2025.03.02NTTリーグワン2024-25 D2 第7節レポート(花園L 29-36 江東BS)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第7節
2025年3月1日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 29-36 清水建設江東ブルーシャークス

ルーツをともにする両チームの3番。明暗分かれる中で去来する共通の思い

清水建設江東ブルーシャークスの李優河選手(左)、花園近鉄ライナーズの文裕徹選手

今季初の4連勝を目指した花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)と、連敗を4でストップしたい清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)がぶつかり合った試合は、あまりにもドラマチックな結末だった。

29対29のタイスコアで迎えた試合終盤、ラストプレーを告げるホーンが鳴り響いたあとの後半43分、江東BSは田森海音が逆転トライ。コンバージョンキックも成功させたビジターチームが劇的な展開で連敗にピリオドを打った。

勝利の瞬間、すでにベンチに下がっていた江東BSの李優河は汗にまみれた顔に涙を浮かべながら、“花園の歓喜”をかみ締めていた。

同じプロップのポジションで同じ背番号3を付ける花園Lの文裕徹は、大阪朝鮮中高級学校と同志社大学ラグビー部でも先輩だった。

「対戦相手として試合をするのは初めてなんです」(李)。同じ高校と大学でプレーした選手は日本のラグビー界では珍しくないが「小学校のときから一緒です」と李は幼少期から在日社会で育ってきた先輩と同じ道を歩んできた。

花園Lがディビジョン1から降格し、江東BSがD3から昇格してきたからこそ実現した今回の顔合わせ。スクラムでは対面でなかったものの、互いの息遣いが聞こえる距離感で、何度もグラウンド上で対峙した。

「先輩として尊敬しつつも、相手チームなので負けられない気持ちでプレーしたり、スクラムを組んだりしました」と李は胸を張った。

一方で、文にとっては“花園の悲劇”となった。「後輩との対決はあまり意識していませんでした」とあくまでもチームの勝利だけを考えてグラウンドに立ったが、待っていた結果はあまりにも残酷なものだった。

ハーフタイムには互いに一目もくれず、ベンチに向かったが、文は「後輩でありながら、大学では一緒のポジションでライバル。優河に負けないように工夫しながら切磋琢磨してきました。そういう選手と一緒に戦えて良かった」と本音も口にする。

10代から同じジャージーを着続けてきた二人だが、いまは花園Lと江東BSの一員だ。ただ、大阪朝鮮中高級学校で学んだ二人にはいまでも共通する思いが根付いている。

「朝鮮学校出身のラグビー選手として在日社会を力付けたいです」と李が言えば、文も「在日社会のためという思いは朝鮮学校出身の選手にはありますね」と力を込めた。

リターンマッチは3月15日の第8節にやってくる。背番号とポジション、そしてルーツも同じ二人――。次はどんな物語を紡いでくれるのだろうか。

(下薗昌記)

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、パトリック・タファ キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「今日はありがとうございました。(今季はまだ)ホストゲームで勝利していないので、一戦必勝という形で臨みましたけど、こんな結果になりました。今季はミスを少なく、ペナルティを減らすということに取り組んできましたが、そこが非常に多くなってしまって、なおかつセットピースの安定もありませんでした。試合の総括としてはそこがまったくできていなかったです。そしてアタック(の機会)を自分たちで失っているので、それが(攻撃機会に)つながっていたらという思いはありましたが、どちらにしても自分たちのミスで失点してしまって、自分たちで負けてしまったというようなゲームでした」

──直近の3試合ではいいプレーが続いていましたが、今日は少しそういうところが見られませんでした。試合に向かう過程で違ったことは感じましたか。

「僕が(ヘッドコーチを)やらせてもらっている2シーズンの中で、初めて前節と同じメンバーを組めたんですよね。ということはけが人もいなくて、チームの習熟度も上がるというような形でやってきて、かなり力を出してくれると思っていましたけど、私の感じたところでは(選手が)『簡単にいくんじゃないか』と思ってはいないと思いますが、どこかにスキがあったのかなと思っています。攻め続ければ私たちのチームはもっと点を取れる。今季はアタックすれば、ディフェンスをする時間が減って勝てるというチームを作り上げてきたにもかかわらず、アタックがつながらない。アタックの起点を向こうがくれたのにそれがまた相手ボールになってしまう。本当に昨季の負の連鎖ではないですけど、今日はそういうような形のチームに陥った感じがしました。ボールがつながって、ボールが動くようなラグビーができれば間違いなくトライが取れるチームだと思っていましたので、私のメンバーチェンジのところも『うーん』という思うところがありますけど、それ以外はある程度、予定どおりに選手を代えられるなど、(ここまでは)うまくいくと思っていたところが、(今日は)うまくいかなかったことがこの結果だと思います」

花園近鉄ライナーズ
パトリック・タファ キャプテン

「こんにちは。今日はわれわれに運が向いてなかった、そんな日だったのでしょう。ホストゲームなので、必ず勝つというマインドセットを強くもち、また80分を通じて安定したパフォーマンスを出せるチームになろうと取り組んできました。ただペナルティも多く、われわれのミスから相手に(ボールを)つながれてスコアされる場面が多かったです。チームとしては、そこをしっかり修正していかなければいけないと思っています。まだ次で挽回するチャンスももちろんあるので、そこまでにはしっかりとチームとして修正して臨んでいきたいと思います」

