NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第9節（交流戦）
2025年2月22日（土）14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 39-10 三菱重工相模原ダイナボアーズ
初先発で初トライ。佐藤健次の『終わりなき戦い』
埼玉パナソニックワイルドナイツの佐藤健次選手。「いま高い壁に挑戦していますが、プレータイムが少しずつ延びてきて、新しい課題も見つかってすごく新鮮です。一歩一歩、成長していきたいです」１月に埼玉パナソニックワイルドナイツ（以下、埼玉WK）へアーリーエントリーされた早稲田大学の佐藤健次が、第9節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦で初スタメンに抜擢された。
第7節の東芝ブレイブルーパス東京戦で後半終了間際に起用されて初キャップ、続く横浜キヤノンイーグルス戦でも途中出場で19分間プレーし、経験値を積んだ。そして迎えた今節は先発としてフィールドに飛び出した。
昨季限りで同ポジションを務めた堀江翔太が引退し、坂手淳史キャプテンのバックアップ育成はチームのミッションだった。
ロビー・ディーンズ監督は「坂手選手にこれまで大きな負荷が掛かっていたので、この選択をした。ここがスタートラインだ」と佐藤を戦場へ送り出した。合流約１カ月でのスタメン起用は、期待の表れにほかならない。
ホストスタジアムの大声援を受けてキックオフを迎えた佐藤は、開始直後の前半4分にモールでがっちりとボールを抱え込むと、その勢いとともに突進してリーグワン初トライ。「周りのサポートによってトライを決めることができたので、自分の喜びよりも感謝のほうが大きかったです」。初先発での初トライで“持っている男”ぶりを証明した。
佐藤のトライでモメンタムを生み出した埼玉WKは力強いアタックで得点を積み上げていった。佐藤はアタックでも鋭いステップを披露するとともに、素早い切り替えからボールキャリアーを追走するなど持ち前のスピードも披露。“走れるフッカー”の片鱗を見せた。佐藤は後半18分までプレーし、坂手と交代。チームは39対10で勝利した。
「少しは特長を見せられたかもしれないですが、甘さがあれば止められてしまいます。まだ足りない部分がたくさんあるので課題を改善してもっと高いレベルでプレーできるようになっていきたいです」
大学時代から試合前のルーティンは、『Mr.Children』の『終わりなき旅』を聞くこと。試合直前のロッカールームで気持ちをぐっと高めてから、ピッチでのウォーミングアップへ出ていくという。「（歌詞の）『高ければ高い壁のほうが登ったとき気持ちいいもんな』のところまで聞いてアップに出ていきます。いま高い壁に挑戦していますが、プレータイムが少しずつ延びてきて、新しい課題も見つかってすごく新鮮です。一歩一歩、成長していきたいです」
日本ラグビー界の至宝・佐藤の『終わりなき戦い』は、ここから始まっていく。
（伊藤寿学）
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督（左）、坂手淳史キャプテン埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「良い結果でしたが、ゲームの前でも、ゲームの中でも変更があった試合でした。齊藤誉哉選手はデビューになりましたし、佐藤健次選手は初めてのスタート（からの出場）ということで、良い結果と経験を得られたと思っています。
一番素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたのは古畑（翔）選手です。タニエラ（・ヴェア）選手も途中出場で良いパフォーマンスを見せてくれました。自分たちのグループにとってもこのような経験は、良い結果になりました。ヴィンス・アソ選手が80分間プレーしてくれて、リアム・ミッチェル選手、ベン・ガンター選手、ジャック・コーネルセン選手も80分間プレーしてくれました。
ジャック・コーネルセン選手は常に質の高いプレーを見せてくれています。一貫性のあるプレーを見せてくれるのがジャック選手です。80分間、毎試合出てくれて、みんながリスペクトしています。
坂手淳史選手がベンチスタートでしたが、良い機会になりました。今日のような寒さのコンディションの中でファンが来てくれて応援してくれたことを心から感謝したいと思います。来週はもっと暖かくなる予定です（笑）」
──９試合で８勝１分。優勝するためのポイントはどこにあるとお考えですか？
「常に前へ進み続けることです。まだ半分ですが、対戦していないチームが二つあります。次はコベルコ神戸スティーラーズさん、１週間空いて、静岡ブルーレヴズさんとの対戦となります。そこが自分たちにとっての半分だと感じています。選手層の厚さやコンビネーションが試されると感じておりますが、進み続けて、学びながら成長していくだけだと思います」
