2025.02.10NTTリーグワン2024-25 D1 第7節レポート(横浜E 22-30 S東京ベイ)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第7節(交流戦)
2025年2月8日(土)14:10 ニッパツ三ツ沢球技場 (神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス 22-30 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

ミスを引きずらないメンタリティーが生んだ逆転劇と40分間の“独壇場”

3トライでハットトリック。トライランキングでも3位タイに浮上したクボタスピアーズ船橋・東京ベイのハラトア・ヴァイレア選手

4連勝中の横浜キヤノンイーグルスが前半から主導権を掌握する。しかし、2連勝中のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)が、8対19と一時は11点差をつけられたが、“不屈のマインド”を原動力に劇的な逆転勝利を飾った。

後半だけで計19得点。殊勲のハラトア・ヴァイレアにとっては、起伏に富んだ40分だったに違いない。

後半3分、反撃の狼煙をあげるチーム初トライを奪ったヴァイレアは、後半10分のワンプレーで目の前が真っ白になったような気がした。チームメートにつなごうとしたパスを普久原琉にインターセプトされると、そのまま普久原が“独走トライ”。相手のスコアに直結する致命的なミスを冒したヴァイレアは「やってしまった…」と天を仰いだが、すぐに「ミスをトライで取り返そう」と気持ちを切り替えた。

フィジカルの強さを全面に押し出し、相手をパワーで押し切る。ストロングポイントを発揮することに集中したヴァイレアは“ゾーン”に入っていた。

“挽回の初手”は後半20分。ファフ・デクラークのディフェンスをかわし、自身2つ目のトライを奪うと、後半25分にも3度目のトライでハットトリックを達成した。

直後のコンバージョンゴールをS東京ベイが決めれば、スコアは23対22にひっくり返る──。ニッパツ三ツ沢球技場が緊張感に包まれる中、押川敦治からキッカーのバトンを託された背番号14は実に落ち着いていた。「ずっと練習してきた」成果をコンバージョンゴールの成功につなげたヴァイレアは、勝負を決定づけるチーム4つ目のトライ後のコンバージョンゴールも見事に決めた。「今日は彼の日だったのか、しっかりと決めてくれた」。フラン・ルディケ ヘッドコーチはそう言って“孝行息子”を労った。

S東京ベイ加入後、初のハットトリック達成にコンバージョンゴールも“二発二中”。ビジターチームの逆転劇に沸いた後半の40分間は、ヴァイレアの“独壇場”だった。

(郡司聡)


横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(右)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「いまの実力はこんなものです。いまのチームの力を受け入れなければなりません。こういうゲームを勝たないとチャンピオンを狙えるチームにはなれません。ただ下を向いても仕方がないです。勝てるチャンスはいくらでもあったので、自分たちにベクトルを向けながら良い準備をしたいと思います」

──相手のリザーブメンバーを見ると、後半にプレッシャーが掛かってくるのは想定できたことではないでしょうか?

「相手の外国籍選手がどうこうと言っていたら一生勝てないですから、そこに敗戦のエクスキューズをもっていくこと自体が良くありません。まったくそう思っていません。力のある選手が出てくるのも分かっていましたが、自分たちでコントロールをして自分たちのゲームにはできたと思います。相手どうこうではなく、自分たちの実力不足です」

──イージーなエラーが多かった原因についてはどう考えていますか?

「まさに勝負強さだと思います。勝負強さは、どちらかと言うとマインドセットというか、メンタルの影響が大きいです。普段どおりにプレーできるマインドではなく、先を見て慌ててしまうことによってミスにつながっていると思います。勝負強くなければ普段はしないようなミスをしたりします。一流の選手たちは当たり前のことを当たり前にできます。それは自分をしっかりとコントロールできる精神力があるからです。どんなにプレッシャーが掛かっても、自分の役割を遂行できることが勝負強さだと思います。まだまだ勝負強さが足りません」

──前節のトヨタヴェルブリッツ戦は反省点の多い勝利でしたが、今節までの準備期間の1週間の取り組みはどうだったのでしょうか?

「先週勝ったのもラッキーな面が多かったです。それでも勝てたことはとてもポジティブですが、今日の結果がわれわれの実力だと思います。ここからどうするかは今後の振る舞いにかかっています。現実から目を背けずにやっていかなければなりません」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「自分たちから勝てるチャンスを手放してしまったと感じています。自分たちから崩れて相手にチャンスを与えてしまいました。次の埼玉パナソニックワイドルナイツ(以下、埼玉WK)戦に向けて、やるべきことをクリアにして、自分たちにフォーカスして臨みたいと思います」

──普段以上にミスが多かった原因についてはどう考えていますか?

