NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第6節(交流戦)
2025年2月1日(土)14:30 豊田スタジアム (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 20-24 横浜キヤノンイーグルス
ラグビーの面白さが詰まった好勝負。それでも両指揮官が“怒り”を見せた理由とは

トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)にとって、今季初開催となる豊田スタジアムでのホストゲームだったが、ファンに勝利を届けることはできなかった。
昨季のリプレイを見るような好ゲームだった。横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)のリードで進む試合の最終盤に、トヨタVは1トライで逆転できる位置にまで迫った。昨季はホーンが鳴ったあとの後半44分にボーデン・バレットのグラバーキックから髙橋汰地がトライを決めて劇的な逆転勝利を収めたが、今回は横浜Eのアグレッシブで規律正しい守備に、トヨタVはトライラインまで迫ることができず、最後はスティール(ジャッカル)を決められて天を仰いだ。
最初から最後まで、ラグビーの面白さが詰まった名勝負となったが、両チームの指揮官の表情はともに険しかった。横浜Eの沢木敬介監督は「イライラしている」。トヨタVのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチは「フラストレーションが溜まっている」と、その気持ちを表現した。
同じような“怒り”の表情だったが、その中身は大きく異なる。横浜Eの沢木監督は、自分たちが準備してきたものが出せていなかったことに対しての怒り。攻め込んでも自らのミスでチャンスをつぶしてしまう。本来ならばもっと点差を離して勝てた試合だと指揮官の眼には映っていたようだ。ただ、「今日良かったのは勝ったことだけ」と、一番欲しい果実は手にしている。
一方で、トヨタVのハンセン ヘッドコーチは、単純に結果に対してのフラストレーション。試合開始直後や前半終了間際にトライラインぎりぎりで失点を防ぐなど粘り強い守備を見せていたものの、アーロン・スミスや姫野和樹ら主役を欠く布陣は、攻撃の迫力が少し足りず、若手や出場機会が少ない選手の奮闘もわずかに及ばなかった。
トヨタVはこれで4敗目。その内3試合は勝ち点1を積み重ねる惜敗である。「いまのプレーを続ければ、いつか必ず結果が付いてくると信じている」とハンセン ヘッドコーチ。何よりも接戦を勝ち切る勝負強さが求められている。
(斎藤孝一)
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ
「またフラストレーションが溜まる結果になってしまいましたが、スコアを見ずにゲームだけを振り返ると、両チームともに素晴らしい場面がありました。残念ながら負けてしまいましたが、選手はコミット、努力、最後まであきらめない姿勢があったと思います。終盤には何フェーズを重ねたか具体的には覚えていませんが、そういった局面で横浜キヤノンイーグルスさんのディフェンスも素晴らしかったと思います。来週の月曜日から改善を続け、取り組んでいるところに意識を向けていきたいと思います。そうすればいつかは必ず結果が付いてくると信じていますし、事実として今日は素晴らしいゲームでした。そしてトヨタヴェルブリッツとして大きな役割を果たすことができたと考えています」
──フラストレーションを抱えているのは結果についてだけですか。
「そうですね。選手の努力についての話をしましたが、決してそこにフラストレーションを抱えているのではなく、単に勝利できなかったところにフラストレーションを抱えています。また、勝利に値するプレーを選手はしたと思っています。とはいえ、それがスポーツで、スポーツから人生の学びというものは本当にたくさんあります。今日は子供たちもこの場に来ていますが、時にスポーツではすべてを尽くしても結果が付いてこないことがあります。選手たちの80分間の努力は誇りに思っています。なので、日々の練習、コーチング、クラブからのサポート、そういったところに関してまったくフラストレーションはなく、むしろ非常に順調だと考えています。ただやはり競争力のあるチームとして勝ちたい気持ちがあります。結果を変えることはできないので、私自身もそのフラストレーションを乗り越えて、チームがベターになっていくために、成長を重ねていきたいです」
──姫野和樹やアーロン・スミスがいない中でも、奥井章仁や三木皓正という若い選手が頑張っていたと思います。評価をお願いします。
「姫野やアーロン・スミスがいないことを言い訳にしたくないと考えています。実際にほかの選手は、ステップアップして非常にいいパフォーマンスを見せてくれています。彦坂圭克にしてもそうですし、若い二人に関してもリーダーとして非常にいい働きぶりを見せてくれているので、これ以上のことを求められないと考えています。また今日出場した梁正秋に関しても、自分の役割を全うしてくれました。チームとしては正直に映像を振り返り、そして改善を続けていきたいと思っています。そうすれば必ず自分たちのターンが来ると信じています」
