花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)

救世主となるか。34歳・村田毅は力まず、ひるまず、おごらない

5年ぶりのトップカテゴリーで未だ勝利から遠ざかっている花園近鉄ライナーズ。直近の2試合はいずれも大量70失点以上を喫する大敗で、最下位にあえいでいる。ホストゲーム3連戦の締めくくりとなる1月22日には、東大阪市花園ラグビー場で、3連勝で3位につける東京サントリーサンゴリアスを迎え撃つ。

「システム的には問題がないと思います。そこが機能しないのは個人の問題もある」

前節、横浜キヤノンイーグルス相手に孤軍奮闘したウィル・ゲニアはチームの現状をこう振り返る。前節はイージーミスやタックルの甘さなどが目立ったのは事実だった。苦しいチーム状況の立て直しに向けて、選手の入れ替えを敢行する中で、頼もしいベテランが、移籍後初めて公式戦のピッチに立つ。

日本代表で通算7キャップを持つ34歳の村田毅である。開幕直前に膝を痛め、ベンチ入りからも遠ざかっていた村田は、待望の今季初先発に向けて「チームの状況はありますけど、純粋に花園近鉄ライナーズのジャージーを着てプレーすることが純粋にうれしいです」と目を輝かせる。

1月20日の練習でもチームをピリッとさせる空気感をプレーで示した村田をプロ意識の高いゲームキャプテン、ウィル・ゲニアも心強く感じている。

「すごく助けになっているし、選手としての能力も高いですね」(ウィル・ゲニア)。
直近の2試合で喫したのは計151失点。好調の東京サントリーサンゴリアスには日本代表も多い。「相手はアタックのチームで速いボールを出してくる。今週はしっかりとタックルのできる選手、スローボールができる選手を選んでいます」と水間良武ヘッドコーチは起用の意図を明かし、村田については「痛い(タックル)ことができる選手。そこを率先してもらいたい」と期待を寄せた。

指揮官や仲間からの信頼は厚いが、元日本代表に過度な気負いはない。

「自分の経験を振りかざしてやろうとも思っていないですし、純粋に一人の選手としてチームのために体を張りたい。僕はタックルに行くのが好きなのでそこでワークレート(仕事量)を高くやっていきたいですね」(村田)

もちろん、数多くの経験値を積み重ねてきた自負も、胸に秘めている。東京サントリーサンゴリアスについて問うと「今まで、たくさんサントリー(東京サントリーサンゴリアス)とも試合をしてきている。ちゃんと真っ向勝負をしてくるチームなので僕は好きですね。純粋に楽しみです。早く花園近鉄ライナーズファンの人に名前を覚えてもらえるように頑張ります」

力まず、怯まず、驕らず――。目力の強いベテランの今季初プレーに注目だ。

(下薗昌記)

ベテランの村田毅選手。「純粋に一人の選手としてチームのために体を張りたい」


東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスB)

巻き起こる「試合に出たい」バイタリティ。新たなエンジン・河瀬諒介が勢いを加速させる

東京サントリーサンゴリアス、関西ビジターゲーム2連戦。前節、兵庫でコベルコ神戸スティーラーズに勝利を収め、次なる戦いは東大阪市花園ラグビー場を舞台に、今季未勝利の花園近鉄ライナーズと相対する。勝てば今季4連勝とますます勢いが生まれる一戦だ。

その勢いを作る一つの要因は、東京サントリーサンゴリアスの若き戦士たち。コベルコ神戸スティーラーズ戦では小林賢太、山本凱、河瀬諒介の2022年入部組トリオが肩を組んで勝利を喜ぶ姿があった。日本代表組や代表経験のある選手が多い百戦錬磨の集団の中で、「試合に出たい」というバイタリティはチームの新たなエンジンになっている。

中でも、「初出場・ファーストタッチで初トライ」という鮮烈デビューでインパクトを残したのが河瀬諒介だ。大阪で生まれ育ち、東海大仰星高校では「冬の花園」で全国制覇をけん引。早稲田大学を経て東京サントリーサンゴリアスに入部後、1年近くかけてつかんだ初出場のチャンスを見事にモノにした形だ。本人もその感慨深さをこう振り返った。

「やっと出られたな、という感じがします。同期が先にデビューしていく中で悔しい思いもありましたが、フィジカルや一つひとつのスキルを上げ、コミュニケーションの質も含めて練習試合でもアピールできた結果としての初出場じゃないかと思います」

そんな河瀬にとって、この関西ビジターシリーズはまさに「故郷に錦」の戦い。途中出場だった神戸でのデビュー戦に続き、地元であり思い出の地・花園での第5節、ついにスタメンデビューを果たす。

河瀬といえば、ラグビーファンにとっては元日本代表の父・河瀬泰治の息子、としてもおなじみの存在。デビュー戦にはその父も観戦に訪れ、初トライの勇姿を目撃してくれたという。東大阪市花園ラグビー場で戦う今節は、高校時代から見守ってくれたファンに向けてもアピールできる絶好の機会だ。

また、今節には同じ2022年入部組の雲山弘貴、21年入部組の片倉康瑛の二人もリザーブながら初めてメンバー入りを果たした。他チームでは大学卒業前のアーリーエントリー組が注目を集める中、負けられない意地もあるはずだ。むしろ、東京サントリーサンゴリアスで揉まれてきたプライドと経験を糧に、チームにさらなる勢いを生む活躍を期待したい。

(オグマナオト)

先発でメンバー入りの河瀬諒介選手。前節で、初出場・ファーストタッチで初トライの活躍をみせた


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