2025.02.10NTTリーグワン2024-25 D1 第7節レポート(神戸S 29-31 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第7節(交流戦)
2025年2月8日(土)12:00 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 29-31 東京サントリーサンゴリアス

怒とうの反撃であと2点。苦渋の敗戦の中に蒔かれた歓喜の種

後半35分、2点差に迫るトライを挙げたコベルコ神戸スティーラーズの中嶋大希選手と(右)祝福する松岡賢太選手

コベルコ神戸スティーラーズは8日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で東京サントリーサンゴリアスと対戦した。前半から相手にペースを握られる苦しい展開に陥るが、後半に怒とうの反撃。あと2点差まで迫るなど奮闘したが、惜しくも29対31で敗れた。

「ベンチで待っているときからみんなで『リザーブ勝負になるからしっかりエネルギーを出せるように』と話していました。その喜びがあったかなと思います」(中嶋)

後半35分の自身のトライ後、勇ましい表情を見せた中嶋大希。サポートで追走していた松岡賢太が素早く駆け寄り、力強くハグをした。

「『出たら自分の仕事を全うしような』っていうことは言い合っていますし、同じリザーブの中嶋大希さんがインパクトを残しているところを見たら、やっぱり胸が熱くなるところはありました」(松岡)

後半15分に松岡、同25分に中嶋が投入されると反撃の勢いは加速した。沸き上がるスタンド。興奮も熱狂もこの日の「一番」と感じさせる展開。そこで生まれたのが中嶋のトライだった。

最終的にスコアは届かなかったが、それでも、松岡や中嶋が明示したのは、この日の勝利のために、1週間のトレーニングと向き合ったメンバー外の選手も含めた気概そのもの。松岡は言う。

「やるからにはスタートで出たい、悔しい気持ちがリザーブの選手にはあります。ただ、自分がレベルアップしないと試合には出られないという危機感もあります。対戦相手に勝つこともそうですけど、チーム内での競争に勝って、個人的にもチーム的にもいい成績を残したいと思っています」

選手にはプレーヤーとしての野心がある。メンバー外はメンバー入りを目指し、リザーブは先発出場に挑む。そして、誰もが一様にもつ、最も強い意志こそチームに最大限の貢献を果たすことだ。松岡同様に今季はリザーブが多い中嶋もまた、「気持ち的に悔しい部分も多いですけど、出たときにしっかりパフォーマンスを出せなければ意味がないと思っています」と話している。

今節、リザーブが見せた熱量はチーム力を底上げする大切なメンタリティー。全員で競い合い、全員で磨き合う。「何が足りないのかチームで話し合って、練習でトレーニングしてレベルアップしていきたいです」(松岡)。苦渋の敗戦の中にも、歓喜の種は蒔かれている。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、ブロディ・レタリック共同キャプテン(右)

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「こんにちは。本当にフラストレーションが溜まる結果とはなりました。前半は、本来出したいパフォーマンスをまったく出せませんでした。本来もっているフィジカリティーをなぜ出せなかったのかは分かっていないところがあるのでそこはまた考えます。自分たちの本来あるべきフィジカリティーを出せないことによって、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんに常に上回られる形になってしまい、自分たちが本来あるべきゲームを前半はなかなか押し出していくことができませんでした。

ポゼッションもなく、正しいエリアでもプレーできず、自陣でプレーすることを強いられました。5対24の状況から、チームとしてのキャラクターを見せることはできましたが、正直、振り返っても自分たちがボールを持っているときは相手にダメージを与えられる、しっかりと自分たちのパフォーマンスを出せる状況があったと思います。力強くフィニッシュすることはできたと思いますけど、いいチームに対して5対24で負けている状態から盛り返すことはなかなか簡単ではありません」

──3勝3敗で迎えたこの試合でしたが、もう一つ抜け出すには何が必要でしょうか?

