2024.12.30NTTリーグワン2024-25 D1 第2節レポート(神戸S 36-18 横浜E)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第2節(リーグ戦) カンファレンスA
2024年12月29日(日)14:30 ノエビアスタジアム神戸 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 36-18 横浜キヤノンイーグルス

神戸Sにジョージ・ターナーあり。ホスト最多観衆の前で見せ付けた実力と伸びシロ

コベルコ神戸スティーラーズのジョージ・ターナー選手(写真右)。「自分のパフォーマンス的にはもっともっとできる。もう少しボールに触れたいし、キャリーの回数を増やしたい」

コベルコ神戸スティラーズ(以下、神戸S)と横浜キヤノンイーグルスがノエビアスタジアム神戸で激突した第2節。開幕戦を落としたチーム同士、勝利が欲しい一戦は、序盤からスコアや内容で優勢に立ち続けた神戸Sが、ダブルスコアとなる36対18で制し、今季初勝利を飾った。

電光石火とはまさにこのことだ。

李承信のキックオフで相手陣地に侵入し、マイケル・リトルがジャッカルに成功する。そして、被ペナルティからラインアウトを得ると、この男に見せ場がやってきた。今季から神戸Sに加入したフッカー、ジョージ・ターナー。スコットランド代表で45キャップを数えるフッカーのスローイングからしかけたドライビングモール。その間わずか2分、最後の仕上げもターナーだった。

「最初にいいプレッシャーに行けましたし、フォワードが全体でハードワークしたからこそのモールトライ。そういう意味でうれしかったですね。ただの‟ごっつぁんトライ”です」

そう味方に感謝し、今季のホストゲームファーストトライを決めた背番号2は笑顔を見せた。タックルの強さ、スローイングのうまさ、随所に見せる質の高さはすでに不可欠の存在感を漂わせる。だが、当の本人は「上々だけど、まだまだ改善の余地あり」と自身を冷静に見つめた。

「自分のパフォーマンス的にはもっともっとできる。もう少しボールに触れたいし、キャリーの回数を増やしたい。それにスクラムがちょっとうまくいっていないけど、隣とのコミュニケーションがうまくとれればもっともっと良くなっていく」

この日集った観客は15,292人。これはリーグワンが始まって以降、神戸Sのホストゲームにおける最多来場者数となる。チームカラーの真っ赤に染まり、歓喜に沸いたスタジアム。歴戦の猛者はどう感じたか。

「最初は圧倒された。『こんなに素敵なファンの皆さんに囲まれて』ということは思っていなかった。集中力を保つことに難しさを感じたほどです。あの空気感の中でプレーできたことはとても楽しかった。忘れないようにしっかり覚えておきます(笑)」

32歳のフッカー、その本領の発揮はまだまだ序の口。それは同時にチームの伸びシロでもあるだろう。ただ、ファンがこれを覚えたことだけは確かだ。

神戸Sにジョージ・ターナーあり。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(左)、ブロディ・レタリック共同キャプテン(右)

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ

「こんにちは。結果はハッピーです。横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんも素晴らしいチームで、今日は本当にコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)のディフェンスが良かったと思います。それで前半、自分たちがチャンスを作ることができたと思いますし、仕留めないといけないところでしっかりと丁寧に仕留め切ることができたと思います。ペナルティカウントに関しては完全にわれわれがやられましたので、成長しないといけません。その部分でしっかりと自分たちが何も与えないようにできなかったことによって相手がテリトリーを取れたり、相手が試合終盤までファイトできる状況を作ってしまったりしたと思います。いい守備がたくさんできた時間が長かったですが、そこの部分を含めてまだまだ成長できる余地はたくさんあると思いました」

──ディフェンスが良かった要因はなんですか?

