NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第2節(リーグ戦) カンファレンスB
2024年12月28日(土)13:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 33-32 東京サントリーサンゴリアス
殊勲のタックルを決めた中楠一期。自信となった同学年ライバルの存在
ともに開幕戦を落とし、今季初勝利を懸けて臨んだ第2節、リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)対東京サントリーサンゴリアス(東京SG)戦。後半40分経過を告げるホーンが秩父宮ラグビー場に鳴り響いた時点で、33対32とBR東京がわずかに1点をリード。プレーが切れれば勝利となるが、逆転を狙う東京SGの猛攻が続いた。
迎えた後半43分。東京SGは左サイドのライン際、この日すでにハットトリックを決めていた絶好調男・河瀬諒介にパスがとおる。逆転サヨナラトライが決まると思った瞬間、真横からのタックルでこれを阻止したのがBR東京の10番、中楠一期だった。
「10番はあまり体格が大きくない場合が多いからこそ、逆に10番がタックルできないと狙われてしまう。その点は代表でも言われた部分なので、週の中で必ずタックル練習を組み込んでいます」
殊勲のタックル以外でも、この日はトライにキックに八面六臂の活躍だった中楠。この秋、本人も「信じられなかった」と語るサプライズ選出で日本代表合宿を経験できたことで、中楠の中で意識改革が起きていた。
「代表合宿では高いスタンダードで練習できた。チームに戻ってからも、練習のコンタクトでも日常生活でもそのスタンダードを下げないように意識しています」
2000年生まれの中楠の同学年には、李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)や家村健太(静岡ブルーレヴズ)ら、若くしてリーグワン各チームで司令塔役を務める選手が多い。その中で、中楠自身は学生時代から華々しい注目を集めてきたわけではない。むしろ、世代トップランナーの評価を受けてきたのは、この日の試合で対峙した東京SGの10番、昨季リーグワン新人賞の髙本幹也だろう。
「今日の試合でも(髙本は)やっぱりうまいなと感じました。高校生から知っている仲ですし、花園でもそれ以降も10番同士、対面で試合をして負けてばかり。その強い同期に対し、チームとしてやるべきことをやって勝てたことは自信になります。今日の試合、下馬評ではサンゴリアスが強い、という印象だったと思いますが、僕らはどのチームにも勝てる力がある。とにかく毎週、いい準備をしていくだけです」
一方の東京SGにとって、開幕2連敗は20年ぶりのこと。あらためて今季のリーグワンが群雄割拠、レベルの差がなくなっていることを示す結果と言える。その均衡する戦いの中、それぞれの世代のライバル同士が切磋琢磨することで、さらにリーグワンのレベルも高まっていく…。そんなことを感じさせる一戦だった。
(オグマナオト)
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「何年ぶりか、はっきりとは分かりませんが、最後に東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんに勝ってからだいぶ時間が経っていると思います。東京SGさんは何年もこのリーグのスタンダードをしっかりと設定してきて、リードしてきたクラブです。その相手に勝てたというのは、自分たちのクラブにとって、とてもスペシャルな日になったなと思います。
試合後、ロッカールームではクラブ全員を褒めました。すごくいいトレーニングウィークが過ごせたので、その点はこれからもフォーカスし続けて、ポジティブに行こうと。先週は負けましたが、同じレベルで努力やフィジカリティーを見せてくれた。僕にとってはそこが最も重要なので本当によかったと思います。
でも、コーチとしてはあと7日で埼玉パナソニックワイルドナイツ戦を控えているので、前に進まなければいけません。そのあとも、トヨタヴェルブリッツ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイと続くので、ここからが本当の試練だと思います」
リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン
「本当にうれしい結果ですし、ここ何年か、東京SGさん相手でもそうですけど、先週の試合も含め、接戦で勝ち切れなかったところが多かったので、少しチームとして成長したのかなと感じています。
(タンバイ・マットソン)ヘッドコーチが言っていたように歴史的な勝利でうれしい気持ちもありますが、また来週もシーズンは続いていきますし、勝っても負けても次の試合が来る。次戦に向けてまたしっかり準備をしていきたいと思っています」
──まだ2試合目ですが、チームとして昨季との違いはどんな部分で感じますか?
