NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第8節（交流戦）
2025年2月16日（日）14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
横浜キヤノンイーグルス 36-51 埼玉パナソニックワイルドナイツ
150キャップは万雷の拍手に包まれて。偉業達成のグラディエーターが抱く感謝と野心
公式戦通算150試合出場を達成し、沢木敬介監督から花束と記念ジャージーを受け取る横浜キヤノンイーグルスの田村優選手横浜キヤノンイーグルス（以下、横浜E）の田村優が、ディビジョン1第8節埼玉パナソニックワイルドナイツ戦でトップリーグ時代を含む公式戦通算150試合出場を達成した。ゲームは惜しくも36対51で敗れたが、試合後には両軍の選手、そして多くのファンが150キャップを祝福した。
このゲームではプレーオフトーナメントを見据えた戦術上の理由でスタンドオフには武藤ゆらぎが先発し、田村はリザーブメンバーに名を連ねた。今季初先発となった武藤は、随所に光るプレーを見せて攻撃を組み立てた。そして24対32となった後半４分に田村がグラウンドに立った。
百戦錬磨のラグビーワールドカップ2015・2019日本代表戦士は、後輩の武藤について「ゆらぎには、65,000人の前（ラグビーワールドカップのような大舞台）でプレーするポテンシャルがある。今日もいいプレーをしていたが、僕自身はもっと大爆発の予感を持っていた。僕がゆらぎの立場だったら『全部、ボールを渡せ！』って叫んでいる」と愛情たっぷりのアドバイスを送った。
横浜Eは田村投入直後に、トライを決めて追い上げ態勢に入るかと思われたが、TMOによって惜しくもトライキャンセル。じわじわと点差が開く中で終盤に意地を見せながらも、36対51の結果で試合を終えた。田村はノーサイド直後、悔しさをにじませながらグラウンドにひざを立てていた。
「ワイルドナイツのような相手には勢いだけではどうにもならない。だから後半に全体がガス欠になってしまっていた。80分間を通じたゲームコントロールが必要になる。僕自身はプレーオフトーナメントに照準を合わせているが、もっとチームとして成長していく必要がある」（田村）
秩父宮ラグビー場には12,288人が来場。試合後は多くのファンが田村の150キャップセレモニーを温かく見守り、万雷の拍手を送った。チームメートは記念Tシャツを着込んで祝福、田村は沢木敬介監督から花束と記念ジャージーを手渡された。
「イーグルスにきて100キャップを達成して、そこから50試合となった。起用してくれたコーチ、体をケアしてくれたスタッフ、支えてくれたチームメート、ファンに対して感謝している。個人的には150試合はそんなに意識していないが、ファンの方が喜んでくれたことがうれしい。今季のプレーオフトーナメントでは、ファンの方々にもっと大きな喜びを届けたい」
横浜Eのグラディエーターは150キャップを通過点に、リーグの頂点を目指していく。
（伊藤寿学）
試合後は多くのファンが田村選手の偉業を祝福した横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督（左）、梶村祐介キャプテン横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「残念な結果ですけれども、田畑凌、ブレンダン（・オーウェン）もすごく良かったし、彼らは自分たちの役割を明確にして遂行してくれました。それがチームプレーだと思います。明るい材料が出てきたのはあります。ワイルドナイツは、フィジカルレベルで後半にギアを上げてきましたし、またそこに対応できるほど、ウチに余裕がなかったと思います」
──田村優選手ではなく、武藤ゆらぎ選手をスタメン起用した理由は何でしょうか？
「シーズンの3分の1が終わって、ワイルドナイツもけが人がいたように、どのチームもけが人が出ます。プレーオフなど大事な試合の前に、けがなどのアクシデントでチーム力が下がるのはやってはいけないマネジメントだと思っています。今日は経験を踏まえて、こういうゲームでしっかりとプレーさせる。これが（武藤）ゆらぎを先発で使った理由の一つです。細かいスキルのミスがありましたが、勇気を持ってチャレンジしていたので評価しています」
──ブレンダン・オーウェンの起用についてはいかがでしょうか。
「（カテゴリBの）外国人だったのでなかなかチャンスがなかったが、チャンスが来たときに生かすマインドセットを持っている選手です。一貫してプレーできればスタメンに入ってくると思います」
──「まだ対応できなかった」ということでしたが、シーズン終盤に向けてどう改善していきたいですか。
「トレーニングするしかないです。スキルやフィットネスでカバーできることはいっぱいあります。パワーで互角に勝負できればベストですが、運動量とか速さとかテクニックで勝てるようになっていかなければいけません」