──今日は勝つことは当然として、ボーナスポイントを取りたかったと思うのですが、それにより焦りみたいなものは選手の中にあったのでしょうか。

「そこはなかったですね。(ボーナスポイントという)目標を高く掲げていたというわけでもなく、ここ数週間は3連勝しているので、特にチームに勢いがありました。われわれは自信をもって練習していましたし、今回も自信をもって臨めば勝てると思って試合に臨みました。なので、焦りはありませんでした。しっかりとしたシステムの中で、われわれにもしっかりとしたゲームプランがありましたが、それを実行し切れず、ミスで終わったところが敗因だと思います」

──後半は、特に無理なプレーが増えたような気がしますが、その辺りの要因については勝ち点5というのが頭によぎったのでしょうか。

「いえ、そういうことはありません。後半に入るときも、前半と同じでファーストパンチをこちらから打つという意気込みで入りました。後半にはインパクトプレーヤーがたくさん出てきてくれるということも分かっていました。ボーナスポイントは話にも出ていないですし、われわれもそういったものは考えていなかったです。ホストゲームで勝つ。それだけを目標に1週間やってきました。『ファンや応援してくださっているサポーターの前で勝とう』『われわれのラグビーに対するパッションを見せよう』とみんなで言って1週間取り組んできました。実際、ミスやペナルティがあって終わってしまって、後半はあのような結果になってしまったんですけど、やはり80分間をとおして(力を)出し切れるチームになっていかないといけないと思っています」

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、白子雄太郎キャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕 監督兼チームディレクター

「本日はありがとうございました。まず試合開催にあたり多くの関係者の方々にご尽力いただきまして、この素晴らしいラグビーの聖地・花園でプレーすることができました。本当にありがとうございました。試合に関しては、4連敗して挑んだ試合でしたが、『われわれはチャレンジャーだ』ということを練習から常々言い続けてきましたので、その結果が勝利という形に結びついたのかなと思います。選手のハードワークには本当に感謝しかないです。ありがとうございました」

──後半の課題が克服できたということで、戦術以外の面でも体力的にもチームとして克服できたという印象でしょうか。

「今回は勝たせていただきましたけども、本当に勝負のあやで、(流れが)あっちに来るかこっちに来るかっていうところだったと思いますし、課題が克服できたかというと、まだそうではないと思っています。(2週間後の)次節もまたライナーズさんと試合をさせていただきますけど、そこでもしっかりと勝ち、勝つことで次は克服したと言えると思います。変なゲームをしてしまうと(今日の結果は)ラッキーだったのかなというふうに言われる可能性もありますので、今日までは多分、選手も浮かれていると思いますけど、明日以降はしっかり締めて次のライナーズ戦に向かっていきたいと思います」

清水建設江東ブルーシャークス
白子雄太郎キャプテン

「後半の戦い方が課題だったんですけど、そこが今日はうまく修正できたのかなと思っています。ただ、ライナーズさんのプレッシャーにかなり押されてしまって、後半は攻めあぐねた部分があったり、なかなかプレーできない時間帯もあったりしました。(2週間後に)また再戦するので、そこを修正して頑張りたいと思います」

──後半40分のスクラムからのマイボールでどういう意思統一で点を取っていこうと思っていたのでしょうか。

「そうですね。まず、自陣で戦ってしまうとやはりペナルティになったときに、ライナーズに深く入られてしまうので、まず敵陣に、敵陣にと行きましたが、ホーンが鳴ったあとはもう攻めるしかないというところで、振り切って攻めるだけというか、自分たちの戦術をそのまま遂行するだけでしたので、そういった意識でプレーしていたと思います」

──あの場面はあくまでも勝ちにこだわるという感じだったのでしょうか。

「そうですね。たぶん、同点で満足している選手は一人もいなくて、勝つというマインドだったので、そこは100%、みんなが攻めるマインドだったと思います」

──後半の戦い方がこのところの課題でしたが、今日の試合はそういう場面が出なくて、逆に相手を突き放した点についてどのあたりが成長して結果につながったのでしょうか。

「アタックでのボールロストとか、ディフェンスだと我慢できなくて、ペナルティをして自陣に入り込まれるのが(これまでの悪い)パターンだったので、まずはそこをなくそうと。あとは、残り20分間のところで言えば、『またこの時間帯か』と捉えるのではなくて、自分たちはチャレンジャーなので、『キツい時間帯でもハードワークすることから逃げずにチャレンジしよう』とポジティブな声掛けをして、そこをみんなで乗り越えられなければ今日の勝利はなかったと思います。負けた4試合の課題に、ポジティブにチャレンジしていくところをこの1週間やってきました」

──後半の課題が克服できたということで、戦術以外の面でも体力的にもチームとして克服できたという印象でしょうか。

「トライがなかなか認めていただけないシーンがあったり、ペナルティがあったり、キツい時間がありましたが、そこを我慢し切ったという点では成長できたかなと思っています。あとは後半だけでなくて、前半も相手陣内に入ったときに必ずスコアして帰って来るということも重要だと思います。今回の試合はその場面でしっかりスコアできました。前半で点を積み重ねられたところも大きかったと思います」

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