2022.12.27NTTリーグワン2022-23 D1 第2節レポート(相模原DB 27-25 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスA
12月25日(日) 12:00 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 27-25 トヨタヴェルブリッツ

「一人ではなく、みんな」。D1初参戦で漂う“イノシシ旋風”の予感

三菱重工相模原ダイナボアーズの坂本侑翼選手

開幕戦白星同士の対戦は、ホストチームの三菱重工相模原ダイナボアーズに軍配が上がった。

ホストエリアである相模原のスタジアムには、ディビジョン2だった昨季の倍以上の観客が来場。青い空と緑の芝生のコントラストが映える景色の中、80分を告げるホーンが鳴り響いても勝利の行方がわからない、拮抗した戦いが繰り広げられた。

トヨタヴェルブリッツのリードで迎えた後半、三菱重工相模原ダイナボアーズはタウモハパイ ホネティのトライとジェームス・シルコックのキックで逆転。トヨタヴェルブリッツは日本代表の姫野和樹、茂野海人に加え、日本での公式戦初出場になるイングランド代表70キャップのジョー・ローンチブリーらを投入して37分のペナルティートライで2点差まで詰め寄ったが、一人少ない状況でも持ち前の粘り強いディフェンスを崩さなかった三菱重工相模原ダイナボアーズが開幕2連勝を挙げた。

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチや姫野は三菱重工相模原ダイナボアーズのブレイクダウンでのプレーを称え、自分たちが優位に試合を進められなかったことを「誤算」と表現した。“Xファクター”の選手を擁し、トップ4を狙うチームに油断はなかっただろうか?

坂本侑翼のジャッカルで動いたゲームは、エピネリ・ウルイヴァイティのジャッカルで終わった。トヨタヴェルブリッツのハードキャリーに対して、三菱重工相模原ダイナボアーズは人数を掛けて止めにかかる。岩村昂太キャプテンは「全員がシステムに則って、みんなでコネクトしながら、一人ではなく、みんなでディフェンスできた」と振り返る。

ディフェンスで大貢献した、2021年に加入の坂本侑翼は前節がデビュー戦。「(開幕戦の)リコーブラックラムズ東京戦で自信がついて、今日はいい感じで試合に入り、自分がやるべきことをできた」と笑顔を見せた。

プレシーズンのハードトレーニングで体を作り上げた三菱重工相模原ダイナボアーズの選手は試合を重ねるごとに成長し、自信をつけている。今季のディビジョン1に“イノシシ旋風”を巻き起こすかもしれない。猛獣注意だ。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「本当にタフな試合でした。相手は素晴らしいチームで、アグレッシブなプレースタイルのラグビーですし、良い準備をしていました。とてもタフな試合になりました」

──ダイレクトプレーも多くて、ボールチャージを狙ってくるチームだったが、そこを粘れた要因はどこにありますか?

「途中、『どうやって選手たちが止めてくれているのだろう』と思うくらいのときもありました。相手はストロングキャリーが特徴だと分かっていました。そこで1回ちょっとゲインされても、次で粘るところのメンタリティーがすごく見えたと思うので、そのプレーの中で自分たちのDNAがまた出たと思います。自分たちがどういうチームになりたいのか、そこでも常に粘って負けず嫌いのところを見せてハードワークし続けるチームだというところを今日は見せることができたかなと思います」

──スタンドオフを入れ替えて、ジェームス・シルコック選手を起用した意図とパフォーマンスの評価は?

「ジェームス・シルコックは良いプレーをしたと思います。彼を入れた理由としては、まず、ヘンリー ブラッキンは元々センターでプレーするので、そこを戻しました。そして、ずっとプレーしていた10番、コントロールする10番が欲しかったので、そこはマット・トゥームアかジェームス・シルコックのどちらかにしたかったのですが、先週メンバーに入っていたジェームス・シルコックを入れました。一人、ケガでチェンジしたポジションはありましたが、それ以外は先週の23人と同じだったことも彼を残したかった理由の一つです」

──第1節に続いて今日のディフェンスも素晴らしく、さきほどトヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチが、「今日は、三菱重工相模原ダイナボアーズのブレイクダウンが非常に素晴らしかった」と言っていました。ディフェンスやブレイクダウンがうまくできている理由は?

