2025.01.20NTTリーグワン2024-25 D1 第5節レポート(トヨタV 22-38 埼玉WK)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第5節(リーグ戦) カンファレンスB
2025年1月19日(日)14:30 ミクニワールドスタジアム北九州 (福岡県)
トヨタヴェルブリッツ 22-38 埼玉パナソニックワイルドナイツ

不甲斐ない自分への思いを爆発させたルーキー。インパクトを残した“第一歩”

姫野和樹キャプテンに代わって8番で出場したトヨタヴェルブリッツの奥井章仁選手

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25 ディビジョン1の試合が北九州で初めて行われた。満員御礼となる13,251人を集めた試合は、序盤に3トライを挙げた埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が、粘るトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)を振り切って勝利。開幕5連勝を達成した。

この試合でトップリーグ時代を含む公式戦通算100キャップを獲得した埼玉WKの坂手淳史キャプテンは「スタジアムの雰囲気がすごく良かった。九州のラグビー文化を肌で感じることができた」と、九州のファンの熱量を絶賛。同じく第2節で100キャップを達成したトヨタVのベテラン、彦坂圭克も「またここでプレーをしたい」と述べた。ミクニワールドスタジアム北九州でのD1初開催は、ファンにとっても選手にとっても大成功に終わったようだ。

その中で、この日このスタジアムで第一歩を刻んだ選手がいた。トヨタVのルーキー、奥井章仁。負傷で欠場した姫野和樹に代わって背番号8を着けて先発のピッチに立ち、リーグワンでのファーストキャップを手にした。

「これまで試合に出られなくてすごく悔しい思いをしていたので、その思いを出し切ろうと思った」と奥井。帝京大学で3連覇を成し遂げて鳴り物入りでトヨタVに加入をしたものの、同期の三木皓正に初キャップで先を越されていた。不甲斐ない自分への思いを爆発させた奥井は、2本のスティール(ジャッカル)を成功させるなどインパクトを残した。

試合に勝つことはできなかったが、奥井はファーストキャップの対戦相手が埼玉WKで良かったと振り返る。

「コンタクトが強かったし、どこにスペースがあって、攻めるべき場所も全員が分かっていて、全員が一緒に動いている。自分たちのミスを逃さない反応の速さは想像以上でした。言い方を変えると帝京大学に似ている感じで、相手からするとこんなにイヤだったんだなって」

トヨタVの次代を担うリーダーとしても期待されている奥井。首位をひた走る強豪から学びを得て、北九州の地でプロとしての第一歩を踏み出した。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(左)、彦坂圭克ゲームキャプテン

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「最初の20数分間でトライを取られる場面があり、21点を先行されてしまいました。トップチームと対戦する上で、そういった試合運びになると、非常に苦戦を強いられる状況になってしまいます。チームとしては役割を意識し、何とか持ちこたえた部分もありますが、改善が必要だと感じています。最初の時間を除けば非常に良い試合ができていたと思いますが、また豊田に戻って成長、改善を続けていきたいと思います」

──奥井章仁選手がファーストキャップでしたが、彼の評価を教えて下さい。

「彼は非常に良いプレーを見せてくれたと思います。リーグワンでデビューするまでの長い間、準備をしてきた選手であり、チームの中でのリーダーの一人であります。非常に賢く献身的なラグビー選手であり、まだ伸びシロもあり非常に良い選手だと思っています。今日の試合に関しては非常にうれしく思っています」

──立ち上がりがうまくいかなかった要因をどう捉えていますか。

「埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が5トライ、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)が4トライという結果になりました。とはいえゲームのカギとなったのは最初の20数分だと思っています。相手のオフロードパス、そして裏を突かれる場面が多くあり、そういったところが最初の20数分で相手にチャンスを与えてしまったと考えています。埼玉WKのような手ごわい相手には、そういった点で相手を止めていかないと非常に厳しい展開になる、それが最初の20数分に表れたと思っています。とはいえ、(0対21になった)そのあとは22対17と、チームとしてはいい状態にもっていくことができました。ですが、ラグビーの試合は80分間のパフォーマンスが求められるので、そういった点で今日の試合は非常に良い学びになりました。残念な気持ちではありますが、それを心に入れてまたハードワークしていきたいと思います」

──欠場した姫野和樹選手のけがの状況を教えてください。

「姫野に関しては、ハムストリングをけがしており、予定では(復帰まで)2カ月もしくはそれ以上かかる見込みです。現在も出血や腫れがあるので、来週スキャンを行って、その際に最新の情報をお伝えしたいと思います」