「今日の試合を振り返ってもチャンスはたくさん作ることができていたと思いますが、特に前半での精度、正確性のレベルをもっと上げないといけないです。前半、ペナルティを与えた回数を考えても、規律の部分も悪かったと思いますし、後半はそこの部分も修正されたと思います。後半、ペナルティはおそらくゼロだったんじゃないかと(実際にペナルティはゼロ)。それだけ数字が違うと自分たちのパフォーマンスにも大きな影響を起こしてしまう形になります。

自分たちの入りの部分、そこの部分をもっと良くしなければなりません。結果論として試合の序盤は自分たちが先に点を取った側ではありましたけど、そこから自分たちのゲームをやっていけていたかと言われればそうではなかったと思います。後半の入りに関しても自分たちのミスから東京SGさんのトライにつながってしまいました。前半後半、両方とも入りの部分は良くしなければいけないところだと思います」

──ノックオン(ノックフォワード)が多かった印象だが、寒さも影響しましたか?(※ブロディ・レタリック共同キャプテンへの質疑応答をそのまま引き受けるようにコメント)

「後半に関してはそこの部分は修正できたと思います。修正できたからこそ、自分たちの得点につながるシチュエーションも多かったんじゃないかと思います」

──比較的、前半に苦労する試合が続いていると思います。「分からないところもある」と話していましたが、その原因についてどう考えますか。

「正直、なぜか分からないですね。横浜キヤノンイーグルス戦くらいですかね、前半にいいスタートができたのは。それ以外の試合ではいいスタートができていません。コーチとしてもそこはもっと深く見ていかないといけないところだと思っています。今週、1週間の準備としてはいい準備ができたと思っています。トライ数を見てもウチが5トライ、東京SGさんが4トライなので、アタックの内容としては素晴らしいものがあったと思います。いいチームに対して常に追い掛けないといけない状態に自分たちを置いてしまうと難しくなってしまいます。なので、深いところに関してはまた自分たちとして見なければいけませんが、スタートの部分は間違いなく良くないというのは正しいことだと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「すべていい形でレンズ(デイブ・レニー ヘッドコーチ)がまとめたと思うのでそれに付け加えることはほとんど自分のほうからはありません。前半、あの点差で負けている状態でしたけど、自分たちはボールもほとんど持っていない状態で後半に入っていく上で、風もある状態だったので、まったく自分たちがこのまま終わってしまう悲壮感はありませんでした。ただ、レンズも言っていたように、自分たちがミスをしてしまうと素晴らしいチームに対しては自分たちが痛めつけられてしまいますし、逆に自分たちがチャンスをしっかりと仕留め切れなければいいチームに対して勝ち切ることはできません。

前半を振り返ると、自分たちが受け身になり過ぎていたと思います。受け身になることによって常にゲインラインを取られ続けてしまう、そうなってしまうと自分たちとしては難しい状況になってしまうと思います」

──ノックオン(ノックフォワード)が多かった印象でしたが、寒さも影響しましたか?

「気温が原因ではないと思います。チームによってはラインスピードを上げてきて、自分たちのアタックにプレッシャーが掛かる状態になりますけど、その中で精度高く遂行し切るのが、自分たちがやらなければいけないことだと思いますし、ラインスピード、深さの要素というところはもちろん自分たちがノックオン(ノックフォワード)している状況であれば関わってくるところですけど、ただシンプルなパスキャッチをどれだけ高いレベルで遂行できるか。準備の段階からどれだけしっかり正しくやるべきパスキャッチを行って、フェーズを重ねて相手にプレッシャーを掛けていけるか。その話は今週1週間、準備の中でしてきました。ただ、それを自分たちは遂行し切ることができなかったです」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ(左)、堀越康介キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ

「こんにちは。まずは両チームのファンの皆さま、寒い中応援ありがとうございました。本当に両チーム、モメンタムが行ったり来たりした80分間だったと思います。その中でしっかり選手たちが最後に勝ち切ったところがポイントだったかなと思います。チームプレーが続いた80分間だったと思うので、しっかりこれを継続して次に準備していきたいと思っています」

──髙本幹也選手が難しいゴールキックを確実に決めたのも大きな勝因になった印象があります。そのキックに限らず、フィールドプレーの彼の評価もお願いします。

「本当にこのリーグではどの試合も接戦、ゴールに関してワンスコア差の試合が多いと思うので、そこはゴールキッカーとして責任感を感じていると思いますし、そこはすごく高い精度でチームの勝利につながったと思っています。ゲームのコントロールにしても、常に『アグレッシブアタッキングラグビー』のキーの判断をする選手だと思っているので、キック、ラン、パスの判断について今日は素晴らしかったと思います」

