2022.12.25NTTリーグワン2022-23 D1 第2節レポート(BL東京 17-7 BR東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスA
2022年12月24日(土)14:30 味の素スタジアム (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 17-7 リコーブラックラムズ東京

リーチ マイケルは止まらない。「絶好調」のNo8が見せた凄みとその価値

リーチ マイケルは止まらない

東芝ブレイブルーパス東京は12月24日、味の素スタジアムでリコーブラックラムズ東京を17対7で破り、今季初勝利を挙げた。冷たい風が吹く中で勝利の立役者となったのが、「止まらない男」リーチ マイケルだった。

ナンバーエイトに入ったリーチは前半4分、左サイドのスクラムからボールを持ち出すと、相手ディフェンスをかわして敵陣深くに進入。スクラムハーフ・小川高廣のトライを演出した。

「ボールを持って出たときにあまりにもスペースがあってびっくりしたけど、自分の持ち味のステップを使って前に出ました。ナンバーエイトはボールが回ってきて楽しいです」

今季、フランカーからナンバーエイトにポジションを移したリーチ。トッド・ブラックアダー ヘッドコーチは「彼はまさに火がついた状態、絶好調になっています。より自由になって伸び伸びとプレーしている姿を見るのはわれわれにとってもうれしいです」と称賛する。

ポジション的に自由度が上がったことで、リーチの危機管理能力がチームのプラスになっている。リコーブラックラムズ東京は、大型フォワードが密集周辺を突いてくることがあり、スタンドオフのアイザック・ルーカスは魔法のようなステップと長短のキックを使い分ける。センターには経験豊富なハドレー・パークスもいて、スペースを見つければ一気に攻略する力を持っている。

その中でリーチは実によく動いていた。レフリーの笛が鳴るまで、止まらずに動き続けていた。相手がキックする雰囲気を感じ取ると、最終ラインとキック処理のフルバックの間に移動してスペースを埋める。小川が密集に巻き込まれればスクラムハーフ役としてパスを放ち、攻撃でも守備でも、チームがいてほしいところに顔を出し続けた。

開幕前には、日本代表の活動から休みなくリーグワンの長いシーズンに入ることを心配する声に対して「個人的にはすべての試合に出たい。試合に出ながら体を大きくして、成長していきたい」と意欲を語っていた。34歳になっても、止まりそうな様子はまったく見せない。

共同キャプテンの小川はリーチについて笑顔で語った。

「本当に調子がよくて、『俺にくれ! 俺にくれ!』という感じです。ワークレートも高いですし、『いいときのマイケルだな』と思っています」

24日の試合後、取材が許されたミックスゾーンで、チームバスの出発時間が迫る中、リーチには矢継ぎ早に質問が投げかけられた。自身のプレーやセットピースについて。さらに新しいファンサービスや、クリスマスパーティーについても。

リーチは日本語で簡潔に、立て板に水で答えていく。

「どんどん成長していきたい。やっていることは間違っていないので」

「東芝ブレイブルーパス東京らしい強さが出ていると思います」

「ファンサービスは新鮮でした。新しい音響システムはグラウンドの中で生の音を聞いているからわからなかったです」

「パーティーはお家で。焼酎です」

約3分間、硬軟織り交ぜた受け答えで報道陣をうなずかせ、笑わせた。グラウンドで動き続けた男は、試合後もスピーディーに各方面を満足させ、颯爽と帰路に就いた。

リーチ マイケルは止まらない。その凄み、その価値の高さを見せつけた一日となった。

(安実剛士)

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、小川高廣 共同キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「こんにちは。今日の試合はスタートが良く、選手たちのプレーを見て満足しています。前半はプレッシャーを掛けていくことができていましたが、それを続けられませんでした。かなりボールを保持していたのですが、最終的に自分たちで自分たちにプレッシャーを掛けてしまいました。最後の2分はリコーブラックラムズ東京さんがいつでも、どこからでもラインブレイクしてきそうな雰囲気でした。それでも粘り強く戦えたのは良いファイトだったと思います。重要な勝利をつかむことができました。これから改善が必要なところは多くあります。今日うまくいかなかったところは修正していこうと思っています」

──前半はほとんど敵陣で戦っていましたが?

