NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)

「第二の故郷・柏」で“地元の星”が駆け抜ける

NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、前節の三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)戦で劇的な勝利を収めた。試合後の記者会見では、キャプテンのレメキ ロマノ ラヴァが「うれしいけど、これがスタートです」と開幕戦以来の勝利を喜びつつも、次の試合へ向けて視線を切り替えた。今季初の連勝をかけて、GR東葛はリコーブラックラムズ東京と対戦する。

相模原DB戦では開始5分にジェームス・シルコックに先制トライを奪われ、必ずしも良い試合の入りができたわけではない。だが、その悪い流れを断ち切ったのが、25分に追撃のトライを決めたクリスチャン・ラウイである。

「スクラムから自分が突っ込むときは負けないことを意識してきて、狙い続ければチャンスになると思っていました。ずっと狙っていたらトライを取れました」

そう振り返るクリスチャンにとっては、これが柏の葉公園総合競技場で行われた、開幕の花園近鉄ライナーズ戦以来となるNTTジャパンラグビー リーグワンでの二つ目のトライとなった。

GR東葛のホストスタジアム、柏の葉公園総合競技場でのプレーに、クリスチャンは特別な感情を抱く。トンガからの留学生として高校1年生のときに日本体育大学柏高校に入学。彼が日本に来て初めてトライを決めたスタジアムこそ、柏の葉公園総合競技場だった。

しかし、当初は日本語も話せず、周りが何を話しているのかさえわからない。「トンガに帰りたい」。わずか1週間で故郷への思いが募り、外出もせずに寮の部屋に閉じこもっていたという。

そんなクリスチャンをラグビー部の仲間たちが連れ出してくれた。彼らは拙い英語やボディランゲージで積極的にクリスチャンとコミュニケーションを取り、ときには自宅に招き、仲間の母親が作る日本の家庭の味をふるまったこともあった。先輩からは洋服をもらい、監督は旅行にも連れて行ってくれた。ラグビー部の仲間、その家族、学校関係者、そして地元の人たち。「いろいろな人たちの支えがあったから、ここまで来ることができました」とクリスチャンは感謝の意を口にした。そんな高校時代を過ごした柏を、彼は「第二の故郷」と言う。

あれから4年。当時お世話になった大勢の方々は、ホストゲームになると必ずクリスチャンの応援にスタジアムへ駆けつける。

「今週の試合も友だちがたくさん来ます。みんなと会えるのは僕も楽しみ。でも、そこで良いプレーをして恩返しをしなければいけないと思っています」

現在、リーグワンでは5試合連続でスタメンに名を連ね、前節はトライも決めた。チームも、自分自身の調子も上がっている。シーズン初の連勝をかけた今節、“地元の星”としてクリスチャン ラウイは勝利を目指し、グラウンドを駆け抜ける。

(鈴木潤)

高校のときからの“地元”柏の地で連勝を目指す、NECグリーンロケッツ東葛のクリスチャン・ラウイ選手


リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスA)

家族のため、日本のため、トンガのため。“ファカタヴァツインズ”は止まることなく歩み続ける

前節の花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)戦で、念願の今季ホストゲーム初勝利を収めたリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)は今週、NECグリーンロケッツ東葛との負けられない一戦に臨む。「自信がある」と話すのは、花園L戦でプレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得したアマト・ファカタヴァ。今季すべての試合でフル出場を果たしているチームマンだ。特に目を見張るのは、オフ・ザ・ボールでの献身ぶり。苦しい時間帯にもあきらめず足を動かし、タックルする姿に心打たれるファンも多いだろう。

ピーター・ヒューワット ヘッドコーチは、アマト・ファカタヴァを「すごくいい選手になれると自分自身が気付き始めた」と評すが、本人は至って変わらない。「家族のためだからこそ、ハードワークできる。家族のためにベストを尽くしたい。それだけです」と自然体を貫く。

そんなアマト・ファカタヴァには、双子の兄弟がいる。ファカタヴァ タラウ侍だ。花園L戦で試合復帰を果たし、昨年4月以来の兄弟同時出場を叶えた。

タラウ侍は昨年、日本に帰化をした。名付けた日本名は『侍』。「昔から侍の生き様、歴史が好きだった」。日本に腰を据えて生活することを選んだ背景にも、チームへの愛情が垣間見える。「BR東京は、僕にとって日本のファミリー。このクラブでラグビーをする機会を与えて頂いたことがうれしいですし、このクラブすべてが僕の家族なんです」

トンガ出身選手と話すときはトンガ語で、フィジー出身のネイサン・ヒューズら、そのほか外国人選手と話すときは、英語と日本語を織り交ぜながら器用に言葉を紡ぐ。だが、インタビューで顔を合わせると、大きな背中を丸めながら、試合中の10分の1ほどの小さな声で受け答えをするのが、愛らしいファカタヴァ兄弟である。

「僕たちは先人が切り拓いた道を同じように歩み、足跡をたどっている最中です。そして続く若いトンガ人選手たちには、より良いものを残していければと思っています。鎖のようなものですね。歴史を重ね、もっともっと長いチェーンを作っていきたいと思います」(アマト・ファカタヴァ)

きっとまた今節も、ダイナミックなプレーで観客を楽しませてくれるに違いない。

(原田友莉子)

今季すべての試合でフル出場中、リコーブラックラムズ東京のアマト・ファカタヴァ選手(左)、ファカタヴァ タラウ侍選手


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