2025.02.24NTTリーグワン2024-25 D3 第7節レポート(中国RR 23-18 L戸田)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第7節
2025年2月22日(土)12:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 23-18 ヤクルトレビンズ戸田

「どんな形でも貢献したい」。その思いを原動力に恩返しの日々は続いていく

後半31分、西川太郎 共同キャプテンを引き継ぐかたちで初出場を果たした中国電力レッドレグリオンズの鷲谷太希選手

残り時間は約10分、その男がベンチから出てくるとチームメートもスタンドも盛り上がった。鷲谷太希、24歳。2年目のロックがついにリーグワンデビューを飾った。

試合の2日前からとにかく緊張していた。昨季もメンバー入りは経験したが、出場機会はなく「自分としても出るイメージをもてていなかった」。ベンチで見守るしかなかった試合から今節で再びメンバー入りするまで約1年。プレシーズンでけがなく試合に出て経験を積み、昨季とは自覚が違った。「出たときのイメージをしっかりもって試合に入れたので、1年間積み上げてきた結果だと思う」。試合前の緊張も鷲谷にとっては努力の証だった。

中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)に加入して4月で2年になる。同期の3人はすでにチームの中核を担い、1年後輩の新人たちにも先を越されていた。試合に出られない悔しさは当然あったが、それでも鷲谷は下を向かず、自分の役割に目を向けた。

「ずっとメンバー外だったけど、今季はその中でも試合に向けてのマインドや長いリーグ戦を戦う上で自分のやるべきことを考えていた。(西川)太郎さん、青木(智成)さんという偉大な両ロックがいる中で、どう立ち振る舞えばチームに貢献できるのかをずっと考えて動いています」

その努力は周りにも伝わっていた。高校の先輩でもある西川は、「メンバーに入っていないときもチームのためにラインアウトの分析などをやってくれていた。そういうところを見ていたので、やってくれるとは思っていた」とうれしそうに話した。

学生時代はけがばかりで試合にほとんど出られなかった鷲谷が、中国RRに加入してリーグワンの舞台でファーストキャップをつかんだ。「いろいろな人の支えや縁があって、このチームに来られたので、どんな形でも貢献したいと思って日々過ごしている」。そんな思いがいつでも原動力となっている。

「ラグビーでもっと成長したいし、それ以外のところでも『鷲谷を獲って良かった』と思ってもらえるように頑張りたい。それが、僕をこのチームにつないでくれた人たち、ここで熱心に指導してくれる人たちへの一番の恩返しになる」

待望のデビューは8点リードで迎えた後半31分、鷲谷は緊張していたが、「長いディフェンスタイムになると割り切って、とりあえずタックルしようと考えていた」と自分のやるべきことに集中していた。約10分のプレー時間で「自信があるタックルを試合の場で出せて良かった」と得たものもある。チーム一丸で守り切った勝利をグラウンド上で味わい、ガッツポーズには気持ちがこもった。

「同期の中で1番出遅れていたけどやっと出られました。高校と大学でたくさんけがをしても、ラグビーを続けてきて、この舞台に出ることができたので本当にうれしいです」

2年目のロックが新たな一歩を踏み出した。「一歩一歩積み上げていって、もっと成長していきたい」。次の試合出場に向けてまた地道に取り組む。そうして鷲谷の恩返しの日々は続いていく。

(湊昂大)

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの岩戸博和ヘッドコーチ(右)、西川太郎 共同キャプテン

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ

「ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)の皆さま、リーグ関係者の皆さま、本日はどうもありがとうございました。総括としては、ディフェンスの部分はわれわれがやろうとしている粘り強いディフェンスと、今回で言うとコリジョン(接点)のところでプレッシャーを掛けてくれたので、この結果につながったと思います。アタックのところは引き続きの課題がありつつ、前半はスマートに戦えた部分もあったと思います。後半は総力戦のようになりましたが、みんながしっかり強い気持ちをもって、自分の役割や仕事に徹してくれた結果がこのような勝利につながったと感じています」

──いい守備でターンオーバーするシーンも多かったですが、どう捉えていますか。

「逆にターンオーバーされる機会もありましたが、ターンオーバーしたときのアタックのトランジションに関して言うと、ボールの位置も非常に良かったですし、今回は11、14、15番のバックスリーに走力があるメンバーをそろえたので、しっかりそこでスペースにボールを運んで、いいアタックができたと思っています。L戸田さんの粘り強いディフェンスもあって、アタックの部分で(スコアを)取り切れなかったところもありましたが、アタックの形はちゃんとできつつあるので、そこを評価したいと思っています」

──エドワード・カーク選手は前節50試合出場を達成し、今節はセレモニーも行われました。あらためてカーク選手のパフォーマンスの評価を教えてください。

「目立つプレーヤーではないですが、ブレイクダウンなど、いろいろなところでの仕事の質が本当に高いので、今回の前半も彼に助けられるシーンが多くありました。ゲームだけではなく、彼のようなスペシャルな選手から若い選手もいろいろなスキルを盗もうとしているので、そういったところでも影響力を発揮してもらっています。本当にリスペクトできる選手だと思います。彼に頼る部分もありますが、彼の仕事量に達していけるような選手が増えてほしいと個人的には思っています」

──終盤はカーク選手や西川太郎選手など、特にチームを引っ張ってきた選手たちがピッチにいない中で勝ち切りました。この勝利をどう捉えていますか。

「われわれは外国籍選手も選手数もそれほど多くないチームなので、スタートメンバー以外のボトムアップは非常に大切だと昨季からずっと思っていました。今回、交替して出た選手はすごく評価に値する仕事をやってくれましたし、こうして底上げができることでさらにわれわれのチーム力が飛躍すると思います。今日がそのきっかけの試合になったと思いますし、どんどん競争力が高まっていくと感じたゲームでした。いろいろな選手に期待しています」

