NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第10節(交流戦)
2025年3月1日(土)12:00 Jヴィレッジスタジアム (福島県)
浦安D-Rocks 31–36 トヨタヴェルブリッツ
今季ベストゲームの背景に、それぞれが意識した“激しさ”というトヨタVらしさ

第9節終了時点で、12位・浦安D-Rocksと11位・トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)のゲームは、トヨタVが勝利。連敗を『5』で止め、今季2勝目をつかみ、10位に浮上した。
怒とうのアタックだった。キックオフから1分足らずでラインアウトの流れから中央を切り裂き、ジョシュ・ディクソンが先制トライを奪うと、前半5分と同11分には彦坂圭克が連続トライ。すべてのコンバージョンゴールも成功させ、わずか12分で21点のリードを奪った。結果的にこの電光石火のトライラッシュが、約1カ月半ぶりの勝利を手繰り寄せた。
試合後の会見、スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ/D.O.Rは開口一番に選手たちを称えた。「特に前半の20~30分間は3トライを獲得し、ボールを大事にして、いいディフェンスもできていました。今季の中でも非常にいいラグビーができたのではないかなと考えております」。そして、勝つために重要としていた、“ボールを大事にすること”と“ボールを奪い返すこと”に対しては「今季の中でもベストでした」と目を細めた。
その“舞台裏”を明かすのは、この苦しい期間、負傷離脱する姫野和樹に代わりゲームキャプテンを務めることが多かった彦坂だ。会見中、真横でヘッドコーチの言葉を聞いていた2番は「この1週間、『トヨタVのラグビーをしっかりと自分たちで体現しよう』『(特定の)誰かではなく、一人ひとりがトヨタVのラグビーである激しさを出していこう』と言っていました」と語り、自らが先頭に立ってその言葉を体現するかのように今季初の1試合2トライでプレーヤー・オブ・ザ・マッチにも輝いた。
「うまくいかないことが続いていたので(この勝利は)本当にうれしいです。これを1回で終わらせずに積み重ねていけるように頑張っていきたいです」
後半戦の巻き返しへ。JヴィレッジスタジアムでトヨタVの反撃への号砲が確かに鳴り響いた。
(須賀大輔)
浦安D-Rocks

浦安D-Rocks
グレイグ・レイドロー ヘッドコーチ
「もちろん、結果に対しては残念に思っています。序盤で21点を許してしまったところで言えば、自分たちで試合展開を難しくしてしまったところがあります。そのあとは、いいパフォーマンスを残せたと思いますし、スペースを見つけていいアタックをできていたと思いますが、いい試合の入りをできなかったところで試合を決定付けてしまったと思います」
──後半はスコアを見ても改善されたと思いますが、ハーフタイムにはどんな指示を出したのでしょうか。
「ラインブレイクのところも含めてもっと我慢してトライを取り切ろうと伝えました。うまく修正して後半はいいパフォーマンスを残せたのですが、試合の最後、カギとなる瞬間でいいパフォーマンスを残せなかったところに尽きます」
──シーズン後半戦の戦いで最も強化していきたいところはどこでしょうか。
「80分間プレーし続ける一貫性の部分です。運も必要になってきますが、ポジティブなプレーはできているので、あとは重要な瞬間でどれだけ決定付けるプレーができるかに尽きると思います」
浦安D-Rocks
藤村琉士ゲームキャプテン
「最初に3トライを取られるとどんなにいいチームでも勝てないと思うので、そこに尽きると思います。入りの部分で負けてしまう、引いてしまうと勝てません」
──試合の入りの部分でトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)の勢いなどが予想以上のものだったのでしょうか。
「相手というよりは自分たちですかね。アンラッキーなところもありましたけど、自分たちの問題だと思います」
──今日のスクラムの印象を教えてください。
「全体的にはいいスクラムを組めていたと思いますけど、後半、相手ボールのときにコラプシングが多くなってしまいました。難しい部分でもありましたけど、そこは自分たちでアジャストしていかないといけないですし、結果的にそれが得点につながっているシーンも多かったので、フロントローとしては全体的に直していかないといけないと思います」
トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ
「勝てたことには非常に満足しています。特に前半の20~30分間は3トライを獲得し、ボールを大事にして、いいディフェンスもできていました。今季の中でも非常にいいラグビーができたのではないかなと考えております。しかし、後半に関しては最後の20分では、スクラムでペナルティを取られてしまったりラインアウトでボールを取られたりしてしまう場面がありましたので、そこは今後の課題だと思います。とはいえ、選手は非常にハードワークしていますので、(彦坂)圭克ゲームキャプテンをはじめとして、チームが勝利で報われたことは非常にうれしく思います」
──先日、勝つために必要なこととして話していた、ボールを大事にすることとボールを奪い返すことが、今日の試合ではよくできていたと思います。
「その面については今季の中でもベストだったと思います。非常にアグレッシブにプレーしていましたし、チームとしては待たずに前に出る姿勢が見られました。ボールキャリーに関してはフットワークを使い、いい形でプレーし、サポートする選手たちもそれぞれやるべき仕事をやり切っていました。その結果によりファーストボールが出るとディフェンスとしても守備をするのが非常に難しい局面に追い込むことができます。その中でトヨタVとしてはチャンスを生かすことができたので、その面に関しては満足しています」
──非常に難しい時間帯での出場だったと思いますが、アーリーエントリーである青木恵斗選手と小村真也選手の投入時間は当初から決めていた時間だったのでしょうか。
「事前にプランを完全に立てていたわけではなく、試合の流れに応じて判断していくものだと考えております。二人に関しては非常に若い選手ではありますが、その中でもチームとしては信頼しているので、彼らを投入した状況に対しては満足していますし、彼らのパフォーマンスは誇りに思います」
──5連敗中、ハンセン ヘッドコーチがフラストレーションを選手に向けなかったと思います。どうしてですか。
「私たちとしてはこういう局面を一緒に越えているという認識をもっています。もちろんフラストレーションを抱える場面は私にもありますが、それは選手も一緒です。ラグビーというのはチームスポーツでありコーチと選手、また選手とコーチ、そこに壁はなく、チームとして一つひとつのことに向き合っています。なので、私としてはそういうフラストレーションをチームに対して出したいとは思いません。
今季に関しては、トップチームでプレーしていた選手が12人もけがをしてしまい、その中で一貫してプレーした10番の選手も離脱してしまうという非常に困難なシーズンになっています。その結果、若手が試合に出る状況が続いていますが、そういう中で必要なのはサポートです。
チームに関しては勝っていようが負けていようが関係なく、ハードワークが必要だと考えています。もちろん、選手にもフラストレーションを感じる場面はありますが、それを公の場面で出すことはありません。全員が同じ残念な気持ちをもっているからこそ、フラストレーションは生まれてくると思っています。それはコーチだけでなくスタッフ陣やプレーヤーも一緒でフラストレーションが生まれるのはチームのことを大切に思っているからだと思います。なので、われわれとしてはともに対処していき、チームとして『Together』ということを大事にしていますし、一緒に乗り越えていくことが大事だと考えています」
トヨタヴェルブリッツ
彦坂圭克ゲームキャプテン
「まず勝てたことがうれしいです。ここ数試合は入りのところがうまくいかなかったですけど、今日は先に僕たちのほうからトライを取れたことは良かったと思います。試合をとおしては反省点も多いと思いますけど、バイウィークを挟んでしっかりとステップアップできる期間なので、いいエナジーを作り出していきたいと思います」
──試合の入りが良かったと思いますが、どういう声を掛け合っていたのでしょうか。
「1週間とおして言っていたのは、『トヨタVのラグビーをしっかりと自分たちで体現しよう』と。誰かではなく、自分たちの一人ひとりがトヨタVのラグビーである激しさを出していこうと言っていました。それを試合の最初から出せたことは素晴らしかったと思います」
──ブレイクダウンのところなど、泥臭いプレーが印象的でした。
「前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦ではそこが反省点だったので、しっかりとボールを大事にしようという話は1週間していました。それがいい結果につながったと思います」
──ヘッドコーチのコメントを受けて、この勝利の価値はどう考えていますか。
「本当にうれしいです。うまくいかないことが続いていたので、バイウィーク前にしっかり勝って終われたので良かったです。これを1回で終わらせずに積み重ねていけるように頑張っていきたいと思います」