──両チーム連勝している中で迎えた6位・コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)との直接対決でしたが、ここで勝利したことの意味をどうお考えですか。

「順位などというよりも、自分たちにフォーカスしています。自分たちのラグビーをしっかり練習でやって、それが試合に表れると思っているので、そこのプロセスを大事にしながら今週、準備をしてきました。順位のことはチームでも一切、話をしていません。これからもあまり順位は見ずに、自分たちにフォーカスしてしっかり準備していきたいと思います」

──苦しい時期を乗り越えたいまの心境を教えてください。

「自分も選手のときがそうでしたし、いまヘッドコーチになってまず勝つチャンスを生み出さないと(感じています)。勝負の世界では前半に勝敗が決まっても面白くないですし、まず勝つチャンスを生み出すことを大事に指導しています。プレーヤーのときもそうでした。第2節は1点差(で敗戦)、第3節、第4節は同点と苦しい結果になりましたが、そのプロセスが間違っていないということは絶対に崩したくなかったので、そこを信じた上でこの一つの結果が選手たちの自信になっているのかなと思います。なので、もう一回、次は東芝ブレイブルーパス東京戦になると思いますが、そういう自信をもちながら来週へ向けて自分たちのプレースタイルを磨いてしっかり準備したいと思っています」

──自信をもちながらやるために心掛けたことはなんでしょうか。

「ヘッドコーチとして自分があまりブレないことが大事だと思っていました。しっかりこのチームの方向性を決めるのが自分だと思っていますし、その中でプレーヤーの方向性を決めるのは隣にいるホリ(堀越康介キャプテン)がリードしてくれるので、しっかりブレずにチームを引っ張っていく方向性を、チームをコミットさせること、自分を信じて指導することが大事かなと思っていました。勝っても負けても常に進化していかないといけないと思っていますし、負けたから、同点だから、勝ったからでそのプロセスは変えたくないと思っています。今日は2点差で勝ちましたが、負けた試合も、同点の試合も、来週に向けてのプロセスは大きく変えない予定です」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン

「本日はありがとうございました。いまヘッドコーチが言ったようにモメンタムが行ったり来たりする試合で、僕の顔を見たら分かるように本当に激しい80分間でした。勝ち切れたことは本当に大きいですし、そこは良かったんですけど、小さいディテールやディシプリン(規律)のところでもっと反省しないといけないところもたくさんあると思うので、来週の試合に向けてまた府中でいい準備をして勝ちに向かっていきたいと思います」

──ラインアウトからトライを着実に決めたのは大きかったのではありませんか。

「神戸Sを分析した中で、空中でコンペティションしてくるのは分かっていて、そこで取ったあとのモールディフェンスが僕たちはチャンスとフォワード全体で捉えていたので、そこの部分を今日は突いてトライを取れて良かったと思います。中盤のモールも、ゴール前のモールも、どっちも良かったと思います」

──なかなか勝てない時期に「一つ勝てばこのチームは変わる」と話していましたが、3連勝したいま、何が一番変わったと思いますか?

「難しいですね。準備の段階ではこれまでの試合すべていい準備ができていました。選手の自信ですかね。やっぱり勝てないときはいい練習ができて『やろう』と思っても『勝てなかった』とダウンするときもあるんですけど、『やってきたことが結果として表れた』『これでいい』『もっと行こう、レベルアップして行こう』とチーム全体が活性化してきたのはあります。あと、勝ったあとは週頭の月曜日のみんなの顔が明るいですね、そういう雰囲気もいまチームのプラス材料になっているんじゃないかなと思う」

──前半は東京SGのスクラムが優勢で、後半は神戸Sが巻き返した印象があります。前半優位に立てた理由と、後半変わってきた理由を教えてください。

「レフリーの方と前半と後半でコミュニケーションを取っていたんですけど、後半のメンバーが変わったときの相手に対してアジャストできなかったところが一番の要因かなと思います。『1番側が落ちている』というふうに言われていたんですが、僕たちはそんなふうな感じはなかったので、そこのレフリーとのコミュニケーションを取りつつ、後半は大事なスクラムで2本ともペナルティを犯してしまったので、もっと自分たちが成長する部分かなと思います」

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