2025.02.21[江東BS]再びつかんだ司令塔の座。若き10番の覚悟が未来を切り拓く

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第6節
2025年2月22日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 vs 清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

2月8日の豊田自動織機シャトルズ愛知との試合では1トライも記録した。ボールを持っているのが桑田宗一郎選手

2月22日(土)、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)とのビジターゲームに挑む。舞台は柏の葉公園総合競技場。ここまで2勝3敗と負け越している江東BSにとって、巻き返しを図るための大事な一戦だ。そしてこの試合で、久しぶりに『10番』を背負う男に注目したい。

桑田宗一郎は170cm、74kg。ラグビーにおいて、その体格は決して有利とは言えない。それでも、彼は強靭な精神と覚悟で、自分よりも大きな相手に果敢に立ち向かい続けている。

江東BSには、リマ・ソポアンガという世界レベルの10番がいる。元オールブラックス・ニュージーランド代表で、サモア代表としても活躍する実力者。昨季の加入以来、誰もが認める不動の司令塔となった。

そんなソポアンガの存在は、桑田にとって高い壁となった。加入1年目は8試合に出場も、ソポアンガが加入した2年目の出場試合は3試合にとどまった。しかし、そのときの彼は「リマ(・ソポアンガ)がいるのだから仕方がない」と、どこか納得してしまっていた。

しかし、そのままでいいはずがない。自分自身に矢印を向け、「やれることを100%やって結果を出す」と決意。そうして挑んだのが、昨年7月から8月にかけての『タラナキブルズ 選手派遣、コーチング研修』だった。

江東BSと戦略的パートナーシップを結ぶニュージーランド州代表選手権(NPC)リーグ王者のヤローズタラナキブルズへの遠征。この研修に参加するためには、職場の理解を得て年休や夏季休暇を活用しなければならなかった。それでも、桑田は環境を整え、成長のために海を渡った。

異国の地で待っていたのは、日本では考えられない体格の選手たち、そして未知の戦術。間合いの取り方、プレースタイル──。そのすべてが新鮮だった。現地での経験を通じて、自信もついた。そして、「研修が今季の出場につながる転機になった」という実感がある。

さらに、新シーズンの開幕前、桑田は12番のポジションに挑戦した。10番とは異なる役割を求められ、苦戦しながらも適応を続けた。そうして迎えた今季。彼は全試合でスタメン入りを果たし、新たなポジションで出場機会をつかみ取った。

彼の挑戦を支えるのは、周囲の応援だ。「応援してくれる人がいるから、頑張れる」。両親、友人、そして仕事を通じて出会った人々。彼らの期待を背負い、桑田はピッチに立ち続ける。

そして迎えるGR東葛戦。今季、ついに彼に本来のポジションである『10番』で出場するチャンスが巡ってきた。

再び託された10番。これは、桑田にとって単なるポジション争いではない。支えてくれる人々への恩返し、そして自分自身の成長の証明の場でもある。

運命のキックオフまで、あとわずか。若きスタンドオフの覚悟が、江東BSの未来を切り拓く。

(奥田明日美)

2025.02.21[GR東葛]大学で試合に出られなくとも──。熱意と鍛錬でつかんだ「スタートライン」

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第6節
2025年2月22日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 vs 清水建設江東ブルーシャークス

NECグリーンロケッツ東葛(D2)

新しく導入された期限付移籍でNECグリーンロケッツ東葛に加入した吉岡義喜選手(写真:NECグリーンロケッツ東葛)

2月22日、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は柏の葉公園総合競技場で清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)と対戦する。GR東葛にとってはホストゲーム、上昇への足掛かりをつかむためにも重要な一戦だ。

この試合では、静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)から期限付き移籍で加入した吉岡義喜がリザーブメンバーに名を連ねている。出場すれば、彼にとってはリーグワン初キャップを刻むメモリアルマッチとなる。

得意なプレーは「ハーフウェーライン付近から左足と右足、どちらの足からでもグラバーキックでバックスペースを狙えること」と言う。また、日々のひたむきな鍛錬の成果もあり、静岡BRのコーチからは「(静岡BRに)来たときよりもパスが断然うまくなった」とお墨付きをもらった。

東洋大学では、神田悠作(現・九州電力キューデンヴォルテクス)、清水良太郎(現・狭山セコムラガッツ)とのポジション争いに敗れ、吉岡は大学の試合ではほとんど公式戦の出場機会を得られなかった。だが、そこで味わった悔しさがあったからこそ、「リーグワンでプレーしたい」という感情があふれ出し、大学卒業後はオーストラリアのブラザーズRCで自らを鍛え上げた。そして静岡BRのトライアルを経て、2023年11月に入団をつかみ取った。

チャンスを与えてくれた静岡BRを離れるのは断腸の思いがあったが、自らの成長を期して吉岡はGR東葛への期限付き移籍を決断した。

「大学では試合に出ているところを親に見せられなかったので恩返しをしたい」

リーグワンの舞台で躍動することは、両親や指導者をはじめ、これまで自分を支えてくれた大勢の人たちへの何よりの恩返しになる。

ただ、吉岡が抱く思いはそれだけではない。彼には後輩と交わした、ある約束があるのだ。大学の寮で同部屋だった後輩も、吉岡と同じく試合には絡めなかった。当時、その後輩に吉岡はこう告げた。

「俺はリーグワンに行くから、見とってや」

そして吉岡はリーグワンのチームへの入団を実現させた。後輩以外にも、かつての自分がそうだったように、試合に絡めていなくても努力を続けている大学生ラガーマンが大勢いる。自分がリーグワンで活躍すれば、そんな選手たちに勇気と希望を与えられるのではないか。

チームの勝利、自分自身の成長、多くの人たちへの感謝の念、自分と同じ境遇の選手たちに勇気と希望を与えること。さまざまな思いを背負う吉岡は、決意に満ちた表情で江東BS戦への意気込みを述べた。

「これがスタートラインです」

(鈴木潤)

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