2024.01.28NTTリーグワン2023-24 D1 第6節レポート(横浜E 27-31 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第6節
2024年1月27日(土)14:10 ニッパツ三ツ沢球技場 (神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス 27-31 コベルコ神戸スティーラーズ

仲間も称賛する一人舞台。
主役は意表突く2トライを奪ったスタンドオフ

コベルコ神戸スティーラーズの逆転劇の原動力となったブリン・ガットランド選手

10,161人が詰めかけたニッパツ三ツ沢球技場での横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)対コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は、大観衆を魅了する熱戦となった。特に後半はスコアが目まぐるしく動く“シーソーゲーム”に発展。一度は逆転した神戸Sに対して、横浜Eもスコアをひっくり返したが、最終盤には神戸Sがモールからの連続トライで再逆転に成功し、31-27で接戦を制した。

たった一人でもぎ取った得点は『21』。プレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞したブリン・ガットランドは「悪い流れを断ち切る」勝利にホッと胸を撫で下ろしていた。

“ファーストインパクト”は後半9分。神戸Sが波状攻撃を仕掛ける中、味方からのパスを受けたブリン・ガットランドにはトライまでの道筋が見えていた。横浜Eの選手が次々にタックルに来る中、その間隙を縫うようにアタック。反撃の狼煙をあげるトライを決めたブリン・ガットランドは、コンバージョンゴールも成功させた。

これでスコアは7-10。その3分後にはペナルティゴールで突き放されたが、再びブリン・ガットランドが躍動した。後半17分、ブリン・ガットランドが相手のディフェンスを一気に置き去りにしたトライで逆転に成功。コンバージョンゴールも決め、14-13と試合をひっくり返す原動力となった。そんなスタンドオフが二つのトライシーンをこう振り返る。

「パス出しや正確なキックなど、ゲームを作る10番という印象を他チームには与えているかもしれません。そこで裏をかくではないですが、前の状況を判断したときに、『いけるかも』というスペースが空いたので、そのまま意表を突ければとチャレンジした結果です」

意表を突く2トライで反撃への扉をこじ開けたブリン・ガットランドは「プライドを持っている」キックでも魅せた。後半31分のゴールキックは右サイドのライン際という難しい角度。それでも、コンバージョンゴールを決めたブリン・ガットランドは「取るべき場面で取れたし、今日は良い日になった」と笑顔をこぼした。

ブリン・ガットランドは極めつけに終了間際の後半40分にペナルティゴールを決めた。共同キャプテンのブロディ・レタリックは「ブリン(・ガットランド)が2トライを取ってくれたことで自分たちに流れを引き込むことができた」と、10番の“一人舞台”に称賛を惜しまなかった。

(郡司聡)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「勝っていれば格好いいのですが…。結果にこだわらなければいけないし、先ほどロッカールームで『内容はちょっと良かった』という話をしたら、(田村)優に『もっと厳しくしてください』と言われました(笑)。それほど選手たちが今日の試合に勝ちたかったという気持ちが表れているし、選手からもそういう言葉が出ることはとてもポジティブです。けが人がどうとか、外の方々は言うかもしれませんが、自分は気にしていません。改善すべきポイントはいっぱいありますが、体現したラグビーは悪くはなかったです。最後の2トライはモールから取られる形でしたし、われわれのトライは相手を崩した形です。負けたことは悔しいですが、ネガティブになる必要はありません。逆にオールブラックス(ニュージーランド代表)が3人もいるチームに対して、今日出場した選手たちは自信を持てる内容だったと思います。優勝というわれわれのターゲットを見据えた場合、こういう試合を落としていたらいけません。レベルアップができるように良い準備をしていきたいです」

──試合内容が向上している理由は?

「うまくいかないときはありますが、これが横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)のラグビーです。代わりに出た選手たちが良い働きをしていましたし、もちろん勝たなければいけないですが、こだわっていく部分もあります。ただ、選手たちは勝つことにプライドを持ってプレーしていたので、そういった姿勢はポジティブに捉えています」

──今日のような試合を勝ち切るためには?

「カジ(梶村祐介)が言っていたように規律の部分です。あとはモールディフェンス2本で2トライを取られましたが、それ以外で相手に負けている要素はあったでしょうか。モールディフェンスをもう一度しっかりと整理しないと。規律の部分も改善が必要です」

──「クロスボーダーラグビー2024」とリーグワンの次節・東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦に向けて。

「クロスボーダーラグビーの登録人数は通常よりも多めになると聞いているので、全員を使いながら戦いますし、その試合での経験が必要な若い選手もいます。BL東京戦に向けて弾みが付くような試合をしたいです。ただ、けがが一番怖いので、そのリスクをどう考えるか。そこは難しいと思います」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「今日の試合に懸けているものが多かったので、結果としては残念なものでした。ただ、内容としては自分たちが目指すべき形である、リスクを冒してでもボールを持ってアタックをしかけ続けることを体現できましたし、ディフェンスの粘り強さに関してもかなり改善されています。結果的に負けてしまったことは誰一人満足していないです。勝つことにもっと貪欲となって、良い準備をしていきたいです」

──前半は無失点に抑えることができたのに、後半は何が変わってしまったのでしょうか。

「ブレイクダウンでの規律が少し乱れている感覚がありました。終盤もブレイクダウンのペナルティが続いたことで自陣に入られていますし、ハドルで改善していこうと伝えていましたが、浸透し切れなかったことに責任を感じています」

