2025.01.13NTTリーグワン2024-25 D1 第4節レポート(相模原DB 34–26 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第4節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年1月12日(日)14:30 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 34–26 コベルコ神戸スティーラーズ

史上初の神戸S戦勝利をもたらした、渇望するフルバックの正確無比なキック

成功率の高いゴールキックでチームの勝利に貢献、三菱重工相模原ダイナボアーズの石田一貴選手。昨年夏には日本代表にも招集された

三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)がコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)から公式戦初勝利をつかんだ。

立ち上がりは神戸Sが攻勢に出る。力強いボールキャリーで敵陣深くまで侵入していった。しかし、前半4分の場面では相模原DBがボール奪取に成功。そこからカートリー・アレンゼが約80mを独走して、先制トライを決めた。さらに同9分には再びアレンゼがサイドライン際を突破して連続トライ。守備ではジャッカル(スティール)を成功させるなど世界的名手の活躍で終始リードを守った相模原DBが、終盤の神戸Sの猛攻をしのぎ切った。

トライの数は互いに4つずつ。そのゲームで差を付けたのは石田一貴のキックだった。この日は7本蹴って6本を成功。特筆すべきは前半最後のプレーだ。相模原DBはハーフウェイライン付近でペナルティを獲得する。ゴールまでの距離は約50m。石田は「ラストワンプレーのあの時間、自分の射程圏内でしたので蹴ることしか考えていなかったです」。

そろえたモモに前かがみで両手を添えるルーティンの姿勢から、蹴ったボールは真っすぐ飛び、ポストの間を抜けていった。

石田は前節に続いてフルバックで先発出場した。開幕からの2試合では、そのポジションをアレンゼが務めていたが、ベン・ポルトリッジの負傷でアレンゼがウイングに入ったことで先発の出番が回ってきた。

「このような形でアレンゼがウイングになることがあると思っていたので、(フルバックで出場する)準備はしていました」

昨季は、先発とリザーブを合わせて9試合に出場。限られた出場時間の中でも、精度の高いキックなどで存在感を示し、6月には相模原DBの選手として初めて日本代表に選出された。

「代表合宿に参加してから、質の高いところでの一貫性をターゲットにして取り組んできました。そこに徐々に近づいていると思います」

ただ、まだ日本代表での出場はない。

「コミットできなければ、日本代表への道も遠のいてしまいます。出られるチャンスをつかむということを意識しています」

常に準備を欠かさず、出番が訪れれば結果で応える。石田の渇望が勝利の原動力となっている。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「われわれは良いスタートを切れましたが、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は良いフィニッシュをしたと思います。自分たちが良いスタートを切ることができたからこそ、最後に勝つことができたと思います。良いところもいっぱいありましたが、課題ももちろんありました。今日は勝利だけではなくて、細田隼都選手が50キャップだったので、素晴らしいプレーをしてくれて、そのために勝てたことはうれしく思います」

──神戸Sに公式戦で初勝利したことについて。

「まずはうれしく思います。われわれはこういう結果、初勝利を更新できるように頑張っているところですし、われわれの一番の願いは、リーグでリスペクトされるチーム(になることです)。どこが相手でも戦えるチームというところで、今日もわれわれの良いところを見せることができたと思います。相手も素晴らしいチームで、素晴らしいコーチングスタッフ、素晴らしい選手がいて、その相手にいい勝負ができました。僕たちがこのリーグで戦えるところを見せることが今日はできたかなと思います。コーチたちが努力しているのも、良いモノを選手たちが味わえるように、そしてもちろん、良いところも悪いところもありますが、今日は良いところを味わうことができてうれしかったです」

――開始早々に2連続トライでいい流れを生んだカートリー・アレンゼ選手の評価を教えてください。

「彼がいたから良いスタートを切れたと思いますが、われわれはハードワークをするチームで、ほかの選手もすごく頑張っていて、例えばジャクソン・ヘモポも頑張ってくれました。彼(アレンゼ)のような選手がいると、しっかり(トライを)取り切れるところがすごく大事だと思います。彼が日本でラグビーをしていることは、日本のラグビーにとって素晴らしいことだと思います。毎週言っていますが、みなさんが見ているところは彼のフィールドでの貢献で、われわれは若い選手との努力、毎日の練習場でいろいろとサポートしてくれている姿を見ているので、いろいろな意味でチームのために頑張ってくれています」

