NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第14節
2025年4月27日(日)13:00 小田原市城山陸上競技場 (神奈川県)
狭山セコムラガッツ 47-50 ヤクルトレビンズ戸田
優勝の可能性は厳しくとも。入替戦に向けてチームはファイティングポーズを取り続ける

埼玉をホストエリアにするチーム同士の“ダービーマッチ”にふさわしい激闘となった一戦は、後半34分から2トライ2ゴールを決め、逆転したヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)が勝利を収めた。過去2戦は大差で敗れていたこともあり、最後の一戦で意地を見せた形だ。敗れた狭山セコムラガッツ(以下、狭山RG)はリードを奪う場面もあったが、最後は相手の気迫にやられた形となった。
狭山RGにとって、D2/D3入替戦進出が決まり迎えた一戦。ディビジョン3優勝のためにも残り2試合で勝ち点10の獲得は必要だった。しかし今回の黒星で、逆転優勝は厳しい状況に追い込まれた。また、D2/D3入替戦で勝ち抜くためにも連勝を続けたままで挑みたかったはずだ。
試合後の記者会見では、スコット・ピアス ヘッドコーチ、水谷健人選手がそろって、わずかな気の緩みを認めた。それはほかの選手も同じだ。この日、久しぶりにスタメン出場を果たした朝倉一稀は「エリア取りの場面で後手に回ってしまった。勢いのある相手のアタックに関しても受けてしまったことが悔しい」と話した。試合が行われた小田原市城山公園陸上競技場は、かつて陸上をしていたときに大会の会場として使ったこともある場所。思い出の地で、関係者も多く応援に駆け付けた中でいい活躍ができなかったことを悔やんだ。
また、この日リーグワン初トライを含めて3トライを決めるなど攻撃で大活躍を見せた松田武蔵も次のようにコメントを残した。「トライを決められたプレーは良かったと思いますが、いい流れを作ってもすぐに失点するなど、気の緩みが出てしまったと思う。もう一度チャレンジするという気持ちを持ち続けて、強いマインドで最終戦に勝利して、入替戦を迎えたい」。
攻守に良い面、悪い面が出てしまったこの日の狭山RG。しかし、D2/D3入替戦を前に、あらためてしっかりと足元を見て、気持ちを切らすことなく戦うことの重要性を再確認できたことは大きいはずだ。今季最後のリーグ戦となる5月10日(土)のクリタウォーターガッシュ昭島戦では、チームのスローガンである『DOMINATE(ドミネイト) 』の精神を貫き、白星を手繰り寄せてもらいたい。
(松野友克)
狭山セコムラガッツ
狭山セコムラガッツ
スコット・ピアス ヘッドコーチ
「ダービーマッチということで、今年、プレシーズンも含めて今日で(対戦が)5回目。両チームともにいろいろと(戦い方が)分かる状況で、試合は予想どおりだったかな。先週、ゲームが終わったあとに入替戦の進出が決まり、メンタルの話をしました。そういう話を今週もしてきましたけど、今日の試合を振り返ると、簡単なディフェンスエラーが多すぎる。その点はスタッフも責任を取らなきゃいけないところ。でも、ずっとメンタルの話があったのに、まだまだできていない。次のクリタウォーターガッシュ昭島との試合はすごく大事になります。そのあとに入替戦があるからです。1週間休みがあって、チームは3日間の休暇になり、再開してからハードワークが始まる。(ディビジョン2)に上がりたいなら、もっとやらなければいけません」
──流れが激しく変わるゲーム展開で、最後にリードを許してしまった形となります。ペナルティ以外のミスも目立ったかと思います。D2昇格という目標を達成するには、その点を修正することは不可欠になると思いますが、いかがでしょうか。
「メンタルと規律はすごく大事。いまはD3だけど、目的はD2でどう戦うかになっています。ここで、そういうプレッシャーを80分間キープできないなら次のレベルには絶対に上がれない。キックオフからトライして、次のトライまでは20分以上掛かってしまった。良くなっているところもありますが、次(D2)に上がりたいなら、容赦しないプレーを見せていかないといけない。今日のラグビーはすごく良いところと悪いところがあって見ていてイライラすることも多かった。でも、(結果の)責任はとらなければいけない。試合だけじゃなく、練習のときからプレッシャーをキープしていく、その準備は一番大事です。入替戦進出が決まったけど、まだシーズン中。だから、メンタルやプロセスはもうちょっとフォーカスしないといけない。例えばD1でプレーオフトーナメント進出が決まっている埼玉パナソニックワイルドナイツは、パフォーマンスを維持している。負けないイメージがあるでしょう。それが僕たちには、まだない。良いところと悪いところがあるから、そのバランスは必要だと思います」
狭山セコムラガッツ
水谷健人選手
「まず、本日のこの会場の準備をしていただいたスタッフの方々、リーグ関係者の方々、ありがとうございました。今日の試合、前節で入替戦出場が決定した中で臨んだ試合ということで、ヘッドコーチもおっしゃったように、どんなメンタルで試合に臨むのかをすごく試せると試合前から思っていました。(レギュラーシーズンが)2試合残っていた中で、それを勝って入替戦にいくのか、それとも負けて入替戦にいくのか。入替戦にいけることは変わらないけど、そのプロセスがやっぱりすごく大事だということを練習から伝えてはいたんですけど、今日の結果はそこでの詰めが甘かったというか…。もちろん、入替戦にいって勝ってD2に上がることが僕らの目標ではあるんですけど、その前にまずD3を制覇するという意識で臨んでいるので、それにふさわしいゲームではなかったなと思います」
