NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第16節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年4月27日(日)14:00 エコパスタジアム (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 38-28 横浜キヤノンイーグルス
最強のリザーブメンバーによる突き上げ。逆転勝利の背景にあった静岡BRの“成長力”

本当に厳しい試合だった。ただ、静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)ファンにとっては本当にエキサイティングな試合でもあった。
前半に3トライを奪われて0対21になったところから5連続トライで逆転。両チームとも最後まで死力を尽くした激闘の末に、静岡BRが苦手としていた横浜キヤノンイーグルスから勝利を挙げ、また一つ自信を積み上げることができた。
今季の静岡BRが最後まで粘りと勝負強さ、タフさを発揮できている背景について、藤井雄一郎監督は「試合に出ていないメンバーからすごいプレッシャーを受けながら毎回練習できている」ことを理由の一つに挙げた。
静岡BRでは、練習で赤いジャージーを着て相手役を務めるリザーブメンバーたちを「モーターズ」と呼んでいるが、大戸裕矢は「モーターズはスクラムやラインアウトを含めてリーグワン(のリザーブメンバー)で一番強いと思います」と言う。日々の練習から非常に強いプレッシャーやコンタクトを受けていることが、最後まで体力や集中力が尽きない底力にもつながっている。試合終了間際に北村瞬太郎が見せた激走も、その象徴だ。
また、それらが個の成長にもつながり、選手層の厚みは昨季までと比べて格段に増している。今節では、ヴァレンス・テファレ、北村、ヴェティ・トゥポウといった今季の新戦力たちも鮮烈な活躍を見せた。交替出場でスティールを連発しながら攻守を牽引したキャプテンのクワッガ・スミスは別格として、その他のインパクトメンバーの活躍も終盤の強さにつながっている。もちろん、それらは今節に限った話ではなく、今季をとおして積み上げてきたものだ。
「替わりに出た選手はいつでも準備できているし、まだ出ていない選手たちも準備万端で待っています。だからこそ1週間の練習で、彼らから良いプレッシャーをもらって、それを試合に生かせるという循環になっているので、本当にいいチームになってきたと思います」と日野剛志はチーム全体の底上げによる効果を強調する。
試合の入り方や、ペナルティとミスの多さは課題となったが、そこも伸びシロと捉えられるだけの“成長力”が今季の静岡BRにはある。プレーオフトーナメントに向けて本当に楽しみなチームになってきたことも、大逆転劇の中で確認できた大きな収穫だった。
(前島芳雄)
静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「前半は不要なペナルティで自分たちのベースがなかなか作れなかったですが、自分たちの手に(ボールを)持ってアタックすることで、徐々に相手にプレッシャーが掛かって、最後に逆転することができました。何度かタッチキックのミスや、ウチらしくないミスも出ましたが、勝ち切れて良かったです」
──最大21点差をつけられたところから逆転し、終盤もイエローカードが出て苦しい中で逃げ切りました。そうした粘りや勝負強さが出てきた理由というのはどう感じていますか。
「いつも試合に出ていないメンバーからすごいプレッシャーを受けながら毎回練習しているので、そういう意味ではコンタクトの強さや、ペナルティをしないなどストレスの掛かった状態で練習ができているというところで、最後パニックにならずに自分たちの勝ちにできたと思います」
──後半の比較的早い段階で一気に4人入替をして、さらにパワーアップしたという印象があります。後半の戦況の読み方としてどういうプランがありましたか。
「試合前から結構、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんが、タックルを半分ずらして当たってくるという話をしていて、ウチの選手は真正面から来られるほうが好きですが、ずらされることでなんとなくエナジーが逃がされる感じになっていました。ですので、ペナルティしないようファイトの仕方も、いつもと違うファイトの仕方を1週間練習してきました。(後半は)その形でターンオーバーができるようになったので、ディフェンスにおいてはそこがすべてだったかなと思います。
アタックに関しては、ちょっと個人技で行き過ぎていたので、自分たちのシステムをしっかり取り戻して、システムでアタックするということで、その部分が後半は良かったと思っています。あと4人を替えたのは、疲労がある選手と、今日は暑かったので予定どおり(後半が始まって)10分経ったら替えようと思っていて、そういう意味では良いインパクトがあったと思います」
──今日はプレーオフトーナメントに向けて勢いがつく勝利だったと思います。残り2試合どのようにゲームに入っていきたいですか。
「先のことを考えるというよりは、一試合一試合自分たちが持てる力を全部出して、その中でできたこと、できなかったことを成長するために使いながら、この2試合を上手に戦っていきたいなと思います」
静岡ブルーレヴズ
チャールズ・ピウタウ ゲームバイスキャプテン