「前半のポゼッションはこれ以上ないぐらい良かったです。自分たちのプランを遂行することができればさらに良かったです。ミスがいくつかありましたが、敵陣深い位置でのミスだったのが救いでした。ハーフタイム前にもスコアできていればもっと良かったと思います」

──トライを取り切るために必要なものは?

「今日は自分たちのシェイプをうまく使うことができませんでした。リコーブラックラムズ東京さんがうまく対応してきたので、攻撃の際に両面にうまくアタックラインを敷くことができませんでした。ただ、うまくいくまでもう少しだったと思っています」

──ラインアウトのディフェンスが良かったと思いますが?

「ラインアウトディフェンスは自分たちの強みになっていて、自分たちで誇りに思えるところです。そのことによってタフな試合で自分たちのしたいプレーができるようになっています。伊藤鐘平がこの部分をリードしていて、良い仕事をしてくれています」

──ペナルティートライのあと、追加点を取り切れなかった要因は?

「ペナルティートライのあとは、勢いが変わるという重要な場面でした。ペナルティートライをもらって相手が14人となりましたが、カウンターからトライをされて、勢いを取り戻させてしまいました。重要な瞬間に計画を遂行していくことが大事なので、有利な時間帯を有利に使えるようにしたいと思っています」

──リーチ マイケルのキャリーが良かったと思いますが?

「彼はまさに火がついた状態、絶好調になっています。6番から8番への変化も楽しんでいるようです。より自由になって伸び伸びとプレーしている姿を見るのはわれわれにとってもうれしく思います。(早めに交代したのは)ここまでタフな活動をしていますし、ちょっと疲れているようにも見えました。また、ほかの選手が仕事をしてくれると信用しているので、代わりに入った佐々木剛にイエローカードが出ましたが、非常に厳しい判断だと感じました。

報道陣のみなさん、ラグビーをいつも取り上げてくれてありがとうございます。今日はクリスマスイブですので、次に会うときはみなさんもカラオケなど楽しんでもらって、もう少しだけハッピーな感じで会いましょう(笑)」

東芝ブレイブルーパス東京
小川高廣 共同キャプテン

「まず今日は勝てたことが良かったと思います。自分たちのミスでチャンスを逃した部分もありますが、リコーブラックラムズ東京さんのブレイクダウンが素晴らしくて、やられてしまった部分も多くありました。修正するところはたくさんありますが、伸びシロだと思って、次の試合まで2週間あるので、静岡ブルーレヴズ戦に向けて準備していきたいと思います」

──前半の小川選手のトライはよい流れでしたが、いかがでしたか?

「正直、そのシーンをあまり覚えていなくて(笑)。自分たちに勢いがあるときは、なんでもできる状態になっていると思います。チームとしてやることをしっかりやってテンポを出せばいつでもチャンスが来ると思っているので、それを一貫してできるかが課題になります」

──トライを取り切るために必要なものは?

「まずはブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)をしっかりやっていかないといけません。2人目の速さと強さが大事になってくると思います」

──ラインアウトのディフェンスがよかったと思いますが?

「ラインアウトディフェンスは強みになっていると思います。自分もミスがありましたが、その後のラインアウトでプレッシャーを掛けることができていました。それによって自陣に入らせずにまた攻めることができています」

──ペナルティートライのあと、追加点を取り切れなかった要因は?

「基本的には変わらず戦っていこうと思っていましたが、自分たちにミスがあって相手に勢いを与えてしまいました。一個のミスで状況が変わってしまったので、しっかりやらないといけません。いつもどおりに遂行できていれば、問題なかったと思います」

──リーチ マイケル選手のボールキャリーが良かったと思いますが?

「マイケルは本当に調子がよくて、『俺にくれ! 俺にくれ!』という感じです。ワークレート(仕事量)も高いですし、『良いときのマイケルだな』と思っています」

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(右)、武井日向キャプテン

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「こんにちは。ゲームは予想どおりでした。序盤は我慢強く戦い、最後の20分にチャンスがくるのではないかと思っていて、そのとおりの展開になったと思います。勝つチャンスは十分にあったと思います。残念ながらそうはならなかったですが、長くファイトし続ければよい結果がついてくると考えています。今日は最後のチャンスを生かしきれなかった、というところです」

──終盤に自分たちが優勢になると予想していたのはどうしてでしょうか?

