2025.03.24NTTリーグワン2024-25 D1 第12節レポート(トヨタV 22-31 相模原DB)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第12節(交流戦)
2025年3月22日(土)14:40 岐阜メモリアルセンター 長良川競技場 (岐阜県)
トヨタヴェルブリッツ 22-31 三菱重工相模原ダイナボアーズ

結束力でつかんだ今季初連勝。安江祥光の150キャップは相模原DBにとって最高の時間となった

試合後、安江祥光選手の公式戦通算150キャップ達成を祝った三菱重工相模原ダイナボアーズの選手・スタッフ

試合開始40秒あまりでトライを奪うなど、試合を優位に進めた三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)が、追いすがるトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)を振り切って勝利。順位を7位に上げた。

今季初の連勝、そして古巣のトヨタVからシーズン2勝の“ダブル”を奪ったことで、相模原DBのキャプテン岩村昂太は思わず相好を崩した。ただ、それ以上に岩村がうれしく思えたのは、尊敬する先輩、安江祥光のトップリーグ時代を含む公式戦通算150キャップを勝利で祝えたこと。「みんなが仕事をして、ヤスさん(安江)に最高のプレゼントをあげることができたのがすごくうれしい」と胸を張った。

その安江は1984年生まれの40歳。足掛け18年で達成した大記録である。

「僕自身、150キャップってそんなに意識していなかったですけど、みんなから『おめでとう』と言われて、スタンドでもダイナメイト(相模原DBのファンの呼称)がお祝いしてくれて、ちょっとこみ上げてくるものがありました」

この記録を達成するまでに苦労もあった。2021年のリーグワン発足時、チームはディビジョン2からのスタートだった。年齢を考えると一区切りをつけてもおかしくはなかった。すぐにD1に昇格したが、なかなか勝てない時期もあった。

その中で安江はチームのために体を張り、若い選手と同じトレーニングをこなして背中を見せ続けた。グレン・ディレーニー ヘッドコーチは「彼はどこでも勝負をする強いマインドをもっている。体も丈夫で150キャップを達成したことは、チームの誇りだし、チームの歴史」だと最大限の賛辞を贈る。

試合後にはみんなで安江の顔写真入りの記念Tシャツを着用。普段から真面目なディレーニー ヘッドコーチも着ていたことに安江も驚いた。

「僕はやめてくれって言ったんですけどね(笑)。でも本当にみんなに感謝しかないですし、今日は勝利に対する気持ちを感じました。僕も命を懸けてラグビーをやってきてよかったなと。『おやじ』とか『おっちゃん』とかって若手にからかわれますけど、一緒に練習を乗り越えてきて本当によかったと思います」

相模原DBが連勝を手にした要因は、”結束力”にあった。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(左)、加藤竜聖選手

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「まず、三菱重工相模原ダイナボアーズさんにおめでとうと伝えたいです。われわれとしては非常にフラストレーションが溜まる内容のゲームでした。ディフェンス、また実行力という点で、ときにすごく良い姿勢があったものの、同時にそうではない場面もあったと思います。

そのほかではレフリーの一貫性の無さに関して、故意のノックオン(ノックフォワード)から生まれたトライもあったと思います。もちろんわれわれがコントロールできるのは、アタックとディフェンス両方の実行力ですが、それと同時により高いレフリーの一貫性を求めたいと思います。今日の内容に関しては非常に残念なものでした。私自身、長い間ラグビーに関わってきましたが、現在の印象ではレフリーの育成、そういった面が十分ではないと感じております。もちろんレフリーにつきましては、日ごろにほかの仕事や業務をしているところは理解をしていますが、リーグにはレフリーの育成により注力することを求めていきたい。毎週のようにレフリーから『これをミスしてしまった。申し訳ない』という連絡が来ることがあります。でもそれでは選手、ファンの方々が求める基準に達していないと考えます。とはいえ、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)につきましては、今日はディフェンス、また実行力にソフトな部分があったと思います」

