NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第14節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年4月5日(土) 12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
横浜キヤノンイーグルス 33-22 浦安D-Rocks
“伏見のタックル”と見事なトライ。絵になる男が今季初出場で初めてのPOTM
ホストゲーム2連戦の2試合目に臨んだ横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)が、昇格組の浦安D-Rocks(以下、浦安DR)を33対22で撃破し、連敗を3でストップ。終了間際に浦安DRにトライを許したため、惜しくもボーナスポイントは逃したが、苦境を脱する4試合ぶりの勝利を収めた。
今季初出場・初先発で12番を背負った南橋直哉の代名詞と言えば、「伏見(仕込み)のタックル」。南橋自慢のタックルは、出身校の伏見工業高校(現在は伏見工業高校と洛陽工業高校が合併し、京都工学院高校)在籍時代に培ってきたスキルだ。前半6分には、オテレ・ブラックのアタックを果敢なタックルで阻止し、同31分にもサム・ケレビのアタックに食らい付いた。特に後者のタックルは、試合前からイメージしていたとおりに体が動いたという。
「相手のサム・ケレビ選手は僕よりも体が大きくて、世界的に有名な選手ですが、絶対に止めるというのは決めていました。考えていたとおり、しっかりと低く、相手にタックルを刺すことができました」
ベテランの活躍はディフェンスだけに留まらなかった。前半16分にはチームがアタックのフェーズを重ねる中で、田村優からのパスを受けた南橋が、チーム二つ目のトライで相手を突き放した。
ただ、公式戦から遠ざかっていた影響か。後半13分、足を攣った南橋は“お役御免”の途中入替でグラウンドを退いた。それでも、攻守両面でインパクトを残した35歳のセンターは、浦安DR戦のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出された。
表彰式に向かう直前だった。駆け寄ってきた小倉順平から手荒い祝福を受けた南橋。取材エリアでの南橋はこう言って仲間に感謝した。
「なかなか個人的に出場機会がない中で、今回こうしてチャンスをいただいて、小倉は自分の心境を分かってくれている存在。小倉の行動の裏側に、そういう気持ちがあったのかと思うと、感慨深いです」
本人の記憶によると、プレーヤー・オブ・ザ・マッチの受賞は(マン・オブ・ザ・マッチの名称だった)ジャパンラグビー トップリーグ時代を含めて、今回が3度目だという。なおリーグワンでは初の受賞となったため、記念キャップを被るのは初めての経験だった。「似合っているかな。大丈夫かな」と本人はえらく見映えを気にしたようだが、“絵になる男”にそんな心配は不要だった。
(郡司聡)
横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「良い結果が出ていなかった中で、ポジティブに言えば、イーグルスらしいアタックも少しずつ出てきています。自分たちの信念やこだわりをもって戦えたと思います。また勝って反省する材料も出てきましたし、次の試合(三菱重工相模原ダイナボアーズ戦)に向けて、良い準備をしていきたいです」
──今季初出場の南橋直哉選手を先発で起用した意図を教えてください。
「チームがなかなか勝てなかった時代を知っている選手ですし、カジ(梶村祐介)がチームに加入するまでは試合に出ていた選手です。僕は信頼しているし、タックルなど良いプレーを発揮してくれました。ただ試合からあれだけ離れていれば、足も攣るでしょう。すごく頑張ってくれました」
──トライを阻止するタックルをした嶋田直人選手や、アマナキ・レレイ・マフィ選手も体を張っていました。30代選手の奮闘が目立つ試合でもありました。
「われわれは見ている方々に根っこの部分が伝わる試合をしなければいけません。今日はそういう場面がいくつかありました。ただ最後にトライを取られてしまう終わり方は、昨季の自分であれば、怒鳴り散らしているかもしれません(笑)。(隣の庭井祐輔選手に向けて、『な?』。『はい』と庭井選手が返答)。この(失ったボーナスポイントの)1ポイントがもしかしたら命取りになる可能性もありますが、一人ひとりがそこから学び、次に備えれば良いのではと、ポジティブなコメントをしておきます(笑)」
──先ほど勝って反省するとお話をされていましたが、具体的に教えてください。
「最後の(取られた)トライでしょう。今季なかなか波に乗れない原因があの場面に象徴されていますが、改善できている部分はあります。ゲーム中の流れを相手に渡してしまうことや、簡単にスコアにつなげられてしまうことはなくしていかないといけません」
──プレーオフトーナメントに進出できるかどうか、ギリギリのラインにいる中、そこに食い込むために、今後大事になる肝の部分は何でしょうか。
「自分たちが大事にしているスタイルや、グラウンドで全力を出し切ることなど、そういうベースの部分だと思います。ただそれはどこのチームも同じことが言えます。今日もイーグルスらしいトライもありましたが、我慢強く、泥臭く、耐えて、耐えて流れをつかむのがラグビーというスポーツです。そういうチームの根っこの部分が増えてくるような準備をしていくことです」
横浜キヤノンイーグルス
庭井祐輔ゲームキャプテン
「負けが続いていた中で、勝利をターゲットにしたゲームで勝てたことは良かったです。沢木監督の話のとおり、イーグルスらしいラグビーが出始めましたし、自分たちのラグビーができているときは、楽しめてプレーできているという感覚になれています。そういう感覚をもてたので、これからもっとより良くしていくための材料が、今日の試合で収穫としてあったと思います」
──先日の取材で「チームとして戦わなければいけない」というお話をされていました。今日の試合はそういう準備ができたという感触はありますか。
「そうですね。特に前半はやりたいことがすごく出ました。負けが続いていたので、少し落ち込んでしまうことや、自信をなくしている部分があったかもしれませんが、その中ですごく良い準備ができたと試合前からそう思っていました」
──ショートウィークの試合で疲労はあったのでしょうか。
「疲れはもちろんある中でしたが、チームのみんなが勝つためにどうすれば良いかということを考えていましたし、勝つための振る舞いができていたと思います。ただここからが大事です。連勝を重ねていくために、どういう行動を取るか。このまま勝利に浸るのか。ここから改善に向かっていくのか。真価が問われている局面です。試合数も少なくなってきましたし、できることをやっていきたいです」
──セットピースについて、特に後半のスクラムは主導権を握れるようになりました。その理由は何でしょうか?
「スクラムが良くなったのは、僕が交代したあとの話なので、何とも言えませんが、しっかりとまとまって、もともともっていたプランを遂行してくれたと思います」
浦安D-Rocks

浦安D-Rocks
グレイグ・レイドロー ヘッドコーチ
「自分たちのパフォーマンスの面で良いスタートが切れずに、序盤から非常にもどかしい展開になりました。23点のビハインドから立ち直るのは厳しいものです。それに加えてセットピースで相手にプレッシャーを掛けられなかったですし、基本的な部分がうまくいっていなかったです。今日の結果はそれに尽きると思います」
──試合結果としては接戦と言えるスコアになったと思いますが、どんな印象でしょうか。
「チャンスを決め切る遂行力を発揮しなければならないのは確かなことです。ただ今日の試合展開ではセットピースの問題でチャンスを作ること自体が限られていたので、遂行力はより大事だったと思います」
浦安D-Rocks
藤村琉士ゲームキャプテン
「ヘッドコーチと同じ所感で、セットピースの部分で後手に回ったことに尽きます」
──スタートからスクラムは良かったように見えましたが、途中から難しくなった印象を受けたのは、相手の対応策の結果でしょうか。
「前半の最初のほうは良かったですが、確かに途中から難しい状況になりました。後半は組み方が変わった中で対応できずにズルズルといってしまいました」