──前節に続いて今節も石田一貴選手がフルバックで、アレンゼ選手がウイングでした。アレンゼ選手がウイングになったのは、ベン・ポルトリッジ選手のけがによるものと聞いていました。結果的にこういう組み合わせになって、いいゲームができていると思いますが、ポルトリッジ選手が戻ったらまたアレンゼ選手がフルバックに戻るのか、組み合わせはどう考えていますか。

「二人とも良いプレーをしています。石田選手は今日、大事なキックを決めてくれましたし、自分でしっかり手を挙げて、コーチに“俺を選ばないといけない”というようなパフォーマンスを出していると思います。選手層が厚いので、コーチとしてはいい状況です。来週も何人か戻ってくれるかもしれないので、そうなったらコーチの目線からすると、すごく良いことです」

──昨季の神戸Sとの対戦と比べて、ブレイクダウンで優位に立ってターンオーバーも多かったと思うのですが、その中で今季初出場・初先発となった鶴谷昌隆選手がかなりいい動きをしたと思います。彼に対する評価をお願いします。

「私が日本に来てから、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)はブレイクダウンの上手な選手がそろっているチームだと思っていました。鶴谷選手もそうですし、佐藤弘樹選手も坂本侑翼選手も、ティモテ・タヴァレア選手も上手です。あと一つ大きかったのが、鶴谷選手のバイスキャプテンとしての役割で、キャプテンをサポートする選手がいると、すごくチームがうまくいくと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「細田選手の50キャップ達成の試合をホストエリアの相模原で勝利を収めることができてすごくうれしく思います。試合内容に関しては、前半、すごく良い入りができて、われわれのラグビーを存分に発揮できたところはあったと思うのですが、後半、ディシプリンの問題でペナルティが重なって、自分たちで自分たちの首を絞めてしまった時間帯がありました。そこは課題だと思うので、しっかり映像を見て、どういったペナルティがあったのか、どういうところを改善しなければいけないのかを明確にして、次に挑みたいと思います」

──神戸Sに公式戦で初勝利したことについて。

「ダイナボアーズの歴史の中での初勝利ということで、少しずつレベルアップしているダイナボアーズを見せることができました。元々2部から上がってきたチームで、こういった勝利は『ジャイアントキリング』と言われることがよくあったのですが、われわれはもうそういう立ち位置ではなくて、どんどん上位チームを食えるような立ち位置にいると思います。そういったチームということを証明できたことはすごくうれしいです。ただ、それができたのは、一人ひとりが自分の仕事、目の前のことを集中してやった結果です。チームとして勝ち取った勝利だと思います」

──今季初出場・初先発となった鶴谷昌隆バイスキャプテンの役割について教えてください。

「素晴らしかったですね。マサ(鶴谷)はどんなときでも自分の仕事に集中して、いかんなくパフォーマンスを出してくれて、すごく心強いです。今日は前半もエナジーをチームに与えてくれたので、すごく頼もしかったです」

──スタンドオフで先発したジャック・ストラトンとの連係についてはどう感じていますか。

「9番、10番というよりは、チームとしてクリアなコミュニケーションがあったからこそ、チームとして良い流れを作ることができましたし、そういったところが今日の良かった要因かなと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、李 承信 共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「また残念な結果になってしまいました。チャンスはたくさん作れましたが、自分たちのミスで自滅してしまい、自分たちのミスに対して相模原DBさんから罰を与えられる形になりました。それは何度もこの試合で起きてしまったと思います。試合終盤になって、点差が離されている状態になって、必死になって追い掛ける形になり、そこでしっかりとトライを取ることもできましたが、そこまで離れた状況から追い付くのはなかなか難しかったです。自分たちのチームとして、もっと良くならなければいけないです」

──先週と同じような試合になった原因はどこにあると思いますか。

「素晴らしいコーチンググループが自分たちのチームにいると思います。コーチングされている内容をフィールド上で体現しなければいけません。前半にもたくさんのチャンスがありましたが、その中での状況判断のクオリティーがあまりにも低かったです。相模原DBさんは、試合の序盤から飛ばすことの多いチームだと思います。自分たちがしっかりとした正しいプレーを試合の中で取り戻すまでに、7対34まで突き放されてしまったら、なかなか難しいです。本来あるべきチームの姿ではないと思います。もっと良いチームだからこそ、本当に残念な気持ちです。

