2025.04.29NTTリーグワン2024-25 D1 第16節レポート(トヨタV 28-45 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第16節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年4月27日(日)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
トヨタヴェルブリッツ 28-45 東京サントリーサンゴリアス

課題として突き付けられる「メンタルのスイッチ」。敗戦を意味あるものとし、大一番につなげる

リーグワン初出場、それも先発メンバーとして試合に臨んだトヨタヴェルブリッツの田村魁世選手

後半10分から6分間で一気に3連続トライを挙げた東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)が、粘るトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)の反撃をきっちりと抑え込んで勝利。トヨタVはプレーオフトーナメント進出の可能性が完全に消滅した。

10位ながら、かろうじてプレーオフトーナメント進出の可能性が残されていたトヨタV。14対19で折り返した後半3分のトライが、ペナルティでキャンセルとなり勢いを失うと、後半10分に東京SGに追加点を許し、そこから簡単に崩れてしまった。

スティーブ・ハンセン ヘッドコーチは、その連続失点について、「メンタルのスイッチが切れてしまうのは、今季チームとして取り組んでいる課題」だと語った。「メンタルのスイッチが切れた」というのは、次節D1/D2入替戦回避を懸けた三重ホンダヒートとの直接対決を迎える中で、ファンにとって少し不安になる言葉なのかもしれない。

メンタルの問題は超難問である。すべては選手の意識次第で、魔法の言葉は存在しない。ただチーム内にはより厳しい状況を強い魂で乗り越えた選手が、この試合でグラウンドに立っていた。4年目で初出場を果たした田村魁世。実力者がそろう中でまったく出番が来ず、一時はラグビーを辞めようかと思うほどメンタルを傷めたものの何とか復活を果たし、このリーグワンデビュー戦では軽快なリズムでボールをさばいた。

田村は試合後、「やっぱり独特のプレッシャーはありました。でも個人的にはそのプレッシャーを楽しむことができたと思います」と、初舞台の感想を述べた。そして「田村は常に努力をし、それを実際にいいプレーにつなげていた」と、ハンセン ヘッドコーチも称賛した。

すぐにやって来る残留争いの大一番は、ラグビーのエリート街道を歩んできた選手が多いチームにとって、これまでに経験のないプレッシャーがあるだろう。ただ、もしうまくいかずにメンタルのスイッチが切れそうになったとき、チーム内を見渡せば切らせてはいけない理由がきっと見つかるはず。この敗戦を意味あるものにしなければならない。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(左)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「まず、非常にいいゲームだったと思っています。大半の時間で対等に競い合えていたと思う一方で、後半の10分か15分の時間帯にチームが勢いを失い、相手がその状況を優位に運んだと思っています。とはいえ、今後を見据えると非常にいいラグビーができていました。前半に4トライを取り逃がしてしまい、またウィリアム・トゥポウに関しては残念ながらまた腕をけがしてしまいました。チームの努力に関しては誇りに思います。結果は付いてきていませんが、次の試合に焦点を当ててまた努力をしていきたいです」

──後半の立ち上がりに突き放された要因はどこにあると考えていますか。

「ハーフタイム後の15分間、われわれの精度が落ちてしまう場面がありました。それは攻守ともに共通していることであり、例えばモールのドライブを阻止することなど、それぞれが与えられている役割を高い精度で遂行することができていませんでした。このようにメンタルのスイッチが切れてしまうことに関しては、今季チームとして取り組んでいる課題でもあります。その中で復帰してきている選手もいます。今回の試合ではトゥポウと三木皓正が復帰しました。そういった選手の体調を管理していく必要があります。姫野(和樹)に関しても前回の試合でフル出場したこともあり、この試合ではチームとして彼を管理する必要がありました。今日の試合に関しては、疲労が影響しているのか、チームが感じているストレスの影響なのか、そういったところに対してチームとしてメンタル面の強化をしていく必要があると考えています」

──ファーストキャップを刻んだ田村魁世選手の評価について教えてください。

「この試合を非常に楽しみにしていました。彼は練習で常に努力をしている選手であり、今回チャンスをつかんだだけではなく、それを実際にいいプレーにつなげてくれたので、若手の選手に対して、これ以上のことは求められないと思っています」

──プレーが止まるごとに誰かが倒れているような激しい試合だったことについてどんな印象ですか。

「両チームにとって非常にフィジカルな試合で、天気が良かったこともあり、よりハードなコンディションになったと思っています。だからこそ戦い切った選手のことを誇りに思います」

