2024.04.07NTTリーグワン2023-24 D1 第12節レポート(トヨタV 47-30 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第12節 カンファレンスB
2024年4月6日(土)14:40 岐阜メモリアルセンター長良川競技場 (岐阜県)
トヨタヴェルブリッツ vs 花園近鉄ライナーズ

苦戦の中でもつかんだ勝ち点5。
その中で光ったチャーリー・ローレンスの2トライ

日本代表に選ばれて次のラグビーワールドカップに出場するのが目標。トヨタヴェルブリッツのチャーリー・ローレンス選手

プレーオフトーナメント進出をあきらめないトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)が、苦戦を強いられながらも花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)を下し、ボーナスポイントを含めた勝ち点5を獲得。残り4試合へ希望をつないだ。

是が非でも勝ち点5が欲しいと、この試合に臨んだトヨタVであったが、2トライを先行されるなど苦戦を強いられ28対22で前半を折り返す。さらに後半の立ち上がりにはペナルティゴールで3点差に詰め寄られた。

しかしその2分後、すぐにチームを勢い付けるトライを決めたのがチャーリー・ローレンスだった。敵陣ゴール前、中央でのスクラムから出たボールを受けると力強く突進し、タックルに来た相手を引きずりながらインゴールに飛び込んだ。

さらに、貴重なトライとなったのは後半35分のプレー。チャーリー・ローレンスが相手のパスミスを見逃さずにインターセプトから一気に走り切って4トライ差に広げた。

「相手のアタッカーが(味方を)呼んでいるのが聞こえたので、これはイケると思って取りにいきました。実は足がつりそうで、『つるな、つるな』と思いながら走っていました」(チャーリー・ローレンス)

直後に花園Lに1トライを返されたトヨタV。チャーリー・ローレンスの果敢なインターセプトがなければ勝ち点「1」を失っていた可能性もある。

2月に行われた『男子15人制トレーニングスコッド福岡合宿』にも召集されたチャーリー・ローレンスの目標は、日本代表として次のラグビーワールドカップに出場することだ。派手な選手がそろうトヨタVの中では比較的地味だが、ここ一番でトライを取り切る力強さと、アグレッシブなタックルで欠かせない存在になっている。

ただ、この試合はチーム全体として反省点も多かった。「自分自身はいつも試合の入りは良かったのですが、今日はその逆で、スタートが悪くて後半良くなっていった。だから今後はしっかりとこの二つが同時に良くなるようにしていかないといけない。それができればチームは次のレベルにいけると思いますし、私は3個目のトライも取れるでしょう」と、チャーリー・ローレンスは笑顔を見せた。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(左)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ

「まず、今日の試合の本来の目的だったボーナスポイントを獲得、そして勝利をしたことにより、今後のシーズンにまだ可能性を残すことができたという点で、達成したいことを達成することができました。とはいえ、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)さんも非常に粘り強くプレーし、特に前半に関してはわれわれにプレッシャーを掛けてきました。その中で、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)としては流れを変え、そして試合を強くフィニッシュすることができたと思います。ですが、試合の内容に関してはすべて満足しているわけではありません。特にセットピースのエリアではペナルティなどもありましたので、そこに関しては修正していきたいと思います」

──髙橋汰地選手をフルバックで起用したが、評価を教えてください。

「今日に関してもフルバックとして素晴らしい仕事ぶりだったと思います。そういったポジションでプレーできるということは彼にとってもプラスだと考えていて、もちろんボールを持ってプレーするという彼の強みもありますが、加えてカバーもできるので、キックゲームというところも彼の強みになりつつあると思っています。後半のタッチキックも彼が蹴る場面がありました。今後もフルバックとウイングとして期待できる有望な選手だと思います」

──相手に先行され、巻き返した要因にフォワード陣による得点があったが、いかがでしょうか?

「試合をとおしてフォワードの強い意志が見られる試合だったと思いますが、ペナルティのところで、困難な状況だった立ち上がりが今日は印象的でした。その点に関してはレビューをしていかないといけないと思っています。また、若手の活躍も同時にあり、小池(隆成)がスタートメンバーに戻るなど、そういった点もありました。もちろん今後改善していかないといけない点はあるものの、選手層の深さ、厚みというものが見られたと思います。特に後半入ったフロントローのメンバーが試合を修正する局面が見られました」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「結果に対しては満足していますが、内容的には満足していない部分もたくさんありますし、改善の余地がたくさんあると思います。ただ、本当に花園Lさんは前半に強く、いいプレッシャーを掛けてきました。その中から自分たちのラグビーを取り戻して、得点を積み重ねることができたことはうれしく思います」

──立ち上がりに2トライ先行されたときにチーム内で共有したことはありましたか?

