2025.02.28[花園L]オーストラリア代表110キャップの“賢人” 37歳を迎えなお見せるラグビー小僧の素顔

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第7節
2025年3月1日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ vs 清水建設江東ブルーシャークス

花園近鉄ライナーズ(D2)

ウィル・ゲニア選手。「僕のモチベーションは、チームが大好き、ここにいる人たちが大好きなこと」

前節、九州電力キューデンヴォルテクスを下して3連勝を飾った花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)を東大阪市花園ラグビー場で迎え撃つ。

今季手にした3勝は、いずれもビジターゲームでのもの。2月27日の練習後のハドルで、前節今季初出場を果たしたキャプテンのパトリック・タファは「今季まだ、ホストゲームで勝てていない」と仲間に声を掛けた。

3連勝を飾り、3位に浮上した花園Lだが、入替戦出場に向けて、取りこぼしが許されない状況が続くのも事実。内弁慶ならぬ“外弁慶”から抜け出すためにも勝利が必要となる江東BS戦だが、チームに緩む気配はまったくない。

活気ある練習の中心にいる一人が、1月17日に37歳の誕生日を迎えたウィル・ゲニアである。「一番大きいのは練習のクオリティーが上がったことですね」。ディビジョン1昇格を最優先目標に掲げながらも、世代交代も図りつつチーム作りを進めるのが今季の花園L。僚友、クウェイド・クーパーがリザーブとなる試合も増える一方で、ゲニアはいまだに不動のスクラムハーフとしてチームの心臓部を司る。「本当は、河村(謙尚)や人羅(奎太郎)もほかのチームなら(試合に)出られると思うのですが、ゲニアは一段上なのでね」と過去の実績や年齢に捉われない起用を意識する向井昭吾ヘッドコーチも、絶大な信頼を寄せている。

元オーストラリア代表として輝かしいキャリアを誇るクウェイド・クーパー選手

オーストラリア代表で110のキャップ数を誇るゲニア。技術や経歴もさることながら、日々の練習を見ていて感じる真の凄みは、その取り組み方とモチベーションの維持にある。

あたかも若手のように目を輝かせながら、グラウンド上を駆け、ボールをさばく。「僕のモチベーションは、チームが大好き、ここにいる人たちが大好きなこと。それにこの年齢になってもラグビーが大好きだし、まだまだやれると思っています」とその意欲に陰りはない。

D1に昇格させる喜びも、D1から降格する悔しさもかみ締めてきた花園Lの賢人は「D1に昇格することばかりを考えるのではなく、いまやれることを徹底的にやること。そうすれば(昇格の)チャンスは現れてくる」と言い切った。

前節は2トライの活躍を見せたゲニア。37歳のラグビー小僧は、そのプレーと背中でチームをけん引する。

(下薗昌記)

2025.02.27[江東BS]“後半20分”を攻略せよ。1年間の誓いをついに果たすとき

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第7節
2025年3月1日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ vs 清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

1年がかりのリハビリを経て復帰する大﨑哲徳選手(写真は2023年12月23日の中国電力レッドレグリオンズ戦。清水建設江東ブルーシャークスは当時、DIVISION 3所属)

3月1日(土)、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、花園近鉄ライナーズとのビジターゲームに挑む。今季、2連勝で好スタートを切ったものの、そこから4連敗。厳しい状況の中で迎えるこの一戦で、カギを握るのは“後半20分”だ。

敗戦の多くで、江東BSは終盤に失点を重ねてきた。それまで粘り強く戦いながらも、最後の局面で相手に突き放される。この流れを断ち切るためには、何かが必要だった。試合を勝ち切るための“あと一押し”となるもの。経験なのか、精神的なタフさなのか。そんな中、リザーブメンバーに一人の男の名前が刻まれた。

ロックとフランカーをこなす大﨑哲徳は、早稲田大学から江東BSに加入し、今年で3年目となる。だが、彼の道のりは決して順風満帆ではなかった。1年目で負ったけがは長引き、状態が良くなったかと思えばまた悪化する。その繰り返しに耐えながら、騙し騙しピッチに立っていた。

そんな調子だったおよそ1年前、二つの選択肢による決断を迫られるときが訪れた。「軽めの手術をして3カ月で復帰するか、しっかり手術をして1年間リハビリに費やし完治を目指すか」。大﨑に相談された吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダーは、「時間が掛かるとしても、そのあとのほうが長くチームに貢献できる選手だと思ったので、1年でどれだけ強くなれるか、というのを二人で話して決めた」。そして昨年1月13日の試合を最後に、長いリハビリ生活に入ることとなる。

リハビリ期間中、大﨑はチームから課されるメニューに加えて“自分のメニュー”もこなしていた。チームの練習がない日も、社会人としての仕事を終えたあとに一人でクラブハウスに通ってトレーニングを積む日々を過ごした。

「期間が1年間あって、復帰がとても遠い先でなかなかモチベーションを維持し続けることが難しい部分もありました。しかし、3カ月で復帰できる道もあったところを『1年間掛けてしっかりやろう』と自分で決断をしたので、『自分自身がなぜこういう選択をしたのか』というところに立ち返り、自分の気持ちに整理を付けて臨んでいました」

そして、いよいよ迎える復帰戦に向けて、大﨑は静かに闘志を燃やしている。

「『ようやくだな』という気持ちです。1年間リハビリに付き合ってくれたトレーナーや、S&C(ストレングス&コンディショニング)トレーナーのみなさんに感謝をして挑みたいと思います」

待ちわびた瞬間まで、あと少し。1年間の覚悟を胸に、大﨑哲徳が江東BSの“後半20分”に新たな風を吹かせる。

(奥田明日美)

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