NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第14節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年4月6日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 14-42 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
9番を務めた予想外の10分間と、チームカルチャーに後押しされた初キャップ・初トライ
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が挑んだ、“春の秩父宮ラグビー場2連戦”。桜の花びらが舞う中で行われた第14節・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)戦は、42対14でS東京ベイが勝利を収めた。
後半22分、BR東京のTJ・ペレナラにイエローカードが提示された。速い球出しが売りのBR東京にとって、スクラムハーフを欠くことは大きな痛手。急きょ、15番で出場していたメイン平がそのポジションに配置された。「スクラムハーフがイエローカードのときには、フルバックが代役を務めると事前にシナリオされていた」というが、自身にとってスクラムハーフでプレーするのは初めてのこと。ペレナラのようなプレーは決してできないからこそ「フォワードは複雑なことをせず、順に回ってシンプルにプレーしよう」とそれだけを伝え、10分間をスタートさせたという。
「何回かかわいそうなパスを放ってしまった。フォワードには申し訳ないと思っています」と苦笑いしながら自身の出来を振り返ったメインだったが、後半32分にはファカタヴァ アマトのトライを演出。「シンプルに強い人を当てた」結果、生み出したトライだった。
元々、ユーティリティープレーヤーではあるものの、メインは15番に強いこだわりをもつ。「今季これまで15番として満足いくほどのプレーはできていませんが、役割は果たしているつもりです。自分のパフォーマンスを追求して、チームにとって重要なプレーヤーになりたいです」。これからも止まらぬ成長を誓った。
また、この日ファーストキャップを獲得したのはS東京ベイの松下怜央だ。前半25分に根塚洸雅との一時交替で出場すると、同29分には左サイドで4人の相手を押し除けながら前進しトライを奪った。
こちらも出場は予想外のタイミングながら「いつでも準備はできていた」と松下。トライが決まると、メインスタンドで観戦していたノンメンバーたちも飛び跳ねながら両手を挙げ、喜びを表した。
入団して丸2年。この間「ずっとノンメンバーたちと一緒に練習していた」からこそ「一緒にプレーしていた仲間から祝福されるのはとてもうれしい」と笑顔を見せる。
「(ノンメンバーは)試合に出られず悔しい気持ちがある中でも、チームを応援することを第一に考えるのがS東京ベイのチーム文化です」
初出場で獲得した初トライは、チームカルチャーが後押しした。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「また悔しい結果となってしまいました。ただ自分たちがクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんに掛けたプレッシャーに関しては、スコアボードがすべてを表してないと思います。もっとプレッシャーを掛けられたと思っています。ハーフタイムの時点でもけっこうポジティブな状態でした。また今回も認められないトライはありましたが、S東京ベイさんのディフェンスを本当にリスペクトします。本当に崩すのが難しいディフェンスだなと思いました。今後の試合も彼らがコントロールできれば、本当に倒しづらい相手だと思います。しかしながら、エフォート(努力)だけでは足りません。トップチームと戦うときには、すべてが高レベルで正しいプレーをしていかないといけないということを学びました」
──今日のディフェンスに対しての印象を教えてください。
「われわれの裏にキックされ、そこからトライも取られました。それを3回相手はやってきて、それに対して自分たちは適応できませんでした。アジャストがうまくできなかったと思います。相手がモールに強いことも知っていましたが、モールで2トライを取られています。なので驚きはしないです。スクラム、ラインアウトはわりとよくできたと思います。42失点は少し多いですね。だからこそ彼らがトップ4にいて、私たちが下位4チームにいるのだと思います」
リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン
「ヘッドコーチの言葉の繰り返しになるかもしれませんが、S東京ベイは本当に良かったと思います。特にディフェンスです。けっこう自分たちもアタックしたのですが、うまく対応されました。もちろん今回の結果もガッカリしています。自分たちも勝つためにプレーしていますし、そういうパフォーマンスを見せていきたいと思っていましたが、今日は見せることができませんでした。今回分かったことは、S東京ベイのようなチームと戦う上で5%、10%でも足りなければトライを取られてしまうということです。ただ自分たちが向かっている方向性については間違いではないですし、ポジティブに感じています。自分のチームを信頼していますし、これから自分たちが何を達成できるか、という考えは変わっていません。もちろん負けたことに対して残念だなという気持ちは消えません」
──前半終了間際、TMOでトライキャンセルになった場面ではレフリーとどんな会話をしていたのでしょうか。
「クロックロール(クロコダイル・ロール)と言われました。ルールどおりペナルティだと思います。クロックロールでけがをしている選手もいるので、必要なルールだと思います。なので、なぜあのプレーがペナルティだったかは分かります」
──マルコム・マークス選手と衝突した際、イエローカードをもらったことに関してはどのように感じますか。
