NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第12節(交流戦)
2025年3月22日(土)15:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 42-31 埼玉パナソニックワイルドナイツ
いぶし銀の活躍を見せた仕事人。首位攻防戦でチームを勢い付け、勝利を呼び込む
東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は3月22日(土)、秩父宮ラグビー場で埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)との首位攻防戦に42対31で勝利。勝ち点を46に伸ばして首位に浮上した。
16,937人の観客を集めた注目の一戦で、BL東京の選手たちが躍動した。圧巻の運動量で体を張り続けたリーチ マイケルキャプテンは「この試合の勝利は僕らにとってはすごく大きいです」とうなずき、ラインアウトで相手ボールを何度も奪ったワーナー・ディアンズは「埼玉WKはすごく良いラインアウトをもっているので、そこにプレッシャーを掛けてスティールできたのは自信になります」と胸を張った。
そして、BL東京に勢いを付けたのは眞野泰地のいぶし銀の働きだった。前半2分に乱れたパスを拾ったジェイコブ・ピアスからオフロードパスを受けると、細かいステップで相手ディフェンスをかわしてトライライン寸前までボールキャリー。その後のシャノン・フリゼルの先制トライにつなげた。
「フットワークが良くなってきました。今季は少し自信が付いた部分でもあるので、それを生かせていると思います」
埼玉WKの12番、ダミアン・デアレンデの身長190cm、体重105kgに対し、眞野は身長172cm、体重88kg。それでも、抜群の集中力と判断力でチームに貢献している。
前半20分には相手のショートキックがこぼれると素早く反応して左足で大きなキック。自陣から相手陣にボールを運んで大歓声を受けると、同24分には味方がボールを奪われた直後にディフェンスラインを離れ、右ライン際で相手キックを落ち着いてキャッチして大きく蹴り返した。
どちらも派手なプレーではなかったが、眞野の視野の広さと冷静な判断が光ったシーンだった。
「予測していたというか、蹴ってくると分かっていたのでカバーした感じです。スペースや相手の動きを見てその場で判断しています」
東海大仰星高校ではフランカーを務め、東海大学ではスタンドオフ、BL東京ではセンターと役割を変えてきた眞野。ポジションは変わっても、試合に臨む姿勢は変わらない。
「今日はもう本当に仕事をしました。自分が目立つのではなくて、とにかく仕事をしておけば良い流れになると思ったので」
歴史あるクラブに伝わる“東芝らしさ”を継承する27歳の仕事人。夕景の秩父宮ラグビー場に、眞野の晴れやかな笑顔が輝いていた。
(安実剛士)
東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「まずは勝利を収めてくれた選手をこの上なく誇りに思います。素晴らしい一週間の準備をしっかりと結果につなげてくれました。選手たちはプレッシャーをはねのけて、キックオフからすごく良い試合の入りができました。ラインアウトにもプレッシャーを掛けて、スクラムも安定したことで、チームのDNAであるアタックし続けるラグビーができて、見ている方々にインスピレーションを与えられたかなと思います。たくさんのファンの前でこのようなパフォーマンスができてうれしいです」
──ラインアウトディフェンスや、バックラインを使ったパスからのトライがありましたが、準備はどのようにしましたか。
「コーチ陣が非常に良いプランを立てて、選手も実行することを楽しんでくれました。ラインアウトもワーナー・ディアンズらが空中で競り合うことを楽しんでやってくれました。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)はセットピースが良いと分かっていたからこそ、真っ向勝負しようと決めていました。そのための準備と方法論を用意できて戦えたのが勝利につながったと思います。コーチ、選手を含めたみんなの努力が形になりました」
東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン
「ファン目線で言えば期待どおりだったと思います。(リーグで)トップの2チームが良いラグビー、楽しいラグビーをできたと思います。この試合はニュージーランドでもヨーロッパでも放送されたということですが、日本ラグビーの良さを見せられたと思います。
今週の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)のフォーカスは、自分たちのラグビーに集中することと、ディシプリン(規律)とエクスキューション(遂行力)でした。どちらも良くできたと思います。
この試合の勝利は僕らにとってはすごく大きいです。まだ終わりではないのでこれからも強化して、終盤に向けて仕上げていきたいと思います」
──ディフェンスも良かったですが、いかがでしたか。
「ディフェンスは良かったと思います。埼玉WKはギャップを狙って攻めてくるチームですが、よく対応できました。タックルも最初から一発で倒す意識でできていたと思います。みんながハードワークできて、タックルが苦手な選手もいません。タックルしたい選手が多すぎて、みんながラック周りに集まることもあります」
──ディビジョン1で1位になったことについてどう感じていますか。
「感想は特になくて、BL東京らしいラグビーをして勝つ、そして結果にこだわってやっていきたいと思っています。毎試合どうやって勝つか、必死になってやっています。
