2025.03.16NTTリーグワン2024-25 D2 第8節レポート(釜石SW 39-41 日野RD)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第8節
2025年3月15日(土)13:00 いわぎんスタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 39-41 日野レッドドルフィンズ

惜敗も新たなホットラインを構築。チャンスをモノにした男が“ブースト”を掛ける存在へ

日本製鉄釜石シーウェイブスの村田オスカロイド選手。「バックス陣は連係が取れています。特に阿部とは最近すごく合う」

試合終了の笛が鳴るまで、勝敗がどちらに転ぶか分からないゲームとなったディビジョン2第8節、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)対日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)の一戦。逆転に次ぐ逆転、まさに一進一退のクロスゲームが展開されたが、最後に上回ったのはビジターの日野RDだった。

その差はわずかに2点。しかもラストプレーのペナルティゴールが決まっていれば、土壇場で釜石SWが逆転勝利するエキサイティングな試合状況だったが、無情にもキックは風に流され、ボールをつかんだ日野RDがタッチライン外に蹴り出してノーサイドとなった。

試合後、「ラストのペナルティゴールのような場面はワクワクと緊張が強くなっちゃうタイプ。ただ、(キッカーの)ハンティー(ミッチェル・ハント)がベストのプレーをしてくれれば、正直入るか入らないかはどちらでも良かった。勝敗に関してはその前の79分の間にもっとできることがあった」と振り返るのは釜石SWの村田オスカロイドだ。

自身を「ディフェンスの選手」と表現する村田は2016年に加入した古株の一人。一度オーストラリアに渡ったが、2022年に再び加入した。鋭いタックルを得意とするセンターは昨季のレギュラーシーズン10試合中6試合に先発出場したが、今季は前節が初出場となった。

「自信を失わないように、チャンスは来るからそこで良いプレーができるような準備を続けていました」

内心は別の感情もあったのかもしれないが、出番がない中でもメンタルをコントロールし、試合で爆発させた。特に目立ったのはアタックの貢献度。前節は阿部竜二の2トライをお膳立てし、今節はその阿部のパスから2トライをマークした。「今日トライしたとき、阿部とは『前節とは逆だね』っていう話もしました」と笑顔を見せ、「バックス陣は連係が取れています。特に阿部とは最近すごく合う」と相性の良さも口にする。阿部の能力を理解し、プレーを予測する。この2試合、“阿部-オスカライン”は結果を残し続けている。

自分を信じ、仲間を信じ、手繰り寄せたチャンスをしっかりとモノにする。“守備の人”というだけではなく、アタックでの貢献度を増して村田は先発に戻ってきた。チームが疲弊し、けが人も出やすくなるのがこれからの時期。連勝は逃したものの、頼もしいセンターの帰還は今後の釜石SWにブーストを掛ける原動力となるに違いない。

(髙橋拓磨)

日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブスの須田康夫ヘッドコーチ(右)、村上陽平キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

「岩手県盛岡市で試合ができ、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)としては非常にうれしく思っています。結果として負けてしまったのですが、序盤、しっかりリードできる部分があって自分たちのペースを握るということはできていたと思いますが、それを80分間続けられたかというと、そうではなかったと思います。勝負がどちらに転ぶか分からない展開でしたが、勝ち切るためには自分たちの規律を守るということを徹底しなければいけないと感じたゲームでした。日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)さんのフィジカルのプレーにはプレッシャーを受けた部分がありますが、釜石SWとしては先週のゲームに比べてハングリーさが足りなかったと感じます」

──リードして折り返した中、ハーフタイムにどのような指示、修正をして後半に臨んだのでしょうか。

「リードはしているものの、規律を守れず、自分たちのペースを守ることができていなかったので、『プランどおりにもう少しキックを使っていこう』ということを指示しました。流れとしては悪くなかったのですが、自分たちで苦しめている感じだったので、特段何かを変えるのではなく、規律良く、自分たちのラグビーをしようということを話しました」

──規律が乱れたのは、日野RDのフィジカルや圧力が要因として大きかったのでしょうか?

「そうですね。ラックに近い位置での攻撃が多かったので、外側のディフェンスが少し押し込まれた中、ボールアウトというところから全体的なラインオフサイドを取られました。(判定が)厳しめな面もありましたが、そこにアジャストしていかないといけないなと思いました」

──今日から後半戦が始まりましたが、接戦を落としてしまったことを残りの試合にどのように生かしていきたいと考えていますか。

「今季こだわってきたコリジョンの部分で手を抜かないということだと思います。そこで前に出られなければペナルティも取られず、しっかり我慢できた部分もあったので、チーム全体としてハードワークするところはチームとして今後も必要だと思いますし、誰か一人が気を抜けばこういった展開になってしまうというところを知れたのは良かったと思います」

──セットピースを課題に挙げられていましたが、今日についてはどのように評価していますか?