「正直、先週もディフェンスは悪くなかったと思います。ウェスリー・クラーク ディフェンスコーチがプレシーズンにとてもいい仕事をしてくれていました。ここ数カ月、ディフェンスのところで細かい部分もしっかりと時間を割いて落とし込んできたところではあったので、選手もその内容に対して反応してくれました。新しいディフェンススタイルを楽しんでくれているところが、自分たちがいい形で進んでいることなのかなと思います。本当にディフェンスはいい時間が多かったと思います、ただ、スクラムなどでペナルティを与えてしまって、アドバンテージを長い時間(与えてしまうシーン)というのも多かったです。そのため不必要にディフェンスをし続ける必要があったと思います。横浜Eさんという本当に素晴らしいアタックをもっているチームに対して、ディフェンスし続けないといけない状況になったところはマイナス要素だと思います。ただ、しっかりといいディフェンスをできたというところは自分たちにとって本当にポジティブでした」

──前半は特に両フランカーの自陣でのボール奪取からトライにつながっていました。二人のプレーがチームとして取り組んできたことを表現していたのでしょうか?

「自分たちのディフェンスで一番大事なところは、最終的にトライを取れるかにつながってきます。自分たちとしては、しっかりと仲間のために動き続けて、ターンオーバーをして相手のボールを奪い返して、取り返した際にオーガナイズできていない状況の相手のディフェンスに対して自分たちがどれだけアタックを継続していけるかだと思っています。もちろんディフェンスの部分に時間を割いてきていますけど、そのディフェンスでボールを奪い返したあとのターンオーバーアタックのところにも時間を割いています。そこからの素晴らしいトライを今日は取れたので良かったと思います。

最後に、ノエビアスタジアム神戸でプレーできることは本当に素晴らしいと伝えさせてください。やっぱり、ファンの方々との距離がすごく近いので、このスタジアムでプレーできることをチームとしても光栄に思っています。もっともっとこのノエビアスタジアムで試合したいです。もしくは、ノエビアスタジアムのようなファンの方々が近くに感じられるようなスタジアムを作ってくれたらなと思います(笑)」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック 共同キャプテン

「こんにちは。デイブ(・レニー ディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ)と同じように先週の試合からスキルの部分での成長を今日の試合では見られたと思います。フォワードがしっかりとキャリーし、接点の仕事をして、バックスがしっかりと運んでいって仕留め切ることが見られるのはラグビーの醍醐味かなと思います。規律の部分に関してはまだまだ成長できる要素があると思いますけど、それを置いておいたとしても、ディフェンスの部分でしっかりチームメートのために激しいタックルをして起き上がり、そこの繰り返しを見られることも今日は良かったと思います。自分たちが本当によくできたなと思うところもあれば、まだまだ成長できる余地があるということは自分たちにとって本当にエキサイティングなことだと思いますし、しっかりとシーズンをとおして成長して、さらにいい形になっていきたいと思います」

──前半の終盤、相手にトライを奪われたあと、田村優選手がコンバージョンキックをする場面で、全員でプレッシャーを掛けに行きました。あの場面でどういう声掛けをしていましたか?

「どんな状況であれ、今日はチームとして相手にプレッシャーを掛け続けようとした表れだったと思います。なぜ、2回目のキックに行ったのか、自分はルールをちゃんと把握できていないところはありましたけど、自分たちのディフェンスと同じでそういうプレッシャーを掛けたい、何かをしたいという気持ちが行動に表れていることが一番良かったと思います」

──ホストゲーム開幕戦に多くのファンが駆け付けてくれましたが、その光景をどう感じましたか?

「ホストでプレーできることは本当に自分たちにとってうれしいことですし、ホストのファンの方々の前でプレーできるのは光栄なことです。先週も静岡での試合でしたが、ウォーミングアップをしているときも神戸Sを応援する声がすごく聞こえていました。以前、記者会見でも伝えた内容にはなりますが、今シーズンは阪神・淡路大震災から30年で、失った方々がいる中で、自分たちはそういう方々を忘れずに、そういう方々のためにプレーしていくという気持ちをもって戦わないといけない特別な年だとチームで理解しています。試合に向けた1週間の自分たちの準備、ハードワークの部分や、どれだけ自分たちがそういう人たちのことを思って取り組んでいるのかは、ファンの方々には見えにくい部分だと思いますが、試合の中で自分たちが動き続けるシーンや結果を見てもらえたら伝わるものもあるのではないかと思っています。

