2025.04.06NTTリーグワン2024-25 D1 第14節レポート(東京SG 60-31 三重H)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第14節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年4月5日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
東京サントリーサンゴリアス 60-31 三重ホンダヒート

どん底から這い上がった二人の男。その“あきらめの悪さ”がチームのさらなる活力となる

通算100試合出場を達成した東京サントリーサンゴリアスの森川由起乙選手

桜満開の東大阪市花園ラグビー場で、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)のトライが咲き乱れた。4月5日のディビジョン1第14節、三重ホンダヒート戦に臨んだ東京SGは、今季最多の10トライを決めて60対31と快勝。今季初めてボーナスポイントも獲得できたことで、横浜キヤノンイーグルスを抜いて6位に浮上し、ようやく、プレーオフトーナメント出場圏にまで順位を上げることができた。

ファンの笑顔も満開となった試合後、破顔一笑で表彰を受けたのは東京SGの森川由起乙、32歳。節目となるトップリーグ・リーグワン通算100試合出場を果たし、家族に囲まれての記念撮影となった。

「今日、プレゼンターとして来てくれた奥さんと両親に感謝ですし、いまここにいるコーチングスタッフ、チームメート、府中に残っているチームメートのおかげです。みんなの支えがあって試合を積み重ねたことで100キャップがある。プレーできることへの感謝。それが率直に一番大きな思いですね」

プレーできることへの感謝。そう語る理由は2シーズン前、膝のコンディション不良で練習どころか階段の上り下りさえもままならない、苦闘の時間を過ごしたからだ。そこから森川は、日々のトレーニングにピラティスを取り入れるなど、体調管理に人一倍こだわることで復活。昨秋には日本代表候補に名を連ねるほどトップパフォーマンスを取り戻している。

コンディション不良で昨季ほぼプレーできない時間を過ごした中野将伍も、この試合で東京SG通算50キャップという節目に到達。相手のタックルをはじき飛ばす推進力で二つのトライを決めるなど、今季初のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれる活躍を見せた。

「いま、コンディションは本当にいいですね。節目の試合で勝てたことは良かった。ここからまた積み重ねていきたいです」

東京SG通算50キャップの試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチ、中野将伍選手

そんな森川と中野将伍の活躍ぶりについて、小野晃征ヘッドコーチはこう褒め称える。

「今日の森川はフィニッシャーとして、体を張ってフォワードのテンポを上げてくれました。同じくセレブレーションの試合だった中野将伍とともに、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました」

どん底から這い上がって節目の日を迎えた男たちがいるからこそ、このチームはあきらめることを知らない。それがシーズン終盤のさらなる活力になるはずだ。

(オグマナオト)

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ(左)、堀越康介キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ

「花園でのホストゲームで、来てくれたファンのみなさんの前で勝てたことはすごくうれしく思っています。選手たちが勝利に向けたマインドセットで準備してくれた結果だと思うので、また8日後、次節に向けて一緒のマインドで準備したいです」

──今季、試合後の会見で「22mラインまでは行けるのに決め切れない」というコメントが何度もありましたが、今日は今季最多の10トライ。トライを重ねられたポイントはどこにありますか。

「今日は22mに入ったときのマインドのスイッチが素晴らしかったです。フォワードが頑張って動いてくれた結果、9番、10番のハーフ団の素晴らしいコントロールにつながったと思います。引き続き、22mに入ってからの少ないチャンスをしっかり取り切るマインドが欠かせないと思います」

──「ハーフ団のコントロールが良かった」という話ですが、10番の髙本幹也選手の評価をお聞かせください。

「サンゴリアスの“アグレッシブ・アタッキング・ラグビー”のキーになる選手です。勝って学べるのはすごくポジティブなポイントです。場面ごとにどう(判断)していくかは、やっぱり経験していかないことには成長しない部分です。今日はさまざまな場面でいい判断をしてくれましたが、次の機会ではまた違った判断が求められます。そのためにもしっかりこの試合をレビューしたいですし、彼だけでなく周りもしっかりコミュニケーションを取ってサポートすることが大事だと思います」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン

「前半からすごくタフな試合展開でした。僕たちのアタックでいい場面もありましたが、ディフェンスでちょっとソフトな時間帯もありました。ただ、前半の運動量が後半の最後の20分に効いたのかなと感じています。粘り強く、ブレイクダウンやディフェンスでも強くてタフな相手でしたが、勝てて反省できることは本当に良かったと思います」