──次の試合はD1/D2入替戦回避のための重要な試合になりますが、どういった準備が必要だと感じていますか。

「やはり信念が一番大事だと思っています。チームとしてコネクトする、この状況から立ち上がることです。また今日の試合は非常にタフな試合だったので、リカバリーも大事になります。その中で1週間ハードワークをする、このチャレンジに対して気持ちを上げていく、こういった試練を受け止めることが必要です。D1/D2入替戦に回るかどうか、それは私たち次第だと思っています。自信と信念をもって80分間いいプレーをすること。その中で私たちは素晴らしいキャプテンに恵まれて、チームを引っ張ってくれると思っています。あとはいい準備をして試合を楽しむべきだと考えています。

こういったプレッシャーがある中で敗戦が多いと、どうしてもチームとしての連帯感を失って、方向性の不一致が起こりがちです。とはいえこのチームはリーダーやキャプテンの力もあり、全員が同じ方向を向いていて、チーム内に強い信頼感があると感じています。今週も大きな試練ですが、準備をした上でプレッシャーを迎えたいと自分としては考えています」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「スティーブ(・ハンセン ヘッドコーチ)が言ったように、リードしていてもおかしくない場面はありました。ただ、自分たちとしてはそこで精度のところ、正確性を少し欠いた部分があったので、来週以降はしっかりと精度のところを詰めれば、自分たちのラグビーをもう少しシャープにできると感じています。そこに焦点を当てて準備をしたいと考えています」

──ファーストキャップを刻んだ田村選手の評価について教えてください。

「本当に努力を積み重ねてきた選手ですので、こうやってチャンスをもらって、本当に堂々とプレーをしていたので、すごくうれしい気持ちになりました。すごくいいメッセージと言うか、若い選手のモチベーションになると思います。素晴らしいことだったと思います」

──プレーが止まるごとに誰かが倒れているような激しい試合でしたがどのような印象ですか。「強度に関しては、すごく良かったとチーム全体で感じています。前回の試合もそうでしたが、ディフェンスのインテンシティーは素晴らしかったです。ただ、いい時間帯でペナルティを冒してしまって、自分たちのエネルギーが有り余ってペナルティをしてしまうときもあるので、そこに関しては落ち着いてできればと思います」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ(左)、堀越康介キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ

「本日は両チームの関係者、ファンのみなさん、暑い中応援ありがとうございました、ディビジョン1は残り3試合ということ、自分たちの順位も含めてすごく大事な試合でした。その中で堀越(康介)を中心に、自分たちのラグビースタイルを最初から見せつけるというところで、すごくいいリーダーシップを発揮してくれたと思います。前半はモメンタム(の部分)でいったり来たりしましたが、それが後半(相手チーム)へのボディブローのようになって、勝てたのかなと思います。大事なのはこれをしっかり来週の試合につなげて、選手たちやコーチがセームページになって(同じ絵を見て) 、もう1回戦うことだと思っています」

──前半はクロスゲームとなっていましたが、ハーフタイムにはどのような指示をしましたか。

「前半に関しては、トライを取れるチャンスがあと2、3回あったと思います。ボールを置くか置かないかの本当に手前までいきながら自分たちでコントロールできる(はずのプレーで)エラーが起きてしまいました。1トライ差の状況でしたが、後半に入ってボールを置くまでみんなの集中が切れなかったところがスコアの差になったと思います」

──森谷圭介選手の評価はいかがですか。

「クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦の一つの課題で、ボールを手放すタイミング、ランとキックの判断というところは、9番と10番がコントロールしないとダメだということで、彼が前半の最初からキックとランのバランスがうまく、その結果敵陣でプレーする時間が長かったので、ゲームの組み立てはすごく良かったと思います」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン

「本日はありがとうございました。準備してきたことを試合で100%出そうと、みんなで厳しく言い合ってきて、それが試合で出せたことがすごくうれしいですし、そこが勝てた要因だと思います。今まで課題だったゲームチェンジのところでのみんなの集中力がすごく良くて、チームとして勝ちの方向に向かっていったと思います。あと2試合頑張っていきたいと思います」

──ハーフタイムにはどんな声掛けをしましたか。

「ハーフタイムで、『フィフティー・フィフティー』のプレーはやめようというのと、ブレイクダウンの寄りをもっと早くしようというところだけを話しました。後半の5分、10分でまた相手が来ると思うから、そこをしっかりとシンプルに精度の高いプレーをやっていこう、いつもどおりのことをやろうと言って後半に向かいました」

──平生翔大選手の評価はいかがでしょうか。

「まず、彼の努力でこのチームのファーストキャップを取れたことは本当にうれしく思いますし、おめでとうと言いたいです。プレーに関しては僕もびっくりするくらいインパクトタックルもキャリーも強くて、『何回でも泥臭くひたむきにやる』と試合前にみんなに宣言して臨んでいましたが、本当にそのとおりのプレーをして、チームに勢いを付けてくれたと思います」

試合詳細

見どころ・試合レポート一覧