「相手はフィジカルなチームですが、80分間まるまるフィジカルで戦うのはすごく難しいことです。自分たちはしっかり練習を積んできたので、そこに対応していけば最後に勝てると思っていました。チャンスは作りましたが、それを生かすことができませんでした」

──先発で山本昌太、控えに南昂伸としたスクラムハーフ二人の起用法と評価は?

「山本はすごくよいゲームマネージャーです。アイザック・ルーカスは若い10番なので、経験のある9番と12番(ハドレー・パークス)が囲む形にしています。南はフィニッシャーとして出るのが現時点での彼の強みだと思っています。彼のプレースタイルを変えて、違う選手にしようとは思っていません。いま成長中ですごく良いランナーで、テンポも上げてくれるので、そういう考えの下で彼を起用しています」

──南はフィニッシャーということでしたが、入替として入ってくる選手にはそのような役割を期待していたのでしょうか?

「そのとおりです。最後の20分はディフェンスが疲れてくる時間帯なので、南の存在はプラスに働くと思いました。マット・マッガーンもすごくよいパフォーマンスを見せてくれました。彼はカルチャー的にもパッション的にもリードしてくれる選手です。松橋周平もケガから戻ってきたばかりですが、ボールに絡んだり、スピードを加えてくれたりしてくれると思っていました。フロントローも後半から入った谷口祐一郎と笹川大五がよいスクラムを組んでくれました。

また、リザーブではありませんがロトアヘア ポヒヴァ大和もよかったです。1年ぶりの試合で昨夜は体調も悪かったようですが、70分間、力を出し切ってくれました。1年出られないところから復帰して70分戦ってくれたのは、チームを大事にしている選手だからこそだと思っています。先週の試合からの『ファイトバック』という点はよくなりました。先週はリコーブラックラムズ東京と言えないチームでしたから。私たちはファイトし続けるチームなので、それをやり続けます。今日の彼らのファイトはハッピーです。あとは精度を磨いていきたいと思います」

リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン

「東芝ブレイブルーパス東京さんはフィジカルを武器にしていて、そこを生かしてくることはわかっていました。自分たちもフィジカルは強みにしている部分だったので接点で負けないことを意識していました。自陣で守り切ることもできましたし、ディフェンスで圧力をかけられたのは先週から成長した部分だと思います。チャンスもあったのですが、一個一個の精度を突き詰めていかないといけません。正しい方向には進んでいると思うので、しっかり見直してやっていきたいと思っています」

──終盤に自分たちが優勢になると予想していたのはどうしてでしょうか?

「前半はお互いに我慢する時間が続くと思っていて、ゲームの入りに失点したのは反省する部分ではありますが、そのあとの我慢強いディフェンスは良かったと思います。後半、自分たちの時間が来たときに精度高く戦うのが大事でした。しかし、私たちはセットプレーやリアクションにスキがあって、東芝ブレイブルーパス東京さんはチャンスをモノにしました。その差が出たと思います」

──自陣で何度かボールに絡んで相手のペナルティーを誘いましたが、どのように意識していましたか?

「ブレイクダウンは自分たちのプライドの部分だと思っています。先週できなかったところを自分たちで厳しくレビューしました。そこをみんなが理解してアクションした結果が出たと思います」

──東芝ブレイブルーパス東京の、ともに身長2mを超えるワーナー・ディアンズとジェイコブ・ピアスの両ロックの高さは影響しましたか?

「二人の長身選手がいるラインアウトでプレッシャーを受けて、チャンスでカットされた場面もあったので改善していこうと思います。彼らにはセットプレーの部分でプレッシャーを掛けられました。今日のラインアウトは自分たちが求めている精度ではなかったと思います。自分たちでやり切った上で、どんな相手が来ても自分たちを信じてやれるラインアウトを作っていきたいと思います」

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