「相手チームのヘッドコーチがそう言ってくれて本当にうれしいです。以前一緒に働いたこともあり、ディフェンスやブレイクダウンですごく集中するというのはお互い知っているので。それが今日、うまくできたのは、我がチームの創設以来のDNA、ハードワークをするところを見せられたということです。今日もOBの方がたくさん見に来てくれました。家族も、新しいファンも来てくれました。そこで三菱重工相模原ダイナボアーズのマークを背負い、自分たちが代表として最も良いパフォーマンスをしたい、よいプレーをしたいという気持ちをもって、みんながハードワークをし続けることができたのかなと思います」

──第1節の試合後の記者会見で、「三菱のDNA」について話されました。ヘッドコーチ自身が会社の歴史などを学ばれたのでしょうか。それらをチームに伝えたり、チームでそうしたことを学んだりするような機会はあったのでしょうか?

「歴史は大事です。自分たちがチームとしてどういう道を辿ってきたのかを知ることはとても大事だと思います。三菱重工は1884年、長崎で岩崎彌太郎さんが創業されました。 今日、最後のプレーのところでみんながなんとしても勝つというところ、努力し続けるというところは、150年前からスタートしたハードワークの意識が続いていると思います。前に起きたことを知ることももちろん大事ですが、いま自分たちがそれを代表しているので、先人たちに恥ずかしいと思わせないようなプレーをすることが大事だと思います。また、そういうことがあることで、自分たちがなぜプレーしているのかが分かりやすくなります。自分たちがどういう方向に向かっているのかを知るのも大事だと思います」

──そういうことを選手たちに話されるのですか?

「選手たちによくそういう話をしています。そこから自分たちが力をもらえるところがいっぱいあると思います。三菱重工の歴史だけではなくて、相模原のラグビーも50年の歴史があるので、自分たちがどういうチームだったのかを知ることはすごく大事だと思います。そこをリスペクト、感謝の気持ちをもちながら、次は自分たちが新しい歴史を書く番なので、それもしっかりできるように頑張ることが大事です」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「本当にタフなゲームでしたけれど、まずは勝ち切れたこと、すごくよかったですし、グラウンドに出ていた選手、そしてバックアップメンバー、メンバー外の選手、スタッフ、全員を誇りに思います」

──ダイレクトプレーも多くて、ボールチャージを狙ってくるチームだったが、そこを粘れた要因は?

「全員でハードワークできたことが良かったと思います。全員がシステムに則って、みんなでコネクトしながら、一人ではなく、みんなでディフェンスできた。それでハードキャリーを止めることができた。Xファクター(特別な能力をもつ選手)がたくさんいるチームを止められた要因だと思います」

──岩村キャプテンにとって古巣であるトヨタヴェルブリッツに勝った。一緒にプレーした選手がたくさんいると思いますが、試合前、試合中、試合後それぞれどんな感じでしたか?

「意識しないのは無理でしたけど、僕は三菱重工相模原ダイナボアーズのスクラムハーフの岩村という思いで試合に臨みました。古巣との対決でしたけど、自分の仕事をまずはしっかりまっとうすること、それだけに集中してプレーに臨みました」

──試合が終わったあとはどうでしたか?

「勝ったことに関してはすごくうれしかったですし、試合後、昔、一緒に戦ったチームメートと仲良く話せたので良かったと思います。試合中は極力話さないようにして、自分の仕事に、試合に集中するよう意識しました」

──今季、キャプテンとして、どういうところを変えようと思ってやっていますか。どういうところが昨季と一番変わったと思いますか?

