2025.04.06NTTリーグワン2024-25 D2 第10節レポート(S愛知 26-23 九州KV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第10節
2025年4月5日(土) 12:00 ウェーブスタジアム刈谷 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 26-23 九州電力キューデンヴォルテクス

逆転、そして29フェーズを守り切っての8連勝。倒れ込んだフル出場プロップの貢献

豊田自動織機シャトルズ愛知の山口知貴選手。「苦しい状況でどう立て直して勝ちにもっていくかは、勉強になりました」

ウェーブスタジアム刈谷で行われた豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)対九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)の試合は、26対23でS愛知が逆転勝利を収めた。これでS愛知は8連勝を達成したものの、実に薄氷を踏むような勝利だった。

試合序盤からミスやペナルティが起き、それがまたミスを呼び込む悪循環に陥った。「ミスは起こるものなので、ミスをしたあとのプレーがポジティブなのか、ネガティブなのかが非常に重要だと思います」とは徳野洋一ヘッドコーチの言葉。これまでの戦いの中でも困難な状況はあったが、今節は九州KVのプレッシャーもあり、ポジティブなプレーをすることができなかった。

山口知貴はこう分析する。「気持ちを切らさずに頑張ろうとしたことが、不必要なペナルティにつながってしまった。頑張らないといけないのはもちろんですけど、その気持ちが空回りして『自分が何とかしよう』とし過ぎたかもしれないですね」。

S愛知がビハインドで前半を終えたのは、今季初のこと。後半に入ってもリズムをつかむことができなかったが、山口をはじめとするフォワード陣がスクラムで徐々に優位に立つと、終盤に掛けて攻勢を仕掛けた。じわりじわりと詰め寄り、後半39分にモールから逆転。後半40分を過ぎてからは相手の29フェーズに及ぶ連続攻撃を強固なディフェンスで押し返し、歓喜の瞬間を迎えた。

試合終了を告げるホイッスルが鳴った瞬間、思わず山口は倒れ込んだ。すぐさま仲間が駆け寄り、彼を称える。プロップとしては異例の80分間フル出場を成し遂げた。

「こういった試合は経験しておいたほうが良いと思います。ディビジョン1昇格を目指すにあたって、この点差の試合はしてはいけないかもしれないですが、苦しい状況でどう立て直して勝ちにもっていくかは、勉強になりました」

並大抵のチームであれば敗戦してもおかしくないような試合展開だったが、どんな状況でも勝利への道筋を探し続けた。シーズンが終わったときに、この試合の経験が力になったと思えるようにしたい。すべてを糧として、S愛知はD1/D2入替戦に向け突き進んでいく。

(齋藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(右)、ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日はウェーブスタジアム刈谷で、たくさんのファンの方々の前で試合をすることができたこと、本当にうれしく思っております。また、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)ファンの方々もたくさん来ていただいて、良い雰囲気の中で試合できたこと、チームを代表して感謝申し上げます。ゲームとしては、勝ち点4を獲得できたというところはうれしく思っています。内容を振り返ると、反省すべき点が多かったです。ただ、その中でも勝ち点4を取れたことに対する選手の努力には成長を感じましたし、選手を称えたいと思っています。本日はありがとうございました」

──前半をビハインドで折り返すのは今季初めてのことでした。どのような面が良くなかったですか。

「キックオフをミスからスタートしたところもありましたが、やはりミスは起こるものなので、ミスをしたあとのプレーがポジティブなのか、ネガティブなのかが非常に重要だと思います。そういった部分で、ミスのあとのプレーでさらにミスを重ねたり、ペナルティをしたりと、よりネガティブなプレーを自分たちがしてしまったことで、非常に流れが悪くなったと思います。その流れを前半の40分をかけて奪い返せなかったのが、一番の要因だと思います」

──後半は改善を見せたものの、流れをつかみ切りたいところでミスが多くありました。

「個人のスキルを遂行していく部分の精度が悪かったかなと思います。あとは九州KVさんのプレッシャーが強かったというのもあると思います」

──ジェームズ・モレンツェ選手を先発で起用しました。当初のプランではどのあたりまでプレーさせようとしていましたか。

「当初考えていたのは、後半の10分から15分あたりでの入替を計画していました。ただゲームの流れを見て、前半40分をとおしてあまり流れが良くなかったことと、後半は風上に立てることもあったので、私の判断でフレディー・バーンズと入替しました。ただ、モレンツェが前半をとおして悪かったのかといえば、私はそう思っていません。彼は10番としてリーグ戦に出場したのは今回が初めてでした。彼自身、プレシーズンから10番としてコンスタントに良いパフォーマンスしていましたし、リーグ戦の1試合のみで彼の評価はしにくいです。彼が成長していく上で、こういう痛みを伴いながら成長していくこともとても大事なことです。成長意欲のある選手は、われわれチームサイドとしても、リスクを冒してでも機会を与えていくことが重要だと思っているので、彼が入りからミスが続いて、難しいメンタルであったとしても、40分やり抜いたところはチームとして評価してあげたいと思っています」

