2025.04.27NTTリーグワン2024-25 D1 第16節レポート(埼玉WK 27-21 BR東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第16節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年4月26日(土)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 27-21 リコーブラックラムズ東京

チームに根付く、“プロジェクト・リサラ”。まずは試し、フィットするモノを取り入れ、自分らしく組む―

右プロップとして急成長、埼玉パナソニックワイルドナイツのリサラ・フィナウ選手

第16節をホストスタジアムの熊谷スポーツ文化公園ラグビー場で戦った埼玉パナソニックワイルドナイツは、終盤にリコーブラックラムズ東京の追い上げを受けるも27対21で勝利。勝ち点を64に伸ばし、首位を維持した。

木川隼吾 主務兼スクマムコーチは明かす。「みんなでスクラムをリサラに教えています」。

リサラ、とはリサラ・フィナウ。ナンバーエイトから右プロップにポジションを移してわずか1年半、この春、大東文化大学を卒業したばかりのルーキーだ。前節ではスクラムが大きな課題となっていたが、この日は出場した間に組んだマイボールスクラムをすべてキープ。相手ボールでは1度ペナルティを取られたものの、わずか2週間で大きな成長を見せた。

「コーチはもちろん、選手みんなから助けてもらっています」と感謝の言葉を紡ぐフィナウ。終始穏やかな笑顔で、そして何不自由ない日本語で何度も謝意を示した。

「ミーティングで僕の課題が伝えられたら、みんながそれを一緒に克服しようと助けにきてくれるんです」

いわば、“プロジェクト・リサラ”。プロップ陣だけでなくチーム全体で「リサラを助けよう」という雰囲気が醸成され、気付けば特訓がスタートしていたのだという。

その中でも軸とするのは「自分らしく組む」ということ。尊敬する“アサさん”こと、ヴァル アサエリ愛から伝えられた言葉だ。

指導役のひとり、ヴァル アサエリ愛選手

「チームメートから見ると、いろいろな人の話を聞き過ぎてパンクしそうだと分かるみたいです(笑)。だから『最後は自分のやり方で組んでいい』と、アサさんや坂手(淳史)さんに言ってもらいました」

千差万別のアドバイスを受けるからこそ、言われたことをすべて吸収することは不可能。だからまずは試し、その中から自分にフィットするものだけを取り入れる心構えでいる。

スクラムの醍醐味は、相手と合わせたフォワード16人で協力しながらの力比べにある。相手の出方によって組み方を変える必要があるが「今日は前半最後の1本で、『これかな?』と思える感覚がつかめました。だから後半はそれを試してみようと思ったのですが、ハーフタイムで入替でした(苦笑)」。ゆえに喫緊の課題は、もっと早く相手の動きを理解するようになることだと理解する。

「申し訳ないぐらい、みんなが助けてくれます。そういうチームだと分かっていたから、このチームに入りたいなと思いました」

近い将来、ワールドクラスレベルで戦うこのチームにふさわしいプレーヤーに必ずやなる。「(これぞ)“ワイルドナイツ ”というプレーヤーになりたい」と、頂を目指す。

(原田友莉子)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「ちょっと静かですね……(笑)。自分たちの更衣室のように(この会見場が)静かです。自分たちにとっては良い着地点を迎えられたかなと感じております。もちろんきれいな試合ではなく、とてもタフな試合でしたが、最終的には勝利できました。特にルースフォワード(ニュージーランドではフランカーやNO8を指す)の選手がウイングに行ったり、9番の選手がウイングに行ったりした状況の中で勝てたことは良かったと思います。リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんもすごく良いプレーをしていたと感じています。自分たちをとても苦しめてきました。プレーオフトーナメント進出が懸かっている試合ということもあって、すごくモチベーション高く臨んでいたと思います。自分たちが少し緩い状態で入っていき、彼らの得意なところでプレーしてしまったと感じています。それでも、最終的にはとても満足しています。勝って帰ってこられたことは、来週のとても大切な試合に向けて、理想的な準備になりました」

