NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第6節(交流戦)
2025年2月1日(土)12:00 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 44-15 リコーブラックラムズ東京
バックスリーの競争という成長の果実。それぞれの使命感がチームを躍進させる

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が今季初の連勝を飾った。リコーブラックラムズ東京を神戸総合運動公園ユニバー記念競技場に迎えたNTTリーグワン2024-25 ディビジョン1の第6節。計6つのトライを挙げる猛攻を見せて44対15の快勝を収め、戦績を3勝3敗の五分に戻した。
二人のウイングが最良の結果を出した。
神戸Sの14番・右ウイングを務めたアタアタ・モエアキオラは前半の内に二つのトライをマークし、11番・左ウイングを担った松永貫汰は後半20分に相手を突き放す重要なトライをゲット。チームの勝利に大きな貢献を果たしている。
モエアキオラは「みんなのいいディフェンスのおかげ。みんなで取れたトライ」とうれしそうに微笑み、トライシーンを振り返った松永も「相手がゴールライン前で内側にプレッシャーに行っていると感じた。僕はコールだけをして、あとはティム(ラファエレ・ティモシー)がパスを放ってくれた」と話す。それぞれが強調したのは仲間の献身。両翼はチーム一丸のトライを誇った。
今季の神戸Sはバックスリーのポジション争いがし烈だ。前節に続いてフルバックの先発は山下楽平が務めたが、今季ここまでは山中亮平、李承信、松永が先発出場。ウイングも同様、開幕先発を飾ったイノケ・ブルアや前節デビューした船曳涼太など、センターを兼務する選手や出場機会のないプレーヤーも含めて実力派がそろっている。
2019年に神戸Sに加入したモエアキオラは「メンバー外を含めたバックスリーの選手層がすごい。神戸に入ってから一番、プレッシャーが掛かっています」と気合いを入れる。松永も同様で、「いい選手が試合に出るべきだし、危機感は常にある。(試合で)『やってもうた…』と思ったら次の週の最初の練習に行ったときに、『怒られるかな…』って怯えています」と苦笑しつつ、強く胸に刻む意志を言葉にした。
「自分ができることは試合の中でハードワークしていくこと。一番、重点として置いているところなので、その部分で負けない気持ちをもっていつもやっています」(松永)
フィールドに立つ上で大切なこととして、モエアキオラは「責任をもってプレーする」ことを挙げた。競争は過酷だが、それは間違いなく成長の果実。使命感と向き合うバックスリーの競争は、神戸Sの躍進に直結する。
(小野慶太)
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ
「こんにちは。ブラックラムズさんは特に最初の20分は素晴らしかったと思います。コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)としてもかなりプレッシャーを掛けられる展開になりました。ただ神戸Sとしてはスクランブルの状況での対応力が高かったと思います。チャンスを作った際にそのチャンスを取り切る自分たちの丁寧さの部分は今日、精度が高かったと思います。前半はタフな状況が多かったですけど、そのタフな時間が多かった中でも21対8で終えることができたのは自分たちにとっても自信を得ることができた内容だと思います。後半に関しても、我慢強さや精度もレベルが上がり、しっかりその結果が付いてくることになりました。後半に関してもディフェンスはいい形でできたと思います。先週、バイウィークを挟んでしっかり休んだ状態で今週、こういう形でまた2ブロック目をスタートすることができて良かったです」
──負けた試合はバックス陣のトライの記録が少ないが、勝利した試合はバックスがトライしたことが多い。今日もいい連係でトライしているが、試合を重ねることで攻撃の成熟を感じますか。
「言われていることは正しいと思います。負けている試合に関してはチャンスを作っても自分たちがフィニッシュするところで精度を失っていたり、丁寧さがなかったり、4対2、3対1の状況を作っているのにそこでの判断が悪く、もしくはパスの精度が悪くトライを取り切れないシチュエーションが多いと思います。そこの部分に関してはこの2週間のパフォーマンスで良くなっているかなと思います。間違いなく言えることは、このリーグワンはタフな大会になっているので、ブラックラムズさんもここまで対峙している相手にプレッシャーを掛けていると思います。来週戦うサンゴリアスさんも求めていたシーズンスタートの仕方はしていないかもしれないですけど、間違いなく強いチームであるというのはみんなが分かっていることだと思います。なので、自分たちがしなくてはいけないことは正しい準備をして、自分たちがやるべきことをしっかり理解した上で、作り上げたチャンスをどれだけ精度高く仕留め切れるかが重要になってきます」