トヨタヴェルブリッツ
彦坂圭克ゲームキャプテン
「結果は付いてきませんでしたが、良いラグビーはできていると思いました。これを続けていけばいつかは結果が付いてくると思っているので、自分たちを信じて、チーム一丸となってやっていきたいと思います」
──今日の試合はどのような気持ちで臨みましたか。(『記者体験』の子供記者からの質問)
「良い質問をありがとうございます。やっぱり自分たちのラグビーをしようと思って臨みました。相手もありますが、やっぱり自分たちのスキルとかストラクチャーとか、やりたいことをしっかりと出していこう、そういう思いで今日の試合に臨みました。結果は付いてこなかったんですが、本当に80分、選手はすごくいいラグビーができたと思います。最後は相手がちょっと上回ってしまいました」
──今季のチームの雰囲気に変化や違いはありますか。(子供記者からの質問)
「昨シーズンと比べてメンバーも少なからず代わっていますが、芯となる部分はあまり変わっていません。みんな勝ちたいですし、いいチーム作りをしたいので、雰囲気はすごくいいです。いまは勝利につながっていないですが、雰囲気は全然悪くないです」
──序盤から素晴らしい守備をしていたと思いますがどんな声を掛けていたのでしょうか。
「チームとしては前に出続けようというのがキーワードで、そこはすごくみんなやってくれたと思います」
横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「昨季はこういう展開で負けて、今季は勝ち切ることができたんですけど、自分たちの求めているスタンダードに比べたら全然納得できるパフォーマンスじゃなかったので、せっかくバイウィークに入る前の2試合ぐらいで、ちょっと良くなってきていると思っていたんですけど、次のバイウィークは休みなしでやろうかなと思っています。まだこのチームは、休みを与えたらモードが戻ってしまうので。休みはなしです。以上です」
──最後の時間帯での昨季との違いをどう感じていますか。
「最後、ああいう展開に持ち込まれた要因は自分たちだったので、たとえば相手がいいプレーをしてああいう状況になったんだったら、それは『今日はいい我慢ができた』と言えるかもしれないですが、自分たちでわざわざ相手にチャンスを与えて、自分たちでピンチを作ったので、まずその前提がまだまだだなと。それが今シーズンの自分たちにとって一番必要なプラスワンだと思うので、今日は勝ったことだけが収穫です」
──納得できるラグビーができなかった要因はメンタルですか。
「できなかったというよりも、それ以前の土俵に乗っていないです。たとえばラインアウトでも1回ミスをしてパニックになって、どちらかというと、そういうマインドのほうに問題がある。パニックを起こして練習でやったことのないことをやっていました。そういうところの弱さが出ているから、僕はイライラしています。自分たちはしっかりと準備をしてきたのだから、しっかりチャレンジすればいいのに向き合えていない。その弱さ、その場しのぎでどうにかしようという発想にイライラします」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン
「今日の試合は、自分たちも多くのチャンスを作れましたし、ただそれが監督のおっしゃったとおり、スコアに表れなかった。自分たちでそのチャンスを手放してしまったというのが感じたことです。その中で、毎試合少しずつ良くなっている部分もありますし、確実に毎試合チームは成長しています。ただ、今日のゲームのようにアップダウンが出てしまうと、どうしてもハードな試合でなかなか勝ち切れなくなってしまうので、もう一度自分たちにフォーカスして、自分たちのスタンダードをもう一段高いレベルに設定して準備していきたいと思います」
──最後の時間帯をどう見ていたましたか。
「相手のキックのオプションがない中で、ボールを回してくるのは分かっていましたし、前半からペナルティさえしなければ、相手のスコアチャンスはないと話していたので、そこが最後に関してはうまくできたと思います」
──自分たちの準備してきたものを表現できていないと感じながらのプレーだったのでしょうか。
「相手のエリアに入る回数は多かったと思いますし、チャンスも自分たちはけっこう多く作れていたと思いますが、それをなかなか生かし切れなかった。今日だけに限ったことではないですし、4点差じゃなくて、もっと広げることができた試合だったと感じているので、勝ち切ったことについては、昨季に比べて成長していると思いますけど、自分たちが目指すところを考えると、もっと上のレベルに引っ張っていかないといけないと感じました」
──次戦について。
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイはビッグパックのイメージがありますし、後半からもインパクトプレーヤーが出てきます。だからこそ自分たちの土俵に引きずり込んで、自分たちのラグビーをすれば必ず勝てると信じているので、それを選手に伝える1週間にしたいと思います」