NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第17節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年5月4日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
横浜キヤノンイーグルス 29-47 コベルコ神戸スティーラーズ
気迫あふれる活躍を見せるも、失意の敗戦。それでも最後の試合に向け変わらぬ奮闘を
大逆転でのプレーオフトーナメント進出へ望みをつなぐためには、ボーナスポイントを含む勝ち点5獲得での勝利が絶対条件だった横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)は、開始2分に先制トライを奪い幸先良いスタートを切った。しかし、前半10分にスコアをひっくり返されると、効果的に加点したコベルコ神戸スティーラーズに寄り切られる形で29対47の敗戦を喫した。こうして敗れた横浜Eはプレーオフトーナメント進出の可能性が消滅した。
「トライを取り切ってこい」と送り出された沢木敬介監督の期待に応えるかのように、松井千士は2トライをマーク。しかし、スピードスターの大奮闘も及ばず、敗戦を告げるノーサイドのホーンが鳴った瞬間、プレーオフトーナメント進出の可能性は潰えた。
松井自身が最も悔やんだ場面は後半18分、相手のアタックを背後からのタックルで食い止めた必死のプレーが、イエローカードの対象になったこと。後半13分にもマシュー・フィリップがシンビンで一時退場処分を受けていたため、スコアでも劣勢だったチームは、松井のシンビンによって、13人でのプレーを余儀なくされた。
「僕のシンビンでゲームが壊れてしまった。責任を感じている」。本人はそう言って自分を責めたが、松井の気迫にあふれたプレーの数々は、決して色褪せない。
前半の最終盤には自陣でのルーズボールが相手に渡れば、一気にトライまで持ち込まれてしまう危険な場面で、松井は自慢のスピードを生かして帰陣。「トライラインを割らせたくない一心で走った」松井の献身が、チームを救った。
それでも、勝負どころで先発起用を託されたウイングプレーヤーは、こう言って落胆の色を隠さない。
「ボーナスポイントを取ることを託された先発起用だったのに、それを達成できずにチームに申し訳ない気持ちでいっぱいです」
大逆転でのプレーオフトーナメント進出の夢は潰えたが、レギュラーシーズンはまだ1試合が残されている。東芝ブレイブルーパス東京との今季最終節は、“ワンクラブマン”嶋田直人の現役ラストマッチ。レジェンドと同じグラウンドに立てる最後のチャンスに向けて、松井は「嶋田さんのために体を張りたい」と変わらぬ奮闘を誓った。
(郡司聡)
横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「今季は今日のような試合のパターンが続いています。ラインアウトを取れないと試合には勝てません。セットピースを制することはラグビーではとても大事な部分ですが、もともとイーグルスはラインアウトを起点にして攻めることがチームスタイルであるのに、今季はラインアウトが安定していません。またディフェンスも思い描いているものができずに、同じ課題で苦しんできました。来週の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦は嶋田(直人)の引退試合です。横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)の生え抜きで勝てない時代を知っている選手をハッピーな形で送り出したいと思います」
──リードされた展開で折り返した後半に向けて、ハーフタイムで確認したことを教えてください。
「いろいろと確認しました。前半からうまくいってないことを後半に修正する能力があれば、また挽回できるのですが、それができないのはコーチングスタッフの問題です。私が責任を感じています」
──今日の結果によって、プレーオフトーナメント進出がかなわないことが決まったことを、どのように受け止めていますか。
「残念の一言です。まだレギュラーシーズンは1試合が残っているので、ストロングフィニッシュできるようにしたいです。次は嶋田がスターティングメンバーなので、(隣にいる)古川(聖人)はリザーブです(笑)」
横浜キヤノンイーグルス
古川聖人 ゲームキャプテン
「本当に残念な結果になりました。でも、もう過去を変えることはできません。このメンバーでできる最後の試合となる来週のBL東京戦に向けて良い準備をしていきたいです。チームを離れる選手、残る選手はいますが、1年間イーグルスとして取り組んできたことを出し切る試合になります。最後までファンのみなさんが熱い応援をしてくれたことが心に響きました。後押しをしてくださっていることを痛感したので、今季最後の試合を良い形で締めくくりたいと思います」
──先制トライを取れたあと、前半で受け身に回る時間帯もあった中で、グラウンドの上ではどのようにチームを立て直そうとしていたのでしょうか。
「やることを明確にして、シンプルに何をするかということを確認して実行することです。アタック、ディフェンス、ブレイクダウンと各パートを担当しているリーダーの下、次に何をすべきか確認しましたが、不用意なペナルティもありました。また簡単なミスがあった影響でトライを取り切れなかったことは、自分自身の力不足を感じています」
