NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第3節(リーグ戦) カンファレンスB
2025年1月5日(日)12:00 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート 27-32 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
帰ってきたスーパースターが見せた歓喜の『Hサイン』。敗れても三重Hは希望をつかんだ
「レメキ、サイコー!」
前半38分、インゴールのスミに飛び込む背番号15。トライの宣告に沸き立つ三重交通G スポーツの杜 鈴鹿。歓喜に包まれる中、レメキ ロマノ ラヴァはファンに向けて『Hサイン』を見せる。スタンドからは彼を称賛する声が飛んだ。
「とても気持ちよかったです。もちろん『サイコー』も聞こえていました。そのような声援は本当に力になります」とレメキは振り返る。
1月5日に行われたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)戦。惜しくも27対32で敗れた三重ホンダヒート(以下、三重H)だったが、この試合で今季初出場となったレメキは二つのトライを決め、圧巻のパフォーマンスを披露した。
「僕が前回、三重Hにいたとき、『Hサイン』はまだなかったんです。だからファンの前でこれを披露できて、本当にうれしかったですね。しかも、それを2回もできたんです。スタンドには家族も来ていましたしね」
『Hサイン』は三重Hの応援に使われるジェスチャーで、両手でアルファベットの『H』を作るもの。2021年に考案されたため、4季ぶりに復帰したレメキにとっては初めての経験だった。
日本代表でも活躍した35歳のレメキは、ファンからの大きな期待を背負って迎え入れられた。しかし、開幕直前に負ったけがにより最初の2試合を欠場。「とにかく試合に出たい気持ちが強かったです。先週もプレーできるかどうか半々の状態でしたが、またけがをしてしまったら意味がない。だから我慢して、仲間のサポートや試合の分析に専念していました」と、苦しい時期を振り返る。
外からチームを見て感じたことについて、レメキは次のように語る。
「フォワードが守備やスクラムで頑張ってくれています。タックルして立ち上がって。それを繰り返していて、本当に粘り強いです。あとは僕たちバックスが自分の仕事をすれば、得点を取れる自信があります」
実際、三重Hはリーグ戦3試合で失点を70(リーグ5番目の少なさ)に抑えている。レメキはフォワードの働きを称えるとともに、自分を含めたバックス陣の奮起が今後のカギを握ると考えている。
そして、レメキの活躍は二つのトライにとどまらず、後半8分には力強いキャリーからチャンスを創出。その流れで得点を決めたのは、三重Hで11年目を迎える小林亮太だった。
「4年ぶりにマノ(レメキの愛称)と一緒にプレーしましたが、やっぱり彼はスーパースターだなと思いました。ここ鈴鹿での試合では特に強い。彼が勢いをもたらしてくれました」
そして、小林はこう続けた。
「守備も攻撃も、メンバーに入っていない選手も、全員がハードワークしています。それを毎週続けて、三重Hの勝ち方、われわれのラグビーをシーズンとおして貫きたいです」
スーパースターの帰還とハードワークの積み重ね。敗北を経験してもなお希望を高めた三重Hは、勢いを止めることなく突き進む。
(龍信明)
三重ホンダヒート
三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ
「正直に言えば、いまは二つの気持ちが混ざり合っています。勝てなかったことに関しては非常に残念に思いますが、選手たちの努力のおかげでパフォーマンスは良かったと感じています。負けはしましたが、ボーナスポイントを獲得できた点は良かったです。前半は特にチャンスが多かったのに、それを生かし切れませんでした。そのため、相手にプレッシャーを掛けることができず、得点につながりませんでした。後半もイグジット(自陣からの脱出)の部分でうまく対応できなかったところがありました。そして、キック、チェイス、タックルの場面でアンラッキーにもすり抜けられ、失点につながったこともありました。しかし、私の見方では、チーム力にそこまで大きな差はなかったと思います」
──開幕3試合を終えて、ここまでの手ごたえは。
「今季については、最後まで戦い抜く力がしっかり身に付いてきていると感じています。直近の2試合では、残り10分で逆転して勝利を収めました。今日の試合でも、2年前に優勝したクボタスピアーズ船橋・東京ベイさんのようなチームに食らい付いていけたことは、非常にポジティブな要素だと考えています。ディフェンスも良くなっており、それをもとにゲームを組み立てやすくなっています。ただ、守備が向上しているという手ごたえは感じつつも、逆に言えば『もっとできる』とも思っています。これからも特にディフェンスをさらに磨いていけば、もっと良いラグビーができると思っています」
──けがから復帰して先発したレメキ ロマノ ラヴァ選手に期待したことと、彼のパフォーマンスの評価は。
「今日のパフォーマンスは非常に良かったと感じています。もちろん大きな期待が懸かっている選手ですが、ほとんどの場面で正しい選択や決断を下していました。今後、ビデオを見てさらに細かい部分を分析する予定ですが、彼はとてもユーティリティー性が高く、多様な使い方ができる選手だと思っています。彼は与えられた役割をしっかりと果たしてくれました」
三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ ゲームキャプテン
「自分も(ヘッドコーチと)同じようなコメントになると思います。この試合に関しては、『もっと良くできたかもしれない』とも思いますが、逆に言えば、『もっと悪い結果にもなり得た』とも考えています。もし、最後の(バーナード)フォーリー選手のペナルティゴールが決まっていたら、ボーナスポイントすら取れずに0ポイントで終わる可能性もありました。その点では、最終的に1ポイントを獲得できたことは良かったと思います。それができたのも、最後まで戦い続けたからこそ、です。最終的に細かいポイントが(順位を左右する)生命線になることもあるので、この1ポイントは自分たちにとって大きな意味を持ちます」
──3試合を終えて、ここまでの手ごたえと課題は。
「練習の段階から意図したことをしっかりとトレーニングして、自分たちが計画したものを週末の試合で出せていると思っています。そして、われわれは毎週良くなっていると感じています。これからの課題としては、正しい方向に進んでいることは分かっているので、それを日々継続し、着実により良いチームにしていくことが大事だと思っています」
──復帰したレメキ選手がチームにもたらしたものは何でしょうか?