──前半31分でのラクラン・ボーシェー選手、ディラン・ライリー選手の入替について、どういった意図があったのでしょうか。

「彼らの状態は大丈夫です。この入替は事前に話して決めていたもので、彼らが30分間プレーするリスクを計算し、その30分でちゃんと試合を終えました。今朝行った練習試合で二人を欠場させる話もありましたが、ここで出すほうが良いと思い試合に出場させました。みなさんご存知ではないと思いますが、山沢拓也選手が今朝の(練習)試合で20分プレーしております。私たちは選手層が薄れてきていたのですが、複数人が(けがから)帰ってきているので、それは素晴らしいことだと感じています」

──リザーブの選手を二人使った状態で残りの50分間を戦うという覚悟のいる話だと思いますが、どのように考えていらっしゃったのでしょうか。

「とても挑戦的なものでありましたが、グループとして良い経験になりました。とはいえ実際にはこの試合に勝てたから良い経験になったのですが、保守的に行くこともできました。自分たちが最終的に目指しているところがあるので、リスクを取っていくことも長い目で見たときには必要だと感じます」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「ありがとうございました。今日は午前中にも(練習)試合をしていて、2試合とも勝つことができたのはチームとしてうれしいことです。ロビーさん(ロビー・ディーンズ監督)もロッカールームの中で『二つ勝つことは当たり前じゃない』とおっしゃっていたので、しっかり喜びながらも、反省点はたくさんあるので、そこに対してはこれからやっていきたいと思っています。ただ、ロビーさんが言ったとおり、アジャストしないといけないポジションもたくさんあった中で、ゲームの中では冷静にプレーをし続けることができていた部分は多かったので、そこに関しては良かったと思っています。ただ、もっと自分たちからアグレッシブにアタックしていかないといけないですし、ブレイクダウンのところもたくさんボールを取られたので、そこに関してもこれからまた一緒にみんなで準備を重ねていかないといけないと思っています」

──スクラムハーフの選手が同時出場するなどアクシデントがあった中でも、マネジメント力、乗り越える強さが埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の強みだと思います。不測の事態にどう備えているのか教えてください。

「各選手たちが複数ポジションでプレーすることについては、確認も練習もしています。9番(の選手)がウイング(でプレーする)というのは日ごろの練習ではあまりやらないですけど、9番は全体をマネジメントしていたり、フォワードをマネジメントしていたりするので、いろいろなポジションを理解しているというやり易さはあったと思います。(大西)樹がウイングをやったところは、たぶんまったく練習していないですけど(笑)、そこはいろいろなコミュニケーションの中でいてほしいところにいるようにバックスリーはコミュニケーションを取ったと思いますし、センターの二人もアウトサイドとコミュニケーションを取ったところもあったと思います。そういった細かいコミュニケーションの中で勝てたと思っています。ディランだったりラクランだったりが復帰して、良い形でチームに戻ってきています。30分で替えるところで少し交替枠が難しくなりましたけど、その中でみんなが良いアジャストしたと思っています」

──プレーオフトーナメントの枠が二つ増えたことによって、昨季よりも激しい試合が終盤まで増えたように感じますが、どのように感じていますか。

「そのとおりだと思います。今日のBR東京さんもそうですし、次のクボタスピアーズ船橋・東京ベイさんも順位を争っているライバルなので、すごく大事な試合になると思います。そのあとの東京サントリーサンゴリアスさんもプレーオフトーナメントを目掛けて本当に良い状態にチームを上げてきていると思います。そういうところでシーズン終盤になっても、言い方は良くないかもしれませんが、消化試合にならないと思います。それがプレーオフトーナメントの枠を6チームにした大きな理由の一つだとも思っています。それがうまいこと、観ている方も楽しめるようにつながっているのかなと思っています。僕たちにとってはタフですけど、それもまたラグビーだと思うので、楽しんでやりたいと思います」

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のタンバイ・マットソン ヘッドコーチ(左)、TJ・ペレナラ ゲームキャプテン

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ

「チームのことをとても誇りに思います。1週間良い準備ができて、リーグワンの中で一番のチャレンジと言えるような相手に挑みました。そこに対する準備を誇りに思いますし、チームには常に勝負してほしいと伝えていて、それをしっかりとやってくれたと思います。ボーナスポイントの勝ち点1ということは残念に思います。チャンスを作れましたが生かし切れなかった。良いチームを相手にはそれでは足りないということですね。また、埼玉WKさんは良いラインアウトディフェンスでした。(ジャック・)コーネルセン選手のパフォーマンスが素晴らしかったと思います」

