2025.02.24NTTリーグワン2024-25 D1 第9節レポート(神戸S 63-21 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第9節(交流戦)
2025年2月22日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
コベルコ神戸スティーラーズ 63-21 トヨタヴェルブリッツ

全員の今季に懸ける熱量が潮目を変えた。大勝を呼びこんだ“熱すぎる8分間”

「ターニングポイントとなるところ」でスティールを決めたコベルコ神戸スティーラーズの山下楽平選手

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が東大阪市花園ラグビー場でトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)と対戦。計9つのトライを奪うなど63対21の大差をつけ、3試合ぶりの勝利を飾った。

フルバックで先発出場した神戸Sの山下楽平。防戦一方の展開を強いられた前半の立ち上がり、彼は最後方から仲間の奮闘を見つめていた。

「ラインとして脅威はなかったんですけど、一人ひとりのキャリーや、体の大きい選手を当ててくるところに相手は活路を見出している感じでした。そこのバトルにプライドをもって戦い抜いていたと思います」

完全に押し込まれた。自陣から抜け出せない。それでも、ヴィリー・ポトヒエッターがボールを奪い、アタアタ・モエアキオラは相手を懸命に捕まえ、ブロディ・レタリックもジェラード・カウリートゥイオティも果敢なタックルで対抗する。トヨタVの再三の攻撃にさらされても、戦う姿勢は崩れなかった。

そして、試合開始からおよそ8分のこと。ブリン・ガットランドのキックでハーフウェイライン付近まで押し上げ、相手の突進を松永貫汰がタックルで止めた。「いいキックといいタックル。ボールスティールは自分の強みだし、それをいい形で出させてもらった」と話した山下楽平がボール奪取に成功する。この試合の‟潮目”が変わった瞬間だ。ようやく敵陣に侵入した神戸Sは、12分のポトヒエッターを皮切りに怒とうのトライラッシュで圧倒した。

「ターニングポイントとなるところをしっかり押えられたことが勝敗を分けました。トヨタVさんもすごくチャンスを作っていましたし、僕たちもチャンスを作りました。それを止め切ったか、スコアし切れたか、その差がスコアに出たかなと思います」

そう振り返った山下楽平は「いいインテンシティー(強度)と、いいモチベーションでディフェンスできて、ターンオーバーからトライを重ねられたことがこの試合を決めたかなという印象です」とも続け、全員でつかんだ確かな成果を誇った。「今後も続けていき、フィニッシュし切る、スコアし切ることにフォーカスしてトレーニングしていきたい」。15番は鋭い視線で次を見る。

誰一人あきらめなかった、キックオフからのおよそ8分間。そこにあったのは、神戸Sの今季に懸ける‟熱すぎる”熱量だった。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、李 承信 共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「こんにちは。全体をとおして良いパフォーマンスは出せたと思います。前半の最初のほうに関しては、うまくいかない流れの中から入り、その流れが悪い状況からそのあとに関しては、しっかりと精度高くフィニッシュすることを積み重ねることができたかなと思います。8分くらいの間に4トライ連続で決めることができました。ディフェンスに関しても、いい瞬間が多かったと思います。ディフェンスからチャンスに切り替えられるのも多く、そこも良かった点の一つかなと思います。試合のラスト20分に関しては正直、すごく雑だったと思います。自分たちのスコアもなかったですし、いいパフォーマンス、いい姿勢、いいマインドセットで取り組めたと思いますけど、まだまだ自分たちは修正しないといけない。成長できる点はあると思います」

──前半、ターンオーバーからの速攻でトライを重ねることが目立っていました。第2節の横浜キヤノンイーグルス戦のようでしたが、特に今節ああいう場面を作り出そうとしてきたのか、今までもやろうとしていたが結果に結びついていなかったのか。どちらでしょうか。

「ターンオーバーに変えることができた瞬間は今日に関しては多かったと思います。基本的に自分たちのマインドセットとしてはターンオーバーからしっかりとプレーしていこうというのは常に意識している一つではあります。試合の最初の10分に関してはすごく精度は悪かったと思いますし、自分たちのラグビーの中でテンポが高いプレーを相手に対してどれだけできるか。それは今週だけではなく常に意識しているところです。ターンオーバーからというのは相手のディフェンスが一番オーガナイズされていない状況なので、今日に関してはそこで選手がいい仕事をしてくれたと思います。ディフェンスがまず良くて、ディフェンスでしっかりとチャンスを作った上で、そのあとを精度高く今日は完遂できたと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
李承信 共同キャプテン

「前半のスタートはなかなか難しい状況から始まりましたけど、しっかり自分たちで我慢してしのげましたし、そこからスコアできて、連続でトライができました。そこで我慢できたのはチームの成長だと思いますし、今日は本当に一瞬一瞬を勝ち切るというチームとしてのテーマがあって、80分後の勝ち負けを考えるのではなく、どれだけ目の前の一瞬にフォーカスして、一人ひとりがその一瞬を勝ち切れるかというところを意識して戦いました。本当にそれが前半のところで体現できたと思います。後半、入りの10分をしっかり意識して、(前節の)クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦でも自分たちの反省のところではあったんですけど、少し受けに回ってしまって相手にファーストトライを与えてしまっていますし、チームとして80分間、どれだけ一貫性をもって相手を圧倒し続けられるか。特に次は埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんが相手なので、後半の自分たちのディシプリンや、精度を続けてしまうと勝利は遠のいていくと思います。もう一回、1週間見直して、成長していけたらと思います」