──「22mラインに入ってからが課題」とこれまで言ってきた中で、今季最多の60得点を挙げました。ポイントはどこにありましたか。

「22mに入ったときの精度というか、遂行力の部分ですね。選手同士で話し合って、何かビッグプレーを目指すのではなく、走り出しのスピードで相手に勝って、コツコツと前に進んでトライを決めるというマインドがここ数試合、チーム全員に刻まれているので、その点が試合に生きていると思います」

──「前半の運動量が後半に効いてきた」という話がありました。走り勝つ自信があった、ということでしょうか。

「自信というか、『相手よりもハングリーさを出す』と試合前にずっと言ってきました。オフ・ザ・ボールの動きや2人目3人目の動き、そういう部分では自分たちがプライドをもって前半から仕掛けられたので、そこは自分たちの自信になっていると思います」

──後半、12点差まで追い上げられた時間帯もありました。メンタリティーの部分ではどんな状況でしたか。

「グラウンド上でも『先を見るな』とみんなで言い合って、目の前の一つのプレー、次の1分に集中してまず体を当てよう、と。ディフェンスでは毎回毎回差し込まれる部分もあったので、その接点のところでまずプレッシャーを掛けて自分たちのディフェンスに戻ろう、という話をしていました」

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、小林亮太ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「スコアに関してはとてもがっかりしています。ただ、試合を全体的に見てみると、ポジティブな部分もあり、いいトライも奪えました。残念ながらディフェンスのところで相手に点を簡単に与え過ぎてしまったと思います。この試合から改善しないといけないポイントがたくさん出てきましたが、ポジティブな部分も含めて、次の試合にしっかり切り替えたいと思います」

──根塚聖冴選手が今季初のメンバー入り。このメンバー選考の狙いを教えてください。

「根塚はBゲーム、練習試合でいいパフォーマンスをしてくれていたので、チームにもいい影響を与えてくれるかなと。実際、彼が入ってきてからの30数分間、いいエナジーは出してくれたと思います」

──ほかのチームに比べて固定しているメンバーが少ない印象です。けがの影響なのか、チームプランによるものなのか。どのような意図がありますか。また、パブロ・マテーラ選手の復帰はシーズン中に間に合いそうですか。

「練習での成果やコンビネーション、パフォーマンスから検討した部分もあります。ただ、正直言ってけがの影響でメンバーを変えなければならない、という部分が実際には出てきてしまっています。

マテーラに関しては毎週、経過観察しているところです。自分たちとしても早く戻って来てほしいと願っています。来週の試合後には1週休みがありますので、そのあとの試合に戻って来てくれれば、と思っています」

三重ホンダヒート
小林亮太ゲームキャプテン

「試合内容で言うと、36対24と2トライ差以内に迫ったところ(後半14分)で自分たちの実行力がうまくいかず、相手に流れをもっていかれたところが一つの大きなポイントでした。また、ゲーム全体をとおしてモメンタム、勢いを作れている時間帯もありましたが、逆に相手のほうがいい勢いの時間帯を長くしてしまったことが今日のゲームの良くなかったところだと思います。

あとは自分たちの気持ちのもちようですね。次節に向けて、しっかり前を向いてやっていかないといけないので、1週1週、まず気持ちとその実行力の部分がうまくできるようにもう1回準備していきます」

──シーズン序盤は試合後半に強いチームだったと思うのですが、最近は後半のほうが失点している印象です。シーズン序盤と比べて何が変わったのでしょうか。

「今日の試合では、12点差まで迫って、次に自分たちがポゼッションしてスコアをすると、だいぶ相手にプレッシャーを掛けられるというところで、今まで勝てた試合では実際に相手にプレッシャーを掛けて勝ち切るパターンができていたのですが、その実行力のところがうまくいっていません。たとえば、自陣からの脱出で正しいプレーができず、そこから相手にプレッシャーを掛けられて、ズルズルと崩れてしまう。先週の試合でも同じような場面がありました。そういう場面でしっかり(スコアを)取り切ることが課題です。

逆に言えば、そこでしっかり力を発揮できれば、僕らはどのチームにも勝てると信じています。チームのみんなもそこが課題だと理解しているので、そこをどうにか次のゲームで修正していきたいです」

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