NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第11節
2025年4月11日(金)19:30 東平尾公園博多の森陸上競技場 (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 33-36 日野レッドドルフィンズ
鹿児島大学出身の二人。またの対戦を楽しみに、それぞれの道を歩んでいく

前半21分の時点で17点のビハインドを負った日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)だったが、怒とうの追い上げを見せてラストプレーで逆転。“フライデーナイトマッチ”で見事な逆転劇を演じてみせた。
「彼がリーグワンの舞台でプレーし続けていることがうれしかったし、いつかこういう日が来るんだろうなと思っていました」
この一戦をそう振り返ったのは九州電力キューデンヴォルテクスの中島謙だ。中島が言う「彼」とは日野RDの畑田康太朗。中島にとっては同じ福岡県の出身で、鹿児島大学の2学年後輩にあたる存在だ。
今季第4節では中島がノンメンバーだったため、対戦は実現せず。今回が初めての“先輩後輩対決”だった。この試合に懸ける二人の思いは特別だった。
「前回対戦のときは謙さんがノンメンバーだったんですけど、今回は『(先発メンバーに)入ったぞ』と連絡してくれて僕も気合いが入りました。大学時代はバイト先も一緒で仲良くしてもらっていたので、今日、対戦できることをすごく楽しみにしていました」(畑田)
「彼と対戦できることにかなり思い入れはありました。試合前からSNSで『お互いに後悔のないようにプレーしよう』って言いました。今季最初の対戦では僕が試合に出られなかったので、今日は先輩後輩関係なくやろうと思っていました」(中島)
鹿児島大学という地方の国立大学という環境もあって、リーグワンでいまもプレーを続ける同大学出身選手は決して多いとは言えない。だからこそ、互いを意識し合う絆は強いと畑田は話す。
「同じ境遇で戦っているので仲間という感じもあるし、刺激にはなります。(出身者が)少ないぶん、団結といった感じはあります」
この試合にも鹿児島大学の当時のラグビー部監督や部員たちが応援に駆け付けた。そんな中、二人ともに母校への思いは似通っていた。
「僕たちが試合に出ることで母校のラグビー部に入ってくれたり、そこでラグビーを楽しんでくれたりすれば、うれしく思います」(中島)
「お互いに試合に出続ければ、お互いの刺激にもなるし、母校で頑張っている学生の子たちの刺激にもなると思うので、頑張ることがまずは大事かなと思います」(畑田)
リーグワンで初めて対峙した二人だが、先輩の中島にはある思いが芽生えていた。
「負けたことはかなり悔しいです。次、また彼と対戦することがあれば必ずリベンジします」
それでは、後輩の畑田はどうだったのだろうか。
「自分が意識するのはコンスタントに試合に出続けて、成長していくこと。その過程でまた謙さんと試合できることがあればいいなと思います」
互いの頑張りが互いを刺激し合う先輩と後輩という関係性。また、リーグワンの舞台で二人の道が交わる日が来ることを夢見て、それぞれの道を歩んでいく。
(杉山文宣)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ
「本日は試合開催にあたり、ご尽力いただいた関係者の皆さま、本当にありがとうございました。ホストゲームに(九州電力の)社員の方々にもたくさん来ていただいたにもかかわらず、勝利を届けられずに申し訳なく思っています。
準備してきた中でこちらが上回らないといけない部分で上回ることができませんでした。最後、勝ち切れそうなところまでいったんですが、終始、ディフェンスのところで相手にラインブレイクされることが多かったと思います。そこは私のプランの見直しも必要ですし、コーチ陣はもう一度、来週に向けて良い準備をしなければいけないと思っています。選手たちは下を向く必要はまったくないですし、エフォート(努力)はありました。もう一度、良い準備をして来週、良いゲームをしたいと思います」
──前節は土壇場での逆転負け。今節はショートウィークで日野レッドドルフィンズはバイウィークと精神的にも肉体的にもタフな中での試合でした。今季のスローガンである『BE TOUGHER』が問われる試合でしたが、選手たちの姿勢についてはどう感じていますか。