──「良い準備ができた」ということですが、具体的にどういうところにフォーカスしてきたのでしょうか。

「クイックスローやオーバーボールのクオリティーはリーグでも一番だと思いますが、最初の20分間は抑えられたと思います。トレーニングは高いレベルでアンストラクチャーな中でプレーできる準備ができたと思います」

──攻め込まれたところでのターンオーバーが3つぐらいあったと思いますが、そこもフォーカスしていたところでしょうか。

「ターンオーバーに対するリアクションは、チームとしてすごく大きくフォーカスしている部分です」

──伊藤耕太郎選手が10番で先発をした経緯について、教えてください。

「ここ何週間かずっと、選ばれるかどうかという位置にいました。(中楠一期と比べ)どちらの10番もタイプが違います。今日は耕太郎がプレーするにはパーフェクトなゲームかなと思います。初めて10番でスタートしたので、相手は耕太郎のことをあまり知らないと思いますし、違うアタックの絵を見せたかったんです。スキルセットや加速力など、今日はその違いを見せてくれたと思います。中にTJ(ペレナラ)がいて、外に池田(悠希)がいるとプレーし易いかなと、ずっと(伊藤を10番で)先発にしようか考えていた部分です」

──埼玉WKの堅いディフェンスを崩す準備と、タックラーをブレイクダウンに巻き込む準備の中で意識したことはありますか。

「ハーフタイムのときにもブレイクダウンの話はしました。TJ(ペレナラ)がラックでフラストレーションを感じていて(笑)、難しさを感じていたと思うので、後半はそれに対してアジャストしました。本当に相手はブレイクダウンの中で良い仕事をしてきますね」

リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン

「同じくチームのことを誇りに思います。(埼玉WKは)タフなチームで、リーグでもベストチームと言われるような権利を得てきたチームですよね。20年ぐらいトップを走ってきたチーム、安定しているチームです。ただ、勝てなかったことが残念です。ハードにファイトして、チャンスも作れていたと思います。本当に大事なところで取りこぼしたことが影響していると思います。それでも自分のチームに対する誇りは消えません。埼玉WKもキープレーヤーがいない中で、良いパフォーマンスをされていたと思います」

──「チャンスを逃したことが悔やまれる」ということですが、こういうチームを相手につかんだチャンスを仕留め切るために、今後どういうことが必要ですか。

「とにかくもっとベターにやるしかないですね。セミシ(・トゥポウ)の足が出てトライキャンセルとなったシーンがありますよね。あそこで僕がミルキー(アイザック・ルーカス)へ放ったパスが後ろにズレてしまいました。そうすると次のパススピードにも影響があり、足が出ることにもつながります。そういう小さいことが積み重なってスコアできなくなります。僕がしっかりパスをミルキーに渡せていたら、トライは決まっていたと思います。すごく大きなズレがあるわけではないです。ちょっとしたズレですね」

──プレーオフトーナメントの出場枠が6チームになりました。いままさにBR東京はその6枠目を争っていますが、終盤戦に挑むにあたってどれくらいモチベーションになっていますか。

「僕はどの試合も勝ちたいです。プレシーズンゲームでも、ニュージーランドでのプレーでも、どの試合もモチベーション高く保っています。シンプルに勝つことが好きだからです。ただ、グループとしては、いまの立ち位置を理解しています。次節に勝てば、プレーオフトーナメント準々決勝へ進出できるチャンスはあります。昨季は入替戦でした。そこから今季はプレーオフトーナメント準々決勝進出か否かを争っています。もしプレーオフトーナメントに進出すれば、何が起きてもおかしくはありません。その日良いチームが勝って、次に進めます。自分たちとしては次の2週間がとても大事だということを分かっていますし、すごくエキサイティングな気持ちでいます。今までそういうチャンスを得られなかったメンバーにも、そういうチャンスを作ってあげられるかもしれません」

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