「セットピースは比較的良かったのではないかと思っています。ラインアウトでプレッシャーを受けた部分はありましたが、こちらのスティールもありましたし、セットピースに関しては改善されてイーブンかなと感じています。あまりゲームに影響していないというイメージをもっています」

──今日だけでなくリーグ前半戦を含めて、後半残り10分でリードしているときの戦い方が課題でもあったと思いますが、どのように修正していきたいですか。

「最後の戦い方もそうですし、疲れてきた時間帯にチョップタックルが徹底できていない場面があるので、残り10分なので頑張ってほしいところはありますけど、インパクトプレーヤーの精度の高さというところにも期待しながら今後につなげていきたいなと思っています」

──次節に向けての意気込みをお願いします。

「次節は花園近鉄ライナーズとのビジターゲームになりますが、3連戦目になるのでしっかりコンディションを整えることを集中してやっていきたいと思います。一度対戦したことで、相手のやってくることは分かっていますし、相手にとってもそれは同じですので、自分たちにフォーカスしていま自分たちの抱えている課題をクリアにして挑みたいと思います」

日本製鉄釜石シーウェイブス
村上陽平キャプテン

「前半から自陣22mに入られたときのオフサイドやペナルティのところの規律を守れなかったことが最後まで響いていて、最終的に自分たちでゲーム展開を厳しくしてしまったというところが我慢できなかった要因でもあるのかなと思います。そこはペナルティを犯したあとに、リーダーから『ディシプリン、ステップバック』という声は掛けたりするのですが、オン・ザ・ピッチのところでなかなかアプローチし切れず修正できなかったことはキャプテンの責任なのかなと思います。須田(康夫)ヘッドコーチからもあったように、ナインシェイプ(スクラムハーフからの球出しで複数のフォワードが近場を攻める形)のアタックに対してプレッシャーを掛け切れなかった、そこまでゲインされるはずではないのに許してしまって、ディフェンスラインも下がり切れずにオフサイドを取られるという悪循環を自分たちで作ってしまったので、釜石SWとしてはいかにディフェンスでプレッシャーを掛けられるかが肝だと思うので、もう一回見直して次に臨みたいと思います」

──今日の試合は逆転に次ぐ逆転というクロスゲームとなりました。グラウンド上ではどのような意識を促そうとプレーしていたのですか?

「ペナルティ、オフサイドのところを簡単に犯さなければ、相手がフェーズを重ねていたときでも対応できていたので、そこで絶対にペナルティをしないようにということは継続して声を掛けていました」

──結果的にそのペナルティが多くなってしまいましたが、今後、どのように改善していきたいと感じていますか。

「ちょっとずつゲインされて、早いテンポでボールを出されるところに対して下がり切れなかった、順応できなかったところがあるので、結果的にオフサイドになってしまった部分があると思います。チームメートには『もっと大げさに下がろう』ということを言っていましたけど、そこはコントロールしていかなければいけないところかなと思います」

──後半に1トライ差以上の点差があった場面で、グラウンド上ではどういったメンタルで戦っていたのか教えてください。

「1トライ差以上リードできたことは大きいとは考えていましたが、まだ時間は10分あったので、点差ではなく、規律の徹底、ディフェンスでプレッシャーを掛ける、敵陣でプレーするといった自分たちがやるべきことにフォーカスしようということをチームとして話していました」

──次節に向けての意気込みをお願いします。

「自分たちがやるべきラグビーとはどんなものなのかということをしっかりフォーカスして、リーダーとしてそこに対してしっかりアプローチできるようにして、次の試合に臨んでいきたいと思います」

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、中鹿 駿バイスキャプテン

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ

「本日は盛岡の地で素晴らしい環境の中、試合ができたこと非常にうれしく、感謝しております。試合のほうは(前節の)豊田自動織機シャトルズ愛知戦でわれわれが思うゲームができず負けはしたのですが、チーム全員がここまでしっかり努力してきました。いつかボールが(自分たちのほうに)転がるチャンスはあるので、課題は修正しながらさらに成長できるようにしたいです。特に釜石SW戦の準備についてはこの1週間、素晴らしい選手の努力があっていい練習ができていたので、その努力が最後のスコア、2点ですが上回れたと思っています。この努力を続けてさらに成長できるようにやっていきたいと思います」

