2025.03.14[花園L]勝利だけが必要な背水の陣。だが、キャプテンは動じずにチームを引っ張る

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第8節
2025年3月15日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズ(D2)

「泰然自若」「不言実行」そんな言葉が良く似合うというパトリック・タファ キャプテン

前節、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)を相手に痛恨の逆転負け。4連勝を逃しただけでなく、D1/D2入替戦進出に向けて限りなく赤に近い“黄信号”が灯ったはずの花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)だったが、レッドハリケーンズ大阪も前節敗れたことで、希望の光が見えてきた。

昨季、D2への降格を強いられた花園Lだが、チーム内には二つの“昇格”を経験した頼もしい選手が存在する。バイスキャプテンから今季はキャプテンという立場に身を置き、登録区分もカテゴリAに変更されたパトリック・タファである。

「(シーズンの)最初から、キャプテンとしてカチッとハマってくれると思っていました」。開幕から5試合を負傷で欠場したタファの不在が誤算だったことを明かす向井昭吾ヘッドコーチだが、言葉数の多さではなく、その背中でチームを引っ張るタファの存在はチームにとって欠かせないものだ。

これ以上の取りこぼしは許されない背水の陣であるチーム状況だが、チームに向けてあえて、過度な声掛けをしないのが“タファ流”である。

「気を抜いてしまうと負けを引きずったり、落ち込んだりしてしまいますが、まだシーズンは終わっていません。キャプテンとしてはポジティブさを保つことを意識しています」

敗戦後の記者会見でもかみ締めているはずの悔しさや怒りは表に出さず、悟りを開いた仏さながらの柔和な顔を見せるタファ。ただ、江東BSとのリターンマッチでは勝利だけが必要なことも承知済みである。

花園Lに加入して今季が4年目。タレントがそろうチームの強みも課題も知り尽くす。前回の江東BS戦では、自滅に近いミスを繰り返したが「次の試合で気を付けたいのは規律です。われわれのプレーとシステムを信じること。個人個人でプレーしようとしないことです」とオーストラリア生まれのキャプテンは語る。

もちろんピッチ内ではイチ選手でもあるだけに「キャプテンとして80分プレーするので、周りの選手にインパクトを与えるプレーをしたいです。特に後半、ベンチからリザーブ選手が出てきたときに、キャリーやセットピースで彼らを引っ張っていくつもりです」。

「泰然自若」「不言実行」──。日本にはさまざまな四字熟語が存在するが、パトリック・タファにはそんな言葉が良く似合う。

(下薗昌記)

2025.03.13[江東BS]仕事もラグビーも、全力で挑む。前節決勝トライの男が、必然を証明する戦いへ

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第8節
2025年3月15日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 花園近鉄ライナーズ

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

前節の終了間際のトライシーン。プレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した田森海音選手

3月15日(土)、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)をホストに迎える。ディビジョン2は後半戦が始まり、今節は前節に続く花園Lとの連戦。その前節で劇的な勝利を収めた江東BSにとっては、連勝を飾って勢いを確かなものにしたい。

今節も花園近鉄ライナーズに連勝することができるか?

29対29の状況で後半40分を告げるホーンが鳴った。その直後、江東BSは最後のワンプレーにかけた。左右に攻め手を探り、わずかなスキを見逃さずにトライラインに飛び込んだのは、後半19分から投入された田森海音だった。

試合終盤、体力が削られる中で集中を切らさず戦い続けることが、江東BSにとって大きなテーマだった。その難局を突破し、勝利を手繰り寄せた要因は何だったのか。田森は言う。

「相手も疲れていますし、自分たちも疲れている中で、やはり全員が『トライを取るんだ』と、同じ方向を向いて動けたのが一番大きいのかなと思います。ゴール前まで行くと、スキル的な部分というよりは、マインド的な部分が大事だと思うので、そこで勝ったと思います」

しかし、勝利に浮かれることなく「まだ後半20分以降を克服したとは言えない」と厳しく現状を見据える。だからこそ、今節の花園L戦は、真価が試される一戦となる。

江東BSの選手たちは、会社員としての仕事とラグビーの両立に挑む社会人選手だ。彼らのモットーは「社業とラグビー、双方に高い目標を掲げること」。この厳しさに魅力を感じ、田森は江東BSの門を叩いた。明治大学のフッカーとして2021年度の大学選手権準優勝、U20日本代表にも選出された経験をもつ彼にとって、ラグビーだけに集中できるチームを選ぶことは簡単だったかもしれない。しかし、彼はあえて、社会人としてもラガーマンとしても全力を求められる環境を選んだ。

社会人選手としての生活は決してラクではない。「朝は仕事で早く、夜は練習のため遅い。慣れることはなくて、ずっとしんどい」と言う。しかし、チームは確実に成長してきた。社会人1年目、D2で戦っていた当時は「正直、全然勝てる気がしなかった」。D3での1年を経て、今季はD2で“戦えている”実感があるという。

「年々選手の意識も変わっていると思いますし、チーム内の競争もすごくレベルが上がってきているなと感じます」

前節の勝利が、偶然ではなく必然だったと証明するために。全力を尽くすフッカーの覚悟を、もう一度見たい。

(奥田明日美)

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