クリタウォーターガッシュ昭島(D3)

スクラムで勝って試合に勝つ。FW陣の合言葉は「亮さんと喜べる」

第6節を終えてNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3の3位につけているクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)は、今節、首位の九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を荻野運動公園陸上競技場で迎え撃つ。今季初めての地でのホストゲームで、チーム初の3連勝も狙う。

ディビジョン2昇格を目指すWG昭島にとっては、どうしても乗り越えなければいけない相手との一戦だ。前回の九州KVとの対戦では、前半をリードして終えたものの、後半に自分たちのミスから崩れて、敗れた。

九州KV戦に向けて、「今回は自分たちの強みのセットピースでリベンジをします」と誓う石井洋介キャプテンは、「前回の対戦では後半の最初に自陣ゴール前のスクラムでペナルティを与えてしまって、徐々に流れが九州KVのほうにいってしまった。今回の試合でもスクラムがキーポイントとなってくるはず」と話す。現在2連勝と好調のチームを支えているのは、スクラムで相手を圧倒できたことが大きい。スクラムの勝敗が試合結果に直結しそうだ。

「フォワード陣は、『スクラムで勝てたら(フォワードコーチの山村)亮さんと一緒に喜べる』という気持ちでスクラムを押している感じもありますね。おもしろい文化だと思います。スクラムを組むのが楽しくなりました」と、2年目のフランカー中尾泰星が実感を込めて語るように、スクラムの強化は確実に進んでいる。山村亮フォワードコーチを迎えて2年目のシーズン。地道に積み上げてきスクラムが、ようやく芽を出し、WG昭島の大きな武器となりつつある。

バックスのキープレーヤーとなるのは、前節でもトライをあげて絶好調の濱副慧悟。現在、ディビジョン3の4冠王(トライ数、ラインブレイク数、ディフェンス突破数、ゲインメータ)は、まだまだ上を目指す。そして今節、初めてスタメンに抜擢された杉山祐太。チームNo.1の評価を受けるロングキックでチームを前に進めることができるか。

ディビジョン3の今後の行方を左右する注目の一戦で、今まで見たことのない景色をファンに見せてくれ。

(匂坂俊之/Rugby Cafe)

クリタウォーターガッシュ昭島の山村亮フォワードコーチ(中央)


九州電力キューデンヴォルテクス(D3)

社業とラグビーに垣根はなし。メンター制度の導入が信頼を築く

前節、ホストゲームでマツダスカイアクティブズ広島を30対6で破り、4連勝を達成した九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)。首位に浮上して迎える今節は2月12日13時から荻野運動公園陸上競技場でクリタウォーターガッシュ昭島とのビジターゲームに臨む。

前節の勝利後、ロッカールームは歓喜に沸いた。初キャップの金堂眞弥やひさびさの出場でプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)を獲得した中島謙といった若手選手を先輩たちが盛大に祝福した。この雰囲気が九州KVの好調を支える要因の一つだ。

在籍選手のほとんどが社員選手である九州KVは、選手としての顔だけでなく社業においてもう一つの顔をもつ。それをラグビーにも生かしているのがクラブキャプテンの松下彰吾だ。

チームスポーツにおいて、チームワークを深め、帰属意識を高めることは必要不可欠な要素である。しかし、ライフラインである“電気”を扱う電力会社が母体の九州KVは社業において、コロナ禍以降、会食の禁止や人数制限など厳格なルールがいまも続いており、それはチームにおいても同様。チームのコミュニケーションを図る機会として最も一般的な食事会をコロナ禍以降は一度もチームとして開催していない。

「普通であれば、全体で食事会などを開いてチーム全体の帰属意識を高めるようなこともできるんですけど、やっぱり、いまはそれができない」(松下)

そこで松下が始めたのがメンター制度だった。

「若手(メンティー)の仕事やラグビー、プライベートでの悩みをメンター(先輩)が聞いてあげて、メンティーは相談することで悩みを解決していく」(松下)

これは一般企業においても用いられている人材育成の方法であるが、松下が社業において従事しているのが人事グループ。「人の異動や評価、人にまつわるもので人材育成のサイクルを回していく担当」(松下)なのだ。仕事で培ったノウハウをラグビーにも生かしている形で自身も「実際にラグビーの若手を成長させていくところにはかなり生きている」と話す。チーム内の評判も上々で「良い信頼関係を築けている」という声が若手選手たちからも聞かれている。コロナ禍という逆風下でも“人事の顔”を生かし、より深いチームワークの構築に尽力する松下の存在は社業とラグビーを両立させる九州KVの“らしさ”の象徴だろう。

「試合に出る、出ないにかかわらず、チームの目指す方向性をしっかりと浸透させていく」

松下は今節、メンバーから外れたが、全員で作り上げたチームワークが九州KVの武器。全員の力で5連勝をつかみ取る。

(杉山文宣)

九州電力キューデンヴォルテクスの松下彰吾クラブキャプテン。メンター制度をラグビーにも採り入れた



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