──チャンスでミスが発生する場面が多かったがメンタルの問題なのでしょうか。

「結果ということに関してのプレッシャーが掛かったとき、また勝つチャンスが見えたときに、タフな状況に追い込まれてしまっていることがあります。それはなぜかというと、いま実行することではなくほかのことに囚われてしまうことがあるからです。そういう状況を踏まえて、現在シニアプレーヤーの多くにけが人が発生していること、そういったメンバーはチームの一体感を作る要ですが、彼らがいません。現状としてチームに関しては痛みを伴っていますが、それと同時に経験値を作っているとも言えます。月曜日にレビューをして成長していかないといけないと思っていますが、より早く学ばないといけない箇所もあると実感しています。

私自身長くさまざまなチームでコーチをしてきましたが、選手の練習に対する努力というところに関しては非常に誇りに思っています。とはいえそれが現在結果につながっていない、またそういった状態が積み重なってしまったこと、敗戦が続くとチームとしては非常に苦しい状況になってしまう。それがいまのチーム状況であり、われわれとしてはそれを乗り越える手段を見つけなければなりません。選手のハードワークが足りていないということではありません。現状を受け入れて成長につなげていきたいと思います」

──内容が良くても勝てない要因はメンタルにあるのか、技術にあるのか。どう考えていますか。

「両方です。実行力が発揮できていないときの要因は二つあります。それは相手のプレッシャーからきているのか、もしくは自分たち自身にプレッシャーを掛けてしまっているのか。後者に関しては、現在チームに結果が付いてきていないことで、より自分たちに重圧を掛けてしまう状況にあります。同時にチームは現在非常に若いメンバーが出ています。姫野(和樹)や(ウィリアム・)トゥポウが離脱中、(アイザイア・)マプスアは今節ようやく復帰しましたが、そうしたシニアプレーヤーがいない。そういったメンバーがよりチームのパフォーマンスを発揮するための要です。試合に勝てばうまくいくようなこともありますが、勝てないままの状況になると、ケーキに砂糖がないような、味の無い状態になってしまうと考えています」

──アーリーエントリーの青木恵斗選手や小村真也選手が光を与えてくれています。ただ、ほかの選手のアピールも必要だと思いますが、どう捉えていますか。

「パフォーマンスを高めないといけないのは、選手だけではなくコーチ、スタッフ、全員に考えられることです。それがうまくいっていない現状を踏まえると、そう考えるしかありません。名前が出た二人に関して、ここまで2、3試合はベンチからのスタートもあった中で非常に好調ですが、まだまだ伸びシロがあります。とはいえチームとしては個人に焦点を当て過ぎずに、チームとして、組織として話をしていくことが重要です。その話をしたときに個々でやるべきことに取り組んでいく。そういった必要性を感じています。現在、チームに関わるすべての人がハードワークしていますが結果が付いてきていない。それが圧力を積み重ねています。繰り返しになりますが、アーリーエントリーの二人に関しては非常にいいキャリアのスタートを切ったと思います」

トヨタヴェルブリッツ
加藤竜聖選手

(※マイケル・フーパー ゲームキャプテンはけがの治療のため欠席)

「前半、チームとして良い入りをしようと話をして、すごく良いディフェンスやアタックもできていましたが、ここぞというときにちょっとソフトになってしまいました。でも本当に1試合をとおしてみんながアグレッシブに前に出て、ディフェンスをしてくれたので、そこは誇りをもって、いまの課題を解決するために、試合はまだ続くので、1週間いい準備をして次の試合に備えたいと思います」