──ここ2試合、精度、判断でミスなくトライを取り切り、結果につながっている要因は何でしょうか。
「コミュニケーションの部分が一つあると思います。ブリン(・ガットランド)が入ったことも一つ、違いを生み出している内容ではあると思います。あともう一つは、この2週間、メンバーとしても前節に近いメンバーを出せていることもチームにとってプラスになっていると思います。継続したメンバー選考ができることによってよりコンビネーションが生まれることも増えると思うので、その部分の精度の向上につながっているところもあると思います」
──前節先発した船曳涼太選手ではなくアタアタ・モエアキオラ選手を先発起用した意図を教えてください。
「アタ(モエアキオラ選手の愛称)がボールを持っている瞬間、起こしている内容を見たら、なぜアタがスタートだったか十分、理解できると思います。前節は船曳が素晴らしいデビューをしたと思います。松永(貫汰)も3トライを取って素晴らしいパフォーマンスを出したと思います。アタが(先発で)試合に出ていたのはイーグルス戦だけですが、その試合でも彼は2トライを取っています。アタに関してはもちろん、体がデカい、キャリーも強い、素晴らしいウイングですけどキックもうまいですし、パスもうまい。フィジカリティーだけでなくスキルのレベルも高い選手になります。彼は今週、試合に出られる状態でしたので、基本的に彼が試合に出られる状態であればチームとしては先発で使う可能性は間違いなく高い選手だと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン
「こんにちは。レンズ(デイブ・レニー ヘッドコーチ)が言ったこととほとんど同じ意見ですけど、付け加えるとすれば、(前節の)浦安D-Rocks戦で出したパフォーマンスからさらに積み上げられるかが大事だったと思います。特に今日良かった部分としては、長い時間、ディフェンスをしないといけない状況も多かったと思いますが、そこで我慢強さを失わなかったことだと思います。特にラインアウトディフェンスですけど、セットピースでもラインアウトディフェンスで相手に対してプレッシャーを掛けることもできました。セットピースでの相手へのプレッシャー、ディフェンスでの相手へのプレッシャーを掛けることができれば強い相手でも倒していけると思います。もちろんまだ修正できる部分、成長できる部分はありますけど、2ブロック目がスタートする上で、こういう形でまず1試合目をスタートすることができて良かったです」
──前半は相手に攻められるところも見られたが、後半よくなった。どういう修正をしたのでしょうか。
「特に前半、ブラックラムズさんのアタックが素晴らしかったことは認めなければいけないと思います。前半はテンポの速いプレーの中で、自分たちが常に(相手にリズムに)乗られている中でディフェンスしなければいけなかったと思います。後半に関しては、自分たちももっとまっすぐ相手に向かって、ディフェンスラインで上がっていって、よりドミネートタックルできる状況が増えたので、相手が前半、出せていたようなテンポの速いプレーができなかったことが要因かなと。そこで(ディフェンスラインが)上がることでドミネートタックルできます。そうなったらブレイクダウンのところの(相手の)スピードも落とすことができるので、そうすれば自分たちは次のディフェンスによりいい状態で向かえる形になるので、そこが前半と後半の違った点かなと思います」
──次節へ向けての課題は何でしょうか。
「まず簡単にラインブレイクを与えないこと、試合序盤からまず与えないことが大事になります。ドミネートタックルができて、相手のラックスピードをテンポ速くプレーさせない状況にできればより自分たちはもう一度、次のフェーズで前に上がることができるので、それをどれだけできるかが自分たちの課題かなと思います」
──前節の特別な試合を経験し、チームの変化や成長をどのように感じていますか。