「いつもはやらないようなプレーをやり始めたり、インディビジュアル(個人本位)のプレーをし始めたりすると、簡単にペナルティをしてしまうし、相手にボールを渡してしまうことにつながってしまいます。後半の40分は勝てるチームの40分ではなかったです」

──風も強かったために両チームのハンドリングは難しい状況だったとは思いますが、なぜミスが多い試合になったのでしょうか?

「風に関しては、お互いに同じ条件なので、言い訳にはなりませんが、自分たちのセットスピードが遅れたり、横の選手とのコミュニケーションが取れなかったり、あくまでもエラーの原因は自分たちにあります。相手のプレッシャーがあったからミスが出たとはまったく思っていません。自分たちがやらなければいけないことを疎かにした結果、それがミスにつながりました」

──次の埼玉WK戦で大事にすべきことは何でしょうか?

「トレーニングの段階から今日のような展開をしっかり想定して、イメージしながらトレーニングをできる選手がどれだけいるか。それはとても大事なことです。プレッシャーが掛かった状況でも力を発揮できるチームにしていきたいです」

──後半の終盤に似たような展開で連続してトライを取られました。

「最後の2本のトライも、ワイドにボールを持って行かれるまでの段階でファーストタックル、セカンドタックルで相手のモメンタム(勢い)を止めることができませんでした。システムエラーではなく、自分たちの個人のタックルスキルの問題です」

──試合をとおして、ジェシー・クリエル選手にボールが入る機会が少なかった印象です。

「風も強かったので、どちらかと言うとバックスのラインも狭めに設定していましたし、短めのパスを選択していたので、ジェシーにボールが渡る機会をそれほど作れませんでした。ただそのぶんも、内側でしっかりとほかの選手がコネクションをもちながらアタックをしようとしていました。確かに振り返ってみると、もう少しジェシーにボールを集めることができれば良かったかもしれません」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、ファウルア・マキシ キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「素晴らしい雰囲気を作っていただいたファンのみなさん、ありがとうございました。前半は横浜キヤノンイーグルスさんが素晴らしいラグビーを展開する中でわれわれもチャンスを作っていましたが、スコアにつなげることができませんでした。後半は修正をしたリーダーグループに感謝したいです。タスクを重視し、選手たちがやるべきことを遂行した結果、逆転で勝つことができてうれしいです。また逆転をしたあとはしっかりと試合をコントロールし、相手にとってタフであり、倒すのが難しいチームになれました」

──3トライのハラトア・ヴァイレア選手に対する評価はいかがでしょうか?

「効果的に動いてくれましたし、ウイングとして、大事な場面でフィニッシュまで持ち込めたことが彼の実力を示しています。常にハードワークをしてくれていますし、今日の試合をエンジョイしてくれたと思います」

──年に何回かこういう試合はありますが、ボールがよく落ちる試合でした。

「風の影響や相手のプレッシャーなどいくつか原因はあると思いますが、瞬間、瞬間でミスが起きた中でも対応できた選手たちを褒めたいです。起こったミスを受け入れて、一つひとつ細かいプレーを制していく。コツコツと相手よりも優ったことをやり続けた結果、逆転勝利につながりました」

──風上と風下で戦い方を変えたのでしょうか?

「後半のコントロールに関しては、前半からチャンスを作っていた中で実際のスコアにつなげることはできなかったですが、それでも我慢をしてボールを保持し続けて相手にプレッシャーを掛けて、相手のペナルティを誘いながらラインブレイクしていくことを狙った結果、次第に狙っていたことができるようになりました。その中で勝てるんじゃないかという信念が生まれた結果、実際の勝利につながりました」

──キッカーを試合中に変更した理由は何だったのでしょうか?

「ハーフタイムのときに(ハラトア・)ヴァイレアに代えるかもしれないという話はしていました。サイドからの難しいキックでしたが、今日は彼の日だったのか、しっかりと決めてくれました」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン

「タフな試合になることは分かっていましたし、自分たちにとってチャレンジの試合になると覚悟して臨みました。今日の試合の入りは自分たちのやりたいことがうまくいかなかったですが、相手のプレッシャーもあって、自分たちでモメンタムの状況を作れませんでした。それでもハーフタイムに修正し、後半の入りも良かった中で、自分たちに流れを取り返せたことがポジティブな結果につながりました」

──逆風が強かった後半に向けて、どんなことを考えてスタートしましたか?

「ハーフタイムでは前半の学びから、後半はボールを持つ時間が増えることを伝えました。ボールを持つ中でミスを少なくすれば自分たちのラグビーをできるという自信を発揮できました。風は関係なく、自分たちのやるべきことにフォーカスし、それを遂行することに集中していました」

──後半に向けて、ミスをなくすことや良いアタックをしていくために修正したことは何でしょうか?

「ブレイクダウンの攻防を制することや無理なオフロードパスをしないこと、フィフティフィフティ(50:50)の判断をしないこと。そういったことを意識したことで後半は自分たちのラグビーができるだろうと思っていました」

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