このリーグの中で、簡単にソフトなトライを与え過ぎるのはいけないことですし、自分たちがチャンスを作っても、そのチャンスを取り切れない状況が続くと、このチームとしてはなかなか勝つことが難しくなると思います。ファン、スポンサーの方々、会社に本来自分たちが見せるべきパフォーマンスを見せられていないことを本当に申し訳なく思います。もっと自分たちは正しいパフォーマンスを出さなければいけないと思います。自分たち自身に責任をもたなければいけないと思いますし、メンバー選考のところの責任も伴ってくると思います。来週、けがから復帰する選手も多いので、そこの部分は自分たちにとって助けになると思います。ただ、自分たち自身がひたむきに成長しなければいけない、もっと良くならなければいけないと思います。

もう一つ付け加えたいことがあります。今日、良いパフォーマンスをした選手はたくさんいます。ただ、あまりにもミスが多かった。あまりにもミスを多く犯してしまうと、自分たちが痛む側になってしまいます。チームとしてハードワークはし続けます。まだまだ自分たちはこの状況を変えることができると思っています。ただ、常に試合の終盤になって、“なんとか勝てたら”と思って追い掛けるような、自分たちでコントロールできない状況を作ってしまうのは良くないと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
李承信 共同キャプテン

「ヘッドコーチが言ったとおり、残念な結果です。自分たちでチャンスは作れているのですが、スペースに対してのコミュニケーションであったり、一人ひとりがもっとしゃべることであったり、チームとして優位に立てなかったことが一番の反省です。試合序盤から相手に簡単に3トライを与えてしまって、そこから立て直すのは、どんなチームにとっても難しい状況です。キックオフから自分たちにスイッチを入れて、相手をドミネートしていこうと話していたのですが、先週と似たような結果になってしまいました。同じ結果、同じような試合を繰り返していては、チームとして成長できないと思うので、しっかり見つめ直して、自分たちがどうあるべきか、どういうラグビーをすべきかというところを、一人ひとり自覚と責任をもって次戦に挑みたいと思います」

──1勝3敗と負けが先行する中で、次の試合に向けてどんなところが大事になりますか。

「ヘッドコーチが言ったように、チャンスを仕留め切れるかどうかというところと、アタックでもディフェンスでも、我慢強く耐えて、相手陣に入ったら、しっかり自分たちでボールをキープしてスコアを取り切るところです。ディフェンスでも、今日はペナルティが多かったですし、規律のところで、どれだけ我慢して、相手との腕相撲に勝てるかが本当に大事だと思います。ヘッドコーチが言ったように、クリアなプランがありますし、勝てるプランを自分たちは持っているので、それを選手たち自身が100%信じ切って遂行する責任があるので、そこだけかなと思います。自分たちがやるべきラグビーを全員で理解して、そのために一人ひとりの役割を遂行するだけだと思います」

──阪神・淡路大震災30年目として1月19日に行われる浦安D-Rocksとのメモリアルゲームに向けた意気込みを聞かせてください。

「チームとしても特別なモチベーションがあると思います。個人としても神戸出身で、幸いにホストのノエビアスタジアム神戸でできるので、自分たちのラグビーで元気を与えたいですし、今日の結果をしっかり受け止めて、来週、今までの敗戦をしっかり受け止めて自分たちがラグビーをする姿で、応援してくれる神戸の方々に恩返しできたらと思います」

――ミスが多かったのは相模原DBのディフェンスのプレッシャーが強かったからですか。

「プレーしていて、そこまで相手のプレッシャーは感じなかったです。自分も10番をしていて、空いているスペースは見えていましたが、フォワードへのショートパスだったり、エッジのスペースに対してだったり、自分たちが相手に対してのプレーができていなかったので、そこでフェーズを重ねて自分たちで苦しい状況にもっていってしまいました。正しく判断してプレーしていけば、もっとスコアを重ねることができたと思います。別にそこまで相手もラインスピードを上げてきていたわけでもなかったので、試合の最初からそこで勇気をもってプレーできるかだと思います」

──兄弟対決となりましたが、試合後、兄の李承爀選手とはどのような会話を交わしましたか。

「今日、個人としては(公式戦)50キャップの試合でしたので、感謝の気持ちをもって挑もうという気持ちが一番強かったです。自分をここまで育ててくれたチームでもありますし、自分に関わってくれたすべての人に感謝したいですし、それをグラウンドで表現しようと思っていたのですが、残念な結果になってしまって、悔しい気持ちでいっぱいです。そういう特別な試合を、兄とプレーできたのはうれしいですし、何より父親や長男に向けて、そういう特別な試合をできたというのは、家族にも良い思い出になったと思います」


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