──前半はリードされて折り返しましたが、ハーフタイムではどのような話をされましたか。

「今週は良い準備ができていて、中鹿(駿)のほうからもあったのですが、良いウォーミングアップもできていました。しかし、ちょっとしたエラーがあって相手にチャンスを与えてしまって、スコアにつなげられました。特に(釜石SWの)キックオフから2回エラーをしてしまいました。われわれが得点できたあとにエラーが起きてしまったのでそこをしっかり修正するところが一つ。アタックに関しては前半17点でしたけど、何度かトライできるチャンスを手放したところがあったので、『もう一度自分たちのゲームプランどおりにやろう』ということで臨んだ結果、後半、ああいうゲームになったと思います」

──今日は谷口永遠選手がハットトリックの活躍でした。彼のプレーへの評価を教えてください。

「いろいろと改善しなければいけないところもあるのですが、彼はチームを勢い付かせる選手の一人なので、彼が活躍することでチームもどんどん勢いを増すところがあります。ムードメーカーでもある彼がチャンスメークしてくれることでチームに勢いが出て、今日はプレーヤー・オブ・ザ・マッチにもなりましたけど、それに値するパフォーマンスだったと思います。あまり言い過ぎるとちょっとあれなんですけど(笑)」

──今日のゲームプランについて教えていただけますか。

「詳しくはお話しできませんが、われわれは早くポジションをセットしてたくさんのオプションをもってアタックしていきたいです。それで相手のディフェンスを混乱させてスペースへボールを運ぼうとしていました。うまくボールを運べる場面も多くあったので、さらに磨いて次に向かってやっていきたいと思います」

──ハーフタイムに掛けた具体的な言葉があれば教えていただけますでしょうか。

「選手が自分たちで改善の声を掛け合っていて、特にズレていることもなかったので、今日やろうとしていることを後半40分遂行することでチャンスがおのずとわれわれに転がってくると思っていました。それを40分間アグレッシブにチャレンジしようという声が挙がっていて、みんな何をしたらいいかが分かっている上でグラウンドに立てたことが大きかったと思います」

日野レッドドルフィンズ
中鹿駿バイスキャプテン

「まずは岩手の素晴らしいグラウンドで試合ができたことをうれしく思っています。前半を良い感じでスタートできたのですが、トライを取り切れない部分がありました。でもハーフタイムで修正できて、後半の入りも良かったと思います。ただ、ゲーム中にも以前からの課題であるディシプリンのところがまだ課題かと思います。来週の試合に向けて準備していけたらと思います。釜石SW戦に向けての準備は、苑田(右二)ヘッドコーチも言ってくれましたが、ゲームメンバーだけでなく、チーム全員ですごく良い準備ができました。試合前のアップも今までで一番良いアップができたと思っていて、今まで1点差で勝てなかった試合があった中、そこが今日は勝てた要因なのかなと思います」

──今日は1点を争うクロスゲームでした。どのような声掛けをして戦っていたのでしょうか?

「今日は得点を取ったあと、取られたあとのマインドセットのところ、切り替えること、そういう言葉をずっと掛けていました。ステイオンし続けるというのはチームの課題だったので、そこを言い続けてディフェンスでもアタックでも、一個一個丁寧にプレーし続けようと言い続けていました」

──こういった接戦で勝ち切れたという部分について、チームにとってどのような収穫となりましたか。

「1点差で負けたりだとか、勝ち切れなかったりしたところが前半戦であった中で、今日プレーヤー・オブ・ザ・マッチを取った(谷口)永遠から試合前に『今日から変わらなければならない』という言葉があって、その後半戦が始まる1試合目で勝ち切れたので素晴らしい試合になったなと思います」

──試合中に潮目が変わったなと感じた場面はありましたか?

「そういったタイミングは正直感じられなくて、ずっと接戦でしんどいゲームだったと思います。ただ最後に追い付くトライをしてペナルティゴールも決められたところは、良い流れが来ているなと思いました。後半の入りにトライが取れたのも良かったなと思います」

──前半と後半の入りで違う部分はどんなところですか?

「前半もファーストトライをモールから取れましたが、そのあと2回くらいモールで取り切れなくて、フォワードコーチから修正が入りました。それを後半に入ってすぐのモールで出してトライを取り切れたことは良かったと思います」

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