──北九州でのディビジョン1初試合でしたが、どう感じましたか。

「本当に美しいスタジアムで、フィールドの状態も良く、観客のみなさんの声も間近に感じました。先ほどトヨタの会社の人ともお話をさせていただきましたが、おそらく来季も戻ってくることになると。その機会が実現すれば、それを非常に楽しみにしています。また今日お越しになったファンの方々には『ありがとうございます』と感謝の気持ちを伝えたいと思います」

トヨタヴェルブリッツ
彦坂圭克ゲームキャプテン

「最初に相手のペースで(トライを)取られて、ただそこからはちゃんと自分たちのスキルを出せていて、悪くはなかったというような気がします。やっぱり最初の20分ですね」

──北九州でのD1初試合でしたがどう感じましたか。

「グラウンドの状態がめちゃくちゃ良くて、すごくやりやすかったです。観客もいっぱい入ってくれたのでうれしかったですし、これだけ盛り上がるといいなと。また機会があればプレーしたいと感じました」

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「この第1ブロック(開幕からの5試合)について、選手たちをとても誇りに思います。5連戦という簡単ではない第1ブロックでしたが、この5戦目ですべてをまとめてくれたと感じています。選手たちは自分のパフォーマンスを継続するように努力をしていますし、常時試合に出ていない選手たちもパフォーマンスを継続できていたところに感心しています。今日は23人の選手が出場しましたが、その中でも坂手(淳史)さんは(トップリーグ時代を含む)公式戦100キャップ目ということで、その一部に関われたことは本当に名誉なことだと感じています。坂手さんは今までもたくさんのことをやってくれましたが、今後も彼にはキャリアを積み重ねていってほしいと感じています。そして、タニエラ・ヴェラは本日ファーストキャップを獲得しています」

──ディフェンスがすごく徹底されていると感じましたが、感触はいかがでしょうか。

「(ディフェンスは)一貫性が大事だと感じています。準備のところやマインドセットのところで一貫性があるかないかが大切です。リーグワンはものすごくタフで、自分たちが今日得た結果というのは、ディフェンスのところが大きな部分を占めていたと感じています。もちろん自分たちの思ったようにいかない時間もありましたが、そういうところでどのようにして結果を出していくのかが、大切になっていくのかなと感じています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「まず北九州でのゲームでした。なかなかリーグワンではない環境でしたが、すごく楽しめました。スタジアムの雰囲気もすごく良かったですし、たくさんのお客さんが大きな声援を送ってくれて、こうやって九州のラグビー文化を肌で感じることができて、僕にとってすごく特別なゲームになりました。またこういうところに戻ってきてラグビーをしたいと思います。ただ、ここに来るまでにすごく時間が掛かりました。その中でもいい準備をし続けてくれたメンバーは、本当によくやってくれたと思いますし、そういう長距離移動の中でも自分たちの準備を忘れずにしっかりやり続けられたというのは、次につながると思います。

ゲームに関しては、タニエラ・ヴェラはファーストキャップですごく緊張していたんですが、バックローからフロントローになった選手で、スクラムもすごく良かったと思います。これからいいキャリアをどんどん積み上げていってくれるんじゃないかと思います。ルード(・デヤハー)も戻ってきて、チームとしてもたくさんの選手が戻ってきているので、これからさらに強くなって成長して、次のブロックに向かってやっていきたいと思います」

──ディフェンスがすごく徹底されていると感じましたが、感触はいかがでしょうか。

「毎週、コーチがいいプレゼンをしながら、自分たちに求められているものをしっかりチェックしてくれるので、それにしっかりと選手たちが練習で準備をして、それをゲームで出していく。すごくシンプルなことですけど、そこが一番大事なんじゃないかと思っています。今日ディフェンスをしている中で、多くの選手が自信をもってタックルすることができていたと思いますし、一人目、二人目のタックル、そこがラグビーの中での大きな基本だと思います。そういうところのミスが少し起こったところで、トヨタVさんのオフロードパスが出て、またいいランナーが走ってきて、僕たちのピンチが生まれていました。そういうのもラグビーだし、そこに向かって修正をしながら練習を続けて、一貫性という部分を出していければと思います」

──公式戦100キャップ達成の感想を教えて下さい。

「あまり自分の話をするのもあれなんですが、ワイルドナイツで100キャップということで、リーグワンやトップリーグ、またそれ以前のプレーオフや日本選手権、それを含めた公式戦のキャップ数が100になったというところで、みんなからもお祝いをされながら、今日はいい1日になったと思っています。長い道のりでしたけど、これからもまだまだキャリアを伸ばしていきたいと思いますし、(今日の試合は)最後のほうでちょっと疲れて動きが鈍くなっちゃったので、そこでももっと動けるようにしていきたいと思います」

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