──クロスボーダーラグビーの開催で試合間隔は空きますが、チームとしての手ごたえはかなりつかんでいるのでしょうか。

「形としては悪くなかったです。まだまだこういう試合を勝ち切るためにはトレーニングの質が重要ですし、もう一度自分たちにベクトルを向けて、しっかりとトレーニングをしていきたいです」

──クロスボーダーラグビーとリーグワンの次節・BL東京戦に向けて。

「仮にクロスボーダーラグビーがなくても、そのタイミングで練習試合が入っていると思うので、試合があろうがなかろうが、選手のモチベーションは変わらないと思います。BL東京戦からは連戦が続くので、チームとしては良いスタートを切れるように準備していきたいです」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのマイク・ブレア アタックコーチ(右)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
マイク・ブレア アタックコーチ

「苦しみましたが、なんとか勝利を手にすることができました。自分たちにとって、思いどおりにならないことがとても多かった試合でもあります。ただ、その中でもなんとか勝つ道を見つけることができました。前半は28%ぐらいしかポゼッションできなかったと思います。セットピースで主導権を握れなかったことも苦戦の原因になりましたが、ディフェンスは素晴らしかったと思います。特にシンビンで一人少ない状況のときのディフェンスは素晴らしかったです。後半は自分たちのプレーができましたし、そのぶんトライも取ることができました。試合の中での大きなポイントは、横浜Eさんが連続で2トライを取ったあと、自分たちが追いかけなければいけない展開に陥り、そこで自分たちで反撃の道を見つけられたことが大きかったです。チームとしてのキャラクターを見せることができました。今日の選手たちは、プレッシャーがのしかかっている状態での状況判断も素晴らしかったです。後半に自分たちで反撃の道を見つけなければならないときのチームとしての振る舞いも素晴らしかったです」

──日和佐篤選手を後半のスタートから起用することは、事前に決めていたのでしょうか。

「試合前に決めていたわけではありません。後半に向けてチームとして何かを変えなければいけないと考えていましたし、そのためにも二人(日和佐、ワイサケ・ララトゥブア)を交代で起用しました。交代選手は流れを変えるという良い仕事をしてくれました」

──第6節を終えて(「クロスボーダーラグビー2024」による)中断期間に入ります。ここまでを振り返って、良かった点と改善すべき点を教えてください。

「もっと試合に勝ちたかったです。反省点としては勝つチャンスがありながらも、勝つことができなかった試合があったことです。そういった意味では成長するチャンスを逃してきたかもしれません。今日の試合はここまでのコベルコ神戸スティーラーズを表しているような試合でした。素晴らしい内容もありましたが、自分たちのミスから相手にチャンスを与えてしまっています。今日の試合ではチームのキャラクターを表現し、勝つことはできましたが、それ一辺倒では優勝は狙えないと思います。われわれとしては、数多くのエリアで成長させるべきことがあると思っています」

──マイケル・リトル選手と小瀧尚弘選手らを先発で起用するなど、メンバーを代えた理由について。

「この2週間の間にわれわれは練習試合を2試合組みました。ほかの選手たちにチャンスを与える意味でも、練習試合で良いプレーをした選手を先発で起用することは、自分たちが成長する意味でも必要なことです。マイケル・リトル選手と小瀧尚弘選手は、練習試合で良いプレーをしていたので起用しました。また、マイケル・リトル選手に関しては、後半にベンチから出場したときに素晴らしいパフォーマンスをしていたことも評価の対象になっています。さらにナニ・ラウマペ選手は後半途中から起用したほうがより良いインパクトをもたらしてくれる選手でもあります。チームには55人のメンバーがいるので、そのメンバーをいかにマネジメントしていくか。それはシーズンをとおしての課題ですし、マネジメントをしながらやり繰りすることは重要なことだと思っています。練習試合で良いプレーをすれば、先発で起用されるという循環を選手たちに示していく意味でも、メンバーを代えました。それによってチーム内での競争原理が生まれます。そういった効果を狙う意味もあります」

──自分たちのキャラクターに頼り過ぎないという話でしたが、具体的にはどうすれば良いとお考えですか。

「われわれには少しずつ成長させなければならないことがあります。チームのコーチングスタッフは新しくなっていますし、新加入選手も多いです。チームとしてどういうプレーをしたいのか。それを完全にできているかどうかで言えば、決してそうではありません。修正すべき点はあるので、それを修正できるように追い求めていきたいです。完璧を求めると時間が掛かります。ただ、いまのスピードよりは、もっと早めなければいけないと思っています」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「特に前半はマイボールの時間をほとんど作れずに、セットピースも機能しませんでした。後半は真逆の展開となり、自分たちの反撃の道を見つけつつ、モールから2トライを取ることができました。後半はマイボールの際に、バックス陣がうまくチームをコントロールし、自分たちが戦うべきエリアで戦えた中で、ブリン・ガットランド選手が2トライを取ってくれたことで自分たちに流れを引き込むことができました」

──前半と後半で真逆な展開になった要因は?

「前半にボールポゼッションをできなかったことが自分たちのラグビーをする上で難しい展開を招きました。また、前半は自分たちのチャンスで相手に簡単にボールを渡してしまうような状況もありました。ただ、後半に関してはラックのスピードやボールスピードを速めることで相手も付いてこられなかったと思います」

──4試合ぶりの勝利を飾ったことについて。

「ひさしぶりの勝利をうれしく思っています。クロスボーダーラグビーが開催される週は、自分たちは公式戦がないので、バイウィークでは休息を得て、リフレッシュをしつつ、リーグ戦の再開に向けての良い準備をしていきたいです」


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