2025.03.06[釜石SW]「この試合だけは別物」。気持ちをこめたプレーで釜石に、東北に勇気を届ける

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第7節
2025年3月8日(土)13:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs レッドハリケーンズ大阪

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

日本製鉄釜石シーウェイブスの村上陽平キャプテン。「個人的にはすべての試合が重要なのでそこに優先順位を付けないのですが、このタイミングで行うこの試合だけは別物だと思っています」

3月8日(土)13:00にキックオフする日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)対レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)。釜石鵜住居復興スタジアムで行われる今節は、東日本大震災復興祈念試合として開催される。

また、釜石市に隣接する大船渡市では、2月26日に発生した山林火災の被害が依然として広がっている。当日は釜石SWの選手たちによる募金活動も実施される予定だが、この苦境を脱する活力を見出すという意味でも重要な試合となる。

昨季の復興祈念試合には4000人に迫る観客が来場し、レギュラーシーズン唯一の勝利を呼び込んだ。今季、キャプテンを務める村上陽平は「個人的にもけがからの復帰戦でしたし、本当に多くの人の応援が力になったのを覚えています」と1年前を振り返る。

26歳のスクラムハーフは宮城県気仙沼市の出身。震災当時は小学6年生だった。

「震災の数日前にも大きな地震があったので、校庭に避難した直後は『またか』というような楽観的な雰囲気もあったんですけど、迎えに来た保護者の顔がもう青白くて。そこでことの重大さに気付かされました」

村上は「友だちは『家が流された』と言っていたし、自宅も目の前まで津波が押し寄せた」と当時のことを克明に語ってくれた。

あれから14年。震災後、さまざまなことに勇気付けられてきた村上は、被災地のクラブで、キャプテンとして、人々を勇気付ける立場となった。

「(3月11日は)釜石、東北にとって特別な日です。個人的にはすべての試合が重要なのでそこに優先順位を付けないのですが、このタイミングで行うこの試合だけは別物だと思っています」

一番大事なのは「いかに気持ちのこもったプレーを見せられるか」。個人としてはもちろん、キャプテンとしての声掛け、選手へのアプローチなども含めてその姿勢を促進していく。

ここでの白星はただの1勝ではない。暫定2位のRH大阪に、前半戦最後の試合、そして復興祈念試合で勝利することは、後半戦に向けてこの上ない勢いをもたらすはずだ。

特別な思いで臨む選手たちと、惜しみなくチームを後押しするファンの声援。困難を打ち破るべく、釜石は何度でも立ち上がる。

(髙橋拓磨)

2025.03.06[RH大阪]復帰を果たした司令塔が見せる強い向上心。「常に競争したい」思いがチームを突き動かす

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第7節
2025年3月8日(土)13:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs レッドハリケーンズ大阪

レッドハリケーンズ大阪(D2)

レッドハリケーンズ大阪のブライス・ヘガティ選手。「日本のラグビーはとても成長率が高い」

前節、昨季終盤にひざを負傷していたブライス・ヘガティが復帰した。続けていたリハビリも終わり、この1カ月ほどはトレーニングマッチでプレーする姿を見せていたが、前節でようやく今季初めてのメンバー入り。「チームのために戻ってくることができた」喜びをかみ締めた。

フル出場したのは、トレーニングマッチも含めて前節が今季初めてだった。「自分の役割はゲームをしっかりコントロールすること。セットピースで苦戦していたので、その中でも適切なときにボールを動かし、キックを選択することでモメンタムを生かすことが大切だと考えていた」と振り返る。「昨季から在籍しているので良い関係性を築けている」と周りの選手を生かすだけでなく、自身にもトライがあり、「楽しむことができた。チームに貢献できて、とてもうれしい」復帰戦となった。

今節もレッドハリケーンズ大阪の10番を務めるヘガティは、スーパーラグビーでのキャップ数が100を超えている。やはりそのゲームの流れへの判断力には、「素早い判断を求められる高いレベルのリーグで長期間プレーすることができていた経験が生きている」。

そのスーパーラグビーでの話になった際、彼はこのような話をしてくれた。

「スーパーラグビーのレベルは高いけれど、日本に来て気づいたのは、日本のラグビーはとても成長率が高いということ。その一因には、一つのチームで長年プレーしている選手が多いこともあると思う。お互いのことを知って関係性を築き、互いに学んでいる。関係性を積み上げることで、チームが前進できる。継続性はとても大切なこと。パフォーマンスの文化はそういうことでのみ作り上げられるものだと考えている」

社員選手が中心のチームでは、選手の出入りは比較的少ない。そういう面も含めて、チームが「さらに成長していける」と感じているようだ。「ほかの選手も自分もさらに成長できる」ことに確信をもっており、「個人のスキルをさらに高めて互いに競争することで、より一層向上していける。常にベーシックなことをしっかりと務めることが大事」だと語っていた。

残りのシーズンへの目標を問うと、「『優勝したい』とは言いたくない。チームとしても、個人としても、務めるべきことを務め、向上していくことができれば、結果は自ずと付いてくるもの」だと話したヘガティ。のぞかせた強い向上心の原動力は、「家族やチームのためにというのはもちろんだけれど、常に競争していたいという負けず嫌いなところ」だという。

その向上心で、チームをさらに高いレベルへと導きたい。今節も「可能な限りその状況に素早く順応し、一瞬一瞬で最大限の力を出して」、司令塔としての役割を全うする。

(前田カオリ)

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