「ショートウィークであることは試合前から分かっていたことですし、そこに対して言い訳をせずに選手たちは良い準備をしてくれたと思います。最後の最後、勝ち切れませんでしたが、あそこまで相手をスコアで上回ることができていたのは選手たちの素晴らしいエフォートのおかげだったと思います。勝てなかったのは私の責任ですし、しっかり次に向けてチームで一つになって取り組んでいきたいと思います」
九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン
「まずは本日、試合を開催するにあたってご尽力いただいた関係者の皆さま、ありがとうございました。自分たちは今週の目標として『粘り強く』というものを掲げていましたが、正直、ディフェンスのところで粘り強くできてはいなかったなと思います。今村友基ヘッドコーチからもありましたが、選手としてできることと言えば、個人のディフェンスの部分や選手一人ひとりが試合をとおして自分のプレーがどうだったのかを考えることで、そこは選手としてやらなければいけないところだと思います」
──前節も今節も試合終了直前での逆転負けになってしまいました。抽象的かもしれませんが、勝つために何が必要だと感じていますか。
「今季のスローガンである『BE TOUGHER』や今週のテーマである『粘り強く』、こちらも抽象的になってしまいますが、80分間最後までスイッチをオフにしないことだと思います。エフォートは選手たちに十分あったと思いますし、全員が100%で努力をしていたと思います。ただ、どこかで受け身になってしまった部分もあったと思うので、80分間アグレッシブに、最後のワンプレーまでスイッチをオフにしないことが大事だと思います。そこはもっと自分もキャプテンとしてチームに浸透させていかなければいけないなと感じています」
日野レッドドルフィンズ
日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「まず、素晴らしいナイターの環境で試合ができたこと、準備していただいた九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)のみなさんに感謝申し上げます。
今日のゲームに関してはこの1週間、選手たちが良い努力をしてくれました。チームの中でテーマがありまして、それを80分間、遂行してくれたことを非常に誇りに思っています。今日は本当に素晴らしいゲームだったと思うので、引き続き、次のレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)戦に向けて、準備をしたいと思います。われわれが80分間、(試合を)支配できるようにやり切りたいと思います」
──17点をリードされるという苦しい立ち上がりから素晴らしいリカバリーを見せました。チームの戦いぶりについてはどういった評価をされていますか。
「前半の始めから選手たちがちょっと気負い過ぎていてミスが起こる場面がありました。ただ、今週のアタックのキーワードとして『スペースが空いたら積極的に攻める』というものがありました。みんなが積極的にスペースにボールを運ぼうという意識があったからこそ、二度インターセプトされてしまうというアンラッキーな場面がありました。それでも、(アタックの)形は悪くなかったので、やり切れればわれわれの時間が来る。われわれが良い形でトライが取れる場面が来ると思っていたので、それを実行してくれたことが結果につながったと思います。
選手たちには焦りはあったかもしれないですが、(攻撃の)形は悪くなかったので、僕はいつか良いフィニッシュが来るのではないかと思っていました」
日野レッドドルフィンズ
中鹿駿バイスキャプテン
「今日は前半の最初のほうは九州KVさんの素晴らしいインターセプトが2本続いて、流れがなかなか(自分たちに)来ませんでした。ただ、そこからしっかりと修正をして巻き返せたことは成長できたところかなと思います。来週の日曜日にはRH大阪戦が控えているので、前回の雪辱を果たすべく、しっかりと準備していきたいと思います」
──立て続けにインターセプトからの独走トライを許す形がありました。選手の立場からするとダメージも大きかったように思いますが、失点後のハドルではどんな話をされたのでしょうか。
「(自分は)一応、キャプテンなので、本当は焦っていたんですけど、焦っていないように(見せるために)顔はポーカーフェイスにしていました(笑)。
ただ、ノア・トビオもリーダーですけど、彼のほうから『ちょっと外のほうに意識がいき過ぎている。接点の部分では負けない自信があるからどんどんフォワードに当てていこう』という会話がありました。そこからは切り替えて、フォワードに当ててゲインするという形にしていきました」