2023.01.15NTTリーグワン2022-23 D1 第4節レポート(神戸S 19-39 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第4節 カンファレンスB
2023年1月14日(土) 14:30 ノエビアスタジアム神戸 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 19-39 東京サントリーサンゴリアス

今季初出場初先発。日和佐篤が感じた「才能のいらない努力」の重要性

「もうちょっと才能のいらない努力も必要かな、と思う」と語ったコベルコ神戸スティーラーズの日和佐篤選手(中央)

4位のコベルコ神戸スティーラーズが、3位・東京サントリーサンゴリアスをノエビアスタジアム神戸で迎え撃った14日のNTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 ディビジョン1 第4節。好カードにふさわしく、序盤から互いに一歩も譲らない展開を見せる。ただ、徐々に流れを引き寄せ、得点を重ねたのはビジターチーム。東京サントリーサンゴリアスが3連勝を遂げ、コベルコ神戸スティーラーズの連勝は2で止まった。

「最後に取れたのは今後の励みにはなると思います」

試合終了間際、コベルコ神戸スティーラーズが挙げた唯一のトライを振り返ったのは、今季初出場初先発だった日本代表51キャップを誇る歴戦のプレーヤー、日和佐篤。古巣戦でもあった9番は、一矢報いた王鏡聞のトライから今後につながるポジティブさを感じ取った。

インフルエンザのため複数の選手が急きょ欠場を余儀なくされたホストチーム。ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ同様、日和佐も敗戦の理由にはせず、「やりたいことがなかなかできない中で、もっとできることがあったんじゃないか。試合が終わってから思うところはありますね」とゲームの中身をフォーカスした。

試合の入りは抜群だった。相手の持ち味であるアタックを的確に止め、李承信のペナルティキック2発で一時は6対3とリードした。ただ、前半28分に初トライを献上すると、3分後にもトライを許し、主導権を握られた。日和佐は振り返る。

「我慢できなかった、というところですね。東京サントリーサンゴリアスさんのアタックは素晴らしかったですけど、そこをあと一歩、我慢できなかった。もうちょっと才能のいらない努力も必要かな、と思う」

17日に阪神淡路大震災から28年となる中、試合前の会場ではメッセージ映像も流され、選手たちは強い気持ちを前面に戦っている。その上で、さらにチームとして成長していくために、心技体のハードワークの精度も高めていけるかは大きなポイントだろう。

長いキャリアで酸いも甘いも経験してきた35歳のスクラムハーフは「みんなが疲れている状況はたくさんあるけど、もう一歩、踏み込めたら。また1週間、良い準備をしたい」とも述べ、冷静沈着に次節を見据えていた。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのニコラス・ホルテン ヘッドコーチ(左)、マルセル・クッツェー ゲームキャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ

「今日の試合の総括に関しては、東京サントリーサンゴリアスさんがしっかりと良いラグビーをして、自分たちは点を重ねられず、本来掛けるべきプレッシャーを掛けることができずに終わってしまった試合だと思います。最初の20~30分にはチャンスはあったと思いますが、そこの部分で自分たちが仕留め切ることができず、その後、自分たちが殻に閉じこもるような結果になってしまったと思います」

──試合直前に4人が欠場した理由と影響について。

「今回のメンバー変更に関しては全員、インフルエンザが原因です。ただ、インフルエンザでメンバーが代わったことが結果を残せなかった言い訳にはしたくない。やるべきことはその中でもやったと思っています」

──ラインアウトを含めて細かいミスが見られたが、原因をどのように考えていますか?

「一つひとつの細かいところの、自分たちのスキルの精度が足りていなかったと思います。ラインアウトであればリフトのテンポがワンテンポ遅れていたり、スローの精度もそうだし、パスに関しても本来のコースに走れていなかったり、細かい、ワンテンポ、ワンテンポのミスだと思います。本来投げるべき相手をしっかり見てからパスをしようと話をしていたんですが、それができていなかったり、チームとして今シーズンそういうミスが散見されているので、それを修正しようと取り組んでいるところですが、今日見たとおり、まだ出し切れていない部分だと思います」

──後半からマイケル・リトル選手を投入し、ハマッているように感じました。

「まず一つ、(マニ・)ラウマペ選手に関しては試合前、膝の痛みがあったというところもあってそこを考慮しました。マイキー(マイケル・リトル)を起用した理由としては、試合の中での自分たちのモメンタム(勢い)、流れを変えるために、独特なプレースタイルを持っているので、両足でステップを切ることもできる、マイケル・リトル選手のところで流れを変えられるところがあると思い、後半から起用しました」

──開幕節から規律を守れないところが続いていると思うが、どのあたりを修正している最中なのでしょうか?