「ルールブックどおりだと思います。今週はチョップタックルを(練習で)やったので、そこは残念です。コンタクトが起きる前に僕のほうが消極的で負けている側、押されている側だったのですが、ルールどおりです。ヘッドオンヘッドでタックラーがそこにいてはいけない、というルールどおりだと思います」
──今季のS東京ベイはとてもディフェンスが良いのですが、今日実際にプレーし、どういうところに強みを感じましたか。
「S東京ベイは体が大きいですね。そこが強みではあります。またラックをスローラックにできる。チョークして、モールにならずとも時間を稼ぐことができます。それがすごく上手です。もちろん自分たちもそこに対抗すべく準備をしてきましたが、わりと良い形で入ってもS東京ベイさんは強みを生かしてきました。あとは広くグラウンドをカバーしています。そういうシステムをしっかり長く守れているチームだと思います。
前半の最後のほうは相手を崩すこともできました。トライを認められませんでしたが、イメージしていたトライの絵はあのような形でした。特に前半はゲームプランもしっかりとやれていましたし、ハーフタイムの時点で自信はたっぷりあったのですが、ただ後半始まってすぐにソフトトライを取られてしまったことでそういう流れになりました」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「こんにちは。まずは結果としてすごく良かったと思います。今週しっかりプランを立ててどういうところにチャンスがあるかといろいろと準備してきた中でしっかりできました。80分をとおして選手を褒めたいと思います。課題はディフェンスのブレイクダウン。しっかりやっていかないとダメだと思いました」
──今日も特に前半、何度もジャッカルをしていてディフェンスのブレイクダウンは良かったと思いますが、さらにどういうところを改善していきたいのでしょうか。
「リコーブラックラムズ東京(以下、RB東京)さんと戦う上でフォーカスポイントは、クイックボールで出してくるということでした。そこが脅威であり、実際そのテンポで出されてしまったところがありました。ブレイクダウンでいうと判断の間違い、ミスもありました。エキサイティングし過ぎたところもありました。修正自体は簡単だと思います。ディフェンス面ではノットロールアウェイやオフサイドのところは直せるところです。ただ、ブレイクダウンにはチャレンジしてほしいので、そのバランスが大事になると思います」
──この試合の結果によって、プレーオフトーナメント進出が決まりました。その受け止めと、プレーオフトーナメントに向けてどう時間を使っていきたいか教えてください。
「われわれにはハングリーさや向上心があります。今日の試合に関しても後半はミスも多かったですし、形としてはあまりきれいではなかった、プレッシャーを掛け切れなかったところもありました。特にブレイクダウンを直していきますが、まずは来週の東京サントリーサンゴリアス戦にフォーカスをしてさらに良くしていき、パフォーマンスを上げていこうと思います」
──リーグワン初出場の松下怜央選手が1トライを決め、けがしていた根塚洸雅選手も復帰し活躍しました。彼らの活躍は終盤戦に向け勢いを与えると思いますが、いかがでしょうか。
「松下選手は2、3年一緒にやってきて、チャンスをうかがっていた中でしっかりトライまでもっていってくれました。相手選手を数人抜いてのフィニッシュはハッピーです。ハードワークが実ったことだと思います。根塚選手も復帰できました。彼も必要な選手で、小さなチャンスをフィニッシュまでもっていける選手です。今後接戦になってきたら、そういう1本、2本のチャンスをものにできる選手が必要になってきます」
──松下選手はこの数年間、どのようなところを努力して、何かを克服し力をつけたのでしょうか。
「ゲラード ・ファンデンヒーファー選手や木田晴斗選手の裏でずっとチャンスを待ち望んでいました。若手中心のメンバー外の試合でも、彼は12番も15番でも、ウイングでもプレーできるオールラウンダーです。なのでけが人が出たこういう場面でも、彼をエキサイティングな気持ちで素直に送り出すことができました。彼は3つの脅威をもっています。サイズもあるし、足も速い、そして素晴らしいフットワークにスキルもあります。そういうところで、数少ないチャンスをフィニッシュまでもっていってくれたのだと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン
「今日勝つことができて、本当に良いことだと思います。BR東京はすごく強いし、タフなバトルになると分かっていました。それに対して週の頭から、自分たちのプロセスをもう1回見直し取り組んできました。準備してきたものを今日の試合で出せたと思います。そこは良かったです。80分をとおしてみんな出し切って良かったと思います」
──この試合の結果によって、プレーオフトーナメント進出が決まりました。プレーオフトーナメントに向けどう時間を使っていきたいか教えてください。
「先を見据えるのではなく、まずは来週に向けて一つひとつフォーカスをしたらチームも成長していくと思います。プレーオフトーナメントが決まったことはすごくうれしく思います。昨季はプレーオフトーナメントに出られなかった悔しい思いがあったので、今季はプレーオフトーナメント進出が決まったことがすごくうれしいです」
──松下選手のように、抜擢された選手が活躍するシーンがS東京ベイには多いと思います。キャプテンの目から見てどういうところに理由があると思いますか。
「練習に取り組む姿勢です。彼はハードワークしています。チャンスを勝ち取る、という自信も彼からは見えました。すごく良かったと思います。僕もうれしかったです」
──チーム全体の競争力はいかがですか。
「毎週毎週、メンバー、メンバー外に関係なく良い競争ができています。誰が出ても同じこと、自分たちのプロセスができることはチームとして良いことだと思います」
──マルコム・マークス選手のパフォーマンスは今日も素晴らしいものでした。彼についてはいかがでしょうか。
「相変わらず彼の強みであるプレーが今日も出ました。チームとしてうれしく思います」