──次戦に向けて、モレンツェ選手とバーンズ選手の起用法に変化はありますか。

「モレンツェが来週の試合も先発になる可能性はもちろんあります。常に競争はフェアであるべきだと私は思っているので、モレンツェの今日のパフォーマンスと、月曜日にどういう準備をして臨むのかによって、考えていきたいと思います。チームとして成長していくために、育成の機会をどうバランスよく使っていくのかは考えていきたいと思っているので、来週の試合は必ずバーンズが先発だというのはいまのところ考えていません」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

「徳野洋一ヘッドコーチからもあったように、たくさんのファンの方々、九州KVのファンの方々が来てくださって、ありがとうございます。こういった形で勝てたことはすごくうれしく思います。ゲームの内容としてはもっと良くできる部分もありましたが、終盤にラインアウトモールからトライを取れた部分はすごく良かったと思います」

──どういった気持ちで逆転勝利までもっていきましたか。

「前半と後半では、まったく違ったゲーム展開になったと思います。後半は敵陣22mに入ったら絶対に得点までもっていくという強い気持ちをもっていました。そこが最後ラインアウトモールで押し切るという判断につながりました」

──セットピースの振り返りをお願いします。

「スクラムは先発出場したフロントローの3人が試合の中で修正してくれたので、良かったと思います。ただ、ラインアウトのところは5%ぐらい気持ちが抜けていたかもしれないです。そうなれば相手にやられてしまうと気付きを得られました」

──80分ハードワークし続けられたことも、勝利につながったと思いますが、いかがでしょうか。

「徳野ヘッドコーチがハッピーであれば、喜んで80分プレーしたいと思います(笑)」

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスの今村友基ヘッドコーチ(右)、竹ノ内駿太バイスキャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ

「本日の試合開催に当たりご尽力いただいた皆さまに感謝申し上げます。前半は風上で、起用した上里(貴一)が期待に応えてくれて、良いマネジメントをしてくれたと思います。フォワードが自分たちの強みを出してくれていましたし、そういう意味では勝てなかったことは悔しいですけど、今日得られたものはたくさんあります。チームとして自信にしていい時間帯やプレーがたくさんあったので、勝ち切れなかった原因は必ずありますが、そこは追求しつつ、良かったところを次につなげられるようにしたいです。次戦はショートウィークになるので、しっかりマネジメントして、今日以上のパフォーマンスができるように準備したいと思います。ありがとうございました」

──前半、相手を上回ることができた要因を教えてください。

「風がある中でうまくキックを使って、中盤で攻め過ぎることなく相手にプレッシャーを掛けられた部分は良かったと思います。そこで豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんのエラーを誘えたところは、準備してきたことができていたと思いますし、ラインアウトモールもうまくいっていました」

── 一方で、勝ち切ることができなかった要因はどうお考えですか。

「前半は優位に戦えていたとはいえ、やっぱりS愛知さんは力のあるチームですので、じわじわボディーブローのように、疲労が溜まってきたのかなと感じています」

九州電力キューデンヴォルテクス
竹ノ内駿太バイスキャプテン

「本日はありがとうございました。自分たちのディティールの部分を一貫して試合の最後まで出し切れませんでした。そこは次に改善するべき部分かなと思います。負けはしましたが、S愛知さんから良いレッスンをもらって、チームとして自信になる部分もあったので、切り替えて良い準備をしていきたいなと思います」

──後半に苦しい中でも、粘り強く戦うことができていました。どう感じていますか。

「ディフェンスについては、すごく粘り強く、良い我慢ができていたと思いますが、トランジションのところで、チャンスを自分たちから手放してしまいました。そこでS愛知さんにモメンタムを取られたかなと思います」

──上位チーム相手にリードを守り切るために必要なことを教えてください。

「自分たちが準備してきた細かい部分を一貫して試合の中で出し続けることが、いま一番自分たちが足りないところだと思います。遂行力だと思います」

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