中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン

「本日はL戸田のみなさん、遠いところまでありがとうございました。また、リーグ関係者のみなさんもありがとうございました。ディフェンスに関してはやってきたこと、やろうとしていることを体現できたと思います。前節に引き続いて、ダブルタックルでしっかりプレッシャーを掛け続けて、相手の球出しを遅くできたのが良かったと思います。アタックに関しては、相手の22mエリアに入ったところで何回か(スコアを)取り切れないところがありました。もちろん、相手あってのことなので簡単には取れませんが、インゴール(トライエリア)に入ったけど相手に絡まれてトライになってないシーンが2、3回ありました。相手のディフェンスが良かったですが、そこで取り切れればもう少し余裕をもったゲーム運びができたと思います」

──この試合のセットピースを振り返ってください。

「スクラムに関しては、L戸田さんのスクラムがすごく良くて、本当に五分五分ぐらいの戦いだったと思います。ラインアウトは自分たちも悪かったわけではないですが、クオリティーが良くなくてミスになったのが2、3本あったと思います。これも相手があることなので難しいですが、自分たちのできることはしっかり修正して次に臨みたいと思います」

──カーク選手は一緒にプレーする立場から見てどんな存在でしょうか?

「彼が来て4年目ですが、チームのスタンダードがすごく上がったと思います。来た当時を思い返すと、彼のラグビーへの取り組みを見て、やっぱり自分たちももっとやらないといけないと思いました。目立つプレーヤーではないですが、勤勉にチームのために体を張り続けてくれているので、彼がいてくれて良かったときは多くあります。僕たちも彼のような勤勉さや愚直にタックルし続けてボールに絡む粘り強さは見習っていかないといけないと思います」

──終盤はカーク選手や西川選手など特にチームを引っ張ってきた選手たちがピッチにいない中で勝ち切りました。この勝利をどう捉えていますか。

「自分もいつも80分戦うつもりで出ていますが、今日は不甲斐なく70分ぐらいで交替になりました。でも、カークや宮嵜(隼人)も交代していた中で、グラウンドに出ているメンバーが一つになって勝ち切れたのはすごく大きいと思います。こういうゲームを繰り返していけば、どんどんチームも強くなると思うので本当に良かったです」

ヤクルトレビンズ戸田

ヤクルトレビンズ戸田の河野嵩史ヘッドコーチ(左)、横山大輔ゲームキャプテン

ヤクルトレビンズ戸田
河野嵩史ヘッドコーチ

「まずは中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)のみなさん、会場にお越しいただいた皆さま、本当にありがとうございました。素晴らしい環境で試合ができたことを本当にうれしく思います。われわれとしては、先週のマツダスカイアクティブズ広島さんと中国RRさんの試合を見て、やはりすごくいいチームだということは理解していました。その上で、それ以上のハードワークをし続けようと今週は準備をしてきて、チームとしての課題はだいぶ改善できていたと思います。最後に勝ち切れなかったところが悔しいですが、次につながる試合ができたと思っています」

──前回の対戦も僅差の試合でしたが、今回の中国RR戦に向けて準備してきたことを教えてください。

「ディフェンスでは中国RRさんがやってこられるアタックや攻めてくるポイントを重点的にチェックしていました。アタックに関しては、自分たちのラグビーにフォーカスして、セットピースから崩していくところをフォーカスして練習してきました」

──フォーカスしていたセットピースについて振り返ってください。

「良かったですが、セットピースのあとのアタックでなかなかゲインを切れず、ミスにつながったり、ペナルティになってしまったりというところがあったので、細かいところを積み上げてきたいと思っています」

──試合の終盤に5点差まで追い上げました。最後の攻防を振り返ってください。

「前節のルリーロ福岡戦の後半ラスト15分にだいぶ追い上げられたこともあって、今回の試合では意図的にリザーブの選手に『リザーブではなくて、フィニッシャーのつもりでやりましょう』ということをチームの課題としてやってきたので、あそこはわれわれとしては収穫だったと思っています。最後に(スコアを)取り切れなかったのは悔しいですが、選手はわれわれの意図を感じてやり切ってくれたと思います」

ヤクルトレビンズ戸田
横山大輔ゲームキャプテン

「まずは素晴らしい会場をありがとうございました。レビンズファンもたくさん来ていただいて、すごくうれしく思っています。プレーについては、『基本に立ち戻ってハードワークし続けたら自ずとスコアもできるので、そこを努力していこう』と、この1週間言い続けてやってきました。相手のフィジカルもあったところで少し受けに回ってしまったと思います。ただ、やるべきことはやれましたし、ここから改善すべきことはたくさん見つかったので、来週に向けても引き続き、頑張っていきたいです」

──前回の対戦も僅差の試合でしたが、今回の中国RR戦に向けて準備してきたことを教えてください。

「フォワードの観点からもセットピースは改善させて、そこからいいアタックをしていくというのが、1週間をとおして同じ目線でやってきたことです」

──試合の終盤に5点差まで追い上げました。最後の攻防を振り返ってください。

「残り2分のタイミングで5点差だったので、みんなには2分間しっかり時間を使って徐々に相手陣内に入っていこうと話をしました。順調に50m内まで入っていけましたが、アンストラクチャー(陣形が整っていない状態)でバラバラになったところで少し連係が取れなかったのが課題だと思っています。そこはセットピースのあとのプレーについても一緒ですので、アンストラクチャーのところでいかにコミュニケーションを取って、つながりをもって前に出られるかを考えるのが今後の課題だと思います」


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