──チャンスでミスをする場面が多かったですが、どう振り返っていますか。

「1週間本当に良い準備をして、月曜日から試合を逆算してしっかり準備することはできていると思います。ただ、ここぞという場面での実行力というところで、ちょっと欠けてしまっている部分があって、そこを来週の試合に向けて切り替えて、しっかりやり切りたいと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「また前半と後半でまったく違う展開のラグビーでした。前半はわれわれもいいトライを何個も取りましたが、後半は相手が勢いに乗って、それを止めることはとても難しかったと思います。ちょっと心配になるところもありましたが、運よくその勢いを止めることができて、自分たちが勝つことができました。相手も素晴らしいチームですし、後半は特にすごく良いプレーが目立って、あと数分あったら全然違う展開だったかもしれないです。決して簡単な勝利ではなかったと思います」

──安江祥光選手が公式戦150キャップを達成しましたが、彼はチームにとってどういう存在ですか。

「彼はどこでも勝負をするというマインドがとても強く、先週も今週も先発に選んだ理由はそこにあります。最初からエネルギー、粘り強さが必要だと思って使いました。今週も予定どおりにハーフタイムで交代しましたが、前半に流れを作っていいスタートにつなげ、自分の仕事を果たしてくれました。彼は体がすごく丈夫で、日本で150キャップは決して簡単なことではないですけど、それを達成してくれたことはチームの誇りですし、チームの歴史の一つになるので、チームとしてとてもうれしく思っています」

──追い上げられたあとの後半24分に攻撃で粘りながら奪ったトライは、今後チームにどのような影響を与えると考えていますか。

「リーグワンで勝つために何が必要なのか学ぶ大事な試合だったと思います。われわれも何年もディビジョン1にいるわけではないので、まだ学んでいるところが多くあります。どのチームも素晴らしい選手、素晴らしいコーチがいますが、自分たちのいいプレーもあれば、まだ一貫性が見せられていないところもあります。何をすれば一貫性を見せられるのか、毎週の試合で経験するしか学び方はないと思うので、そこで経験を積んで自分たちも学んで成長を続ける、その繰り返しが大事だと思います。今日の試合もその一歩だったと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「まずタフなゲームを勝ち切れたことをすごくうれしく思います。ヘッドコーチが言ったとおり、前半と後半で内容が違う展開で、後半に関してはコネクションが切れたり、ラインアウトをうまく遂行できなかったり、そういったところから相手に流れを渡してしまい、連続トライを許してしまいました。でもそこから自分たちの目の前の仕事を一つひとつやっていくことにフォーカスした結果、勝ち切ることができたので、ズルズルと流れを相手に持っていかせなかったことは、成長したポイントだと思います」

──安江選手が公式戦150キャップを達成しましたが、彼はチームにとってどういう存在ですか。

「普段からクラブハウスやグラウンドで、行動でいろいろな経験を僕らに伝えてくれる選手です。実際にグラウンドでもたくさん体を張ってくれて、われわれに勢いをもたらしてくれます。ロッカールームで選手のみんなに『ヤスさん(安江)の150キャップだし、最高のプレゼントを渡すために、一人ひとりが目の前の仕事をしよう。80分経ったときにお客さんに最高のプレゼントをしよう』と話してグラウンドに出ていきました。実際にみんなが仕事をしたことで、ヤスさんに最高のプレゼントをあげることができてすごくうれしいです」

──後半、相手に追い上げられたときにどんな話をしましたか。

「今季は流れが悪くなってからそのまま逆転を許すシーンが多くありました。そういった経験を経て、流れが悪くなったらその流れに乗らずに、自分たちの仕事にフォーカスをするということを最近は意識していて、実際に先週の東京サントリーサンゴリアス戦も流れが悪くなる時間がありましたけど、自分たちの仕事にフォーカスすることで流れを取り戻しました。今回も同じような発信をして、『目の前の仕事を一つひとつやっていこう、そうすれば必ずいいことが起こる』と話しながら修正をしました」

──古巣のトヨタVから2勝です。

「うれしいです。今季(トヨタVから)2勝できたことがすごくうれしいですし、引き続き頑張っていきたいと思います」

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