──今季中も、1試合の中で良い面、悪い面が出てしまうケースが多かったと思います。振り返ってみて、今後にどう生かせればいいと考えていますか。
「その点はコントロールするのがすごく難しいです。常にチームメートに声を掛けてはいるんですけど、声を掛けるだけじゃ足りていないこともあります。そのぶん、プレーで見せなきゃいけないのですが、これは試合だけに限ったことではなくて、例えば今週の試合に向かう練習でも、水曜日の練習はちょっと気が抜けていたわけではないけど、辛口のレビューをされました。試合でも同じように先にトライを取っていい流れを作ったけど、少し気が抜けてしまうということが出てしまう。規模が違うだけで、ずっとセコムラガッツにとって同じことが起きているので、入替戦も含めた残り3試合に向けて、オフもあるので、一旦そこで切り替えて、今回のちょっと痛い勉強代と言いますか、ちゃんと学んだことを全員がスイッチオンして、次の試合に向けての準備につなげられたらなと思います」
ヤクルトレビンズ戸田
ヤクルトレビンズ戸田
河野嵩史ヘッドコーチ
「まず、会場の準備をいただいた皆さま、運営に携わっていただいた皆さま、本当にありがとうございました。素晴らしいグラウンドで試合できたことを本当に光栄に思っております。試合に関してですが、やはりここ、昨年のトップイーストリーグ時代の決勝戦で負けてから、狭山セコムラガッツ(以下、狭山RG)さんにはずっと負け続けてきて、これから入替戦に進まれて、上(のディビジョンのチーム)と戦って、狭山RGさんなら勝てると思っていることもあり、この試合でリベンジしない限り、先はないなということで、本当にチーム一丸となって準備して戦いました。その準備したものを23人が本当にグラウンドで体現してくれた結果が、この勝利につながったかなと思っております」
──見事な逆転勝利となりました。ハーフタイムの際、選手にはどのような声を掛けたのでしょうか。
「この試合に向けて簡単に勝てる相手じゃないのは分かっていましたし、得点が離れてしまっても80分をとおして戦い続けることで必ず勝ちがこちらに来るというのを言い続けてきたので、それを選手が本当に体現してくれたことが一番かなと思います」
──相手の良さをうまく機能させないディフェンスやアタックが印象的でした。敗れた過去2戦の反省が生かされた形でしょうか。
「毎週分析してこういう攻め方をしようというのはもちろんやっているんですけど、なかなかどこかでチグハグさが出てしまって、うまくいかなかったところがありました。でも今日は、本当に最後までトライするところまでうまくいったのがよかったんじゃないかなと思います」
──リーグワンの舞台で、ライバルチームに勝利できたことは、来季にもつながるものかと思います。残り1試合となりますが、参入1年目をどのような形で終えたいか、意気込みを聞かせてください。
「最終戦はホストゲームでもありますし、多くのお客さんに来ていただけると思います。その前でしっかりと勝つことにこだわっていきたい。勝つことで順位も一つ上がる可能性もありますので、そこにこだわってやっていきたいと思っています」
ヤクルトレビンズ戸田
多田潤平 共同キャプテン
「まずは、セコムラガッツの皆さま、大会運営の皆さま、ありがとうございました。お客さんも非常にたくさん来ていただいて、いい環境の中でプレーできたことをうれしく思います。ヘッドコーチからもあったように、昨季から負け続けていて、この試合、最後のリベンジのチャンスだと思って、チーム一丸となってやった結果かなと思います。自分たちの準備したプレーがしっかり出せたということ。ただ、やっぱり狭山RGさんは地力で勝るチームで、得点も重ねられたんですけど、最後まで(気持ちが)切れずに自分たちのプレーを信じてやれたことが最終的なトライにつながったかなと思うので、最後にいい形でシーズンを締めくくれるように頑張っていきたいなと思います」
──見事な逆転勝利となりましたが、グラウンド内では選手間でどのようなコミュニケーションを取られていたのでしょうか。
「点数が離される場面もあったんですけど、必ず自分たちにもう一度流れが来ることを信じてやっていました。本当に自分たちにフォーカスして、自分たちのやらなければいけないプレーに徹した結果かなと思います」
──相手の良さをうまく機能させないディフェンスやアタックが印象的でした。敗れた過去2戦の反省が生かされた形でしょうか。
「狭山RGさん用のサインプレーもあり、その点においては、指示もありました。選手はそこを信じとおして遂行できたので、最後の2トライにつながるプレーを重ねられたのがすごくよかったと思います」
──リーグワンの舞台で、ライバルチームに勝利できたことは、来季にもつながるものかと思います。残り1試合となりますが、参入1年目をどのような形で終えたいか、意気込みを聞かせてください。
「入替戦へのチャンスはなくなっていますが、ルリーロさんは、来季も同じリーグで対戦する相手ですし、そこは徹底的にやり合いたいなと思っています。そして最後、勝ちでシーズンを終われるように頑張っていきたいと思います」