「厳しい言葉もみんなに言いました。花園Lさんも素晴らしかったですが、そこに関しては自分たちのマインドセットが足りていなかった。まずはそこが大事で、自分たちのマインドセットがどうだったのかということを話しました。もう一度トライを(奪われたことを)忘れて、次の仕事、自分たちのマインドセットをしっかりと持ってやることを共有しました。それがチームにうまく浸透したと思います。ただ、それは自分たちが求めるスタンダードではないので、そこに関しては厳しく来週も準備をしていきたいと思います」

──プレーオフトーナメント進出に向けて残り4試合をすべて勝つことが必要な状況について。

「僕たちはもういまにフォーカスするしかないので、プレーオフトーナメントのことばかり考えるのではなくて、自分たちがやらないといけないことを一つひとつ、毎週の1試合にすべてを出し切って勝つということを意識してやっていかないといけないと思います」

──最後3トライ差に詰められてチームメートに言った言葉はありますか?

「今日は一貫して『自分の仕事をやり続けろ』ということをチームに言っていました。なので、あの場面でも変わらずに、自分たちのスコアを見るのではなくて、いまに集中して自分が何をやらないといけないのか、次のキックオフまでの自分の仕事は(チームメートに)何なのかをもう一度考えさせることでした」

──もう1トライを決められたらボーナスポイントを失うという話はしなかったのでしょうか?

「していないです。それは僕だけが理解していればいいので。彼らに彼らの仕事を全うさせるのが僕の仕事だと考えていました」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「素晴らしいグラウンドと環境で、(自分たちの)やる事にしっかりとフォーカスして、勝ちにこだわろうとチームには言いましたが、最後はやっぱり自分たちのミスが出てしまって、トライを簡単に献上してしまいました。そこが修正できれば勝ちが近づいてくると思っています。次はショートウィークですけど、そこを修正して次の試合に向かっていきたいと思います。トヨタVさんも非常に強く、なかなか簡単に勝たせてくれないという印象でした」

──善戦したと思うが勝ち切るために必要なことは何でしょうか?

「私はラグビーの基本はセットピースだと思っています。ここ一番の敵陣に入ったときのセットピースが安定する、ディフェンスにおいても攻め込まれたときにペナルティをしない、などですね。ペナルティは接点で負けるときに起こりがちなので、そういうところを修正していきたいと思っています。基本的にセットピースの安定がなかったところは修正すべき点だと思います」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「戦術的に負けたという感覚はあまりなく、ゲームとゲームのつなぎ目のプレーですね。そのインディビジュアルのスイッチの入り具合というか、精度のところで相手を上回ることができなくて、そういうところが積み重なって、あと少しのところでトライは取れませんでした。あと一歩粘ればというディフェンスでも我慢できずに、結果として差が開いてしまったと思います。次はショートウィークになるので、しっかりと修正してより良いプレーと試合をお見せできるように修正していきたいと思っています」

──先に2トライを挙げて試合の立ち上がりは良かった。

「トライが2本と0本のときは、ラグビーの中で一番重要で、次にどうなるかで精神的に優位に立てるのか、もう一度イーブンに戻ってしまうのかというトライ差だと思います。2本対1本になるのか、3本対0本になるのか、もしくは17対0にできるのかどうかのところで、僕たちは敵陣深くに入り込んで、2本取ったところから我慢してディフェンスして3点を重ねられたら良かったですけど、そこで焦りもあってキックオフからいい脱出ができずに、自陣でペナルティをしてしまいました。どちらかというと自分たちが2本取ったために、自陣でやる時間帯が長くなったというのが修正点かなと思います」

──前回対戦よりも差を縮められたという印象はありますか?

「ラグビーは生モノ的なところがあるので、試合を比べるのは難しいですけど、点差以外の部分で言ってもできるという手ごたえは多く感じることができました。それは自分たちが用意してきたプレー、やりたかったプレーを出せた割合が、前の試合より多かったということです」

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