2025.04.07NTTリーグワン2024-25 D1 第14節レポート(神戸S 28-73 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第14節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年4月6日(日)14:30 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 28-73 東芝ブレイブルーパス東京

二人の22歳、ほろ苦い初先発の味。この経験をさらなる成長の始点に

初の先発メンバーで出場、コベルコ神戸スティーラーズの上村樹輝選手

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は4月6日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で首位の東芝ブレイブルーパス東京と対戦。相手の攻撃を防ぎ切れず、28対73の大差で敗れた。

ほろ苦い初先発の舞台だった。

2002年生まれの22歳、上村樹輝とカウヴァカ・カイヴェラタ。今季、神戸Sデビューを途中出場で飾っていた両者は、首位に挑む大一番でスクラムハーフとルースヘッドプロップ(左プロップ)のスタメンに抜擢された。だが、待っていたのは11トライを許す大敗だった。

上村は唇をかみしめた。

「悔しい。率直な気持ちです」

序盤から両サイドを突破され、続々とトライを許した。「僕がもうちょっとスペースを埋められたら、もうちょっと機転を利かせられたら、相手のラインブレイクを減らせられたのかなと思っています」。背番号9は、反省の矢印を自らに向けた。

それでも、「自分の強みを少しは出せた」と決して下は向かない。テンポのいい配球など持ち味は体現した。「トライを取れたところでは自分たちの強みを出せた」と上村は話したが、それはスクラムで優勢に立ったこともそうだ。奪ったペナルティを味方のトライにつなげた。

他方、カイヴェラタは仲間と押したスクラムに胸を張る。

「感覚はとても良かったです。自分だけでなく、いいフッカーがいて、いいタイトヘッド(右プロップ)がいて、ロックも、フランカーもしっかり押してくれる。自分にとって助けになる仕事をしてくれる人がたくさんいたからこそ、8人でいいスクラムができました」

初の先発メンバーで出場、コベルコ神戸スティーラーズのカウヴァカ・カイヴェラタ選手(左は具選手)

悔しさは、これから晴らしていくしかない。そのために、この日の背番号1は目の前を見た。

「まずは次節、いい試合をして勝ち切ることが、チームとしても、自分としても目標です。リベンジする、借りを返すためにも、自分が選ばれないと、スターティング(メンバー)で出ないと意味がありません。神戸Sにはプロップにたくさんいい選手がそろっています。ポジション争いは激しいですけど、まず選ばれることが借りを返す一つの足掛かりになります。まずは次節です」

上村とカイヴェラタ。二人は今節を起点に、成長を加速させる。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、李 承信 共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「チームにとっては本当に厳しい日になりました。恥ずかしいパフォーマンスだったと思います。いいチームに対して、しっかりと体を前に当てることや、タックルをし切ることができなければいけません。東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんにはフィールド上のどのエリアでもダメージを与えられる選手がそろっているので、それがまさに(結果や内容に)表れたと思います。相手のトライは、(トライエリアから)70m、80m離れたところから(の攻撃で)決められたものも多かったと思います。非常に残念な結果です。

どういった攻撃をしてくるか分かっていましたけど、キックオフの部分から痛めつけられることも多かったですし、キックオフのところに関しても自分たちはショートサイドに人数を置いていて、相手がいないところに多くの人数を割いてしまったり、ラックの裏に人数が立ってしまっていたりする状況の中で、相手は人数の少ないところに対して正しいアタックをしてきたと思います。自分たちはそこに対するリアクションがまったく取れていなかったと思います。キックオフのあとのアタックでやられたことが多かったです。

いまから48時間、どういったメンバーで戦っていくべきなのか考えていきたいと思います。今日の結果に伴い、来週の試合は本当に重要になるので、自分たちは今日の試合から学ぶべきことを学んで、素早く立ち上がって来週に向かっていきたいと思います」

──大敗後のアクションでどういうことが大切になると思いますか。

「大敗をしたときに絶対にしてはいけないと思っているのは、選手だけのせいにすることです。自分たちの準備で何がダメだったのか、そこを見直さないといけないと思っています。正しい1週間の準備ができたのか、正しいメンバーセレクションを行えていたのか。自分たちの責任になってくると思いますし、チーム全体として自分たちに求められていることは何なのかを明確にする必要があると思います。それを来週、発揮するためにクリアにする必要があると思います。

前半、ボールをしっかり持って自分たちのやるべきアタックができているときは、ポンポンポンと3トライほど取れたと思います。ただ簡単にトライを与えるシーンがあまりにも多かったと思います。あれだけ簡単にトライを与えてしまったら、競った試合にもっていくことはできない状況になると思います。そこのパフォーマンスに関しては自分たち自身でしっかり責任を感じないといけません。この痛みをしっかり理解した上で、自分たちがどういう準備をして来週の試合に向かうのかに重きを置いていきたいと思います」

