2023.02.26NTTリーグワン2022-23 D1 第9節レポート(S東京ベイ 46-27 東京BL)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第9節
2023年2月25日(土)12:00 江戸川区陸上競技場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 46-27 東芝ブレイブルーパス東京

「学校」であり「部活動」。“上下関係なき”S東京ベイは止まらない

いい意味で上下関係があまりないという、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

春の訪れを感じさせるやわらかな日差しは試合が始まるころになると厚めの雲に遮られ、午前中の陽気は影を潜めた。グラウンドを吹き抜ける強い風が、高く舞うボールの軌道を揺さぶる。好天候でも悪天候でもない微妙な空の下、「えどりく」に足を運んだ観衆は4179人。プレスルームに集まった報道陣の数にも、この一戦の関心度の高さがうかがえた。

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1屈指の超肉弾バトル、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)対東芝ブレイブルーパス東京。注目の昨季トップ4直接対決では、この両チームならではのカラッと激しいラグビーが繰り広げられた。

S東京ベイのチームとしての雰囲気を、ある選手は「まるで学校のよう」と語り、またある選手は「部活動」に例えた。それらは、入団したばかりの新人でも委縮せずに活躍できる、温かい空気感を表現した言葉である。

この日、最初のトライゲッターとなったのは今季リーグワンデビューを果たしたばかりのリカス・プレトリアス。直後には、木田晴斗からパスを受けた根塚洸雅が爽快なトライを決めた。木田と同期入団のハラトア・ヴァイレアも軽やかに走り抜き、前半29分に5点を追加。木田もこの試合では2トライを決め、今季11トライ目。チームの勝利に大きく貢献した。

また、昨年5月にアキレス腱を痛めた紙森陽太が復帰し、今季初出場にして初先発。同期の木田やハラトア・ヴァイレアらと同じピッチに立ち、味方選手の反則があったため“幻のトライ”にはなったものの、ゴールラインまで力強い疾走を見せた。

新戦力が最大限のパフォーマンスを発揮できる土壌が、S 東京ベイにはある。紙森は、立川理道やバーナード・フォーリーなど、ベテランたちのリーダーシップや頼もしいプレーが若い選手たちの精神的支柱になっていると言う。その上で、先輩選手が自ら率先して後輩選手に声をかける組織風土が、試合に好影響をもたらしていると分析する。

「S東京ベイには、いい意味で上下関係があまりないと思います。だから年上の選手ともコミュニケーションを取りやすく、自分たちも(先輩選手に)いい意味で気を遣わずに、思いきりプレーができるというのはあると思います」

かつてはリーグ下位でもがいていたS東京ベイが、時間をかけて築いてきたチーム文化。これで、えどりくでは14連勝でカンファレンスBでは唯一の無敗。機は熟した。次節、王者・埼玉パナソニックワイルドナイツが待つ熊谷スポーツ文化公園ラグビー場に乗り込む。

(藤本かずまさ)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)のフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、バーナード・フォーリー ゲームキャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「コンニチワ!先週の試合と同様、80分間をとおしていいパフォーマンスができたと思います。今回はショートウィークとなり短い準備期間ではあったのですが、しっかりとリカバリーして、選手がそれぞれの役割などクリアにできて、エキサイティングな試合ができたと思います。東芝ブレイブルーパス東京にも敬意を表したいと思います。優れたコーチ陣もいますし、いい選手もそろっており、試合では毎回激しい戦いになります。そうした中で、(今日の勝利は)しっかりとチャンスをモノにして得た結果だと思います」

──今日の木田晴斗選手のパフォーマンスはどのように映りましたか。

「彼もハードワークがしっかりとできる選手です。相手からしたら脅威になる選手だと思います。トライに関しても、自分の本来の場所の逆サイドでトライしていることも多いです。しっかりと動いている中でトライを取っています。フットワークもよく、スピードチェンジもできる選手なので、相手のディフェンスにとってはマークしにくく、脅威になっていると思います。彼はランも、パスも、キックもできる選手です」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
バーナード・フォーリー ゲームキャプテン

「コンニチワ!まずはクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の選手たちの努力を賞賛したいですし、誇りに思いたいです。東芝ブレイブルーパス東京も質の高いラグビーをしていて、そうした相手に対していいアタックができたと思います。そのようないいアタックに対し、しっかりとポイントも取れて、自分たちのタスクに集中してアタッキングラグビーができたと思います。選手たちのマインドもよかったです。いいアタックができ、そうした中でディフェンスの部分でもしっかりと(相手を)止められていたと思います」

──スタンドオフとして、木田晴斗選手と根塚洸雅選手にはどのような印象を持っていますか。

「いい印象を持っています。二人は仲がよく、友だちであり、練習が終わったあとも一緒に練習をしている仲です。斬新なトライをとっていますが、彼らは落ち着きのようなものをしっかりと持っています。しっかりと学ぶ姿勢を持っていて、成長が見える選手たちです」

──今日の試合で全体的にいいアタックができた理由はどこにあると考えますか。

「まずは基本的なことをきっちりとやることを今週は行ってきたのですが、それを試合で実践できました。また、小さなことをコツコツと続け、それを大きなことにつなげる。簡単そうに見えるトライもありますが、それはハードワークの結果だと思います。そうした細かいところで言うと、しっかりとスモールトークで話をして、フォワードのショートパスで、そこでバックスがしっかりとコネクションを取り、スペースを見つけて、ワイドになりたければワイドにするなど、そういったところもできていました。だから、理由は一つだけではなく、そうした小さいことの積み重ねだと思います。あとは、バックスがどれだけスペースを見つけられるか。スペースを見つけたときも、パスなのか、ランなのか、キックなのか。そういったところをしっかりと遂行できています。相手チームからしたらかなり武器が多いので、守りにくいチームだと思います」

