそ、もう一度その姿を取り戻してほしかった」。

チームから伝えられた意向とはいえ、減量は本人の意思に委ねられている。トコキオはオフの日もクラブハウスに足を運び、1日2時間以上エアロバイクやボクシングで汗を流した。肉体的にも精神的にも追い込む日々。南国出身で楽観的な性格の彼が、日本語で一言だけ漏らした。「キツかった」。

しかし、その努力が実を結び、かつて150kg近くあった体重は15週間で116kgまで落ち、動きの軽やかさとスピードが以前のものに戻った。

この壮絶な減量を支えたのは、江東BSの髙山慎S&Cコーチだった。選手が追い込むなら自分も同じように、と彼自身も95kgから83kgへと10kg以上の減量を敢行。トレーニングだけでなく、食事も毎食のように連絡を取り、見守ってきたという。ともに戦う覚悟がそこにあった。

トコキオはアルコールを断ち、「試合に出るまでは飲まない」と誓った。では、この試合後はどれだけ飲み食いするのだろうか。尋ねると、彼はニヤリと笑いながら答えた。「健康的な食事に慣れたので、暴飲暴食はしません」。本当の意味で生まれ変わった男の笑顔だった。

ラグビーは、ピッチの15人だけで戦うスポーツではない。支えてくれる仲間、コーチ、スタッフ、そしてファンの想いが積み重なり、初めて勝利にたどり着ける。

進化したフィジカルと覚悟を手にした『ソシ』が、勝利の瞬間を迎える日は近い。

(奥田明日美)

2025.02.06[S愛知]“新バージョン”を目指すS愛知。注目はノーサイドの精神を宿す男

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第5節
2025年2月8日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

「温泉が好きでいろいろなところに行く」というチャンス・ペニ選手

豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)にとって3週間ぶりとなる試合は、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)との対戦。江東区夢の島競技場に乗り込み、3連勝を目指す。

試合がなかった期間は、選手のリカバリーとチーム内競争に充てた。「自信がついた3週間だった」と徳野洋一ヘッドコーチは充実ぶりを口にする。これまでの4試合を分析し、さらなるレベルアップのためのアップデートを施した。「自分たちのラグビースタイルをもう一段階引き上げないといけない。そのために2月の2試合はとても重要」。まずは目の前の江東BS戦で、より成長した姿を見せたい。

そんな“新バージョン”のS愛知で注目となるのは、今季初出場となるチャンス・ペニ。今季はけがの影響で出遅れていたが、「気持ちが沈んだときもあったが、将来のことではなくいまを見つめることが大事だと学ぶことができた」と心身ともにコンディションを上げて戻ってきた。

2019年に日本にやってきて、今年で7年目。登録区分も今季よりカテゴリBからカテゴリAに移行した。「世界の舞台でプレーしたいという思いが強かったし、カテゴリAに変わったことで日本代表になることを考えられるようになりました」。

日本の生活にもすっかり馴染んだ。「僕も家族も本当に日本が好き。子供もここで育っているし、ホームだと思っています」。特に日本の人々の温かさが印象的なようで、「温泉が好きでいろいろなところに行くのですが、どこに行っても親切に話し掛けてくれます。地元でも、自分がラグビー選手だということが分かると、興味をもってさまざまなことを聞いてくれます」。

人々の優しさに、自身も優しさで返している。「みんなが幸せになれば、自分も幸せになれます。ラグビーでも、グラウンド内では敵同士だったとしても、試合が終わればみんなベストフレンドですから」。まさにノーサイドの精神を体現しているような男。フィールドでは荒々しくプレーするが、その素顔は実に温厚だ。

(齋藤弦)

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