2025.02.07[九州KV]大けがを繰り返して芽生えた思い。“託す”者、“託された”者の重みを知る不屈の男

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第5節
2025年2月9日(日)14:30 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 vs 九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクス(D2)

前十字靭帯断裂を4回‥‥リーグワンには前節が初出場だった齊藤剛希選手(左から3人目)

前節の勝利でリーグ戦の戦績を五分に戻した九州電力キューデンヴォルテクス。白星先行を目指し、今節はレッドハリケーンズ大阪とのビジターゲームに臨む。

「たぶん、4回もやってプレーし続けているリーグワンの選手はいないのではないかと思います」

左右のひざに目をやりながらそう話したのは、齊藤剛希だ。前節、リーグワン初出場を果たした31歳は左のひざを3度、右のひざを1度、合計4度の前十字靭帯断裂を経験している。

「けがをするたびに心が折れそうになって、泣いたこともありました」

負傷から競技復帰まで約1年を要する大けが、それを4度も味わっている。しかし、けがをしたからこそ見えたものもある。

「自分は高校、大学と試合に出続けていたほうで、大学4年生のときや社会人になって大けがをして、そこでようやく試合に出られない選手の気持ちが分かったというか。試合に出ているメンバーはそういった人たちの思いを背負って試合に出ないといけないとリハビリ期間で本当に思いました」

そこで芽生えた思いは齊藤の行動を変えていく。試合には出られなくてもチームのためにできることがあると信じた。

「けがで心折れてしまって自暴自棄になってチームに悪影響をもたらしてしまうくらいなら、そもそもラグビー選手としてというより人としてダメな気がしました。大けがをしても頑張る姿や一生懸命にやる姿は絶対に大事だと思ってリハビリをこなしていました」

前節の日野レッドドルフィンズ戦、リーグワンで初めてメンバー入りした齊藤は試合前の円陣でチームメートにあることを伝えた。これまでは託す側でしかなかった齊藤が託される側になったからこそ、伝えたい思いだった。

「けがをして悔しい気持ちを自分は何度も味わってきたけど、それはけがをした選手みんなが同じ思いだと思う。その人たちが試合に出られなくて抱いている悔しい気持ちを少しでも『俺も頑張ろう』という思いにさせる責任が試合に出るメンバーにはある」

試合に出られる喜びがあるからこそ、齊藤は武者震いが止まらない。チームへの思いの強さは増すばかりだ。

「チームに貢献したいという気持ちは、リハビリをしているときもずっと思っていたこと。試合に出たことでチームに貢献して、このチームをディビジョン1に押し上げたいという気持ちがますます強くなりました」

託す側の思いと託される側の責任。その重みを誰よりも知る不屈の男はこのチームのために全身全霊を尽くす。

(杉山文宣)

2025.02.07[RH大阪]外国籍のプロ選手が語る社員選手との絆。“社員ではない選手”として、チームにエナジーを

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第5節
2025年2月9日(日)14:30 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 vs 九州電力キューデンヴォルテクス

レッドハリケーンズ大阪(D2)

フランカーであるにもかかわらず、DIVISION 2のトライランキングでトップを走るブレイク・ギブソン選手

4連勝中のレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)は社員選手が中心だが、他チームに比べれば少ないもののプロ契約の外国籍選手も在籍し、勝利に貢献している。開幕から毎試合トライを挙げ、現在ディビジョン2のトライランキングで首位に立つブレイク・ギブソンもその一人だ。

ギブソンは、ニュージーランドのオークランド出身。セントケンティガーンカレッジ(この“カレッジ”は、日本での高校に相当)を卒業後、州代表のオークランド、スーパーラグビー・パシフィックのブルーズ、ハリケーンズでプレー。U20ニュージーランド代表でも活躍したバックローの選手だ。10年近くなったキャリアに「新たな変化をもたらそうと思い」、2022-23シーズンに東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)に加入した。昨季RH大阪に移籍し、開幕戦で日本でのファーストキャップを獲得。以後、「日本のスピードのあるラグビーは自分にも合うと思っていた」とおり、出場を重ねている。

過去にひざのけがもあったようで、来日した際のコンディションは万全ではなかったのかもしれない。RH大阪加入2年目の今季は、チーム内での絆も深まったことや「チームとして昨季よりもボールを保持する時間が長くなった」ことも相まって、本来もっていたワークレートの高さやコリジョンでの強さを遺憾なく発揮している。

現在はカテゴリBの外国籍選手であるギブソンは、ラグビーと仕事の両立が必要な“社員選手”たちをどう見ているのだろうか。

「以前所属していた東京SGはD1なので、プロ選手も多かった。本当にラグビーにフォーカスしています。でも、RH大阪の選手たちは仕事もしなければいけない。メンタル的にも非常に難しいでしょう。けれど、彼らはみんな最大限に努力している。それは東京SGの選手たちと同じだと思う」

加えて、「若手には本当に良い選手も多く、実際にプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれることもあります。よく頑張っていて、チームにエナジーを与えてくれています」とも話した。社員選手の最大限の努力と若手のエナジーをリスペクトする“社員ではない選手”。その絆もまた、連勝を重ねている要因の一つなのかもしれない。

「たくさん話すタイプではないので」と苦笑いしながら、少数派の“社員ではない選手”として「行動で示していきたい」と語ったギブソン。5試合連続トライにも期待が懸かるが、それは「できたらいいなと思う」と人差し指に中指を絡めるジェスチャー(英語圏では幸運を祈る際に使う)。今節も「ポジションとしての役割」に注力し、ボールキャリーやドミナント・タックルなど、チームのエナジーとなるプレーを見せる。

(前田カオリ)

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