「7月からディビジョン1で戦える体力、フィジカル面をつけるために、どこよりも早くプレシーズンを始め、ハードワークをしてきました。そういった環境をスタッフが作ってくれて、選手たちはそれについていく。本当にキツいプレシーズンでしたが、それを乗り越えたからこそ、こういった結果が出てきていると思います。昨季から変わったのは、そういったフィジカルとフィットネスのところだと思います」

──メンタル面で変わったところは?

「今季からメンタルコーチの方がチームに入ってくれて、どういったマインドセットでいれば良いパフォーマンスができるのか、各々が自分の仕事ができるのかをミーティングしてくださったり、個人で話してくださったりしています。そういった方のおかげで、いろいろな選手がディビジョン1という最高の舞台でも臆することなく自分のプレーに集中できているのかなと思います」


トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、福田健太ゲームキャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

「本当に残念で仕方がないです。本来ならばやるべきプレーが今日はできない、そういった試合でした。三菱重工相模原ダイナボアーズは、最後まで本当に闘志あふれる試合をしてきたと思います。ブレイクダウンのところが本当に素晴らしかったと思います。われわれも本来ならば勝負どころで勝ち切るところを失った気がしました」

──難しい展開の中で、交代選手にどういうものを求めたのか、そして実際の評価は?

「自分自身はベンチの選手のみならず、全員を信頼しています。なので、ベンチから送り出した選手たちに対しては普段どおりのプレーを期待して出しました。彼らもハードにやってくれたと思うのですが、今日は何か自分たちでつかみどころが見えなかった。そこを自分たちが学んで、次に生かしていきたいと思います」

──姫野和樹選手が開幕から2試合ともスターティングメンバー外でしたが、代表での疲労を考慮してのことでしょうか?

「それに対しては『いいえ』です。スコッド全員に信頼を置いているので、(代表活動から)帰ってきたメンバーに関しては、少しずつ慣れさせるためにベンチスタートで今回は起用しています。シーズンは長いので、バランスをもって今後も起用していきたいですが、姫野はそのうちスタメンでまた出てくる予定です」

──最初にどこの課題から着手しますか?

「ブレイクダウンにまずは着手していくつもりです。三菱重工相模原ダイナボアーズはディフェンスでジャッカルやターンオーバーをうまく取ってきました。これは本来、トヨタヴェルブリッツの強みなので再度、ビッグフォーカスしていきたいです。あとは、チームとしてこの経験、この結果をしっかりと踏まえ、立ち向かう姿勢をもう一度もっていきたいです。これを自分たちの精神を駆り立てる材料にして、練習に励んでいきたいです」

トヨタヴェルブリッツ
福田健太ゲームキャプテン

「望む結果ではなかったが、負けから学ぶこともあると思います。1週間を通してどういう準備が良かったか、しっかりと向き合って、これを良い材料にして、次に向かっていきたいと思います」

──途中まで、そんなに悪い出来ではなかったと思いますが、具体的にどういうところが想定外というか、思うようにいかないような感じがありましたか?

「僕たちの強みはボールキャリー、一人ひとりが前に出るところが大事だと思います。後半、まずシンプルにいこうと、しっかりと良いキャリーができたと思いますけど、敵陣に入ってから、ポイントを重ねられなかったところです。チャンスメークはできたのですが、今回、そこから3点でもいいし、もしくはトライを取り切る力がなかったのかなと思います。三菱重工相模原ダイナボアーズさんのほうはしっかりと敵陣に入ってきて、3点もしくは5点を重ねてきた。そこの差だと思います。取るべきところで取れなかったです」

──想定以上に相手のフォワードが絡んできたところはありましたか?

「そうですね。試合前から三菱重工相模原ダイナボアーズさんのプレッシャーは分かっていたことですし、このリーグワンで簡単な試合はないと思います。その中で、ブレイクダウンの争奪で、僕たちより三菱重工相模原ダイナボアーズさんが上回った。ボールの争奪はラグビーをやっている以上、負けてはいけないと思います。そこは今日、三菱重工相模原ダイナボアーズさんから僕たちが学ばないといけないところだと思います。ただ、全部がネガティブなわけではなくて、ポジティブなところもありました」

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