――田村選手のリーグ戦150試合出場についての評価をお願いします。
「（田村）優は今季、コンディションもいいですし、いいパフォーマンスを見せてくれています。良い状態だと思います。150キャップは記念の試合ですけれども、チームファーストで考えたときに、今日はリザーブに回りました。本人は200キャップくらい記録できると思っているでしょうから、200試合のときは、個人的に忖度してスタメンで使おうと思います（笑）」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン
「今日のゲームに関しては前半も後半もキックのところ、こぼれ球から相手に簡単にゲインを許して、スコアにつなげられてしまいました。システムではないことを一人ひとりがし始めて、自分勝手なプレーになってしまった面もありました。それが相手のスコアにつながってしまったと思っています。一人ひとりがチームファーストでプレーすること。自分自身がやるべきことをしっかりとやることがチームに良い結果をもたらすと思います。もう一度、自分たちにフォーカスしたいと思います」
──今季初先発の武藤選手のプレーについてどう評価していますか。
「スペースも見えていましたし、コミュニケーショも取れていたので、今季初先発とは思えないくらい、しっかりとプレーしてくれたと思います。（田村）優さんとは違うタイプなので一緒にやっていて新鮮で楽しかったです。緊張はしていたと思いますが、ワイルドナイツ戦での先発はなかなか回ってこないので、やってやろうという気持ちが入っていたと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督（左）、坂手淳史キャプテン埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「ご覧になったとおりタフな試合でした。何度もHIA（脳振盪を確認するための一時退場）が行われていましたが適切だったのではないかと感じております。ゲームは肉弾戦となり、サイドラインの（スタッフの）みなさんにとっても大変なゲームだったと思います。チームとしてはこの経験を糧にしてもっと賢くなっていけると考えています」
──「もっと賢くなれる」とはどのような意味での賢さでしょうか？
「いろいろなことが起こった試合だと感じていて、それに追い付くのが大変でした。いろいろなローテーションがありました。フロントローが抜けて14人になっていましたし、難しかったと思っています。観客席のファンに聞いても、何が起こっていたのが分からないシーンも多かったでしょう。そのくらい複雑な試合だったと感じています。素晴らしいラグビーをしているとともに、スクリーンを見る時間が少し長かったのかなと感じました。本当に難しく、複雑な試合でした」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「タフなゲームでした。自分たちの反省すべき部分として、レッドカードのところは自分たちのスキル不足が多かったと感じています。全員で修正していきたいですし、ヘッドコンタクトをしてしまった選手に謝罪して、また次へ向かっていきたいと思います。
ゲームはスクランブルの展開になったので、つながりや反応を表現するのに一番良いゲームになったと思っています。14人の時間が長かったですが、みんながつながり合ってコミュニケーションを取って良いディフェンスができたシーンが多かったです。ゲームを勝ち切ったことに関しては良かったと思います。こういうゲームはなかなかないですし、起こしてはいけないゲームだったと思います。この反省を糧に次に向かっていきたいと思います」
──14人の時間が長い中、どのようなことを意識して戦ったのでしょうか？
「14人になるまでの判定の時間が長かったので、チームでしっかりとコミュニケーションを取っていきました。ブレイクダウンの見極めの部分と良いポジションに立ち続けることを話しました。バックスリーの選手とコミュニケーションを取りました」
──人数が少ないことによる焦りはありませんでしたか？
「藤井（大喜）選手以外は大丈夫でした（笑）。（前半にイエローカードを受けたことで）ハーフタイムに責任を感じていたので、『大丈夫だ』と伝えました。ウチは、そういうことで崩れるチームではないので、それを証明することができたと思っています」
──試合後、150キャップを達成した田村選手とどんなことを話していたのですか？
「『おめでとうございます』と伝えに行ったら、『ここに座れ』と言われたので（笑）。恐縮ですが、隣に座らせていただきました。ゲームのいろいろな話をしまして、田村優選手も150試合も出ていますが、TMOについても意見を交わしましたし、『難しいゲームだったな』という話をしていました」