──現役を引退する嶋田選手は7番を争う先輩でした。嶋田選手から学んだことを教えてください。
「嶋田さんは誰に聞いても、『チームマン』という答えが帰ってくるほど、試合に出る、出ないに関係なく、愚直にチームに貢献できる選手です。今日の試合も後半の途中から出場して、ひたすら走ってボールを追い掛けることや、ボールに絡むことでチームに貢献する働きを貫いていました。頑張るか、頑張らないか。嶋田さんは人間にとって一番やり切るのが難しいことをやり切れる選手です。日本人フランカーとしての存在価値を上げられるように、嶋田さんの姿勢から学んだことや、自分も嶋田さんに負けないぐらいチームに対する愛をもって、チームに貢献できる選手になりたいと思います」
──プレーオフトーナメント進出がかなわないことが決まったことを、どのように受け止めていますか。
「沢木(敬介)監督と同じで残念の一言です」
コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ
「タフなゲームでした。横浜Eさんはテンポの速いプレーをしてきました。プレーオフトーナメント進出への望みをつなぐためにはボーナスポイントを含めた5ポイントが必要な状況で、速いテンポでアタックを仕掛けてくるだろうということはチーム内でも共有してきました。前半に関しては、流れが行ったり来たりする状態になりましたし、前半の規律はあまり良くなかったです。後半に関しては5トライ目を与えることにつながったシーン以外は、自分たちのディフェンスができたと思います。規律を高く保ち、相手にプレッシャーを掛けることができました。横浜Eさんの終盤の猛攻はコーチングボックスから見ていてもヒヤヒヤする展開でした。最後まであきらめずにプレーする精神には称賛を送ります。今日のタフな試合を勝ち切れたことをうれしく思いますし、来週の静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦に向けて良い準備をしていきたいです」
──初先発のタリ・イオアサ選手と途中から出場した辻野隼大選手に対する評価をお願いします。
「タリに関しては60分ほどのプレータイムでしたが、素晴らしいパフォーマンスでした。ペナルティを取られたタックルに関しては、少々タフなコールでした。若い選手ですし、このチャンスを得るまでハードワークをし続けてくれたので、今日のパフォーマンスに関しては、コーチ陣としてもハッピーです。辻野に関しても、プレー機会を与えられて良かったですし、トライが取れたことに関しても、良かったです。ここ最近、若い選手たちに出場機会を与えられているチーム状況は喜ばしいことです。今季のアーリーエントリーで(出場した選手)は辻野が4人目になります。若い選手がステップアップすることでチーム内の競争が高まっていくので、とても喜ばしい状況です」
──プレーオフトーナメントを勝ち上がっていく上で、チームとして向上させたいことを教えてください。
「40対12の時間帯があったように、そのまま相手にプレッシャーを掛け続けられるようにして、さらに突き放せるようになることは、われわれが向上させないといけない部分です。またチームとしても、バックフィールドのカバーをもっとスマートにしなければなりません。相手がショートキックを交えてくることが分かっていたので、ラインをフラットにするように働き掛けてきましたが、すぐに修正しなければなりません。静岡BRさんと2週間連続で戦う可能性もありますが、侮れない相手です」
コベルコ神戸スティーラーズ
李承信 共同キャプテン
「プレーオフトーナメント進出が決まったあとの試合だったので、勝ってプレーオフトーナメントへの良い流れを作りたいと1週間準備をしてきました。勝利をつかんで向かっていけることがハッピーです。先ほど(デイブ・レニー)ヘッドコーチが話したように、横浜Eさんはクイックなプレーが得意ですし、どんどんフェーズを重ねて自分たちにプレッシャーを掛けて来ることも分かっていました。実際にディフェンスラインにプレッシャーを掛けられることもあった中で、相手にモメンタム(勢い)を与えることもありましたが、自分たちもトライを取り切るべき場面でトライを取り切れました。フィニッシュ面では自分も含めて、雑な面もありましたが、相手に簡単なトライを与えてしまい、相手に望みを与えるような時間帯があったことは、プレーオフトーナメントに向けてしっかり反省しなければなりません。ただ、タフな相手にしっかりと勝ち切れたことに成長を感じています。今季はここまで、ノンメンバーの選手たちが努力を重ねて、メンバーの選手とともに1週間の良い準備期間を過ごせています。自分たちゲームに出るメンバーは良い状態で試合に臨めていますし、ワンチームでできていることを実感しています。また1週間、良い準備をして次の静岡BR戦に臨みます」
──プレーオフトーナメントに向けて、今日の試合の中で実践しておきたかったことを教えてください。
「ハードワークをしてくる相手に対して、スマートにバランス良くゲームを戦っていくことです。横浜Eさんが自陣から積極的にアタックを仕掛けてくる中で、キックを駆使しながら、いかに敵陣で戦っていくか。ターンオーバーのシーンを筆頭に賢く戦えたと思います。タフなコンディションが求められる中で9番(日和佐篤)も10番(ブリン・ガットランド)も判断良くプレーできていたと思います。また特に後半はディフェンスで我慢をすることができていましたし、前半から修正してディフェンスの規律を守ることができたのも良かった点です」