2025.02.21[L戸田]一度はあきらめかけたラガーマンの夢。感謝の気持ちを忘れず、燃やし続けていた情熱

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第7節
2025年2月22日(土)12:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ vs ヤクルトレビンズ戸田

ヤクルトレビンズ戸田(D3)

30歳でリーグワンデビューを果たした左プロップの野﨑伊織選手(写真中央手前)

あきらめずに続けてきたからこそたどり着ける境地がある。

ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)の野﨑伊織のリーグワンデビューは1月の第3節中国電力レッドレグリオンズ戦(以下、中国RR)だった。場所は栃木県グリーンスタジアム。國學院栃木高校でラグビーを始めた野﨑にとって、栃木は縁のある土地だった。

栃木時代の懐かしさとともに、ラグビーを始めさせてくれ、自身が高校生のときに亡くなった父親への感謝の気持ちがこみ上げていた。親父、俺はついにリーグワンの選手になれたぞ──。

主力のけがもありつかんだチャンスを野﨑はモノにした。2月23日に31歳になるが、年齢は関係ない。不撓不屈。それが野﨑の中にある揺るがない信条だ。

東洋大学の4年生のとき、夢をあきらめ切れずに当時の『トップリーガー発掘プロジェクト』に挑戦したが、声は掛からなかった。そこで一度は夢に蓋を閉じた。ヤクルトに入社して早々、当時のラグビー部OBの上司から「ラグビーじゃなくて仕事が先だろ」と一喝されたことはいまとなっては感謝しかない。出張先から新幹線で戻って仲間たちと練習し、また新幹線で出張先に戻るなんて日もあるが、仕事が充実しているからラグビーも充実するのだと考えてきた。

「それがレビンズのアイデンティティーでもあるから」。そんな野﨑の背中があり、それを仲間たちが慕い、ついてくる。仲間や後輩たちに恵まれ、野﨑は強いL戸田の中にいた。大学4年生のときにあきらめかけた夢がいつの間にか再燃していた。

仕事とラグビーの両立を支える妻や3人の子どもにも感謝しかない。覚悟を決めてラグビーに立ち向かえる大きな存在だ。

今節、対戦する中国RRには高校時代の同期の大木寿之がいる。帝京大学に進んだ彼とは当時、天地の差があると感じてきたが、あれから約10年という月日を重ね、互いに30歳を過ぎて、同じピッチで対戦できる喜びと、絶対に負けられないという気持ちが交錯する。同期の存在も熱源の一つだ。

「僕は、レビンズの仲間や家族、友人たちに助けてもらいながら何とかここまでやって来られました。周りに支えられながらいまの自分は成り立っています」

だから、野﨑は一戦一戦を大事にする。感謝の気持ちを忘れず、目の前の戦いに全力を尽くす。

(鈴木康浩)

2025.02.21[中国RR]こだわるのはモールでのトライ。フォワードとしての意地とプライドを見せる

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第7節
2025年2月22日(土)12:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ vs ヤクルトレビンズ戸田

中国電力レッドレグリオンズ(D3)

中国電力レッドレグリオンズの西川太郎 共同キャプテン

勝利を手繰り寄せたのは、覚悟を決めた顔だった。

前節の広島ダービーの前半残り5分で、中国電力レッドレグリオンズは7点差を追って得意のモールでトライエリアに迫ること3回。しかし、自分たちのミスなどでいずれも得点できずにいた。

それでも、直後に渾身のスクラムで相手のペナルティを誘い、再びチャンスを得ると、ショットかラインアウトかの選択に迫られた。このとき、西川太郎共同キャプテンの頭にあったのはショットだった。

「僕がモールで2回ミスをして、自分のマインドも落ちていた。だからショットにしようと思っていたら、みんなが寄ってきて『モールのサインはこれで行きましょう』と言ってくれて、フォワードでトライを取り切るこだわりを見せてくれた」

落ち込む西川が顔を上げたとき、仲間はすでに覚悟を決めた表情をしていた。「みんなが『行こうぜ』という顔をしていた。そのおかげで、いい結果になったし、僕としても助けられました」。

青木智成は、「僕は誰よりもモールの顔をしていました」と冗談混じりで振り返りつつ、「あそこでショットを選んだら負けるなと正直思いました」と真面目な表情で続けた。

「気持ちの問題でした。もちろん、宮嵜(隼人)のキックはうちの強みなのでショットも逃げではないです。でも、フォワード陣もモールにずっとこだわって練習してきたから、そこで逃げたくなかった」

最終的に前半最後のラインアウトで選んだのはピールオフ(ラインアウトでのサインプレー)。相手のモールへの意識を逆手に取り、素早く展開して岩永健太郎がトライを決めた。フォワードの意地で得点を奪い、青木は「みんなが同じ方向を向いてやり切った結果のスコアだった。あそこでトライを取れたことが勝敗の別れ道だったと思う」と胸を張った。

前節、前半終了間際の岩永健太郎選手によるトライ

今節はヤクルトレビンズ戸田とのホストゲーム。前回対戦は宮嵜が全26得点を叩き出して勝利したものの、トライ数では相手に上回られていた。スタンドオフの宮嵜はこれまでディビジョン3でトップの70得点を記録。高精度キックはチームに欠かせない武器であり、得点源だ。ただ、そればかりに頼ってはいられない。フォワード陣も奮起する。

西川は、「モールでのトライにこだわろうと話をしていた中で自分がミスしたので、あらためて精度を高めないといけない。相手もモールが強いけど、うちもモールを武器にしているし、トライを取れたら勢いづくので、こだわってやっていきたい」と気を引き締める。

グラウンドで譲れぬ戦いが繰り広げられる。そこにラガーマンたちの覚悟を決めた顔がある。

(湊昂大)


試合詳細

見どころ・試合レポート一覧