2025.04.29NTTリーグワン2024-25 D3 第14節レポート(中国RR 34-38 WG昭島)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第14節
2025年4月27日(日)13:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 34-38 クリタウォーターガッシュ昭島

「お父さん、かっこよかったよ」。2年ぶりのメンバー入り、やっと見せられたファーストジャージー

2年ぶりの公式戦復帰を果たした、中国電力レッドレグリオンズの荒井基植選手

午前7時、中国電力レッドレグリオンズの荒井基植は子供に起こされて1日が始まる。2児の父は朝の支度をしつつ子供の用意を手伝い、スーツに着替えて8時には家を出る。8時半に出社し、会社員として定時の17時過ぎまで働き、そこから練習場へと向かう。練習着をまとい19時からチームメートと汗を流すこと2時間。選手として大事な体のケアもしていると、帰宅は23時ごろ。洗い物とお風呂を済ませて1日が終わる。

仕事とラグビーを両立する生活は13年目。「最初は想像以上に大変だった」と新人時代を振り返るが、苦しい時期はいつも仲間の存在が支えだった。

「両立は覚悟の上だったけど、最初はまったく自分の時間がなく、ラグビーにも打ち込めず、モチベーションを保つのが難しかった。落ちるところまで落ちて、早々にラグビーは引退しようと思っていた時期もあった。でも、仕事もラグビーもやるのがこのチームのあるべき姿だし、僕以外にも頑張っているヤツはたくさんいて、先輩もそれをやってきていまのレッドレグリオンズがある。それを考えると、もうやらないといけないと思いました」

34歳になった荒井は年を重ねるにつれてけがが増え、試合から遠ざかる日も多くなった。それでも、「いまはしっかり仕事もしつつ、ラグビーをやりたいという思いが強い」と変わらぬ熱意をもつ。

両立生活にはすっかり慣れて、そこに家族も加わった。子供は5歳と2歳の男兄弟。「二人とも激しいので、妻には頭が上がらない」。荒井にとって家族は「仕事とラグビーを頑張る原動力」だ。

「子供がいるから仕事ももちろん頑張らないといけないし、ラグビーでも生き生きしている姿を見せたいです」

特に「物事が分かるようになって、すごく応援してくれる」という長男はお父さんの熱烈なファンだ。荒井が4月12日の練習試合で実戦復帰した際は、小さな体で誰よりも大きな声援を送り続けていた。

「子供が物心ついて分かるまでラグビーを続けなくてもいいかなという気持ちもあったけど、声援を聞くと、子供も成長したなと思ったし、ここまでやって良かったなと思います」

荒井は長い負傷離脱から復帰し、今季最後のホストゲームだった今節で2年ぶりのメンバー入りを果たした。後半35分、緊張でいつも以上に広く感じたグラウンドに立った。

「メンバーに選ばれてうれしかったし、仲間に支えられてきたので、何か返さないといけないと思って一生懸命やるだけでした。プレータイムが短くて内容はあまりなかったけど、けがもなかったので、次もしっかり頑張ろうと思います」

試合は惜しくも土壇場で逆転を許して敗れたが、家族3人が応援する前で仲間と一緒にプレーしたことがまた力になる。家族と仕事とラグビー。それが荒井の人生を彩っている。

「お父さん、かっこよかった」

試合後に長男からそう言われた荒井はジャージーを着たまま息子2人を抱えて笑顔で言った。「ファーストジャージーを着てプレーする姿を見せられて良かったです」。

(湊昂大)

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの岩戸博和ヘッドコーチ(右)、西川太郎 共同キャプテン

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ

「クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)の皆さま、リーグ関係者の皆さま、本日はありがとうございました。

試合の総括としては、チャレンジャーとして試合に挑んで、ゲームの入りやゲームに対する姿勢の部分に関しては及第点だったと思います。フォワードがモールでしっかりスコアしてくれて、ディフェンスでもきっちり止めてくれて、すごく締まったゲームになり、(今季の対戦で)2連敗していた相手に対して成果を出してくれたのは評価したいですし、少ないチャンスをモノにしてしっかりスコアもしてくれたので、そこに関しては非常に誇りに思っています。

ただ、最後にトライを取られて終わった部分に関しては、守りに入ってしまったところがあり、攻めるマインドが少し欠けたことで、われわれがネガティブになるシチュエーションを作られたと思っています。次の最終戦につながるようなゲームを選手たちはしてくれたので、マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)さんとの試合で、もう一度自分たちの姿勢で、われわれの存在価値を見せていきたいと思います」

──第3クールに入って自分たちの思うような試合ができていなかった中で、この試合では敗れたものの、そのイヤな流れを断ち切るようなゲームができた印象でしたが、どう受け止めていますか?