「本当に全員がやるべきことを、1週間の準備の段階でもチームとしていい取り組みができていると思います。そこは昨季とはまったく違う部分だと思いますし、ノンメンバーを含めて本当にいいアタックや、ディフェンスをしてくれたおかげで自分たちもいい準備ができたので、それがしっかり結果につながったなと思います。
昨季は一貫性という部分がなかった。今季はまだ2試合しかやっていないのですが、先週と同じフィジカリティー、気持ち、ハードワーク、エフォート…。そういうものを毎試合見せていくのも大事だと思いますし、そこを先週から今週もできたというのは、チームとして昨季よりもレベルアップしているところではないかなと思います」
──今日の試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチにも輝いたTJ・ペレナラは一緒にプレーをしていて、チームにどんな影響を与えていると感じますか?
「リーダーシップの部分もすごく発揮してくれていますし、ラグビーの理解度がものすごく高いので9番として非常にコントロールしてくれています。あとは、彼自身本当にハードワークをしてアクションで見せてくれる選手だと思います。そういう部分はチームとして負けたくない部分でもあると思いますし、彼がやっているぶん、僕たちもやらなきゃいけないという思いもあります。そういう相乗効果はTJがチームに加わってくれて生まれているなと感じます」
──最後のワンプレー、キャプテンはもう退いていましたが、どのように見守っていましたか?
「もうとにかくメンバーを信じて。試合に出ているメンバーは役割をやり切ってくれると思っていましたし、最後まであきらめずにハードワークをしてくれました。最後にタックルを決めた(中楠)一期のところもそうですけど、あきらめない気持ちをチームから感じていたので、本当に信じて見守っていました」
東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ
「初めにリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)のファンのみなさん、選手のみなさん、ありがとうございました。本当にフィジカルな相手に対して、われわれサンゴリアスもスタートから対抗する準備はしてきましたが、前半最初の10分、後半最初の10分で相手の勢いをなかなか止められず、そこで大きなリードをされて追う立場になってしまった。そこはチームとして修正していかなければいけないと思っています」
──河瀬諒介選手が3トライを奪いました。開幕から先発を勝ち取ったことも含め、どのように評価していますか?
「彼のランとキックの能力は素晴らしいと思いますし、今日に関しては相手もハイパントキックで前進するシーンが多かった中、キャッチのスキルでもチームに貢献してくれました。バックスリーの一角を担うスキルとしては高いレベルのものを持っているので、いまはすごく調子がいいと見ています」
──開幕戦はアグレッシブ・アタッキング・ラグビーがなかなかできない場面もありました。そのことも踏まえ、今日の試合に向けて修正した部分と、その出来について教えてください。
「キックとランのバランスの部分をチームとして修正して、実際に今日いい結果になった場合もあれば、トランジションの部分でボールを取られたところもありました。引き続き、ボールを持っている、持っていないときに限らず、アグレッシブな姿を見せていきたいなと思います」
──東京SGの開幕2連敗は20年ぶり。率直にどのように受け止めていますか?
「そうですね。2連敗したことに関してはもう何も変えられないので、次勝つように、来週しっかりいい準備をしていきたいです。勝っても学ぶ、負けても学ぶ。学び続けないとダメだと思いますし、今日のいいところでも修正できるポイントは、しっかり月曜日に選手たち、コーチたちと話し合って、成長していきたいと思っています」
東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン
「本日はどうもありがとうございました。モメンタムが行ったり来たりするゲームで我慢する時間帯も多かった中で、僕たちのラグビーで最も大事なブレイクダウンのところでBR東京さんは圧力をしっかり掛けてきて、プライドを感じました。そこで受け手になったところで、モメンタムが相手に傾いた部分が多かったのかなと思います」
──精度やモールの部分で東京SGらしからぬプレーもあったように思います。相手のプレッシャーの問題だったのか、ほかに何か要因はありますか?
「後半の最初のペナルティのように、本来であればもっと自分たちでコントロールできるペナルティ(だったはずなのにペナルティしてしまった)というのは、相手に勢いを与えてしまった要因かなと思います」
──最後に追い上げる場面はドロップゴールの選択肢もあっていいかなと感じましたが、思い切って攻めていました。どんなコミュニケーションをしていましたか?
「試合前から、ドロップゴールを狙えるところは狙っていくとコミュニケーションを取っていましたが、(髙本)幹也が勇気を持ってトライを取る、攻めようと決断したので、最後に勝ち切れなかったのは残念でしたけれども、彼の決断にまったく問題はなかったと思います」