2025.04.11[WG昭島]欲するのは完璧なゲイン、ラインブレイク。強いエゴをもつ男の異端の輝き

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第12節
2025年4月12日(土)12:00 AGFフィールド (東京都)
ヤクルトレビンズ戸田 vs クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島(D3)

ヒップスラストで350kgを上げたというクリタウォーターガッシュ昭島の濱副慧悟選手

前節、首位のマツダスカイアクティブズ広島との雨中の激闘を制し、勢いに乗るクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)は今節、ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)とのビジターゲームに臨む。D2/D3入替戦進出の扉をこじ開けるためには、WG昭島にとってここからの4試合、勝利は絶対だ。

「悔しいです。あのトライは僕らしいトライじゃないんで」

濱副慧悟は前節、6試合ぶりの先発メンバーに名を連ねると、2トライを挙げて勝利に大きく貢献した。しかし、自身のトライにはまったく満足していない。彼が求めるのは、チームでのトライではなく、ビッグゲインやラインブレイクを駆使して自らの力で道を切り拓くものだ。むしろ、トライ自体にはこだわらず、いかに自分の力だけで前進するか、その1点のみに集中している。

今季、濱副はひざの外側靭帯を痛め、復帰した練習の初日に今度は手の甲の骨にヒビが入り、約1カ月間のコンタクト禁止期間が続いた。普通の選手なら、けがから復帰してすぐに別の場所をけがすれば、モチベーションが下がるところだが、濱副は違った。

「スクワットを100%でこなしてグラウンドに出ると、筋肉が痛み切っていて、肉離れのリスクが高くなります。だからシーズン中は100%のスクワットはできない。なので、逆にラッキーだと思いました。完全な状態で復帰できるので」

その期間、レメキ ロマノ ラヴァ(三重ホンダヒート)がヒップスラスト(尻の筋肉を鍛えるメニュー)で300kgを上げていることに刺激を受け、350kgを目標に掲げ、それを達成。より強くなった濱副は、グラウンドに戻ってきた。そんな彼が今季やり残していることは、2つある。

「残りの試合のどこかで、完璧なゲイン、ラインブレイクを見せること。そして、同期入社でもあるワイクリフ・パールー ヘッドコーチをディビジョン2に昇格させること」

トライはいらない。ハーフウェイラインから、相手をラインブレイクで引き裂く、本来の彼の姿が戻ってくれば、みんなが待ち望んだ濱副の完全復活だ。濱副が持つその強いエゴこそが、WG昭島がD2/D3入替戦進出に必要だと彼は信じて疑わない。

(匂坂俊之)


2025.04.11[L戸田]このチームは「日本の家族」。ともに強くなり、駆け上がることを夢見る不動の10番

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第12節
2025年4月12日(土)12:00 AGFフィールド (東京都)
ヤクルトレビンズ戸田 vs クリタウォーターガッシュ昭島

ヤクルトレビンズ戸田(D3)

ヤクルトレビンズ戸田で9年目のシーズンを迎えているニック・イブミー選手

ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)のニック・イブミーは、前節の中国電力レッドレグリオンズ戦について「今までやってきたことを表現できた、すごくいい勝利だった」と振り返る。残りの試合も「常にアタックする、みんなが楽しめるラグビーを」と意欲を見せている。

ニュージーランドでセミプロとして活躍していたイブミーにとって、リーグワンでのプレーは長年の夢だった。

「トップリーグのころからずっと憧れだった。そのためにも、このチームを助けたいとずっと思っていた」

L戸田に加入したのは8年前。家族とともに新しい文化に触れたいとの思いから日本での挑戦が始まった。「僕が加入した最初の年は清水建設ブルーシャークス(当時)と優勝を争ったけど、そこから2、3年はチャンスもなかった」。それでも地道に献身を重ね、一昨季に訪れたリーグワン参入のチャンスをモノにした。

「僕が加入した3年目にサントリーサンゴリアス(当時)から沼田幹雄S&Cコーチが加わり、本格的なウェイトトレーニングやスピードトレーニングが導入されて強化が進んだ」とイブミーは感慨深げに振り返る。彼自身、若手選手へアドバイスを惜しまずに送り、『一緒に成長するんだ』という姿勢でチームをけん引した功労者の一人だ。

スタンドオフとしての責任にも思いを巡らせてきた。若いころは自身の信条である強気なアタックを繰り返していたが、年齢を重ねるにつれ、「チームのコントロールにも力を注ぐようになった」。バランスを意識するようになったのは、チームメートたちの成長を感じ、彼らに任せるところは任せようとの思いが芽生えたからだ。

8年間住み続ける戸田市には通いの焼肉屋があり、戸田市長とは同級の娘を持つ“パパ友”だ。「戸田は東京に近いのに、公園や湖、ゴルフ場もある。最高だよ」。そんな日々の生活の中心にあるL戸田は「日本の家族」だと言い切る。家族とともに強くなり、ともにステージを駆け上がる。そうやって夢想することが人生の糧になった。

「どうすればチームが成長できるか、いつも考えています。今季はリーグワンがどういうものかを学んでいる最中。いくつか直せば、来季にはもっと良くなると思っています」

だから、1試合も無駄にはしない。「残りの4試合、全部勝って、いいシーズンとして締めくくりたい」。L戸田の不動の10番にとって、リーグワンでの物語は序章に過ぎない。

(鈴木康浩)

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