──前半の苦しい場面で我慢できた要因は何でしょうか。

「一人ひとりがすぐに立ち上がってゲームに戻って戦い続けるところです。グラウンドで寝ている選手は少なかったと思いますし、そこでコミュニケーションをとってコネクトできていたので、あとは、今日プレーヤー・オブ・ザ・マッチになったヴィリー・ポトヒエッター選手もいますけど、自分たちが守って、プレッシャーを掛けるべき選手がプレッシャーを掛けてボールを奪ってくれていたので、本当にコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)のあるべき姿だと思います。特にフォワードが、しっかりフィジカルでも止めてくれていたので、すごくいいイメージだったかなと思います」

──直近の試合は競り負けることが多かったと思うが、特に今週はどこに注力してきたのでしょうか。

「システムのところでは自分たちは正しくていいものをもっていると思いますし、そこでどれだけ自分たちが動き続けられるか。あとは一人ひとりのタックルです。そこの精度さえ上げれば、スマートな選手も多いですし、全員がハードワークできるので今日みたいなゲームができると思います。どれだけシステムを信じて、自分たちを信じてできるかというところだけをディフェンスだけではなくアタックも話をしてきました」

──次節の首位・埼玉WK戦へ向けて意気込みを聞かせてください。

「より自分たちにフォーカスして、今日みたいに自分たちのラグビーができれば、どの相手でも戦えると思いますし、毎週毎週、しっかりレビューしてどれだけ自分たちのラグビーができているか(を確認しています)。いまはコネクトできているので、埼玉WKだからといって臆することなく、自分たちにフォーカスしてどれだけ神戸Sのラグビーができるかが大事だと思います」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(左)、彦坂圭克ゲームキャプテン

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「まず今日の試合結果については非常に残念、そういった心境です。われわれのスタンダードにおいてボールコントロールのところが今日は十分にできていなかったと思います。また、前半で見られたように、ターンオーバーをされてしまうと、それを起点として神戸Sさんが攻め、その結果としてトライを奪われる展開でした。なので、われわれとしては素早くこの学びを改善していかなければなりません。その上でウォームアップ中のけが、チームの司令塔のけがなど、そういったことも相まって痛手となりました。さらにレフリーの判定基準にも正しいか否かに関わらず、より早くアジャストする必要があると感じました。チームにおいては、全員必死に戦っていますが、それでも非常にタフなシーズンになっています。チームとしては細かな改善を続けて、浦安D-Rocks(以下、浦安DR)戦へ向けての準備を進めていきたいと思います」

──交代した松田力也選手はかなり深刻なけがのようにも見えましたが、状態についてはどうなっていますか。

「松田力也のけがの詳細についてはまだチームでも把握できておりません。股関節の脱臼の可能性がありますが、詳細は分かり次第、お伝えいたします」

──マイケル・フーパー選手はおそらく代表のときにライバルとして長く見てこられたと思います。今日のフランカーでのプレーの評価はいかがでしょうか。

「彼が最後に15人制の試合に出場したのは2023年の11月というところで、多少ぎこちない点もありましたが、今日のパフォーマンスに関しては非常に良かったと言えるのではないでしょうか。とはいえ、今日彼がもらってしまったイエローカードは非常に不運だと考えています。そういうところのレフリングの一貫性、もし今日のイエローカードがフーパーに該当するのであれば、ほかにも応用される部分があったのではないかと思います。彼自身は非常にチームをがっかりさせることになってしまったと残念な気持ちになっているかもしれませんが、私自身としては彼が間違ったことをしたとは思っていません。また、彼の本日のパフォーマンスは非常に満足しています。先週、MIRAI MATCHで50分試合に出場しただけというところで、今回は当初は40~50分の出場予定でそのあとにフェツアニ(ラウタイミ)を投入する予定でしたので、彼にとっては非常に大変な試合になったと思いますが、ラグビーではそういうこともあるのではないかなと思います」

──負けが続いているが、いま大事なこととは何でしょうか。

「最も大事なことは、チームとしてコネクトし、ハードワークし、そして、信念をもつことだと考えています。私自身、選手の練習での努力に関しては、これ以上多くを求めることはできないと考えています。ただその上で結果に結びついていないことを考えると、非常にタフな状況ではありますが、スポーツとはそういうものであります。タフさを飲み込んでいくことが必要であると思います。チームは非常にコネクトし、一体となっています。MIRAI MATCHに関しては、不敗となっています。けがに関してもチームとしては不運な状況が続いていますが、われわれとしては信念を持ち続ける、そうすればいつか必ずわれわれの番が来る。そう信じているので、それまで成長、改善を続けていきたいです。

こういった逆境と言われる局面、チームに関してはけがや結果(が要因)というところではありますが、そういった最中でその人の本質が垣間見えると思います。また、そういった局面をチームとして越えることができれば、今後の強みになると考えています。なので、先ほどもお伝えしたように、チームとしてはコネクトし、ハードワークを続け、信念をもつこと、それが一番大事だと考えています」

トヨタヴェルブリッツ
彦坂圭克ゲームキャプテン

「(ヘッドコーチの話と)同じになりますが、ゲームをとおしてブレイクダウンをコントロールできなかったというのが今回、うまくいかなかった点です。まだ試合は続いていくので、ブレイクダウンのところをもう一度、浦安DRとの試合までに修正して、もう一度、われわれのラグビーができるように修正していきたいと思います。ブレイクダウンがうまくいったときは、いいプレーもできていたので、とにかくこのうまくいかなかったブレイクダウンのところを修正できればと思います」

──ブレイクダウンがうまくいかなかったのは、自分たちに原因があるのか、相手のプレッシャーを受けてしまったのか。どちらでしょうか。

「試合を(映像で)振り返って見ていないのでうまく言えないですけど、もうちょっと自分たちの寄りが早くできていれば相手にも絡まれることもなかったと思います。自分たちに矢印を向けて修正していければいいと思っています」

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