「マノ(レメキ)の能力が非常に高いことは誰もが知っていると思いますが、リーダーシップにおいても大きな助けになっていますし、非常に頼りにされている存在です。また、ほかの選手からもリスペクトされています。今日の試合では、レメキが自分を後ろからサポートしてくれたり、チームに勢いをもたらしてくれたりするのを感じました。彼がチームに戻ってきたことで、そうした点で非常に助けられています」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「皆さん、こんにちは。現在のリーグワンで本当に素晴らしい点は、新しい大会の形が示されていることです。どのチームも勝ちたいと思っており、良い選手がいて、良いコーチがいます。私たちの選手たちも、与えられたタスクをしっかりこなし、やるべきことを細部にわたって実行してくれました。そのおかげで、特に後半のラスト20分でプレッシャーを掛け続けることができました。リーダーたちの判断も非常に良かったと思います。そして、三重ホンダヒート(以下、三重H)さんのプレーも称賛したいです。彼らも昨季と比べて非常に良いラグビーをしており、ヘッドコーチも私の友人です。試合全体をとおして戦わなければならないと予想していましたし、80分間を通じてファイトし続けて勝利を収めることができました」
──どちらも後半に強いチームという印象ですが、今日のメンバーを見てファンからは「今日のクボタスピアーズ船橋・東京ベイは前半からしかけるかも」という声もありました。試合運びについてはどのようなプランがありましたか?
「まず、ファンの方々には感謝を伝えたいです。寒い中、遠くから来てくださった方々もいたと思います。スタジアムに足を運んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。三重Hさんは後半もじわじわとしかけてくるチームであることは分かっていました。そのため、ボールを持っていないときの仕事率や動きについてはずっと言い続けていました。また、チャンスをどれだけ得点に結びつけるかも重要なポイントでした。過去2試合で三重Hさんに負けたチームは、そこをうまくできていなかったのです。私たちが最後に得点を決めたシーンは、ハードワークの賜物であり、プレッシャーを掛け続けた結果だと思います」
──この3試合でレギュラーとサブを入れ替えながらいろいろな選手を使った意図とその評価は?
「マルコム・マークス選手に関しては、開幕の1週間前くらいにチームに合流したので、チームでの役割も考えてベンチスタートにしていました。また、オペティ・ヘル選手とのコンビでインパクトをもたらしたいと考えていました。それは開幕戦、2戦目と途中出場でうまくいきました。ただ、この試合では、スタートからパワープレーを重視したいと考え、プレー時間を長くするために先発させました。一方で、途中出場した江良(颯)選手、為房(慶次朗)選手についても信頼していますし、彼らもインパクトをしっかり残してくれました。オペティ選手とマルコム選手のけがは残念ですが、試合における選手のやりくりに関してはうまくいったと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン
「非常にタフな試合になることは分かっていました。三重Hさんは過去の2試合を勝っていて、絶対にプレッシャーを掛けてくると思っていました。自分たちの1週間の準備がとても良かったと思います。今日の試合を振り返ってみると、たくさん良い場面がありましたが、逆にプレッシャーを掛けられた場面もありました。そこはしっかり学んで次に生かしたいです。今日は勝ち切れたことが本当に良かったです」
──今日はかなり風が強い環境でしたが、どのようなことを感じながらプレーしましたか?
「特に何か特別なことを試みたわけではありませんでした。自分たちのプランどおりに、ラグビーのシステムをしっかり信頼してやり遂げれば、結果はついてくると思っていました。今日はそれが勝ちにつながったので、ポジティブな点として次に生かせる部分です」
──この試合でトップリーグ、リーグワン通算50キャップに到達しましたが、キャプテンとして迎えたマイルストーン(区切り)についての感想をお願いします。
「50キャップの節目の試合で勝つことができ、とてもうれしく思います。いつもこのジャージーを着ることに誇りを感じています。これからもチャンスがあればどんどん試合に出場していきたいです」