2022.12.20NTTリーグワン2022-23 D2 第1節レポート(S愛知 30-19 江東BS)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第1節
2022年12月18日(日) 14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 30-19 清水建設江東ブルーシャークス

逆転トライにつながった、ジョシュ・マタヴェシの“本能のパス”

ディビジョン2昇格組同士が激突した一戦は、昨季3戦3勝の結果同様、豊田自動織機シャトルズ愛知が試合を制した。

前半はほぼ豊田自動織機シャトルズ愛知ペース。速いテンポでのパスワークが光り、二つのトライを含む15点を挙げた。しかし、前半終了間際に清水建設江東ブルーシャークスも1トライを返し、15対5で前半を折り返す。

後半は打って変わって清水建設江東ブルーシャークスが主導権を握り、怒とうの攻勢で一時は逆転するも、シンビンにより一人少なくなったところを豊田自動織機シャトルズ愛知は見逃さず、すぐさま逆転。追加点も奪い、豊田自動織機シャトルズ愛知が勝点4を得た。

特に印象に残ったのは後半26分、逆転トライのシーンだ。豊田自動織機シャトルズ愛知が15対19でリードされていた中、相手選手にイエローカードが提示され数的優位になる。いつトライが生まれてもおかしくない状況だったが、清水建設江東ブルーシャークスも必死のディフェンス。それを打開したのは、ジョシュ・マタヴェシだった。ゴールライン手前でボールを持つと、相手ディフェンス二人のタックルを受ける。そのまま倒されながらもうまく後ろを向き、ティム・スウィルにオフロードパス。そのままティム・スウィルがトライを奪い、逆転に成功した。

ジョシュ・マタヴェシはそのプレーを「本能的だった」と答えた。「複数人にタックルを受けても体の強さを見せられるのが自分の武器。4年間イングランドでプレーしてきたので、日本でもやれる自信はある」。バックスながら188cm120kgと、フォワード並みの体格を持つ。その強みを存分に生かしながら、チームに貢献する絶妙なパスを出した。

2019年のラグビーワールドカップにフィジー代表として出場した経歴をもち、豊田自動織機シャトルズ愛知に加入して2シーズン目を迎えたジョシュ・マタヴェシ。当初は日本での生活に苦労したというが、「フィールド以外のところでも日本人選手と交流があるし、言語の面でも助けてもらっている」とチームメートやスタッフのサポートによって日本に適応できたことを明かした。ピッチでは攻守にわたって勇猛果敢にプレーし、練習や試合のあとには日本語を交えながら気さくに接してくれるナイスガイ。何事にもひたむきに向き合う姿勢が、その『本能』につながっているのかもしれない。

(齋藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(右)、山口知貴キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日無事に開幕を迎えられたこと、さまざまな関係者の方々のサポートに感謝申し上げます。開幕戦ということもあって、内容に関してはこだわらず、確実に勝点4を狙いにいくということで、とにかく勝点4を確保できてうれしく思います」

──先制点について。

「速い展開でトライを取るというスタイルを目指して準備してきました。特に前半は風下ということもあって、なかなかテリトリーを取れない状況でしたので、ボールを動かしていこうとしました。そういう前半の戦い方、自分たちが準備してきたことがトライにつながったことに関しては良かったと思います」

──2トライ目も持ち味のパスワークが出ました。

「この試合で取ったトライは、すべて速いテンポでパスをつないでいくスタイルが出せたと思うので、満足しています」

──前半終了間際の失点については?

「失点してしまったことについては反省しないといけないですが、強風の風下ということもあって、前半をリードして折り返すというよりは、点差を離されずに折り返すことができれば上出来だと思っていました。ですので、点差を詰め寄られたことに焦りはなかったです。ただ、ああいう場面でトライをされる状況を作られてしまったのは反省したいと思います」

──後半は押し込まれる時間が長かったですが?

「後半は清水建設江東ブルーシャークスさんが風下に入って、ボールを動かすスタイルに変えてきました。それに対して受けに回ってしまったのかなと思います。前半に自分たちが想定していたよりも試合をコントロールして戦うことができたことが、受けに回ってしまった背景にあると思います」

──逆転された直後にフロントローを一気に変えました。

「われわれはスクラムにプライドを持っています。後半、相手に長く流れがいってしまったときに、もう一度モメンタムを生み出すためにはスクラムが重要だと考えて、思い切ってフロントローを変えました」

──選手入替から流れを活性化させて、逆転までもっていきました。

「負けている状況でも焦りはありませんでした。入替選手がスクラムなどでプレッシャーを掛けてくれたので、チームがよみがえったと思います。得点を奪えるのは時間の問題だと思っていました。後半に入ったメンバーの仕事ぶりは評価されるべきだと思います」

──そのあとも追加点を挙げ、30対19というスコアになりました。

「開幕戦は何が起きるか分からないと思っていますし、この緊張感の中で試合をするのは1年ぶりということになるので、結果として勝点4を取れたのは満足しています」

──次節もホストゲームです。

「今日は気温が非常に低く、強風が吹き荒れる中でも、たくさんのファンの方に応援いただいたことに感謝しています。われわれの使命として、応援してくれる方々にグラウンドの中でどういう姿勢を見せるかが大事になってくると思います。来週もホームで試合ができますので、そういった姿を示すところを、また見せたいと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知
山口知貴キャプテン

「開幕戦で勝点4を取るために、まずはペナルティーを少なく、そして苦しい状況でもチームとして戦って、特にブレイクダウンのところはディビジョン2に上がって強度が増すと思っていたので、そこは意識していました。内容はともかく、結果として勝点4は手に入れたので、勝って反省していきたいと思います」

──ピッチ上で風はどのように感じましたか?