試合が終わったあとのグリーティングをしているときに、ファンの方々がこうやって自分たちのほうを見て笑顔になってくれていたり、神戸のフラッグを振ってくれていたりするのを見て、選手もさらに笑顔になる。それが、自分たちが頑張っている一番の理由かなと思うので、それを今日見ることができて良かったです」

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「皆さんお疲れさまでした。前半の入りでああいうふうなクオリティの低いスタートを切ると、どうしてもゲームプランはグチャグチャになっていくもので、ここ2試合は自分たちから崩れているところがいまのチームの状況ですけども、ここで下を向いてもしょうがないし、しっかりと次に向けていい準備をして、また謙虚にと言えばおかしいですが、一つずつしっかり改善していけるように準備していきたいと思います」

──横浜Eらしいスピードやワークレートをうまく出せていなかった印象です。神戸Sのディフェンスが良かったのもあると思うが、足があまり動いていないようなシチュエーションがすごく多く感じました。何が原因でしょうか?

「あの点差をつけられると、ゲームプランをどうしても切り替えないといけなくなり、無駄に自分たちが攻めたくないエリアでも攻め込むような展開になるので、それで疲弊しているのもあると思います。なので、小さい目の前の仕事をしっかりとやり切ることが必要です。あとは、あの点差でみんなが焦ってしまっていました。自分たちが目指している位置に行くためには、そういうところをコントロールしないといけないと思います」

──まだ第2節だが、中位のクラブが力をつけてきている状況があります。どのように見えているのか、また勝ち切るために必要なことを教えてください。

「今季だけでなくて昨季くらいから、簡単に勝てる試合はほぼなくなっています。毎試合毎試合、危機感をもちながら、本当に自分たちがいいラグビーをしないと勝てないというリーグになってきていると思うので、もちろん、スキルもしかり、メンタルのところをしっかりとコントロールできるマインドだったり、自分のいいパフォーマンスを出すためのマインドだったり、そういうところをコントロールしないと、差が点数に表れると思います。拮抗したレベルになってきているので、1試合1試合危機感をもってやっていかないといけないと思います」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「今日の試合は前半がすべてかなと思います。(沢木敬介)監督がおっしゃったように前半、相手にあんなに簡単に流れを渡してしまうと今日のようなゲームになってしまうとあらためて感じました。ここ2試合、やっぱり難しいゲームが続いていて、チームの弱さというのが顕著に出ているので、もう一度自分たちに矢印を向けて、しっかりと準備の段階からクオリティーにこだわっていきたいと思います」

──神戸Sに攻撃で差し込まれた印象です。接点回りを含めてどう感じていましたか?

「まず自分たちのクオリティーが低くて相手に差し込まれてしまいました。ボールを動かす中での疲労度は正直、あまり感じていなかったんですが、自分たちが勢いを各ラックで生み出せませんでした。アタックのバランスも崩れ始めて、今日の展開になってしまったので、本当にゲームの入りのラインアウトからのファーストプレーしかり、スクラムからのプレーしかり、一つ目のプレーの精度が今日は良くなかったかなと思います」

──その要因はなんですか?
「さっき選手には言ったんですが、1週間の準備を振り返ったときに、トレーニングの質も今週はあまり良くなかったし、実際、練習で起こっている現象が試合で起こっている現状なので、トレーニングの質のところをもう一度、自分たちはこだわらないといけないと感じました」

──前節敗れた中で、どういうところを生かせたのか、むしろ、生かせなかったのか、教えてください。
「先週の試合の課題として、相手のプレッシャーではなくて、自分たちからコントロールを失ってしまうところが課題でした。練習の中で自分たちがパニックにならずにしっかりコントロールしてやっていこうとしていたんですが、正直、今日に関しては反映されていませんでした。プランの問題ではなくて、選手たちがゲームのスタートにうまく入っていけていなくて今日の展開になっているので、問題は自分たちにあるのかなと思います」

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