NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第10節(交流戦)
2025年3月2日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東京サントリーサンゴリアス 22–33 横浜キヤノンイーグルス
『LOVE FOR THE EAGLES』。大事な一戦で横浜Eが爆発させた“愛”
昨季のプレーオフトーナメント3位決定戦で激突した東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)と、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)。その強豪2チームが今季は苦しんでいる。まだ第10節というシーズン半ばではあるものの、今季初対戦はプレーオフ出場圏の6位を懸けての一戦となった。結果は、横浜Eが33対22で東京SGを一蹴。順位も6位から5位へと上げることに成功した。
第7節から3連敗を喫し、これ以上負けられない横浜Eは、沢木敬介監督が自ら、第10節のテーマとして『LOVE FOR THE EAGLES』を設定。チームのために体を張ることを選手たちに求めた。その狙いどおり、勝利への渇望と愛が好結果を生むこととなった。
勝利のためにはいつもと違うことが必要と、行動と結果で示したのは、10番の田村優。「今日はテストマッチ(代表戦)と思ってやりました」と語る名キッカーは、前半と後半、場内がざわつく50m近いロングペナルティゴールに成功。梶村祐介キャプテンも「正直、ちょっと遠いと思いましたが、優さんが『いける』と言ってくれたので」と振り返る難しいキックをきっちり決めるのだから恐れ入る。
田村はプレーで見せるだけでなく、言葉でもチームを鼓舞。ハーフタイムには、先発に抜擢された石田吉平に対し、「タックルできないならピッチを去れ」と叱咤。その石田が後半、まさに体を張ってディフェンスに奮闘し、後半36分には勝利を決定づけるダメ押しトライを決めてみせた。仲間に厳しい言葉を掛けることも、その叱咤激励に結果で返すことも、一つのチーム愛であるのは間違いない。
そしてこの日、横浜Eをけん引した愛といえば、トップリーグ&リーグワン通算100キャップ達成を果たした中村駿太と沢木敬介監督の“師弟愛”だ。二人の関係はU20 日本代表でのヘッドコーチと選手から始まり、東京SGでも監督と選手として関係性を築き、昨季から中村駿太が沢木監督率いる横浜Eに移籍したことで師弟関係が復活。節目の100キャップをともに迎えることができた。
愛弟子の大台到達に、沢木監督が手放しで褒めることはない。むしろ、試合後にはこんな注文をつけていた。
「まだまだ彼が望んでいるポジションには到達できていない。もっとハングリーになって、インターナショナルの試合に出られる選手にならないといけない。もうかれこれ10年以上の長い付き合いですけども、これからもまた、僕に怒られ続けるんじゃないですか。彼はMですね笑」
(オグマナオト)
東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ
「両チームのファンのみなさん、応援ありがとうございました。自分たちでしっかりチャンスを作れた中、最後の22m内での自分たちのエラーによって前半のスコアにつなげられませんでした。後半もワンスコア以内に追い付いたのに、そこから自分たちのエラーが起きて結果につながりませんでした。しっかり、自分たちに矢印を向けて、次節に向けて勝つ準備をしたいと思っています」
──復帰戦となった松島幸太朗選手の投入のタイミングと今日の出来について聞かせてください。
「復帰明けで出すタイミングを見計らいながらコーチ陣とも話して決めました。経験があるだけに、フィニッシャーとして活躍してくれたと思います。ここからゲームを重ねて、彼のコンディションもどんどん上げてもらえればと思います。ボールの周りでプレーに参加すれば、いい選択肢をもっている選手です。これからプレータイムを増やして、もっと彼らしいパフォーマンスをしてくれることをチームは期待していますし、ファンもそれを楽しみにしてほしいと思います」
──松島選手投入時は好調の河瀬諒介選手がフルバックからウイングに回る形でした。今後も同じような起用法ですか。
「いま、大きな意味でバックスリーの仕事に違いはなく、背番号だけの違いだと思っているので、誰がどこに出ても一緒にプレーする上で支障はないと思います。今日の試合に関しては、バックスリーのバランスは良かったと思います」
東京サントリーサンゴリアス
流大ゲームキャプテン
「試合内容(の感想)はヘッドコーチとまったく同じです。22mに入ったときの遂行力がなく、この点差になって負けてしまいました。本当に力負けかな、という印象です。解決策は自分たちにしかないと思っていますので、バイウィークも使いながら、次の試合に向けて、またチーム一丸となって頑張りたいと思います」
──最後の10分間、相手は得点につながり、自分たちがトライを取れなかった要因はどこにあると分析しますか。
「何回も同じレビューをしていますけど、やっぱりプレッシャー下での遂行力です。これはチームとしてすごく準備してきたことではあるのですが、個人の責任もすごくあると思います。でも、個人の責任というのはチームの責任であって、そこはサイクルになっていく部分です。本当にチャンピオンを目指すのであれば、22mの中の遂行力を上げないといけません。いま一度、チームとしてチャンスになったとき、そしてプレッシャー下での遂行力を今後見直していかないといけないかなと思います」
横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「なかなか望む結果の出ない試合が続いて、今週はしっかり勝ちにこだわらないといけないということをあらためて考えました。とにかく、しっかりチームプレーをして、勝ちにこだわって、自分たちのやってきたことをやり切る。そういうマインドで1週間準備してきました。とにかく、やってきたことをしっかりやり切る。それで、もし結果がダメだったらもうお手上げだと思います。『しょうがない』という言い訳を作らないように、やるべきことをやり切る。みんな、そういう気持ちが入っていた。これだと思います。まだまだ改善するポイントはたくさんありますけど、ポジティブな面もありましたし、僕が見ている限りでは『このゲームに勝ちたい』という気持ちが伝わってきたので、ここからまた続けていけるように準備したいと思います」
──「勝ちにこだわらないといけない」と思ったきっかけはなんでしょうか。
「僕は1週間、いろいろと考えて、結局、突き動かすものってやっぱり気持ちだと思うんです。ただ、『勝ちたい気持ち』があってもそれが空回りしているとネガティブな結果にもつながる。(勝ちたい気持ちを)うまく操れるようになってくると、チームとしてここからもまたレベルアップできる。先週の敗戦もそうだし、負けている試合を何度も映像で見返すと、やっぱり最後、相手のほうが勝ちたい気持ちが強いな、というのを感じました」
──中村駿太選手のトップリーグ&リーグワン通算100キャップ達成を長い付き合いの監督はどのような受け止めですか。
「時が過ぎるのも早いなと。あとは、われわれのチームはこれまで、誰かのメモリアルゲームでずっと負け続きだったんです。やっと勝つことできた。これに尽きます」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン
「今日この試合は、どれだけ一人ひとりがチームのためにプレーできるか、というところをマインドセットにおいて試合に入りました。結果、勝つことができました。ただ、その中でも改善しないといけないポイントがたくさんあったので、自信をもっていいところとしっかりと改善しないといけないところを、もう一度矢印を自分たちに向けて準備し直したいと思います」
──大事な場面でいいプレーが出せた要因は何だと考えていますか。
「『ライザーズ』と呼んでいる、その週のメンバー外選手たちの頑張りですね。彼らが試合メンバーに対してすごいプレッシャーを掛けてくれるようになったし、自分たちもそのプレッシャーを超えようとする。普段から、ゲームと同じようなシチュエーションとプレッシャーの中で準備できているのは大きかったと思います」