「前半は風下で強風でしたので、相手のキックがすごく伸びていました。その中で、できるだけボールキープをしてポゼッションを上げて、ゆっくり時間を使っていこうという意識はありました。また、セットプレーやペナルティーを狙って、プレーする地域を上げていこうという話をしていました」

──セットプレーでつかんだ手ごたえはありますか?

「スクラムは体感では勝っていたというシーンもありましたが、いまのスクラムは勝つだけではなく、その中でのコントロールが必要になっていくのかなと思いました。ラインアウトは風の影響で後ろへのボールが投げにくかったというのはありました。清水建設江東ブルーシャークスさんもかなり分析してきたと思うので、ラインアウトに関しては少し後手に回ったかなと思います」

──激しいブレイクダウンも見せましたが?

「レフリーの判断基準も意識しながら、慎重にプレーしました。チームにはベテランのフロントローや、強力な外国籍選手など経験がある選手が多いです。フォワード戦は勝つための大事な要因になると思うので、そこでは必ず優位に立って、有利に試合を進めて今後も勝ちにいきたいと思います」

──次節は2連勝がかかるホストゲームです。

「日野レッドドルフィンズさんも今季はなんとしても上位にという思いが強いチームだと思うので、僕たちも1週間で修正して、必ず勝ちたいと思います」

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスの大隈隆明監督(右)、松土治樹バイスキャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
大隈隆明監督

「本日はありがとうございました。開幕戦ということもありますが、昨季、チームとしては豊田自動織機シャトルズ愛知さんに対して3連敗していたので、『チャレンジしていこう』と挑みました。内容的にはそこまで大きな力の差はないのかなと思いましたが、あと一歩のところで勝てなかったところが悔しいです。チームとしてやってきたことは間違いないと思っています。次戦は中5日しかないので切り替えて、もう一度準備して臨みたいです」

──この試合に向けて意識したことはありますか?

「相手はすごくフィジカルの強いチームですので、とにかくそこのバトルで負けないこと。特にブレイクダウンのところでプレッシャーを受けてしまうと、われわれがやりたいボールを展開するラグビーができなくなってしまうので、そこにこだわりをもって準備してきました」

──前半、立て続けに得点を取られてしまいました。

「立ち上がりはセットピースのところで自分たちのやりたいことができませんでした。そこは改善が必要だと思います」

──前半終了間際に5点を返しましたが?

「それまでいい攻撃ができていなかったので、最後のトライは『自分たちの攻撃をすれば、トライを取り切れる』と思わせてくれました」

──後半は立ち上がりから優位に進め、逆転までたどり着きました。

「後半はチームとしてやってきたことが出せたと思います。仕事とラグビーを両立する中で、ディビジョン2に上がって、環境的には厳しいですけど、これまでやってきたことは間違いではないなと。そこはブレずに続けていきたいです」

──逆転されて敗戦してしまいました。何が足りなかったですか?

「選手も感じていたと思いますが、あのエリア、時間帯、点差で、どういう判断をするのかというところですかね。選手一人ひとりの判断や、チームとしての判断に対して、コーチ陣もアプローチできなかったのは準備不足、経験不足だったかなと思います」

──次節に向けては?

「とにかくいいコンディションで、自分たちのやりたいラグビーができるように、最高の準備をチーム一丸となってするだけですね」

清水建設江東ブルーシャークス
松土治樹バイスキャプテン

「本日はありがとうございました。私も(監督と)同じように、開幕戦で昨季3連敗している相手ということで、気持ちが入っていい準備をしてきました。しかし、勝ち切れなかったのは、まだ自分たちの力が足りなかったのだと思います。そこは今後の練習で課題に取り組みたいです。ホストゲームでの次回対戦時もそうですし、次戦の浦安D-Rocks戦に向けてもいい準備をしていきたいと思います」

──相手のどんなところに強さを感じましたか?

「ゲインされたあとにディフェンスがショートしてしまって、豊田自動織機シャトルズ愛知さんの攻撃に対して後手に回ってしまいました。ディフェンスのところで意識してやっていこうと思っていたんですけど、試合で詰め切れなかったというか、体現し切れなかったのが敗戦の原因かなと思います。また、セットピースで乱れたところでペナルティーを取られてしまって、自陣に押し込まれたのも原因だったと思います」

── 一方で、良かった点はどこにありますか?

「前半の最後のほうから、少ないチャンスでもボールを継続して攻撃していればトライを取れるという自信を持ってやっていたので、後半の入りからもそれを継続していこうとして、ああいう形を作れたことは良かったことだと思います」

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