──前回のBL東京戦は6点差でしたが、今回は大差が付きました。前回と今回では何が違ったのでしょうか。(※李承信共同キャプテンの質疑応答に続けて発言したもの)

「前回は不在であった(リッチー・)モウンガが今回はプレーしていたのはあると思います。間違いなく」

──リッチー・モウンガ選手への対策をされていたと思いますが、その評価を教えてください。

「正直、世界で一番の10番の選手だと思います。テンポの速いラックからのボールでプレーしている10番としては一番いい10番だと思います。だからこそ自分たちがしないといけなかったのは、相手がラックからの速いプレーをできないようにそこの部分でプレッシャーを掛けることです。ただ、スピードも速いですし、プレッシャーが掛かっている状況でも、何かを起こせる選手だと思います。今日に関しては本当に素晴らしいパフォーマンスをしていたと思います。そういった形でチームの指揮を執る10番がプレーしている状態に加えて、あれだけ全員のサポートが前に出続ける、行き続ける状態になってしまったら、自分たちとしては簡単に止めることはできなかったと思います。ただ、そういう状況を作ってしまったパフォーマンスについては許すべきではないものだったと思いますし、そこの部分は間違いなく成長させないといけない部分だと思っています」

──ラックからのスピードを遅らせるというところで、ブロディ・レタリック選手が欠場していた影響はあったでしょうか。

「自分たちはプレーオフトーナメントでまたBL東京さんとプレーできることを祈っていますが、レタリックがいない、アタアタ(・モエアキオラ)がいない、マイケル・リトルがいないというところは自分たちが負けた言い訳には絶対にしたくないです。今日出ていたメンバーがBL東京さんに勝つことができないメンバーかといえばそうではないと思います。勝てる能力をもった選手たちが十分プレーしていたと思います。今回の負けは、自分たちがよりいい形でシーズンを終えるためのモチベーションに変えていきたいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
李承信 共同キャプテン

「試合前から自分たちにフォーカスして、どれだけコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)のラグビーを80分間続けられるかと話をしていましたが1対1のところで差が出たと思います。タックルのところだったり、ボールキャリーのところだったり、自分たちがやりたいようなラグビーを相手にどんどんされてしまい、相手は丁寧にアタックをしてきて、自分たちがアタックしてもミスで終わってしまう。ペナルティで相手にまたボールを渡してしまうケースがあり、なかなか思うようなラグビーを80分とおしてできなかったと思います。

試合中、日和佐(篤)さんから、『このジャージーのプライドをもって戦おう』という話があって、本当にそのとおりだと思います。今まで積み重ねてきた時間や向かっている方向は間違っていないと思います。でも、間違いなくトップチームとの差はあると思いますし、チームとしても個人個人の差もあると思うので、レンズ(デイブ・レニー ヘッドコーチ)が言ったように、まだプレーオフトーナメント出場圏内にチャレンジできるチームだと思うので、しっかりといまの自分たちの現状、どこを改善しないといけないのか見つめ直して、もう1回、このジャージーをみなさんに誇りに思ってもらえるようなチームにしていきたいと思います」

──1対1の差があったということですが、具体的な差はどう感じていますか。

「シンプルに相手のボールキャリーに対してのタックルの精度や、特にまず1対1の場面を作るシーンが多かったところが一つの大きな原因としてあると思いますけど、フォワードの1対1や、バックスで1対1を作られてどんどんオフロードでボールをつなげられるシーンがあったので、まずは1対1で負けないことです。もっとチームとしてどう守っていくか、どうディフェンスしていくかというところもBL東京さんに学ばせてもらったところだと思います」

──前回のBL東京戦は6点差でしたが、今回は大差が付きました。前回と今回では何が違ったのでしょうか。

「前回もやっぱり簡単なトライ、ソフトなトライ(を与える)というのが多かったと思いますし、今日はより一層、前回よりもそういうトライが目立ったと思います。キックオフからのディフェンス、キックオフからのアタックができなかったですし、前半からそういったソフトなトライというのが積み重なって自分たちを苦しめていったと思います」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(左)、リーチ マイケル キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ


「本当に今日の選手たちのパフォーマンスは素晴らしいものでした。アタックではスペースを的確に突きながらオフロードも披露することができて、1週間準備してきた絵がそのまましっかり試合で見れたと思います。選手たちがしっかりやってくれたところはありました。スキルの遂行の部分でいくつかミスもありましたけど、その中でも止めずにBL東京のアタックを見せ続けてくれた選手たちを本当にリスペクトしています。アタックの裏でディフェンスもしっかりと正確に、試合が進むにつれてよりフィジカルに体を当てられるようになってきたところもすごく良かったと思います。神戸Sさんはすごくいいチームで、チーム全体としてもリスペクトしていました。この2試合、ビッグゲーム(重要な試合)になると分かっていた上で準備してきた部分をしっかり出せました。今日に関しては、選手たちは絶好調と言って差し支えないパフォーマンス、状態だったと思います」