ファンの声援は大きいです。ファミリーロード(試合後に選手とファンが触れ合うイベント)によく来るファンの顔も覚えてきました。府中だけではなくて、たくさんのファンがいてくれて、リーグワンでプレーしていて楽しいです」
──埼玉WKとの対戦で意識したのはどんな部分ですか。
「埼玉WKはアンストラクチャー(崩れた局面)からの攻撃が得意で、規律も守れるチームです。『そういうチームをどう崩すか』と考えて、自分たちの準備と遂行力がハマったのではないかと思います。自信をもって臨めた試合でした。前回戦ったときに同点だったのが良かったかと思います」
──ラインアウトディフェンスで良かった点はどこですか。
「事前準備です。試合に出ないメンバーが一週間をとおして埼玉WKのラインアウトを真似してやってくれて、そのとおりでした。どこに飛んでくるか、フッカーやジャンパーのクセを考えて、ジョシュア・シムズ フォワードコーチが立てたプランが当たりました」
──プレーオフトーナメントに向けた自信はいかがですか。
「チームとしてやっていることが間違っていない、というぐらいです。同じことをやって勝てるわけではないので、チームとして成長していきたいです」
──埼玉WKのレギュラーシーズンの連敗は2005年以来で19シーズンぶりということですが、この点について感想はありますか。
「僕らからしたら、埼玉WKはずっと上にいるのでアンダードッグの気持ちでやっています。逆転するためには自分たちが王者だという気持ちをもつことも大事なので、そろそろ相手を上に見るのを変えてもいいのではないかとも思います。
僕らは少しずつ復活している段階なので、まだハングリー精神をもって臨まないといけません。まだまだ必ず強くなります」
埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「今日は自分たちが望んでいた結果とはならなかったのですが、惜しいところまではいけたと思っています。大きなポイントで言うと、自分たちで負けることに貢献してしまった部分がありました。セットピースが良くなくて、ボールを保持していないと勝てないことが分かりました。
BL東京はリッチー・モウンガら優秀な選手がいて、ターンオーバーから得点につなげる能力に優れています」
──ラインアウトの課題はどの部分に感じていますか。
「ラインアウトはBL東京が良い仕事をしてきたと感じていて、それに対して自分たちがうまく対応できませんでした。ラインアウトのテンポやリズム、オプションの使い方をしっかりすることができず、それがゲーム中ずっと続いたので反省しなくてはいけません。また戦うチャンスがあれば、その部分をしっかりやっていきたいと考えています」
──これまではボールの保持率が低い展開になっても勝ってきましたが、今日はできなかったのはどのような理由があると考えていますか。
「ポゼッションについては数値を見てもらえばと思いますが、試合の中で耐えることができた部分もあります。すべてが悪かったわけではなくて、後半は21対14で上回っていました。いつも言っているのですが、自分が思っている以上に悪くもなく、自分が思っている以上に良くもないのだと思います。ただセットピースは相手にスキを与えてしまったので、改善しないといけません」
──レギュラーシーズンの連敗は2005年以来で19シーズンぶりとなりますが、どのように受け止めていますか。
「負けはただの負けであって、自分たちは負けることを楽しいとは思っていませんし、これからも負けることを楽しいとは思わないでしょう。ただ、自分たちとしては連敗や連勝という記録でチームを見ていません。この一週間で勝てたかどうか、と考えています。また次の一週間が始まって、そこでは勝つチャンスがあります。数字については報道陣のみなさんにお任せしますが、自分たちは1試合、1試合をどう戦うかが重要です」
──リーグ全体のレベルアップを感じていますか。
「間違いなくそう思います。また、5週連続で試合をする日程もこれまでとは全然違います。けが人が出ていて、勢いに乗りづらいと思っています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
大西樹選手
(※坂手淳史キャプテンは負傷のため欠席)
「前半に相手のやりたいラグビーをさせないようにスタートしましたが、自分たちが後手に回ってしまいました。後半は切り替えて、自分たちからプレッシャーを掛けて良いラグビーができたのですが、試合の入りの部分が良くなかったというのが率直な感想です」
──試合の立ち上がりにうまくできなかった理由はどこにありますか。
「(BL東京は)もちろん強いチームなのでプレッシャーもありますが、それを受けて『静かになってしまったな……』とベンチから見ていて感じました。選手同士で話して解決できることもありますし、自分の役割を味方に伝えれば解決できるというシンプルなことなので、また月曜から修正してやっていきます」
──レギュラーシーズンの連敗は2005年以来で19シーズンぶりとなりますが、どのように受け止めていますか。
「そんなに負けていなかったんですね。やっぱり、こういうときこそシンプルなこと、自分たちが練習でやってきたことを、次に向けてまた月曜からチーム全員でやれれば絶対に勝てると思っています。今日は負けましたが、最後に優勝して終われるように基本的なことをしっかりチームでやっていきます」
──これまでは前半にリードをされても逆転してきましたが、今日は何が違ったのでしょうか。
「リーグ全体のレベルもすごく上がってきていて、どのチームもすごく強くて、簡単に勝てる相手はもういません。今日はプレッシャーを受けた中でも自分たちのラグビーができるか、というところで、最後にプレッシャーで自分たちがミスをしてしまいました。これからもリーグ戦は続くので、ここからプレーオフトーナメント決勝までに仕上げていきます」