──初先発の佐藤選手の起用の理由を教えてください。
「先発に選んだのは、まず坂手淳史キャプテンに休養を与えたかったというのがありました。坂手選手はこれまで大きな負荷が掛かっていましたので、この選択をしました。佐藤選手はこれまで途中出場でしたが、先発では違う準備をしなければいけなかった。コンテンツを全部頭に入れなければいけないですし、彼にとって良い経験になったと感じています。注目されている選手ですし、大学やジャパン（日本代表）でプレーしてきましたが、いまがスタートです。このリーグワンが第一歩であると感じています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「寒い中、たくさんのファンが来てくれて、たくさんの応援の中でプレーできて良かったと思います。ダイナボアーズのファンの方も試合後にコールしてくれてありがたかったです。お互いに成長していければと思いました。
プレーに関しては、前半は風下で良い判断でプレーできた一方で、自分たちのミスでボールを渡してしまうことも多かったと感じました。良い勢いのときこそ自分たちをリスペクトしてさらに良いアタックにつなげていかなければいけない。後半はメンバーが代わったりとか14人になったりとか、先週に引き続き、難しいシチュエーションだったのですが、先週の経験をしているぶん、良いコミュニケーションが取れたと思います。急きょゲームに入った齊藤誉哉選手も良く頑張ってくれて、コミュニケーションを取りながら良いプレーをしてくれました。良いスタートになったと思います。また来週に向けて準備をしていきたいと思います」
──これまであまり出番がなかった選手が試合で活躍しています。その文化についてどう感じていますか。
「キャプテンとして『非常に頼もしい』の一言ですし、感謝しています。毎週、ゲームに選ばれる選手、出ない選手がいますが、一緒に練習してチャレンジしてくれています。毎週、一生懸命にやり続けてくれている選手がいるのは、チームの強さだと思います。けが人が出たりしていますが、みんなが練習からベストを尽くしてくれているのでロビー・ディーンズ監督から見れば選びやすい状況だと思います。各選手が頑張っていますし、このチームは誰が出てもスタンダードを出してくれている。古畑選手に『緊張しているか？』と聞いたら『早く試合がしたいです』と言ってくれましたし、そのくらい自信を持っていました。その自信をピッチで表現してくれましたし、みんなが準備できていると思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ（左）、岩村昂太キャプテン三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「ワイルドナイツに最初の7分で12対０にされてしまったところはプランどおりではなかったです。そこから自分たちが粘り強さを見せて、特に後半は自分たちらしさを見せることができたと思います。その粘り強さは良かったと思います」
──ジョアぺ・ナコ選手、ダウリング タイ選手が初キャップとなりましたが、評価はいかがですか。
「ヘッドコーチとして若手にチャンスをあげることはこの仕事でうれしいことです。ジョアぺ・ナコ選手、ダウリング タイ選手も今季初めての試合で特別でしたし、自分もうれしかったです。彼らはもっとできると思うので、今後のリーグワンのゲームを楽しみにしています」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン
「最初の入りのところで受けに回ってしまったのですが、粘り強さやあきらめない姿勢などを、随所に見せられたと思います。セットピースのところはちょっと苦労したので、そこは改善のポイントだと思います」
──前半に風上を選択したプランはどういったものでしたか？
「風上を選んだ理由は、すごい風だったので。ゲームの入りからわれわれのラグビーを遂行することと、コミュニケーションを取り続けることを今週１週間やってきました。そこをしっかりと遂行しようという話で前半に臨んだのですが、実際はスキルのところで遂行力が欠けることや、ブレイクダウンのところで目の前の仕事ができずにジャッカル（スティール）されることがあり、うまくいかなかったと思います。
──3勝6敗で後半戦へ向かいますが、どう感じていますか。
「自分の仕事をしっかりとすることが何よりも大事だと思っていて、どういった相手、環境でも役割を遂行することが大事です。試合によっては相手にプレッシャーを受けて遂行できないこともありますが、それをなくして、（試合に出ている）15人が役割を果たすことで、良いディフェンス、良いアタックができて、結果が付いてくると思います。それがわれわれの目指すラグビーだと思っています」