「規律を修正する上で、まずどこの部分でペナルティを与えているのかを判断する必要があります。ブレイクダウンが間違いなく一番、ペナルティを与えている。ノットロールアウェイをよくとられていると思う。そのノットロールアウェイを減らすために何をしなければいけないかというとタックルのクオリティーを上げることだと思っています。タックルのクオリティーが良くなく、自分たちが求めている側ではなく相手側のほうで仰向けになってしまってそのままブレイクダウンに追い込まれているところがあるので、自分たちの一人ひとりの1対1のタックルクオリティーを上げることがペナルティの数を減らすことにつながると思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
マルセル・クッツェー ゲームキャプテン

「間違いなく残念な気持ちになっています。いま、ロッカールームの選手たちも心を痛めています。コーチも言ったように、最初の20分間に関してはしっかりとフィジカリティーでバトルもできていましたし、戦う姿勢というのは見せられたと思います。大事な局面で自分たちの精度が高くなかったことがこういう結果につながったと思います。最初の20分、良いプレーができていましたが、相手の22mラインに入ったときに、パスミスがあったり、ターンオーバーだったり、そこで仕留め切ることができなかった。自分たちが完遂できなかったことがこういう結果につながったと思っています。もう一つの部分に関しては、自分たちの規律の部分で、東京サントリーサンゴリアスさんに簡単に自陣奥深くに入られてしまってプレッシャーを感じないといけない展開になったことも問題の一つだと思います」

──今季、神戸Sに加入した中で「1.17」という日は、どういう日と受け止めていますか?

「コベルコ神戸スティーラーズに入団する上で、神戸の伝統や歴史をまず教えられます。神戸の街の方々が、1月17日にどういうことを乗り越えなければならなかったのかを教えられています。外国人選手として日本に来る上で、当時の方々が、復興に捧げてきた情熱を自分たちは感じています。チームのリーダーズの方々もそういった当時の情熱や反発力を自分たちのラグビーにも反映していかないといけないと教えてくれています。外国人選手としてそこにどれだけ貢献できるか、このチームのジャージーを着る上で、歴史だったり、誇りを間違いなく感じながらプレーしないといけない。そういった意味で、情熱や反発力の大事さを理解しています。

今日に関しては見せるべき内容を見せられなかったが、本来自分たちが持っていなければいけないのはそういう情熱や反発力なので、今シーズンをとおして最後まで見せていけるようにしていきたいです」

──最初の20分はしっかりフィジカルバトルができていたものの、精度が落ちていった理由は?

「最初の20分に関しては、先ほども言ったように自分たちが勝つこともできていて、自分たちが自信を失わずにプレーができていたと思います。そのあとに、自分たちの小さなミスから徐々に東京サントリーサンゴリアスさんに自信を与えてしまって、相手がブレイクダウンで圧倒するようになってきて、速いテンポでプレーされることによって自分たちはディフェンスラインをセットできず、相手に点を取られる展開になっていったと思います。

残りのシーズンで成功を収めていくために、学ばなければいけない部分としては、間違いなく今日の東京サントリーサンゴリアスさんとわれわれの違いの一つである大事な瞬間、大事な展開での精度の高さですよね。そこでボールキープできて、モメンタム(勢い)を作っていけるか、自分たちができなくて相手ができたのは、一番はそこだと思います」

──最後のトライまでペナルティゴールを狙って得点を重ねていったが、その狙いは?

「その部分に関しては今日、(李)承信選手もキックに自信を持っていましたし、あの時点に関してはスコアをなるべく縮めてどれだけ相手にプレッシャーを掛けていけるかという状況だったので、ペナルティゴールを狙っていました。そこのタイミングを振り返ったときに、セットプレーでうまくいっていないときがあったので、自分たちのモメンタムを取り返すためには相手に対してしっかりとプレッシャーを掛けていくことも大事だったと思います。ペナルティをもらったときにどっちで行くべきか、キッカーと話をする際に、承信は自信があるということだったので、自分たちも信じてキックを託しました」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(左)、齋藤直人 共同キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

「本日はありがとうございました。神戸はフィジカルが本当に強くてアタッキングマインドのチームなので、フィジカルの部分で絶対に引かないというところにフォーカスしてきました。その準備のところが今日のゲームで出せたのがすべてだったのかなと思います。またチームがレベルアップした、成長したと感じましたし、まだまだリーグは続きますので、一戦一戦、レベルアップしていきたいなと思います」

──前半開始早々に箸本龍雅選手を交代したが、負傷したということでしょうか?

「そうですね。はい」

──フィジカルの準備をしていたという話だったが、すぐに短い時間で高められるものではないと思うが、特にどのあたりを意識して取り組んできたのでしょうか?

「コベルコ神戸スティーラーズのアタックはですね、きっかけがあって、その部分のところをしっかりと止めに行くことにフォーカスしてやってきました。急に体は大きくならないので、相手の強みをどう消すのかをこの1週間準備してきました」

──相手のパスミスから一気にカウンターのシーンも多々あった。東京サントリーサンゴリアスらしさが出たのでしょうか?

「コベルコ神戸スティーラーズはやっぱり、細かい、フォワードの細かいパスをつなぐのを得意としているので、そこに対してしっかりとプレッシャーを掛けに行って、スキルエラーを誘いました。トランジションの部分はやっぱり東京サントリーサンゴリアスの強みでもありますので、そこはいつもどおりやれました」

東京サントリーサンゴリアス
齋藤直人 共同キャプテン

「本日はありがとうございました。いま監督がおっしゃられたように、フィジカルの部分、それからコベルコ神戸スティーラーズは勢いのあるチームなので、入りの20分に特にフォーカスして試合に臨みました。先制はできたものの、その後、雨でボールが手につかなかったり、ペナルティを連続して犯してしまってなかなか勢いに乗れなかったところがあったので、そこは次節に向けてしっかりと改善していきたいです」

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