NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第9節
2025年3月8日(土)12:00 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
ヤクルトレビンズ戸田 10-42 マツダスカイアクティブズ広島
真っ赤な目頭を押さえて。初キャップで味わった、悔しさと高揚感と充実感
試合後、ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)の須藤拓真がピッチサイドでうずくまり、真っ赤になった目頭を押さえていた。
「おめでとう」
その背中に仲間たちが次々と声を掛け、手を添える。須藤にとって、昨年末に負ったけがからの復帰戦だった。試合に負けた悔しさはあったが、それ以上に、ついにリーグワンのグラウンドに初めて立てた高揚感、80分間フルタイムで力を尽くした充実感が込み上げていた。トップイーストリーグ時代の激戦など、ここまでの道程が走馬灯のように頭を巡っていた。
前半の序盤から、L戸田が相手陣内に押し込む展開だった。
「スクラムの前に盛り上げて、スクラムであれだけペナルティをもらって、またスクラムで押す。イケイケだったし、自分が理想とするラグビーができている感覚があった」(須藤)
首位のマツダスカイアクティブズ広島の統制の取れたディフェンスを崩し切れず、逆に、スキを突かれてトライを決められ、じりじりと点差を広げられていったが、誰もがあきらめていなかった。後半にはテンポを上げ、相手より走り、よりタフに戦った。その流れを終盤の2トライにつなげた。ホストゲームに駆け付けた観衆は、あきらめないL戸田の選手たちの泥臭いプレーの連続に沸きに沸いた。
「ここだぞ!」「見せよう!」
ピッチ上には終始、須藤の声が響いていた。古屋篤史が言った。
「あの声で僕らのスイッチが入るんです。スクラムでは後ろから背中を叩いて鼓舞してくれたり、ペナルティを取ったら自分がスクラムの最前線を組んだように喜んでくれたり、そういう選手が戻ってきたのは本当に大きい」
試合には敗れたが、L戸田の不屈さを示したゲームだった。試合後、須藤の声はいつものように枯れていた。
「スクラムもすごくこだわって戦えていたし、プロップも頑張ってくれていた。点差は離れてしまったけれど、すごく良い試合だった。何より楽しかった。あとはチャンスをいかにトライにつなげられるか。しっかり修正して、次に向かっていきたいと思います」
須藤にとって、記念すべきリーグワンでの初キャップの舞台が終わった。このゲームのことは、負けた悔しさとともに、今後の糧として、大事に胸の中に取っておく。
(鈴木康浩)
ヤクルトレビンズ戸田

ヤクルトレビンズ戸田
河野崇史ヘッドコーチ
「まずはマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)の皆さま、遠いところまでありがとうございました。今日の試合に向けて、先週の課題として残ったコンタクトバトルの部分をやり続けることにフォーカスして準備してきました。選手たちは本当に体を張り続けてくれましたし、このスコアほどの差はなかったと感じています。ただ、前半の5分から25分ごろまで敵陣に長い時間いることができた中で、ポイントを奪えなかったことがこの結果につながったと思っています」
──前半は相手陣内で進める時間を長く作れましたが、チャンスでトライを奪い切るためのものをどう考えていますか。
「ハーフタイムに選手たちにも伝えたのですが、ペナルティでもどこかでクイックにリスタートするなどの工夫が必要だったと思います。押し込んでいても最終的にはペナルティやミスを犯して終わってしまうことがほとんどだったので、後半はテンポを上げるなど奪い切るところまで精度を上げてやっていこうと送り出しました」
──後半の終盤に二つのトライを挙げるなど、あの時間帯でも選手たちの体もよく動いているように見えましたが、どうご覧になっていましたか。
「選手たちはキツい時間帯だったと思います。相手のSA広島さんもキツい時間帯だったと思いますが、その中で相手よりも速く動くことを意識できていたし、それが最後のトライにつながったと思っています」
ヤクルトレビンズ戸田
多田潤平 共同キャプテン
「まず大会運営に携わってくださった皆さま、ありがとうございました。SA広島の皆さま、ありがとうございました。また、寒い中、多くのお客さんに集まっていただき、その中で熱いゲームができたと思っています。試合については前半の差がそのまま結果に出たと思っていて、自分たちがやりたいアタックを80分間とおしてやることはできなかったと思っています。後半はテンポを上げて自分たちのアタックができましたので、それをいかに継続できるか、自分たちのペースに引きずり込んでやっていけるかが今後の課題だと思っています」
──最後の時間帯に二つのトライを奪えましたが、スクラムハーフとして考えていたことや手ごたえを教えてください。
「われわれは相手と比べると体が大きくないので、後半はよりテンポを上げていくことを意識していました。相手よりも先にセットして、先にしかけること。それをチームで体現できた結果、二つのトライにつながったと思います。これを継続したいし、前半からギアチェンジできるところはやっていかないといけないと思っています」
マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島
ダミアン・カラウナ ヘッドコーチ
「今日はいい勝負になると思っていたし、うまく進んだゲームだと思います。今日はわれわれのディフェンスが良かったと思います。完璧な試合ではなかったけれど、勝つことができて良かったです」
──今日のゲームの収穫を挙げるとすれば、どの辺りになりますか。
「規律を維持できたことはすごく良かったと思っています。ただ、後半の最後に二つのトライを奪われたことは良くないし、最後にエネルギーが落ちたと感じます。普段は最後までギアを下げずに戦えるチームだと思っているので、そこは次節に向けて修正しないといけません。あとは、レフリーのジャッジに合わせないといけないと考えますが、今日はなかなかできなかったと思います。その点も大事だと思っています」
マツダスカイアクティブズ広島
芦田朋輝キャプテン
「今日はありがとうございました。今日は前半のセットピース、特にスクラムの部分でペナルティが続いてしまう時間帯があったのですが、先ほどヘッドコーチからもあったように、ディフェンスの部分でペナルティを取り返すようなタックルを全員で意識できたことが今回の結果につながったと思っています。後半についてはスクラム、ラインアウトを修正しましたが、少しペナルティが多くなってしまったことは次節に向けて修正が必要だと思っています」
──前半の序盤にペナルティが増える中で、ディフェンスに集中して流れを取り戻そうという共有があったのですか。
「そうですね。前回のゲームを振り返ったときに、ディシプリン(規律)を大事にしようという共有があり、特にオフサイドには気を付けようという意思統一はできていました。その結果、こちらのペナルティを犯さない状態の中でスクラムやラインアウトを取り戻せたと思っています」