──キックオフやキックのカウンターから外に振ってタッチライン際を高速のバックス選手が走ってトライにつなげる形が多くのトライパターンでしたが、これは試合前の分析などで準備していたのでしょうか。

「すごく時間を掛けて準備していた部分ではありました。アタックコーチの森田佳寿(コーチングコーディネーター)も『こういう絵が見えるよ』と、まさに今日見た絵をそのまま練習でもやっていました。(リーチ)マイケルが言っていましたけど、ノンメンバーの選手たちが神戸Sさんの絵をしっかりと見せてくれたのがあるのかなと。最終的にはアタックしたい気持ち、攻めたい気持ちというところが最後の80分のホーンが鳴っても続けたように、(準備してきた)絵に対してアタックしたい気持ちをしっかり出せたのかなと思います」

──ノンメンバーの選手たちが出場している選手を支えていると思いますが、あらためてノンメンバーの日々の努力への評価や思いを教えてください。

「チームとしてもノンメンバーの選手たちの価値は非常に大きいものと考えています。彼らがどれだけチームに重要なのかは、コーチ陣やメンバーだけでなくて彼ら自身もしっかり理解してくれています。もちろん、今日のパフォーマンスも彼らの準備があってこそのものです。それに加えて、ノンメンバーの選手たちは月曜日からキャプテンズランの試合前日まで相手チームのことをやって準備する以上に、自分たちはBL東京の選手として成長することに真摯に向き合ってくれています。おそらく練習を見に来てくれれば分かると思いますが、本当にスキルレベルもまったくそん色ないレベルで、どっちがメンバーか本当に分からないような質の高い練習ができています。

今日は本当に選手たちのパフォーマンスを誇りに思うと言いましたが、それは出ていたメンバーだけではなく出ていない選手たちも含めての言い方にしたいと思いますし、コーチだけではなく選手全員を含めてチーム全員が自分の役割を果たした中で、チームの勝利に貢献する。チーム全員に役割があってそれを遂行できるというのはリーグワンという大会における他チームに対しての違いとしても出ている部分だと思います。チーム全員のことを話したいと思っていたので、聞いていただいてありがとうございます」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

「みなさんこんにちは。今日はありがとうございます。そして、(観客)8,000人以上の神戸Sのファン、東京から神戸まで来てくれたBL東京のファンにも本当に感謝しています。BL東京としてはすごくいい結果を出せたと思います。1週間を振り返ると、月曜日から今日までに、出られていないメンバーが神戸Sのように、アタックやディフェンス、スクラム、モールをやってくれたので、その成果が出たと思います。試合もキックオフから80分間、どんどんどこからでもアタッキングするマインドセットがあったことを誇りに思います。80分を過ぎてプレーが終わる状態でも、プレーをする選択、その意志はすごくありだと思います。神戸Sに対して、たくさんトライを取っていいディフェンスができました。

来週の静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦はかなり大きい試合になると思います。ショートウィークなのでリフレッシュして、前回負けた静岡BRへのリベンジマッチとして考えてやりたいと思います。今日はありがとうございました」

──描いていたトライの取り方を遂行できた理由についてどう感じていますか。

「1週間をとおしてレビューがすごく細かくて、森田佳寿というコーチが、ラインが真っすぐ走っているのか、ちょっと流れているのか、本当に細かく指導してくれるので、その1個1個が良いなと思います。練習の成果が試合に出ています。あとはもう一人、シャノン・フリゼルです。彼がボールを持つと(神戸Sの選手が)一人、二人と見てしまうし、真っすぐも行けるし、横に行くことやパスの判断もものすごく上手なので、彼もすごくいいスレッド(いい攻撃につながった理由)になっています」

──前回は6点差の勝利でしたが、今回は大差がつきました。リッチー・モウンガ選手が戻ってきたり、神戸Sはブロディ・レタリック選手がいなかったりと、いろいろな理由はあると思いますが、ここまで点差が開いたのはどう考えていますか。

「試合ごとにしっかりしたレビューをして、1週間の練習をして、毎週毎週、少しずつレベルアップしています。あとはメンバーをそこまで変えていなくて、チームとしてお互いのクセを分かっていたり、この場面は我慢しないといけないと共有できていたり、チームとして毎試合、成長できていると思います」

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