「チームのカルチャー、街、いろいろなことを考えたときに本当に特別な試合だったと思います。今日の試合を振り返ると、良くなったと感じるのは、お互いにチームメートのためにハードワークし続ける時間が長かったことです。特にディフェンスの部分で、アタックのきれいなトライは素晴らしく、見ていて感動する内容でしょうけど、一番良かったと思うのはお互いのためにディフェンスの部分でどれだけハードワークし続けられているか、見えないところでのハードワークが今日は良かったと思う。今日の一番、試合を分けた部分にはなると思うのですが、貫汰とヴィリー(・ポトヒエッター)で、相手にラインブレイクされたあとにトライを止めた瞬間があったと思うんですけど、そこの部分でトライを取り切られてしまうと自分たちがまた相手に流れを渡してしまう状況だったと思うので、そこは本当に試合を分けた瞬間だったかなと思います」
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「ホスト(エリア)から離れていいプレーができないとき、自分たちのゲームをできなくて、こういうふうに罰を与えられる。本当にトラウマチックな日かなと思います。試合序盤、自分たちのチャンスを生かし切れなくて、その後、ボールを27回ターンオーバーされてしまいました。そうなってくるとゲームを進めるのは難しいのかなと思います。自分たちとしてはもう一度、スタートに戻り、東京に戻って最初からリビルドしていきたいなと思っています」
──初めてのバイウィークでしたが、どのあたりを意識して準備してきたのでしょうか。
「一つはみんなをリチャージさせること。何人かやっぱりけがなどもあったので。ゲームに関しては実行力ですね。そこに関しては今日はすごく残念です。あとはセットピースのところをしっかりやっていかないといけないと思います」
──今日のパフォーマンスは、驚きなのか、今まで感じていた問題がつながって出たと感じているのでしょうか。
「これだけひどいスコアになったとき、こういうときのパフォーマンスは、自分たちがひどかったですし、それが現実です。ターンオーバーも多くて、そうなったときには必ず相手に罰を与えられた状態だったと思います。チャンスが来たときに生かし切れませんでしたが、スコア自体はビッグサプライズです。ハーフタイムの時点は8対21、まだまだいけると思っていましたが、ラインアウトの修正だとか、ボールコントロールだとか、ペナルティカウントを低くすることを伝えました。ただ、後半は実際、ペナルティカウントも与えてしまい、ラインアウトも失敗し続け、神戸Sさんに罰を与えられてしまったのかなと思います」
──ディフェンスのコネクトが切れる時間帯があったのかなと感じますが、いかがでしょうか?
「一番、ディフェンスがしづらいのはターンオーバーボールだと思うんですね。そういう意味では先ほどから言っている、アンストラクチャーの状況でアタックするチャンスを(相手に)たくさん与えてしまったかなと思います」
リコーブラックラムズ東京
松橋周平 共同バイスキャプテン
「今日はありがとうございました。自分たちが誇りに思える試合をできなかった。この会場に足を運んでくれるみなさんだったり、ブラックラムズのファンだったり、東京で僕らを待っているノンメンバーの選手たちに対して、申し訳ない気持ちというか、自分たちを誇れる試合ができなかったのが残念です。1週間をとおして神戸Sの対策だったり、自分たちがこのラウンド5までの反省を生かした試合をしようといい準備ができていました。いい入りを切ったんですけどボールをロストするシーンが増えてしまってどんどん自信を失って、逆に相手は簡単にトライを取れてという印象があります。でも、それがラグビーなので、そこからいかに盛り返していくのかが本当の真価、強さだと思います。まだまだ僕らはそこが弱いかなと思いますし、僕自身も今回ゲームキャプテンでしたし、選手としてどう改善できるかをもう一回、東京に戻ってイチからやり直したいと思います」
──前半はゲインも切っていたが、そこでなかなかスコアできなかった。神戸Sのディフェンスが良かったのか、それとも自分たちに問題があったでしょうか。
「神戸Sもいいリカバリーがあったのかもしれないですけど、結局は自分たち(の問題)であって、仕留めるか、仕留められないかというところ。そこでスコアするかしないかがすごい大きな差になってくるので、自分たち(の問題)ですね」
──ディフェンスのコネクトが切れる時間帯があったのかなと感じますが、いかがでしょうか?
「自分たちが(勢いに)乗れないところで、ミスが続いたりして自信を失っていて、ディフェンスとかで本来の姿に立ち返らないといけないんですけど引きずってコネクションが切れていったのかなと感じていますし、ターンオーバーされて、相手の勢いのままに(試合の流れを)もっていかれてしまったと感じています」