「本当に前半と後半で両極端な試合になったと思います。前半は横浜Eにモメンタムを多く作られてしまいましたが、後半はしっかりと自分たちのラグビーができたと思うので、試合の中で自分たちのラグビーを探しながらゲームプランに立ち返っていくということが、後半は自分たちの中でできたと感じています」
──最大21点差をつけられたところから逆転し、終盤もイエローカードが出て苦しい中で逃げ切りました。そうした粘りや勝負強さが出てきた理由というのはどう感じていますか。
「自分たちのことを信じ続けた結果だと思います。各自がしっかりと自分たちの仕事をすること、しっかりとファイトし続けるということを意識してできました。あとは、自分たちがやること、シンプルなことをしっかりと行うということを集中してやることができたかなと思っています。前半はペナルティが多かったので、そこをしっかり修正することと、後半はボールを動かすというよりもダイレクトにしっかりとボールキャリーをして前進していくことを意識して、シンプルにラグビーをしていく部分を修正できたと思います」
──前半にリードされた中で、どんなことをグラウンド内で話していましたか。
「前半はペナルティがすごく多かったので、ペナルティをなくしていこう、規律のところを大事にしようという話をしました。ベーシックなところを確実にしていくということと、タックルミスも多かったので、一対一のタックルをまずしっかり決めないといけませんでした。そうして、自分たちのゲームを取り戻していこうという話をハドルの中でしていました」
──後半31分の時点で3点差に迫られましたが、結果的にその後1トライを奪って勝利しました。ラスト10分の時点で意識されたことや、メンタリティについて聞かせてもらえますか。
「自分たちとしては相手陣内でプレーをしようという話をしていました。そこで相手チームにプレッシャーを掛けることができたら点を取れると信じていたので、それをしっかりしようという話をしていました。ディフェンスのところでは、自分たちのシステムをしっかりとやろうという話をしていました。あとは絶対にギブアップはしないぞという話をハドルの中でしていましたし、そこでチャンスが生まれて最終的にターンオーバーを取ることができて、北村(瞬太郎)がいつものように走り切ってくれたので、それはすごく良かったと思います」
横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「前半で良い入りをしていましたが、今季の横浜Eは毎回同じパターンで崩れて、例えば勝負どころのセットピースが安定しなかったり、ディフェンスで簡単にトライを取られたり、そういう同じ問題を改善できてないのは、僕の責任だと思います。最後は本当にストロングフィニッシュをしっかり決められるように、自分たちでもう一回信念をもって戦いたいと思います」
──フッカーの選手が不在という中での選手の対応力というのはどう見ていましたか。
「(石田)吉平(※フッカー不在でラインアウトのスロワーを務めた)がラインアウト(成功率)100%。本当に勝負強いと思います。7人制日本代表でやっていたし、緊急時のために吉平が投げるというプランはもちろんもっていましたが、そんなに練習しているわけじゃないし、あの状況でしっかりと勝負強さを見せてくれたと思います」
──毎回同じようなパターンとおっしゃいましたが、良い形のリードから追い上げられて折り返して、ハーフタイムにどのような戦い方を指示されましたか。
「毎回後半の立ち上がりで自分たちから崩れて、相手に流れを渡してしまうということがあるので、そういうところをもっと強固にするための今季の『プラスワン』という自分たちのスローガンでしたけど、なかなかそこがうまくいかなくて……。そこが苦戦しているところだと思います。そこは選手が同じミスを犯すような環境を作っている僕らスタッフ側の責任だと思います」
横浜キヤノンイーグルス
庭井祐輔ゲームキャプテン
「率直に負けてしまって悔しいというか、残念でならないというのが感想です。緊急事態というか、けが人が自分を含めてかなり出てしまいましたが、その中でプレーしていた選手たちは本当にうまくやってくれたと思います。そういう評価できる部分も少しありながら、やっぱり勝ち切れていないという結果がすべてで、この結果を受け止めながら、あと2試合で本当に自分たちのラグビーをもう一回やることにしっかりフォーカスを当てていきたいと思います」
──緊急事態になったときの選手たちの対応力という話もされていましたが、今週1週間の準備で、かなり良い準備ができたから対応できたというところもあったのでしょうか。
「ここまでの緊急事態を練習していたわけではないので、そういう意味では本当に対応力が素晴らしかったなと思いますし、そういう練習していない状況の中でも良い判断をして、やってくれたリーダーたちに感謝したいなと思います」
──HIA(脳振盪の疑い)で一時退出して、グラウンドに戻ってからまたベンチに下がることになったと思いますが、その経緯を教えてください。
「HIAについて僕自身は陰性だったので問題なかったですが、ちょっと肩の負傷があったので、それで交替になりました。ただ、中村(駿太)選手がHIAで陽性になってしまったので、もう一度入るといった流れでした」
──来週以降、レギュラーシーズンの2週間をどう過ごしていきたいか、ストロングフィニッシュするために何が必要だと考えていますか。
「本当に同じ方向を見て、つながり続けて、一つになってやるということが一番で、もっと細かいことはいろいろありますけど、それが一番大事かなと思います」