「今回大崩れしなかったところは、われわれが日々積み重ねてきた部分だと思いますし、次の試合につながるゲームだったと思います。次の相手はいま一番勢いがあるSA広島さんで、試合の展開としては今回のWG昭島戦のように、いい勝負ができるところまでは持っていけるかもしれないですが、そこからどうやって勝ちに持っていけるかまで考えないと、今日みたいな展開になると思います。気持ちの部分で上回って頑張っていけるようなゲームをしっかりやっていきたいと思います」

中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン

「本日はありがとうございました。ゲームが終わってまだ整理し切れていないですが、自分たちのやりたいこと、フォーカスしていたことや粘り強いディフェンスのところはしっかりゲームで出せたと思います。ただ、最後に勝利がついてこないところは、どこかで甘さが出た試合だったのかなと思います。(後半40分にトライを取られたシーンは)残り時間のことを考えたとき、判断自体は間違っていなかったとは思いますが、クオリティーや最後の精度が足りなかったと思います。全体的に見ても、5連敗している中で自分たちにフォーカスしてチャレンジャーとしてやれましたし、ゲーム自体は悪くなかったので、勝てなかった悔しさがあります。最後はSA広島さんとの試合で、また広島でできるので、失うものは何もないですし、もう1回チャレンジャーとしてやるしかないと思います」

──4試合ぶりにフォワードでトライを取り切ることができましたが、どう受け止めていますか?

「前節の狭山セコムラガッツさんとの試合でずっとラインアウトがうまくいかず、ゲームが壊れてしまったところがあったので、この1週間、みんなでスタンダードを上げようという話をして、いろいろなところの精度を見つめ直して練習してきました。ゲームの中でもしっかり修正できて、相手のコンテストの仕方を見ながらスコアできたところもあったので、そこは本当に成長できた部分ですし、良かったところだと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、中尾泰星キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「先週の結果を受けてメンタル的に非常に厳しい試合でしたし、広島への遠征でタフな試合になると予想していました。前半はフィジカル面で非常にいいゲームができたと思いますが、自分たちのセットピースが課題でしたし、ボールを保持する部分に問題が生じていました。後半の入りに関してはボールをキープすることができて、非常にいいスタートだったと思いますし、そこでトライを取り切ることができました。けれども、それを続けられず、相手に流れを渡すようなチャンスがあってトライを取られてしまいました。ただ、自分たちが我慢する姿を見せられましたし、大事な場面でそれぞれが役割を遂行できていたので、全体としては非常にいい結果だったと思います」

──新人の山本快選手がスタメンでファーストキャップを飾り、2トライを決める活躍も見せました。彼のパフォーマンスの評価を教えてください。

「彼はトレーニングでの姿で自分のキャップをつかみ取りました。(練習では)キャリーのところだったり、もたらしてくるエナジーだったり、自分の強みを出してプレーしていました。そういう姿勢がこの試合は特に大事だと感じていましたし、彼もそのチャンスをモノにできていたと思います。トライを取り切れるだけではなく、キックチェイスなどでハードワークもしてくれるところが非常に大事だと思います。ファーストキャップは非常にいいパフォーマンスでした。リーグワンでデビューをして、リーグワンでの試合というものが分かったと思うので、ここから良くなっていくだけだと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星キャプテン

「先週の試合で負けたので、気持ちの持ち方が難しい試合ではありましたが、もう1回このジャージーを着て試合をすることに誇りを持って戦おうという話をして、難しいことはせずにアタックでもディフェンスでも1年間やってきたことを出し切ろうと頑張りました。試合をとおしてうまくいかなかったところも多くありましたが、最後まであきらめずに少ないチャンスでトライできたところが今日の勝利につながったと思います」

──ハーフタイムでチームメートにどんな声を掛けましたか?

「まずはペナルティが多かったですし、(イエローカードが出て)一人少なかったので、もう1回規律を守って、ノーペナルティでボールをキープして、15人に戻るまで我慢しようと話しました」

──ファーストキャップの山本快選手にはどんな声を掛けましたか?

「試合前のアップのときに声を掛けたら緊張している感じはなかったですが、(山本選手は)『いや、緊張しています』と言っていました。緊張しない人はいないと思いますし、緊張するのも分かるので、ボールを持ったときは『自分のことだけを考えてプレーしてくれたらいい』と話しました。最初のキックオフのシーンではハードにやられていましたが、そこは大学とリーグワンのレベルの違いを練習ではなく試合で感じられたことがすごく大きいことだと思いますし、そこを感じながら後半に2本トライを取ってくれたので、それが大きな自信になったと思います。練習からいい姿勢を見せてくれていますし、勝つためにもっと成長していってほしいなと思います」

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