──次節、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)に攻め勝つとしたら、どういったところが必要だと思いますか。

「エキサイティングなチャレンジになると思います。試合スケジュールが出たときから、埼玉WK戦のことは頭に入っていました。そこでもベーシックなこと、基礎的なことをどれだけしっかりとできるのか。ディフェンスが優れたチームなので、まずは接点で勝っていく。ゲインラインで勝てないとプレッシャーがかかるので、そこでもベーシックなことをきっちりとどれだけできるか、ハードワークがどれだけできるのか。しっかりとコミュニケーションを取っていけば、いい試合になると思います。あとは自分たちの立ち位置のようなところも試される試合になると思います」

──ラグビーワールドカップに対しては、どのようなマインドで臨んでいますか。それに向けてこのNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23ではどういった戦いをやっていきたいですか。また、日本に来てご自身のプレーでよくなった点を教えてください。

「まずは自分のベストをS東京ベイでどれだけ発揮できるか。ワールドカップにはもちろんもう一度、出場したいと思っています。それはラグビー選手にとっては大きな舞台です。ただ、まずはS東京ベイでプレーをして、しっかりとやるべきことをやる。そういったところもエディ・ジョーンズさん(オーストラリア代表ヘッドコーチ)はしっかりと見てくれていると思うので、そこで自分がどれだけ見せられるのか。そこからテストマッチのレベルにつながっていくと思います。だから、まずは自分自身がよくなれるように、基礎的なスキルからしっかりやっていき、そこをゲームまでにつなげていく。特にラグビーではテストマッチやワールドカップのレベルになると、そういったベーシックなことがどれだけできるのかという話にはなります。あとはゲームへの視野などがついてくれば、試合でも勝てるのではないかと思っています」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(左)、小川高廣 共同キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「自分たち自身で、自分たちにプレッシャーをかけてしまった感じがします。特に試合の序盤での自分たちのイグジット(自陣からの脱出)の部分です。そのあとから自分たちが追いかける立場になって、試合が進んでいきました。ラインアウトでも重要なところでボールを取り切れませんでした。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)には、『おめでとう』と伝えたいです。やはり、いいチームというものは、相手がうまくいってないところにうまくつけ込んでくるものです。それをまさにS東京ベイが実践していました。試合では、自分たちには何ができるかをしっかりと見せることができたと思います。ただ、一貫性がまだ不十分です。まだまだ改善しなければいけないところが多いです。それは細かな、小さなところです。そういったところが修正できれば、また勢いを獲得できると思っています」

──ラインアウトで意識し過ぎてしまった部分があるのでは?

「ラインアウトは、しっかりと見つめ直す必要があると感じています。いくつかの部分は修正を加えなければいけません。ここまで直近の3試合は、ラインアウトでプレッシャーを掛けられている状態が続いています。判断の部分で、自分たちで自分たちを難しくしている部分も多く見られます。ノットストレートを取られた場面も多くありました。ラインアウトで勝てなければ、試合での勝利はかなり難しくなってくると思います。また新たなスタートを切る必要があります」

──先週、今週と大量失点を許してしまったディフェンスに関して修正すべき部分は?

「ディフェンスの面から不十分だという認識です。コネクションがしっかりと保ち切れていない。相手のアタックに対して、十分なプレッシャーを掛け切れていない。コネクションをしっかりと保っていないからこそ、受け身になってしまうことが起きています。今日の試合でみなさんご覧になったと思いますが、やはりコネクションが途切れたところを抜かれてしまっています。S東京ベイはしっかりと勢いをつけて、連続でアタックしてきます。私たちが修正しなければならない点は、それなりにあると感じています」

東芝ブレイブルーパス東京
小川高廣 共同キャプテン

「最初の前半の入りの部分で、自分たちのミスから簡単に得点を取られてしまい、それから苦しくなりました。ただ、前半の最後のほうは、自分たちがボールをしっかり持ってアタックすることで相手に強いプレッシャーを掛けられるし、トライまで持っていく力があることは証明できたと思います。そこをしっかりと次の試合でも出していけるように、また1週間、準備したいと思います」

──クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)のアタックの印象は?

「最初、すごく勢いがあって、自分たちが相手の強いキャリーに対して受けてしまった。一回受けてしまうと、ずっと寄せられて、寄せられて‥‥という状況になっていたので、早い段階でそこを止めないと、S東京ベイを止めるのは難しいなと思いました」

──自分たちのアタックにはどういったところに手応えを感じ、どんなところを改善すればさらによくなると思いますか。

「自分たちの強い選手がしっかりとボールを前に運ぶところで、自分たちがやられたことと同じことが相手に対してもできるか、そういうところです」

──ラインアウトのノットストレートの判定が全般的に厳しくなっている側面もあると思いますが、ペナルティの選択で、これから先考えることは?

「勝負どころでしっかりラインアウトは取っていかないといけないと思います。ノットストレートは、今日は自分が交代してから外から見ていた感じでは、『ちょっとウチに厳しくない?』と正直思いました。でも、自分たちで修正していかなければいけないと思います」

──失点が多い試合が続いていますが、現在の問題点や改善点は?

「ここ3試合の流れとしては、自分たちのミスをそのままトライに持っていかれることがすごく多いです。まずは、しっかりとそこを変えることが一番重要だと思っています」

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